戻る  前ページ  次ページ

(5)障害関連研究経費(仮称)
事務事業名 障害関連研究経費(仮称)
(障害保健福祉総合研究と感覚器障害研究を統合予定)
担当部局・課主管課 障害保健福祉部企画課
関係課 大臣官房厚生科学課、障害保健福祉部障害福祉課、精神保健福祉課

(1)関連する政策体系の施策目標
基本目標11 国民生活の向上に関わる科学技術の振興を図ること
施策目標 2 研究を支援する体制を整備すること
I 厚生労働科学研究費補助金の適正かつ効果的な実施を確保すること

(2)事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 近年、地域移行、自己決定、主体性の回復等をキーワードとして大きく転換しつつある障害者施策の推進の基礎として、(1)障害保健福祉施策の推進のための社会基盤づくり、(2)障害認定基準や障害程度区分の最適化、(3)障害者のニーズの客観的把握やサービスモデルの構築、 (4)身体障害の予防、治療方法や在宅介護・介助等の支援技術、(5)知的障害者の地域福祉、医療、社会参加、(6)精神障害者の社会復帰、在宅福祉、等に関する研究を推進する。また、視覚、聴覚・平衡覚等の感覚機能の障害について、その病態解明、予防、治療、リハビリテーション、生活支援等に関する研究を推進する。
 これらの実施にあたっては、行政上重要な課題を示して研究を公募し、専門家・行政官による事前評価の結果に基づき採択を行う。研究進捗状況についても適宜評価を加えるととともに、研究の成果は随時適切に行政施策に反映させる。

予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16要求
(382*1
(578*2
(547*1
(680*2
(383*1
(680*2
(337*1
(585*2
(354*1
(585*2
*1 障害保健福祉総合研究分(推進事業費を含む)
障害保健福祉総合研究事業は、平成14年度より一部「こころの健康科学」に移行した。
*2 感覚器障害研究分(推進事業費を含む)

(3)問題分析
(1) 現状
 平成15年度からの新障害者基本計画、新障害者プランに基づく施策の開始、障害者施策の措置から契約(支援費制度)への移行など、わが国の障害者施策については、施設処遇を中心とした体系から、地域での自立した生活を支援することを基本にした体系への転換が急速に進んでおり、利用者の自己選択に基づく、ニーズに対応した総合的な支援体制の構築が急務となっている。しかしながら、予防、治療、リハビリテーション、在宅福祉サービスの各般にわたる基盤整備のためには、施策立案の基礎的資料収集や実態把握、具体的な支援手法の開発を開発等を進める必要がある。
(2) 問題点
 障害者の地域での自立した生活を実現するために、治療、リハビリテーションのあり方、地域等における支援手法を具体的に検討していく必要がある。
 また特に、精神病院から地域への移行が喫緊の課題となっている精神障害者については、地域移行を支援する手法の開発とともに、その進捗状況のモニタリング実施が重要な課題である。
(3)事業の必要性
 障害者の自立した地域生活を実現するために必要となる基礎的な知見や資料の収集、支援手法の開発、および感覚機能の障害への対策に関して研究を推進することが必要である。
 事業の実施に当たっては、行政的ニーズに学術的観点を加味して公募課題を決定し、得られた研究成果については、適切に行政施策に反映させる。

(4)事務事業の目標
平成15年度においては、
・強度行動障害の評価尺度の開発
・障害者に利用可能な防災マニュアルと情報サービスの開発
・脊髄損傷者褥瘡予防システムの開発
・精神障害者のいわゆる「社会的入院の解消」の進捗状況のモニタリング指標の開発
・人工内耳手術に用いる内視鏡の開発
 等を進める予定である。

2.評価結果
(1)必要性(行政的意義(厚生労働省として実施する意義、緊急性等)、専門的・学術的意義(重要性、発展性等)、目的の妥当性等)
 平成15年度からスタートした新障害者基本計画およびその重点施策実施5ヵ年計画(新障害者プラン)に基づいて、各種障害者施策を適切に推進することが重要な課題となっている。障害者基本計画においては、障害の有無にかかわらず国民が相互に尊重し支えあう共生社会の実現を基本的な考え方とし、その実現のための基本的方向を定めている。
 障害者の地域における自立した生活を支援する具体的な体制の検討は、行政において主体的に進めることが適当である。このために行政上必要な研究事業について公募し、採択課題に対し補助金を交付し、その研究結果を施策に反映させることが必要である。
 また、特に精神障害者の社会復帰対策については、「心神喪失者等医療観察法案」の国会審議の過程で、施策の迅速・着実な展開と進捗状況の継続的な評価が求められているところであり、研究事業を着実に進めることが必要である。

(2)有効性(計画・実施体制の妥当性等の観点)
 障害関連研究は、障害保健福祉総合研究と感覚器障害研究を発展的に統合した新規事業となる予定であるが、これまでの経験を踏まえ、効率的な実施体制をとり、有効な研究成果を得ていくこととしている。
 具体的には、障害保健福祉総合研究、感覚器総合研究においては、行政的なニーズの把握に加え、学術的な観点からの意見を踏まえて公募課題を決定することとしている。また採択課題の決定にあたっては、行政的観点からの評価に加え、各分野の専門家による最新の研究動向を踏まえた評価結果(書面審査およびヒアリング)に基づき研究費を配分している。さらに、中間・事後評価(書面審査およびヒアリング)の実施等により、効率的・効果的な事業実施が行われてきている。
 新たな研究事業においても、これらの経験を踏まえ、同様の仕組みによって効率的な運営を行う。

(3)効率性(目標の達成度、新しい知の創出への貢献、社会・経済への貢献、人材の養成等の観点から)
 障害関連研究は、障害保健福祉総合研究と感覚器障害研究を発展的に統合した新規事業となる予定であるが、これまでの障害保健福祉総合研究においては、障害者の保健福祉施策の総合的な推進の基礎的な知見を得ることを目的としており、人文社会的分野を含めた、行政ニーズに基づく研究課題を実施し成果をあげている。
具体的には平成14年度に、施策立案・実態把握に関する成果として
 ・ 支援費制度(H15年度施行)における判定方法(チェックリスト)
 ・ ジョブコーチの導入にあたっての実施モデル、人材養成プログラム
 ・ 身体障害者補助犬の有効性の評価、管理方法
 ・ 精神病院における患者動態の調査  等の実態把握
 支援手法に関する成果として、
 ・ 心臓ペースメーカー(心臓機能障害者)のための電磁波防護服の開発
 ・ 言語コミュニケーション困難者の支援技法の開発(マニュアル作成)
 ・ 点字修得支援用の辞書作成 等がある。
一方、感覚器障害研究では、感覚器障害の病態解明から障害の除去・軽減のための治療およびリハビリテーション、支援機器開発まで、総合的な研究事業として実施している。根本的な病態解明等のレベルには至っていないが、新しい手術法の開発(人工内耳、眼内レンズ挿入等)、治療法の開発(人工涙液等)、感覚器障害の検査法(胎児聴覚検査、ドライアイ検査等)の開発、機器等の技術開発(新駆動式HiFi補聴システム、人工視覚システム等)に関して、一定の知見が蓄積されつつある。
 これらの研究結果は随時行政施策に反映されるほか、診断、治療、支援技術の改善等を通じて、国民に還元されることとなる。

(4)その他
 ・ 身体障害、知的障害、精神障害に一つの研究事業の中で取り組んでいるため、障害種別ごとの個別課題に対応する研究のみならず、障害種別を超えた研究や、障害横断的な研究が実施できる体制となっている。
 ・ 推進事業においては、外国人招聘、外国への日本人研究者派遣、リサーチレジデント事業が実施され、国際交流や若手研究者の育成に効果を上げている。

(5)特記事項
・平成14年12月の障害者基本計画においても、「研究開発の推進」が項立てされ、障害の予防、治療、障害者のQOLの向上等を推進するための研究開発の推進等を明記している。
心神喪失者医療観察法案の衆議院における修正により、次の附則が盛り込まれた。
「政府は、この法律による医療の必要性の有無にかかわらず、精神障害者の地域生活の支援のため、精神障害者社会復帰施設の充実等精神保健福祉全般の水準の向上を図るものとする。」

3.総合評価
 障害関連研究は、障害者の保健福祉施策の総合的な推進のための基礎的な知見を得ることを目的とする障害保健福祉総合研究と、視覚、聴覚・平衡覚等の感覚器の障害について、その病態解明、予防、治療、リハビリテーション、生活支援等に関する研究を行う感覚器障害研究を発展的に統合して発足することとしている。
 ノーマライゼーション、リハビリテーションの理念のもと、障害者の地域生活を支援する体制づくりが喫緊の課題であるが、新しい課題であるために知見の蓄積が少なく、本研究事業の成果により徐々に基礎的な知見や資料の収集や、科学的で普遍的な支援手法の開発等が進みつつあるが未だ十分ではない。また、障害関連研究は、社会福祉、教育、保健、リハビリテーション医療、工学など多分野の協働と連携による研究が必要な分野であるが、本研究事業によりこれらの連携が進み、研究基盤が確立するとともに、新たな研究の方向性が生まれる効果も期待できる。このため、今後とも行政的に重要な課題を中心に、研究の一層の拡充が求められる。
 これまでの研究成果は、随時、行政施策に反映されてきており、障害者施策の充実に貢献してきている。
 障害関連研究は広い範囲を対象とするものであるから、施策に有効に還元できる課題を適切に選定して効率的に推進することが重要である。現在でも、行政的ニーズに学術的観点を加えて、公募課題の決定、応募された課題の事前評価と採択、中間・事後評価等を実施しているが、これらの評価システムをより有効に運営することが求められている。


トップへ
戻る  前ページ  次ページ