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第4回 血漿分画製剤の製造体制の在り方に関する検討会 意見書

平成15年9月19日
委員 財団法人 献血供給事業団
理事長 青木 繁之

製造供給体制を検討するためのキーポイント

 第3回の当検討会での日赤及びメーカー代表からのヒアリングにおいて、コストの概要が僅かながら判明した。当日私なりの整理で発言させていただいたが、改めて計算しなおし、修正を加えた部分もあるので意見書として提出する。
 どのような製造体制を検討するにしても最初に解決しなければならないのは、原料血漿のコストをどういう形でまかなうかということである。「血液行政の在り方に関する懇談会」では、このことを無視して議論されており、平成2年から実施されている政策(別添1)に反した<自由競争に委ねるべき>との報告がなされる結果となった。
 第2回当検討会で私が申し述べたように、将来の供給一元化を視野に入れた政策はすでに平成2年から12年間に亘って実施されており、それに沿ってメーカーに対する原料血漿価格は国の指導で(国、日赤、血協の三者合意・別添2)決められている。その結果原料血漿1リットル当たり、日赤が48,870円かけて集めているものを、メーカーには35,700円安い13,170円(平成2年当時は10,000円)で提供している。更に市場を混乱させているのは、米国の売血による原料血漿が推定10,000円以下(平成2年当時50ドル)であることから、原料血漿の段階で3つの価格差が存在することを先ず認識しておかなければならない。自由競争しようにも、スタートラインが違うのでは競争のしようがない。
 結果として前回申し上げた通り、例えば基準薬価において平成2年当時はどのメーカーも日赤製と同じ8,319円であった(別添3)20%50ミリリットルの人血清アルブミンは、現在では日赤製7,412円、献血の国内民間メーカー製6,405円、輸入製剤5,136円とこれまた同一製剤3薬価となっている。各メーカー製の基準薬価が3つに乖離したのは、輸入業者、国内民間メーカーと日赤が値引き競争を展開した結果である。
 原料コストや薬価にこれだけの差があれば、国立病院で13%、私立大学病院では20%近い値引きを要求しているこの時代に、日赤や国内メーカーには既に更なる値引きに応じるだけの体力は無い。輸入業者のバーゲンセールに勝てるわけが無い。
 政策目標であった50万リットルの原料血漿確保を達成した時点で(平成7年頃)、新たな100万リットルの目標達成に向けての政策の調整が行われるべきであった。12年間の政策遂行過程における重要な時期に、血液行政の在り方に関する懇談会や中央薬事審議会のさまざまな議論に翻弄され、なんの対応もしてこなかった行政の過去の責任は大きい。
 現在医療をめぐる経済環境はますます厳しくなり、健康保険の査定も厳しくなってきた。本年4月から始まった大学病院の包括評価導入や健康保険査定の厳格化により、これまで以上の値引きを要求されている。山売り、山買いが横行し、従来献血由来製剤を購入していた病院が、最近、輸入製剤の採用に転換しつつある現状を認識しなければならない。
 血液製剤の国内自給を基本理念として制定された新法の目的を実現することは、自由競争の中にさらされる今の制度では不可能である。人の善意で提供された献血を自由競争での値引き販売を続ければ、いずれ献血者の献血離れを引き起こすことになりかねない。献血の流通は規制解除や自由競争にはなじまない。規制解除や自由競争を優先させるとするならば、新法もいらないし売血禁止もいらない。新法の基本理念と医療行政に乖離があってはならない。
 具体的に解決しなければならないポイントは原料血漿のコストをどこに負担させるかという問題である。前回のヒアリングで示された資料をもとに、下記の計算をした。
 原料血漿のコストを全て分画製剤に負担させる場合1リットル当たりの製品コストはいくらになるか。
 メーカーの説明では製品コストの内、原材料費は32〜36%、その内血漿は70〜80%との説明である。ということは、全体100%の内25%が原料血漿のコストである。25%に当たる血漿は日赤提供の資料によれば、三者合意により13,170円で日赤からメーカーに提供されている。また日赤資料によれば、原料血漿のコストは48,870円(21,993円÷450×1,000)となるので、次の計算が成立する。

図

 ということになる。つまり、35,700円のコスト上昇分を、アルブミン、グロブリンと凝固因子製剤の基準薬価を値上げして、まかなわなければならない。
 もし現状の製品コストを維持しようとすれば、100万リットル分の差額357億円を補助金で負担するか、従来どおり輸血用血液製剤に上乗せするか、二者択一しかない。私は前回申し述べたように、分画製剤のコストの一部を、分画製剤を使わないかもしれない輸血を受ける患者に負担させるような不条理は、今回改めるべきであると考える。3割の自己負担金は患者自身の財布から支払われている。その場合、輸血用血液製剤の基準薬価も見直すこととなる。

 輸入製品との価格差をどのようにして解消するかという問題の解決を図らなければならない。
 血漿分画製剤も輸血用血液製剤と同様に、各組織の透明性を確保し、値引き販売できない製造供給体制を確立しなければ、医療機関は製品の優位性ではなく、購入価格の安い方を選択する現状の体質は変わらない。


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