論点 |
考え方 |
|
【給付水準】
・ |
世代間の公平が図られた持続可能な仕組みにするため、負担の上昇を極力抑制する観点から、給付水準の見直しを行うべき。 |
・ |
給付と負担の見直しにより、給付水準の見直しを行った場合においても、公的年金が老後生活の支えとしてふさわしい価値のあるものに維持していくため、一定の水準の確保が必要との意見。 |
・ |
老後生活の基本的部分を保障する水準の確保が必要であり、基礎年金と厚生年金を合わせた給付水準は、将来にわたり、現在の水準を維持すべきとの意見。 |
【保険料引上げ】
・ |
少子高齢化が進む中で、制度の持続の観点からも、世代間の負担の公平性の観点からも、適切に保険料負担を引き上げていくべきであり、現在の保険料引上げの凍結は早急に解除すべきである。 |
・ |
経済状況への配慮という観点からは、厚生年金について、毎年小刻みに引き上げることにより、1回ごとの引上げ幅を抑制することが適当との意見。 |
・ |
保険料の小刻みな引上げは、社会経済情勢によって影響を受けやすく実現できなくなる可能性があり、最終保険料率を低くするためにも、保険料を早めに引き上げるべきとの意見。 |
・ |
一方、企業の活力、経済の活性化の維持のためには、安易に保険料負担を引き上げるべきでないとの意見。 |
【保険料負担の上限】
・ |
前回改正で設定された最終保険料の水準や今回の有識者調査の結果から、最終保険料水準は年収の20%程度が適当との意見。 |
・ |
将来の保険料率はできるだけ抑えるべきではあるが、「方向性と論点」の保険料率20%程度は基本とすべきとの意見。 |
・ |
最終保険料率20%程度であれば、ヨーロッパ諸国と比較しても妥当な水準との意見。 |
・ |
一方、医療・介護保険の負担を考えると、最終保険料率20%は高すぎるのではないかとの意見。 |
・ |
空洞化の解消、厚生年金の適用拡大等により、最終保険料を20%まで引き上げなくても現行の給付水準の維持は可能であり、さらに基礎年金を税方式化すれば、15%程度の保険料率で可能との意見。 |
・ |
医療・介護保険の負担や世代間の不公平是正を考えれば、給付水準の見直し、積立金の取崩し、基礎年金部分の間接税方式への移行を進めるとともに、保険料率については現行を極力上回らない水準で長期間固定すべきであるとの意見。 |
|
|
【給付と負担の見直し方法】
・ |
給付と負担の見直しにあたっては、世代間の負担の公平性を確保するとともに、将来の負担についての不安を解消するため、保険料固定方式の導入が適当である。 |
・ |
また、「努力しなければ悲観的なものになるが、努力すれば給付は高く負担は低くなる」という国民全体の努力を引き出すインセンティブを制度自体に組み込んだ設計とすることが望ましいとの理由からも、保険料固定方式が適当。 |
・ |
現在の厳しい経済情勢の下で、保険料引上げについて国民の合意を得るためには、将来の段階保険料を明示し、最終保険料率の固定を約束することはやむを得ないとの意見。 |
・ |
一方、年金受給額が裁定時まで分からない保険料固定方式は、若い世代の不信感を招くとの意見。 |
|
|
【マクロ経済スライド】
・ |
マクロ経済スライドは、賃金や労働力人口といった国全体の保険料負担能力(支える力)の伸びに見合ったスライドを行うもので、適当である。 |
・ |
一方、少子化の進行で給付水準が低下し、老後の生活保障の柱としての役割が損なわれるおそれがあるとの意見。 |
【実績準拠法と将来見通し平均化法】
・ |
将来予測の変動に左右される将来見通し平均化法よりも、実績準拠法が望ましい。 |
・ |
給付調整に時間をかけると、将来世代に給付削減のしわ寄せが生じることから、実績準拠法に平均余命の伸び等を加味した調整を検討すべきとの意見。 |
・ |
実績準拠法では2025年以降に給付調整が集中することから、将来見通し平均化法により給付水準の適正化を前倒しすべきとの意見。 |
【年金改定率の下限及び既裁定年金の給付水準の調整】
・ |
年金制度に対する国民の不信感を払拭するためには、全ての世代が痛みを分かち合うことが必要であり、既裁定年金も速やかに給付水準の調整対象とすべきであり、物価下限型よりも名目年金額下限型の方が望ましい。 |
・ |
世代間の負担と給付の不公平を解消するため、年金改定率には下限を設けず、名目年金額を減らすことも検討すべきとの意見。 |
【基礎年金の給付水準の調整】
・ |
第1号被保険者の定額保険料を負担可能な範囲内に収めるためには、基礎年金の給付水準の調整はやむを得ない。 |
・ |
前回の年金改正でも基礎年金は調整しておらず、基礎年金の給付水準の調整はすべきでないとの意見。 |
|
|
【給付水準の下限】
・ |
経済状況次第で所得代替率が大きく低下しては老後の保障にならないため、給付水準の下限を設けるべき。 |
・ |
将来の給付水準が定まらないと老後の生活不安をもたらすおそれがあることから、給付水準が大きく下がり過ぎるような場合には、制度の総合的見直しも必要との意見。 |
・ |
ILO第102号条約との整理が必要との意見。 |
|
|
【既裁定者の物価スライド】
・ |
既裁定者の物価スライドについては、賃金下落率が物価下落率より大きい状況では、給付総額の伸びよりも保険料収入総額の伸びが小さくなるため、それを踏まえた調整をすべきとの意見。 |
・ |
賃金変動率と物価変動率のどちらか低い方に合わせてスライドさせ、賃金・物価の上昇局面についても同様に考えるべきとの意見。 |
・ |
賃金変動率と物価変動率のどちらか低い方に合わせてスライドさせた場合、年金水準は現役世代と差がつく一方になることから、人口減少分の調整は別としても、現役世代とのバランスを踏まえて給付水準を考えるべきであるとの意見。 |
・ |
既裁定年金にも可処分所得スライドを復活させ、現役世代の手取り賃金の伸びを反映した調整を行うべきであるとの意見。 |
・ |
基礎年金と厚生年金をあわせた給付水準は、年金も手取りでみて現役世代の手取り賃金との所得代替率55%の水準を将来にわたって維持するべきであるとの意見。 |
・ |
物価スライドについては、少なくとも過去3年間停止している物価スライド1.7%分を全て反映させた後の水準を前提に検討すべきとの意見。 |
|
|
・ |
同額の保険料を同期間拠出したにもかかわらず、所得・資産によって、給付を制限するのは、拠出に応じた給付の関係がなくなり、保険料拠出意欲をなくし、社会保険制度として問題がある。また、公正な所得調査が現実的に可能かとの問題がある。 |
・ |
公的年金等控除を見直すことによって対応すべきである。 |
|
|
・ |
高齢者を一様に税制上で優遇しており、また、給与所得のある年金受給者にとっては給与所得控除と公的年金等控除が併せて適用されることになる現行制度を見直し、世代間・世代内の公平を図る観点から、公的年金等控除を縮小すべき。 |
・ |
その際、公的年金等控除の水準を給与所得控除の水準にまで下げるべきとの意見。 |
・ |
公的年金等控除の見直しに当たっては、高齢者世代は若い世代よりも所得格差が大きいこと、年金だけに頼っている高齢者世帯への配慮が必要との意見。 |
・ |
遺族年金・障害年金の非課税措置についても見直しが必要との意見。 |
・ |
年金課税の見直しによる税収を、基礎年金国庫負担割合の2分の1への引上げの財源の一部とすべき。また、基礎年金国庫負担割合の引上げのほか、次世代育成支援に充てるべきとの意見。 |
|
|
・ |
積立金は、高齢化のピークの保険料水準を抑え、その後においても最終保険料率を賦課保険料率より低くする役割を果たし、負担の世代間格差の緩和などの意義も有する。早期に年金積立金を取り崩すことで当面は保険料を低くすることができるが、高齢化のピークやその後における保険料の水準を考える必要がある。 |
・ |
将来の保険料負担を考えると、現在の積立金を取り崩すことは責任ある対応とはいえない。 |
・ |
積立金については、その水準は将来に向けて、年金の支払いに支障のない程度まで抑制することが適当との意見。 |
・ |
賦課方式を前提とすれば、現行の給付費の5年分程度から、高齢化のピークに向けて可能な限りその水準を抑制すべきであるとの意見。 |
|
|
・ |
経済前提・人口推計については、楽観的な前提によるのではなく、厳しい見通しも視野に入れた前提で行うべきとの意見。 |
・ |
将来を見通す時に、過去の実績に依存するのではなく、将来の潜在成長率予想といくつかの考えられるシナリオから考えていく必要があるとの意見。 |
・ |
経済前提は、悲観的な前提ばかりでない状況が改善した場合の見通しも考慮すべきとの意見。 |
|
論点 |
考え方 |
|
【適用拡大】
・ |
働き方の多様化への対応、短時間労働者の年金保障の充実、支え手の増加、就業調整問題の解決、事業主間の保険料負担の不均衡是正等の観点から、短時間労働者への厚生年金の適用拡大をすべき。 |
・ |
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、基本的には必要である。 |
・ |
労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべきとの意見。 |
・ |
短時間労働者への適用拡大については、雇用への影響、特定業種への影響、事務負担の増加等を最小限にする包括的な取組みと併せて、慎重に検討すべきとの意見。 |
・ |
短時間労働者への厚生年金の適用拡大により、60歳を超えてパート就労している者にも在職老齢年金が適用されると、高齢者の就労意欲が損なわれ、企業の高齢者の採用にも影響が出てくるのではないかとの意見。 |
・ |
医療保険における適用拡大の影響も同時に検討すべきとの意見。 |
・ |
5人未満の個人事業所及び任意適用業種への適用のあり方についても検討すべきとの意見。 |
【適用基準】
・ |
雇用契約に基づいて労働を提供し、会社に貢献する者に対して会社もサポートするという被用者保険の理念を考慮すると、収入要件は考慮せず、週所定労働時間で適用することが適当との意見。 |
・ |
雇用保険の適用基準と同じく、週の所定労働時間が20時間以上の者を適用するのが適当との意見。 |
・ |
所定労働時間が極めて短い者であっても、相応の賃金を得ている場合もあり、週の労働時間要件(20時間)に収入要件(65万円)を併用すべきとの意見。 |
【短時間労働者への給付と負担】
・ |
現行の厚生年金の応能負担の考え方を基本に、「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)」を中心に考えるべきとの意見。 |
・ |
第1号被保険者より少ない負担で基礎年金に上乗せした報酬比例年金を支給する「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)」については十分な検討をすべきとの意見。 |
・ |
「標準報酬下限維持案」は、応能負担原則に反するとの意見。 |
・ |
「標準報酬下限引下げ×給付維持案」は、被扶養者にも基礎年金を支給し、保険料と比べて給付が過大となるとの意見。 |
・ |
短時間労働者の年金保障の充実、年金財政への影響、第1号被保険者との不公平感を考えると、「標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付調整案)」が望ましいとの意見。 |
|
|
【在職老齢年金制度の制度の見直し】
・ |
現行制度を基本に見直すとすれば、B案(2対1の調整率の緩和案)やC案(2対1の調整開始点の引上げ案)は高所得の者が有利となり、望ましくなく、A案(一律2割支給停止の廃止案)が適当。 |
・ |
この場合、A案(一律2割支給停止の廃止案)の変形として、特別支給の老齢厚生年金が報酬比例部分のみとなる者について、一律2割支給停止を廃止することが考えられる。 |
・ |
現在の在職老齢年金を廃止して、すべての所得(賃金・高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整する制度に抜本的に改めるべきとの意見。 |
【繰下げ受給制度】
・ |
高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられるとの意見。 |
・ |
60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰下げ受給の導入については、年金なしでも生活できる高賃金の者を優遇することになること、繰下げを選択した者についても事業主は繰下げがないものとして賃金額を決定し、賃金抑制効果は現行制度と変わらないおそれがあること等の問題があり、慎重な検討が必要との意見。 |
【その他】
・ |
高齢者の就労を促進する上では、在職老齢年金制度を廃止するとともに、年金税制を見直し総合課税化することが考えられるとの意見。 |
【支給開始年齢の引上げ】
・ |
支給開始年齢は、65歳に向けて引上げ途上にあり、また雇用情勢も厳しい中で、65歳の支給開始年齢をさらに引き上げることは、ますます国民の年金制度に対する不信・不安を高めることになりかねず、当面行うべきではない。 |
|
|
【年金制度での次世代育成支援】
・ |
出産・育児のため年金に関し不利になっているとすれば、それを解決するのが基本であり、年金制度としても少子化対策としてできるものを実施すべきとの意見。 |
・ |
親の所得、職業、就業形態に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援を基本におく支援をすべきとの意見。 |
・ |
少子化対応を進める必要はあるが、公的年金制度の財源を制度本来の趣旨と異なる目的に流用すべきではないとの意見。 |
・ |
年金制度の枠組みの中での経済的支援よりも、継続して就業できる環境や保育サービスの充実等の社会基盤の整備で考えるべきとの意見。 |
【育児休業期間中の措置】
・ |
育児に対する支援の観点から、(1)育児休暇中の保険料免除期間の延長、(2)就業を継続するも時短等で年金保障が不利にならないよう、育児期間前の標準報酬あるいは平均賃金で保険料納付が行われたものとして扱うなどの配慮、(3)いったんは離職した後再就職した場合なども、なんらかの配慮を行うべきとの意見。 |
・ |
出産を機に退職する人が多く、育児休暇取得者は少数にとどまることから、育児休暇取得者に関する措置は効果が少ないとの意見。 |
・ |
育児休業期間中の免除期間を拡充しても、その政策効果は不明確であり、現行法による育児休業期間(最長1年)の範囲内にとどめるべきであるとの意見。 |
【育児休業の取得者以外】
・ |
厚生年金に関しては、育児休業を取得したか否かに関わりなく、育児期間の前後を通算して一定の厚生年金の被保険者期間がある場合に、年金額算定において一定水準の報酬を保障すべきとの意見。 |
・ |
仕事を辞めた人も含めて幅広く対応することが必要との意見。 |
【第1号被保険者への支援措置】
・ |
第1号被保険者も育児期間中は保険料の負担をなくすなど配慮措置が必要との意見。 |
・ |
1階の基礎年金部分に関しては、第1号被保険者を含め全ての被保険者について、育児期間中は基礎年金の保険料負担を免除または軽減すべきとの意見。 |
【第3号被保険者への支援措置について】
・ |
第3号被保険者については、本人自身は保険料を負担しておらず、また、基礎年金は保障されることから、更なる育児期間中の支援措置は必要性が低いとの意見。 |
・ |
第1号被保険者を含めて育児期間中の全ての被保険者の基礎年金の保険料負担を免除または軽減する場合、第3号被保険者の取扱いについては、「夫婦間の年金権の分割案」を採用し、妻も保険料負担を行っているものと擬制することにより、保険料について免除または軽減すべきとの意見。 |
【年金資金を活用した教育資金貸付制度】
・ |
総合的な次世代育成支援策の一環として、若い世代が年金制度のメリットを受けられるよう、若者に対する貸付制度を創設すべきとの意見。 |
・ |
少子化の要因となっている教育費負担を軽減する等の観点から、貸付制度の意義はあるのではないかとの意見。 |
・ |
すでに他の制度により貸付制度が存在しており、年金資金を本来の目的である年金給付以外の目的に流用すべきでないとの意見。 |
・ |
年金資金の損失リスクを招きかねないことや、特殊法人整理合理化の方向に逆行すること等から、新たな貸付制度を創設すべきでないとの意見。 |
|
|
【派遣労働者等に対する厚生年金の適用】
・ |
登録型の派遣労働者の「待機期間」における厚生年金の任意適用については、求職中の失業者と区別がむずかしく困難との意見。また、待機中も国民年金の適用はある。 |
・ |
派遣労働者等は短期・断続的に就労する者が多いことから、事務手続きの煩雑さの増大等を踏まえて、慎重に検討すべきとの意見。 |
・ |
派遣労働者が「待機期間」の度に国民年金の種別変更を行うという事務手続について、簡素化を考えるべきとの意見。 |
・ |
失業中の者についても、次の就労までの期間厚生年金に引き続き加入できる「継続加入制度」を創設すべきとの意見。一方、再就職せずに非労働力化する者との区分が困難との意見。 |
|
|
・ |
障害年金をもらいながら働いている人が65歳になり老齢年金をもらうようになると、年金額が減ってしまうことになることから、障害基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせを考えるべきとの意見。 |
・ |
保険料を拠出すべきであったにもかかわらず拠出せず無年金になった者に年金を支給するのは、拠出制の年金保険としては困難であり、年金を受給していない障害者には、基本的には福祉的措置で対応すべき。 |
・ |
20歳以上で障害基礎年金を受給していない障害者については、障害者福祉施策と年金制度(当面、国庫負担相当分)双方の組み合わせによる所得保障制度を導入すべきとの意見。 |
|