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検討項目 論点 委員意見
6. 支え手を増やす方策等
   
(1) 短時間労働者等に対する厚生年金の適用
短時間労働者に対する厚生年金の適用拡大を図るべきではないか。その場合、保険料負担の増加等についてどう考えるか。
【短時間労働者への厚生年金の適用拡大に賛成する意見】
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、是非必要である。当該労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべき。(大山・山口・小島)
短時間労働者へも厚生年金の適用拡大を図っていくことが必要。(翁)
働き方の多様化への対応、短時間労働者の年金保障の充実と支え手の増加、就業調整問題の解決、事業主間の保険料負担の不均衡是正に貢献するため、短時間労働者への適用拡大に賛成。(堀)
適用されていない労働者は、年金なら第3号被保険者、医療なら被扶養者となり、別の被保険者の負担で給付を受けることになる。適用されない労働者を雇う企業は、それ以外の労働者を雇う企業に、自分の労働者の社会保障負担を転嫁していることになる。(堀)
年金の支え手であり日本社会の担い手として今後大いに期待される若者や女性が、十分な職業教育の機会も得られないまま、不安定なパート・アルバイトとして社会保障制度の外で働くのは好ましいとは言えない。短時間労働者の厚生年金適用拡大をぜひとも実施に移していくべき。(杉山)
パートが多く雇用されている飲食業などは国際競争のない業種であり、適用拡大は必ずしも経営問題にはならないのではないか。(大澤)
事業主側では、フルタイム従業員を多く雇う事業所とパートが大部分の事業所の間で、より社会保険料負担をシェアすること(=競争条件の平準化)が望まれる。現在では、厳しい国際競争にさらされる業種が、不相応に重く社会保険料を負担していないか。
パート適用に関して労働者本人が負担を納得するかという指摘があるが、給付の面も考えないといけない。(大山)

【短時間労働者への厚生年金の適用拡大は慎重に検討するべきとする意見】
第1号被保険者とのアンバランスの解消策や財政影響の試算を十分明らかにする必要がある。また、医療保険や介護保険への適用を拡大すればその影響は甚だ大きく、適用拡大による雇用の手控えといった雇用への影響、特定業種、地域経済への影響、事務負担の増加を最小限に緩和する包括的な取り組みと併せて、慎重に検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
短時間労働者への厚生年金の適用拡大により、60才を超えてパート就労しているものに在職老齢年金制度が適用され、年金額が減額される上に保険料負担も同時に発生する。このような事態が発生することにより、高齢者本人の就労意欲を損ない、企業にとっても高齢者の採用への影響が生じてくるのではないか。(井手・岡本・矢野)

【基礎年金の税方式化によって対応するべきとする意見】
被保険者の区分が変わることによって、その都度給付と負担の在り方が変わるような制度は好ましくない。基礎年金の税方式化は、短時間労働者への厚生年金の適用拡大に伴う課題の解決に資する。(井手)

【適用拡大に当たっては方法を工夫すべきとする意見】
本人に年金を保障するというプラスの方向を目指していても、企業負担が増えるために短時間労働者の需要が減ることで、今短時間労働者にとどまっている若年者が今度は失業者となる可能性もあり、工夫したやり方をしないといけない。(翁)
短時間労働者への適用拡大は、雇用労働者としての均等待遇の観点から、是非必要である。当該労働者及び事業主の保険料負担が増大することについては、経過措置を設ける等一定の配慮を行うべき。<再掲>(大山・山口・小島)
短時間労働者に対する新たな厚生年金の適用基準についてどう考えるか。
【週の労働時間を要件とすべきとする意見】
雇用保険と同じく週の所定労働時間が20時間以上の労働者を対象にすることが適当。労働時間要件と選択的に収入・賃金要件を設けるかどうかは、給付や負担の定め方による。設けるとした場合、厚生年金は被用者保険であるため、収入ではなく賃金を要件とすべき。(堀)

【週の労働時間要件に収入要件を併用すべきとする意見】
収入要件を併用した方が、雇用形態の多様化に対応でき、就業調整の余地が減少するのではないか。(翁)
新たな適用基準は、「週の所定労働時間20時間以上または年収65万円以上」とすべきである。(大山・山口・小島)
週の所定労働時間20時間または年収65万円以上に適用拡大する案に賛成。所定労働時間が極めて短い者であっても、相応の賃金を得ているのであれば、厚生年金の対象者とすることに問題はない。ただし、短時間労働以外から主たる収入を得ている場合は適用からはずせばよいのではないか。(杉山)
標準報酬最低限の引き下げを行ったうえで、労働時間が短くても一定以上の賃金収入があれば適用する。(大澤)

【収入要件だけで適用の対象となる者を決めるべきではないとする意見】
被用者保険の理念は、雇用契約に基づいて労働を提供し、会社に貢献する者に対して、会社もサポートするということ。被用者保険という観点からは、収入だけ見て適用するということにはならないのではないか。(岡本)

【短時間労働者以外についても適用を検討すべきとする意見】
適用拡大を議論するのであれば、まず先に任意適用事業所に雇用される従業員への強制適用のあり方を検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
従来任意適用となっている5人未満の個人事業所及び適用外業種の事業所についても強制適用とするべきである。また、複数事業所で雇用される場合は、個々の事業所で労働時間及び年収は適用要件に満たなくても、合算すれば適用基準を満たす場合の適用のあり方についても、さらに検討するべきである。(大山・山口・小島)
複合就労の場合も、本人には合計賃金収入に応じて、各事業主にも支払い賃金に応じて、拠出を求めるべき。(大澤)

【適用拡大に当たっては保険料の徴収等について見直す必要があるとする意見】
適用拡大の実効性を確保する上では、労働保険との適用・保険料徴収の一元化等の業務体制の強化や、事業主負担の賦課基準を賃金支払総額とするなどの見直しが必要。(山崎)

【医療保険との関係も検討するべきとする意見】
健康保険では、被扶養者から被保険者本人になるものにとって見ると保険料負担が発生しても、医療費の一部負担は3割で変わらず、適用拡大による被保険者本人にメリットは少ない。したがって、医療保険における適用拡大の影響も同時に検討すべき重要な問題である。(井手・岡本・矢野)
短時間労働者へ適用拡大を行う場合の給付と負担の在り方についてどう考えるか。
【標準報酬下限維持案の問題を指摘する意見】
負担が逆進的となり、厚生年金の応能負担原則に反する。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付維持案の問題を指摘する意見】
被扶養配偶者にまで基礎年金を支給すると、拠出した保険料と比べて給付が過大となる。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)を支持する意見】
短時間労働者の給付と負担のあり方は、「標準報酬下限引下げ×本人給付維持案」を基本に考えるべきである。保険料は応能負担で、給付で被用者グループ内の所得再配分を行う被用者年金の設計上当然であり、問題ではない。(大山・山口・小島)
現行の厚生年金とほぼ同じ仕組みである標準報酬下限引き下げ×給付調整案(本人給付維持案)が適切。(堀)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付維持案)の問題を指摘する意見】
標準報酬月額の下限を引き下げて、第1号被保険者の負担より少ない負担で基礎年金に上乗せした報酬比例年金を受給するような給付設計を制度に組み込むことについては、十分な検討をすべきである。(井手・岡本・矢野)

【標準報酬下限引下げ×給付調整案(本人給付調整案)を支持する意見】
給付と負担のあり方については、標準報酬下限引下げ×本人給付調整案が望ましいと思われる。現状の若年層の短時間労働者の増加を考えると、短時間労働者の年金がある程度保障されることが重要である。同時に、給付水準によっては、先行き極めて深刻な年金財政の悪化を招く可能性がある。(翁)
第1号被保険者からみると、提案された4案は1号と3号間の不公平感を解消できないが、あえて言えば基礎年金減額案が一番理解を得やすいのではないか。(杉山)
(2) 高齢者の就労促進・支給開始年齢
高齢者の就労促進という観点から在職老齢年金の仕組みをどう見直すか。
【在職老齢年金の仕組みの見直しについての意見】
現行の在職老齢年金制度を廃止して、総収入(賃金・高年齢雇用継続給付金、事業所得、家賃、配当・利子等)をベースに、年金額を調整する制度に抜本的に改める。例えば、年収総額が600万円を超えるあたりから順次年金支給を削減し、年収1000万円で全額停止としてはどうか。(大山・小島・山口)
B案(2対1の調整率の緩和案)でもC案(2対1調整基準の引上げ案)でも高賃金の者のみが改善されるので、望ましくないのではないか。A案(1律2割停止の廃止案)の変形として、特別支給の老齢厚生年金の定額部分が引き上げられた者について、2割停止を廃止したらどうか。(堀)
支給停止(調整)率の緩和や、60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰り下げ支給の導入については、高所得層に有利になることから、慎重な検討が必要。(山崎)
現行制度を基本に見直すとすれば、年金水準が下がる60歳台前半の報酬比例部分のみの老齢厚生年金について、一律2割の支給停止を廃止することが現実的な対応。(山崎)
企業の雇用政策とも関係することから、就労を阻害しない、シンプルで分かりやすい制度とするよう見直しを行うべきである。また、総報酬制の導入で、前年度の賞与の1/12を加算して在職老齢年金額が計算される。定年後再雇用の場合などに在職老齢年金が大幅に削減されるため、当年度の賞与で計算されるよう見直しが必要である。(井手・岡本・矢野)

【在職老齢年金以外の方策についての意見】
高齢者の本格的な就労を促進するため、例えば年金の繰下げ受給を選択できる仕組みを取り入れることも考えられる。(神代)
繰下げ支給案は以下のような問題がある。(堀)
(1) 60〜64歳の在職老齢年金の趣旨が賃金だけでは生活できないため支給するものであると考えられるが、この案は年金無しでも生活できる者に年金を支給するものであり、上記の趣旨に反する
(2) I案(年金全額繰下げ案)は論外―在職中の高賃金の者に年金を全額支給するのは、厚生年金制度の趣旨(退職による生活の保障)に反する
(3) II案(年金一部繰下げ支給案)―繰下げ支給の年金額が減額されるとすれば、現行制度について指摘されている就労阻害効果の面では同じではないのか
(4) 繰下げ支給の制度を設けても、事業主は、被用者が自主的に繰下げ年金を選択しているにすぎないとし、繰下げ年金を選択しないで在職老齢年金があるものとして、賃金額を決定するおそれがあり、賃金抑制効果については現行制度と同じではないのか
支給停止(調整)率の緩和や、60歳台前半の老齢厚生年金の65歳以後への繰り下げ支給の導入については、高所得層に有利になることから、慎重な検討が必要。<再掲>(山崎)
高齢者の就労を促進する上では、在職老齢年金制度を廃止し、年齢要件のみで全額支給する一方で、年金税制を見直し、総合課税化することが考えられる。(山崎)
在職老齢年金制度を存続させることを前提にすると、年金の支給停止額を雇用貢献度の指標として、貢献度に応じて事業主負担を軽減してはどうか。この場合、雇用保険の雇用三事業による高齢者雇用関係の各種助成金との統合も考えられる。(山崎)
支給開始年齢についてどう考えるか。
【支給開始年齢の引上げは行うべきではないとする意見】
現下の厳しい雇用情勢と、支給開始年齢の引上げ途上にあることから当面は支給開始年齢の引上げは行うべきではない。(井手・岡本・矢野)
今は1階の定額部分の引上げが順次行われているというような状況の中で、さらに支給開始年齢を引き上げるということになれば、ますます年金に対する国民の不信・不満が高まり、不安の拡大ということにつながりかねず、慎重な対応が必要。(小島)
(3) 次世代育成支援
少子高齢化が将来の我が国の社会経済に大きな影響を及ぼすことが予想される中で、公的年金制度においても次世代育成支援に向けた対応をとることをどう考えるか。
【年金制度での次世代育成支援を肯定する意見】
年金制度でも、少子化対策としてできるものを実施するべき。(堀)
年金制度での対応は、出産・育児のため年金に関し不利になっているとすれば、それを解決するのが基本。(堀)
親の所得、職業、就業形態に関わりなく、子どもに着目した普遍的な支援を基本に置く支援をすべき。(山崎、杉山)
育児や介護のために仕事を辞めるあるいは休む選択をした者に対して社会全体で配慮することは、特にこのような少子高齢化の社会においては問題がない。平行して、第3号被保険者の問題を解決し、個人の生き方に公平なものとすることが必要。(杉山)

【少子化対策は必要だが年金制度の外で行うべきとする意見】
少子化対応を進める必要はあるが、公的年金制度の財源を制度本来の趣旨と異なる目的に流用すべきではない。(岡本・矢野)
現在の支え手(女性被保険者)を失うことなく、将来の支え手(子ども)を減少させないためには、年金制度の枠組みの中での経済的直接的支援よりも、就業環境、社会環境を整備して、子育てにより現在の仕事と収入を失わずにすむようにする方が効果的。(井手)
次世代育成は、年金制度の中での経済的支援よりも保育サービスの充実等の社会基盤の整備で考えるべき。(矢野・大澤・大山・翁・山口・向山)

【育児期間中の者への配慮措置に反対はしないが、効果は疑問とする意見】
育児・介護期間中の配慮は不当ではないが、少子化対策としての有効性は疑問。(大澤)
育児期間中の者に対する保険料の免除等の配慮措置を拡大することについてどう考えるか。
【育児休業期間中の措置を拡充すべきとする意見】
育児に対する支援をもう少し手厚くしてもいい。少なくとも1年という育児休業の期間が妥当かどうかをよく検討する必要がある。(神代)
(1)育児休暇中の保険料免除期間の延長、(2)就業を継続するも時短等で年金保障が不利にならないよう、育児期間前の標準報酬、あるいは平均賃金で保険料納付が行われたものとして扱うなどの配慮、(3)いったんは離職した後も(例えば)3年以内に再就職した場合なども、なんらかの配慮を行うなどを行ってはどうか。(杉山)

【育児休暇取得者に対する措置は効果が少ないとする意見】
出産を機に退職する人が多く、育児休暇取得者は7万人にとどまることから、育児休暇取得者に関する措置は効果が少ない。(堀)
育児休業期間中の免除期間を拡充しても、その政策効果は不明確であり、義務化された育児休業期間(最長1年)の範囲内にとどめるべきである。(井手・岡本・矢野)

【育児休業の取得者以外についても、年金額で配慮すべきとする意見】
2階の厚生年金に関しては、育児休業を取得したか否かに関わりなく、育児期間の前後を通算して一定の厚生年金の被保険者期間がある場合に、年金額算定において一定水準の報酬を保障することとしてはどうか。(山崎)
2号被保険者に対しては、育児休暇取得者だけでなく短時間労働者に変わったものも、子どもが3才くらいになるまでは従前の賃金をベースに給付するのがよい。(小島)
仕事を辞めた人が不利にならないように、そのような人も含めて幅広く対応することが基本である。(堀)
育児休暇を取れずに離職したり、短時間労働者になる人にも配慮するべき。(山口)

【第1号被保険者にも支援措置を拡充するべきとする意見】
育児・介護期間中の者に対する配慮措置が必要。第1号被保険者も育児・介護期間中は保険料の負担をなくすべき。(今井、杉山)
1階の基礎年金部分に関しては、第1号被保険者を含め、全ての被保険者について、育児期間中は基礎年金の保険料負担を免除または軽減してはどうか。(山崎)
第1号被保険者に対しても、子どもが3才くらいになるまでは学生と同様に納付特例を認めてはどうか。(小島)

【夫婦間の年金分割案を採用することで保険料の減免が行えるとする意見】
1階の基礎年金部分に関して、第1号被保険者を含めて育児期間中の全ての被保険者の基礎年金の保険料負担を免除または軽減する場合、第3号被保険者の取扱いについては、「夫婦間の年金権の分割案」を採用し、妻も保険料負担を行っているものと擬制すれば、保険料について免除または軽減するという形を取れる。(山崎)
公的年金の積立金を活用した教育資金貸付制度についてどう考えるか。
【教育資金貸付制度に賛成する意見】
次世代支援については、年金を使った奨学金制度も年金のありがたみが増し、若者も年金を身近に感じることにつながるので、検討してほしいが、日本育英会や国民生活金融公庫の事業見直しが行われている現状では、導入には慎重であるべき。また、貸し倒れのない確実な仕組みを作ることが必要。(杉山)
奨学金については基本的に賛成。きちんと金利を取るのであれば、積立金の一つの運用先となる。(山崎)
教育費負担の状況や次世代育成支援等の観点から、貸付制度の意義はあるのではないか。ただし、利子をどうするかが問題で、一般財源により利子補給することが考えられる。(堀)
総合的な次世代育成支援策の一環として、若年世代、現役世代から年金制度のメリットを受けられるよう、若者に対する無利子の奨学金の貸付制度を創設する。(小島)

【教育資金貸付制度に反対する意見】
貴重な年金原資を使って育英会と同じような教育ローンを開始することは、(1)特殊法人整理合理化の方向と逆行し、(2)しかも年金資金の損失リスクを招きかねない、という点で反対。(翁)
少子化対応を進める必要はあるが、育英奨学金や教育貸付金については、すでに公的な機関で行われており、年金の積立金を本来の目的である年金給付以外の目的に流用する必要はない。(井手・岡本・矢野)
進学しなかった者が負担する年金保険料が同年代の比較的恵まれた層である進学者への奨学資金に回ることについて、理解が得られるか。(大澤)

【教育資金貸付制度の他にも還元融資制度を検討するべきとする意見】
奨学金の貸付制度の他に、保育サービスの基盤整備のための還元融資制度を検討すべきではないか。(山崎)
4) 派遣労働者・失業者
派遣労働者・失業者の厚生年金の取扱いについてどう考えるか。
【失業中も継続して厚生年金に加入できる仕組みとすべきとする意見】
次の就労までの期間、厚生年金に引き続き加入できる「継続加入制度」を創設する。その間の保険料については、学生の国民年金保険料の猶予制度(10年以内に追納:学生納付特例制度)と同様に、保険料負担を猶予し(2年間:健保の任意継続加入期間)、再就職後にその分を追加分納する。なお、追納の保険料は、労使分、本人分(給付算定は半額)、免除(障害・遺族年金の対象)との3選択制として、追納期間は猶予期間の2倍(4年)以内とする。(大山・小島・山口)

【失業中に継続して厚生年金に加入する仕組みは慎重に検討すべきとする意見】
派遣労働者等については、前記の短時間労働者への適用と同様の問題がある。さらに、短期・断続的に就労する者も多いことから、事務手続きの煩雑さの増大等を踏まえて慎重に検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
(5) 障害年金
障害年金と障害者雇用の関わりについてどう考えるか。
【老齢年金と障害年金の組み合わせを検討すべきとする意見】
障害年金をもらいながら働いている人が65歳になり老齢年金をもらうようになると、年金額が減ってしまうことになる。障害基礎年金+老齢厚生年金という組み合わせを考えるべきではないか。(渡辺)
年金を受給していない障害者についてどう考えるか。
【拠出せずに無年金になった者に年金を支給することは困難とする意見】
保険料を拠出すべきであったにもかかわらず拠出せず無年金になった者に年金を支給するのは、拠出制の年金保険としては無理。(堀)

【福祉的措置について方向性を示すべきとする意見】
20歳以上で障害基礎年金を受給していない無年金障害者については、障害者福祉施策(特別障害者手当(現在、月額26,860円)増額など)と年金制度(当面、国庫負担相当分の障害基礎年金の支給等)双方の組み合わせによる所得保障制度を早急に導入すべきである。(大山・小島・山口)
無年金障害者には、基本的には福祉的措置で対応すべき。(堀)

検討項目 論点 委員意見
7. 女性と年金
   
(1) 女性のライフコースと世帯モデル
女性のライフコースと世帯モデルについてどう考えるか。
【制度の給付設計の単位・モデルを見直すべきとする意見】
被用者世帯については、「共働き世帯モデル」により将来の年金額の水準を設定すべき。同様に、自営業者世帯についても、一定の被用者年金の加入期間を有する「転職者世帯モデル」を考えるべきではないか。(山崎)
現在は最も所得代替率が高くなる類型のみで議論しているので、複数のモデルで検討すべき。(大澤)
被用者世帯における給付水準の下限を論ずる場合、所得代替率は世帯類型別に相当の差がある。所得代替率で給付水準の妥当性を判断するのであれば、世帯類型別の試算が必要。(井手)
制度間の負担方式が異なる中、配偶者の加入する制度により被扶養者の年金が変わることは不適当で、制度の個人単位化を図るべき。(今井)
(2) 第3号被保険者制度
報酬比例部分についての夫婦間の年金権分割案についてどう考えるか。
【報酬比例部分についての夫婦間の年金権分割案を支持する意見】
世帯の所得は夫婦が共同で獲得したものとみなして、被用者世帯の年金の個人単位化を図るべきである。その場合、基礎年金保険料に対応する報酬を報酬下限とする。報酬下限以下の者の給付については、第1号被保険者との均衡上、基礎年金のみとし報酬比例部分は支給しない。(山崎)
年金権分割は、遺族厚生年金を不要とすることにつながれば、共稼ぎ世帯と片稼ぎ世帯の不均衡を是正できる。(大澤)
年金権分割案であれば、健康保険における給付と負担の在り方との整合性も確保できる。(山崎)

【夫婦間の年金権分割案を共働き世帯も含めて採用するべきとする意見】
所得分割方式の考え方に準ずる実行可能性のある提案として、「夫婦間の年金権の分割案」を共働き世帯を含めて採用すべき。(山崎)
年金分割は第3号被保険者に有利で、個人単位の不公平感が解消しないとの指摘もあるが、分割を2号−3号間に限らなければよいのではないか。働けば自分の年金も増えることになる。(大澤)
2号被保険者と3号被保険者の間の年金分割は認めても、2号と2号の間では認めないとすると、3号にとどまって年金分割をした方がむしろ自分の年金が増えると誤解されるおそれがある(夫の年金が減るだけなのだが)。(大澤)
長期的には、第1号被保険者の所得が把握でき、家庭内での役割も夫婦で半分ずつという状況であれば、2号−3号以外も全て分割するという考え方はあると思う。(杉山)

【共働き世帯も含めて採用する場合に考慮すべき事項を指摘する意見】
2号−3号以外でも分割する考え方もあるが、2号−2号で妻の方が高賃金で、かつ家事もやるような場合に分割を不満に思う人もある。選択制も認めるべき。(井手)

【夫婦間の年金権分割案の問題を指摘する意見】
実際には3号には負担なしで基礎年金が給付される点は変わらず、不公平感は解消されない。短時間労働者への厚生年金の適用拡大を行ったとしても、年金権分割とセットで実施されれば、更なる就業調整が行われて第3号にとどまる傾向は強くなる。(井手、翁)
年金権は一種の財産権であると考えられるため、分割される側への十分な情報提供と同意を得るための仕組みが必要。分割制度を導入しても現行制度と変わりはない。離婚しなかった夫婦は、厚生年金を分割する必要がない。(堀)
夫婦間の年金権分割案はきわめて合理的だが、わかりにくいという欠点がある。(渡辺)
夫婦間の年金権分割案は、対象を専業主婦としているが、共働き世帯や離婚時の分割のあり方について検討を行った上で、その是非を考える必要がある。(大山・山口・小島)
負担調整案についてどう考えるか。
【負担調整案を支持する意見】
負担調整案は、妻も保険料を負担して老後の保障を得るとともに、共働き世帯や独身者の不公平感を是正するので最も現実的。ただ、同時に3号被保険者縮小案を実施する必要がある。(渡辺)
負担調整案−IIにより、段階的に個人単位での公平性を徹底していく方向がよいのではないか。(今井)
負担調整案−Iについては逆進性が高くなる可能性があり、経済情勢を考えると問題がある。負担調整案−IIは、可能性としてあり得る。(翁)

【負担調整案の問題を指摘する意見】
応能負担が原則の厚生年金に応益負担の要素を持ち込むのは妥当か。また、事業主負担分の保険料を片働きの被保険者についてのみ引き上げる理由は、事業主にはない。片働きの被保険者が不利となり、雇用中立的ではなくなる。さらに、夫婦の合計賃金が同じ場合、保険料額は片働き夫婦の方が共働き夫婦よりも高くなって、水平的公平性に反するのではないか。(堀)
被用者グループ内で、第3号被保険者の有無で保険料負担が2本建てとなり、応能負担という原則を変えることになる。給付が多い人は負担も多くということにつながりかねない。(小島)
共働き世帯や単身世帯の不公平感は解消されるが、事業主負担が増える。また、社員に異なる率を適用することは制度として煩雑。負担調整案−Iは、定額保険料が増えることによる逆進性が課題。(井手)
給付調整案についてどう考えるか。
【給付調整案を支持する意見】
第3号被保険者には負担能力がないことを前提に給付を調整する案は、基礎年金を受給するために定額保険料を支払う第1号との公平性は担保される。(井手)
給付調整案は、基礎年金を国庫負担に限り、財源を消費税にする方向になれば、第3号の給付と負担の不公平感の解消に寄与する可能性がある。ただし、任意の追加給付制度を設けることが前提となる。(翁)
給付調整案が整合的。満額給付を得るために納付制度を設けることで、年金収支にも貢献する。その場合の納付分は3号を抱える2号が負担してはどうか(負担調整案−IIとの組み合わせ)。(杉山)
なかなか理論的にこれという案はない。妥協案を考えないといけない。アメリカやイギリスが給付調整していることにも着目すべき。(神代)

【給付調整案の問題を指摘する意見】
給付調整案は、老後に必要な基礎的年金給付を行うという基礎年金制度の趣旨に反する。無職の妻の分の給付は、アメリカもイギリスも1階と2階を合わせて考えると、給付調整しているといっても、現在の日本と同じような比率になるのではないか。夫婦の合計賃金額が同じ場合の合計年金額は片働き夫婦の方が共働き夫婦よりも低くなって水平的公平性に反する。(堀)
給付調整案は基礎年金を減額するという内容であり、これでは妻の老後の所得保障機能が低下する。(渡辺)
給付調整案は、公的年金の役割や機能に照らして問題が多い。(大山・山口・小島)
第3号被保険者縮小案についてどう考えるか。
【第3号被保険者縮小案を支持する意見】
第3号被保険者制度は、現在の社会経済の実態に適合し、社会保険の原則に即した制度である。ただし、社会経済も変化しており、また人々の考えも変わってきているので、それを踏まえた見直しも必要である。したがって、第3号の範囲は縮小するものの、制度の大枠は維持する第3号被保険者縮小案に賛成。(堀)
第3号被保険者の範囲を狭めて、一定程度働いている人は第2号被保険者になって相応の保険料を払うこととし、その代わり、将来の年金が期待できるようにするのがいいのではないか。(神代)
当面、厚生年金の適用拡大により、第3号被保険者を縮小していくことで対応すべきである。(大山・山口・小島)

【第3号縮小案の問題を指摘する意見】
短時間労働者への厚生年金の適用拡大を行ったとしても、第3号被保険者の大半は3号のままとなるため、第3号縮小案の効果は薄い。(井手)
上記4案以外にどのような考え方がありえるか。
【基礎年金の見直しが必要だとする意見】
4案のいずれを行っても、世帯類型による所得代替率の格差は残る。基礎年金制度の見直しが必要。(大澤)
定額の基礎年金給付を制度内に持つ限り、第3号のような収入のないもの、短時間労働者のような低収入のものに対して厚生年金を適用すると、第1号との均衡を図るために更なる調整が必要となり、制度が複雑化する。(井手)
基礎年金を税方式化することにより、公正な負担の実現につながり、未納・未加入問題や第3号被保険者問題の解決にも資する。(井手・岡本・矢野)

【就労促進の観点から見直すべきだとする意見】
第3号被保険者制度自体の見直しは、就労促進の観点から見直すべきである。第2号と第3号との間に限った年金権の分割案は、就労促進よりも、むしろ第3号被保険者に止まるものが増えることになると考えられる。なお、厚生労働省からいくつかの案が提示されているが、直接雇用関係のない第3号被保険者の保険料について、事業主に負担を求めたり、事業主経由で徴収することは合理的ではない。(井手・岡本・矢野)
(3) 遺族年金
高齢期の遺族配偶者に対する遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給についてどう考えるか。
【自らの保険料納付が給付額に反映される仕組みとすべきとする意見】
高齢期の遺族配偶者に対する遺族厚生年金と老齢厚生年金の併給については、まず本人の老齢厚生年金の全額受給を基本とし、遺族厚生年金(配偶者の老齢厚生年金の4分の3)との差額を支給するしくみとすべきである。(大山・小島・山口)
提起されている問題は単に感情の問題にすぎないともいえるが、改正案の採用に問題はない。(堀)

【共働き世帯と片働き世帯の均衡を図る仕組みとすべきとする意見】
「受給方法IV」は、(1)婚姻期間中に係る年金権は夫婦で共同して得たものとして給付に反映する、(2)自らの保険料納付を給付額に反映する、という自分の考え方に合致し、また、共働き世帯と片働き世帯の公平性の確保にもつながる。(井手)
「受給方法IV」を導入しつつ、年金財政上厳しい状況にならないような割合を決定することが重要。(翁)
老齢基礎年金+(妻+夫の老齢厚生年金)×一定割合とした上で、どうしても高額になる場合は上限を決めるなどしていけば働く女性も、働く女性を妻にもつ夫も公平になる。段階的に給付率を低くし、いずれ廃止していく。(今井)
老齢年金受給者が遺族となった場合に支給される年金は、夫婦二人の合計年金額の一定割合(6〜7割)とするのが適切。提案されている改正案(遺族に支給される2階部分の年金額を夫婦の合計老齢厚生年金額の一定割合とする案)に賛成。(堀)
個人単位化の方向性との整合性を確保する上では、遺族厚生年金の水準は報酬比例年金の原則として2分の1とすべきであり、そうすれば共働き世帯と片働き世帯の間の遺族年金の均衡も図ることができる。この場合、4分の3という現行水準は経過的な措置として位置づけられることになる。(山崎)

【夫婦間の年金分割で対応すべきとする意見】
年金分割を導入すれば遺族年金が必要でなくなる層は拡大する。(大澤)
高齢期の遺族年金については、夫婦間の年金分割で給付される自分自身の年金で暮らしていくのが将来的方向。移行期として、夫の厚生年金の5分の3か、年金分割したものか選べるようにしてはどうか。(杉山)
若年の妻に対する遺族年金についてどう考えるか。
【若年の子供のいない妻については、給付を有期とするなど見直すべきとする意見】
子のいない若齢期の妻については、遺族年金は有期給付とし、就労支援に重点を置くほうが望ましい。(杉山)
18歳未満の子のいる妻に対する遺族年金については現行制度維持。子を有しない若齢の妻に対する遺族厚生年金の支給は見直しが必要(例えば、一定期間又は一定年齢までの年金支給、一時金支給等)。子を有しない中高齢の妻に対する遺族年金は、中高齢女性の雇用機会、雇用条件等を考えると、まだ必要性がある。(堀)
若年層の遺族について、就労可能な配偶者については、遺族年金の受給期間の限度を設けるなどの見直しの必要性について検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
昭和30−40年代の雇用機会・賃金の男女格差が現在よりはるかに大きかったことからすれば、雇用機会均等法が改正強化され、男女格差が縮小した今日、子のない妻への遺族年金制度を維持する必要は、厳密に問われるべき。(大澤)
2002年の児童扶養手当法等の改正、今国会の母子家庭就業支援法の主なコンセプトは「母子家庭になってから5年で自立」であり、児童扶養手当が全額支給されるための年収の上限は約205万円から130万円に引き下げられており、18歳未満の子のある場合の遺族年金も期間限定が妥当。(大澤)
支給要件における男女差等についてどう考えるか。
【男女差は解消すべきとする意見】
若齢遺族に関しての現行制度は、夫と妻で給付の対象となる年齢が異なること、および中高齢寡婦加算があることなど、現在の女性の就業率と照らし合わせて、時代錯誤と思われる。(井手)
遺族年金の支給要件は、男女間の差異をなくすべき。(杉山)
男女の支給年齢要件をどちらにそろえるかは、将来遺族年金のあり方としてどのような方向性をめざすかという観点から考えるべき。将来的に、男女がともに働く社会を想定した場合、第一義的には、男女の賃金労働条件の格差解消を図るべきだが、その上で、遺族年金の受給要件は男女とも中高齢の場合、としていくべきと考える。併せて、遺族となった者に子どもがある場合には、一定の配慮を行う形とすべきである。
(大山・小島・山口)
被扶養の夫55歳以上という年齢制限は外すべき。(今井)
支給要件の男女差等は速やかに撤廃するべき。(大澤)

【男女差はやむを得ないとする意見】
男女で雇用機会、雇用条件等に格差がある現状では、現行制度の男女差はやむを得ない。ただし、将来男女差が相当程度縮小すれば、支給要件を同一にする。(堀)

【生計維持要件の見直しが必要とする意見】
遺族年金の年収要件(生計維持要件)については、当面、遺族年金を支える被保険者の年収とのバランスをはかる観点から、遺族となった者の年収に応じて年金額を段階的に調整すべきである。例えば、当面、年収600万円までは遺族厚生年金を100%支給し、それ以上の年収については、段階的に年金額を減額し、年収850万円以上の場合に遺族年金を停止する仕組みとする。また、適用認定は、毎年の年収を基に行うべきである。(大山・小島・山口)
生計維持要件の850万円は高すぎるのではないか。(堀、大澤)
遺族年金の受給権は、被保険者等の死亡時のワンポイントでの生計維持関係により判定しているが、認定基準以上の収入がある場合でも受給権を与えた上で支給停止扱いとしてはどうか。(山崎)
(4) 離婚時の年金分割
離婚時の年金分割の具体的な在り方をどのように考えるか。
【離婚時の年金受給権分割を実施すべきとする意見】
離婚した妻自身の年金による生活保障は現状では不十分であり、老齢厚生年金の分割を実施すべき。年金分割制度の導入は、離婚を促進するという意見もあるが、むしろ年金による生活保障を受けられなくなるために離婚したいのに離婚できないという現行制度の問題を解決するのではないか。(堀)
夫の老齢厚生年金の受給権が発生していない時の離婚についても、分割を認めるのが望ましい。(堀)
本来は婚姻期間中から年金権を分割すべきだが、仮にそれが直ちには困難であるとすれば、そこに至る当面の措置として離婚時の年金受給権の分割が考えられる。(山崎)

【離婚時の年金受給権分割の仕組みについての意見】
分割の有無、分割割合等については、夫婦の合意により分割。合意が得られない場合は、裁判所の審判等によって分割。(堀)
分割は法改正後の離婚に限るが、分割の対象となる年金受給権は法改正前の婚姻期間を含めるべき。(堀)
短期間の婚姻及び若年者同士の離婚についても分割を認めるべき。(堀)
事実婚についても、遺族年金受給が認められる事実婚に限り、かつ、事実婚関係の明確な証明が得られた期間についてのみ、分割を認めるべきではないか。(堀)
共働き夫婦についても分割を認めるべき。(堀)

【年金権分割は慎重に検討すべきとする意見】
夫婦間の年金受給権の分割は、家族形態や世帯の資産形成、離婚の形式にも関わる問題でもあるから、個別の事情を考慮する必要があり、慎重に検討する必要がある。また、厚生年金基金における実務対応が可能であるか等も含めて検討する必要がある。(井手・岡本・矢野)

【婚姻継続中の夫婦の年金分割も可能とすべきとする意見】
婚姻継続中の夫婦の年金分割についても、第3号被保険者問題の解決策としてだけではなく、2号ー2号の年金分割も可能とすべきではないか。(井手)
離婚の場合だけの年金分割は、中立性の観点から問題。(大澤)
本来は婚姻期間中から年金権を分割すべきだが、仮にそれが直ちには困難であるとすれば、そこに至る当面の措置として離婚時の年金受給権の分割が考えられる。<再掲>(山崎)

【婚姻継続中の夫婦の年金分割には問題があるとする意見】
婚姻継続中の分割は、問題が多い。(堀)

【第3号被保険者制度の見直しにおける年金権分割案との関係を明らかにすべきとの意見】
夫婦間の年金権を分割する方式の修正案(A−2案)である老齢年金の受給権発生時点で強制的に分割する方式と、離婚時の年金受給権分割制度として保険料納付記録の分割を選択する方式との関係について整理すべき。(大山・小島・山口)

検討項目 論点 委員意見
8. 国民年金保険料の徴収
国民年金保険料について、どのように収納対策の強化に努めていくか。
【国民の年金に対する不信感を払拭することが必要とする意見】
年金に入っていなければ損だということを分かってもらうことが必要。(近藤)
入らないと自分が損をするということを強調して勧誘していくべき。また、そういう魅力ある制度にしなければならない。(若杉)
世代間、世代内の不公平を解消することが何より効果がある。既に相当程度の事務費をかけており、さらに納付督励策の事務コストを上乗せするのであれば、費用対効果を見た対策が必要。(井手)
第3号被保険者制度が第1号の拠出インセンティブを損なっているという問題を直視するべき。(大澤)

【保険料納付は国民の義務であるという立場から収納対策を強化すべきとする意見】
国民年金の悪質滞納者については、少なくとも国民健康保険並みの滞納処分を行うべき。あわせて、未納者については、個人年金・生命保険の保険料控除の適用を除外すべき。(山崎)
社会保険料と租税の一体的徴収を早期に実現するための検討を行うべき。(岡本・矢野)
督促を行っても納付しない者に対しては滞納処分を行うべき。また国民皆年金の下では保険料納付は国民の義務であること、義務を果たさない者に対してはペナルティーがあることを明確に教育するべき。(矢野)
徴収強化策として、国民健康保険証、パスポート、運転免許証等の取得・更新にあたっては国民年金保険料の納付実績等の提出を義務付けるべきである。(井手・岡本・矢野)
悪質な滞納者に対しては、滞納処分を行うべき。また、学校教育の場では、なぜ保険料を納めなければならないのか、明快な説明が求められる。(渡辺)
国民年金保険料の収納対策を強化することは、基礎年金制度維持のため極めて重要。しかし、基礎年金制度が空洞化し、破綻しているというのは、以下の理由により誇張にすぎる。ましてや、これら少数の者のために税方式化を唱えるのは、本末転倒ではないか。空洞化していること及び税方式化を唱えること自体が、未加入・未納問題を悪化させる要因になるのではないか。
(1) 基礎年金を支えるのは約7000万人の国民年金被保険者であり、このうち未加入・未納者は5〜6%にしかすぎない
(2) 現在、高齢者の95%前後は何らかの公的年金を受給している
(3) 現在、未加入・未納の者が一生涯そうであり続けるかは疑問である
(4) なお、保険料免除者を含めて空洞化を論ずる向きがあるが、負担能力のない者を保険料免除するのは当然である(堀)

【被保険者の能力に応じた保険料の賦課徴収を行うべきとする意見】
現実に負担能力のない又は低い者については、現在の免除の仕組みを見直す必要があるのではないか。(堀)

【保険料の時効の延長を検討するべきとする意見】
2年で時効となっている現行制度は、税と同様に5年の時効に改めるべき。(矢野)
2年間の時効は短すぎるのではないか。(杉山)

【年金についてのアドバイスを通じて保険料納付を促進していくべきとする意見】
定期的に「トータルライフチェック」を行うようなアドバイス・教育機能を用意し、納付の実績や将来の受給見込みなどを自己確認できる仕組みを通じて、保険料納付を促していくべき。(杉山)

検討項目 論点 委員意見
9. 被用者年金の一元化
被用者年金の一元化についてどう考えるか。
【被用者年金制度についての統合を早期に実施すべきとする意見】
公的年金制度の安定化と公平化を図るため、被用者年金(国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済及び厚生年金)の統合を早期に実施すべきである。(井手・岡本・矢野)
被用者年金の一元化については、2001年2月の「公的年金制度の一元化に関する懇談会」報告、及び同年3月の閣議決定(国共済と地共済の財政単位の一元化推進、及び被用者年金制度の財政単位の一元化についての検討等)に基づき、関係者の合意をはかりつつ、一元化に向けて推進をはかる。(小島)

検討項目 論点 委員意見
10. 福祉施設等
福祉施設等についてどう考えるか。
【年金住宅融資及び大規模年金保養基地は廃止すべきとする意見】
年金住宅融資は廃止すべき。大規模年金保養基地(グリーンピア)は、「特殊法人等整理合理化計画」(閣議決定)のとおり平成17年度までにすべての施設を売却・撤退すべき。(井手・岡本・矢野)

【被保険者還元の新たな施策については慎重であるべきとする意見】
「特殊法人等整理合理化計画」は特殊法人等の業務の廃止・縮小が原則であり、その趣旨を超えて被保険者還元の新たな仕組みを創設することについては、慎重であるべき。(翁)

【被保険者への還元施策等に賛成する意見】
長期保険の年金制度からのメリットが少ないことが特に若い世代の年金制度への無関心や未加入・未納問題を生んでいるとすると、年金制度のメリットを示し、年金制度の理解を深めるための施策はあってもよいのではないか。(堀)
被保険者へのバリアフリー対応の住宅融資や自己啓発費用の融資、さらに年金受給者を対象にしたリバースモーゲージ制度を検討すべき。(小島)

検討項目 論点 委員意見
11. 企業年金等
企業年金は、公的年金を補完して、多様化したニーズに対応する役割を果たしており、それぞれの役割を踏まえ、公的年金を土台として、両者を組み合わせて老後の収入を確保するという位置付けについてどう考えるか。
【公的年金の役割を再考すべきとする意見】
年金資金の株式運用によるメリットと公的主体による資金運用のデメリットを考えれば、私的年金の割合を増やすべき。公的な賦課方式部分を減らし、私的な部分を拡充することで、(1)人口構成の変化に弱い賦課方式の問題を緩和する効果、(2)自己責任を重視した年金を一部導入できる効果、(3)公的年金の運用額が金融市場の規模に比べて大きすぎるといった問題の一部解消が期待される。2階部分を薄くしていき、税制上の措置等により、既存の確定拠出年金をふくらませていく方向が望ましい。(翁)
公的年金、企業年金、個人年金のバランスをもう一度考えることが必要。公的年金の代替率は高すぎるので、30%程度に引き下げていくべき。自助(個人年金)の役割が限定的である点は再検討する必要がある。(若杉)
老後の生活費のすべてをカバーするような公的年金の給付設計を行うのではなく、私的年金等の役割を一層高めていくべきである。(井手・岡本・矢野)
公的年金を取り巻く客観的状況を考えると、今後は、国民一人ひとりが自立・自助の精神に立脚して現役時代に老後の準備をすることを社会の規範とすべき。(岡本・矢野)

【私的年金の基盤整備が重要とする意見】
自助共助に対する政策上のインセンティブ、とりわけ私的年金に対する税制上の支援措置を充実する必要がある。(井手・岡本・矢野)
公的年金の改革と合わせ、より信頼の置ける企業年金制度とするよう、多様化する企業・従業員の要望への対応を含め、その制度の普及策について柔軟に検討する必要がある。(近藤)

【公的年金の役割の再考には慎重な意見】
社会保障給付を切り下げても、私的負担に振り替えられるだけである。(大山・山口・向山)
公的年金の役割縮小は、階層と性別の格差を拡大する。イギリスの1986年サッチャー年金改革は、公的年金の所得比例部分の給付条件を引き下げるとともに、個人年金や企業年金の加入者が公的年金から適用除外するための条件を大幅に緩和したが、その結果、給付の点で以前より不利にされた公的年金に「取り残された」人は、どちらかといえば恵まれないブルーカラー労働者やとりわけ女性だった。(大澤)

【公的年金の役割を明示することが必要とする意見】
年金が保証するのはここまでだと若い世代に情報提供したほうがいい。足りない分は自助努力や市民間の支えあい(共助)で用意することができる。そのための環境整備も必要。(杉山)
厚生年金基金制度について見直すべき点はあるか。
【免除保険料率の凍結解除を行うべきとする意見】
厚生年金基金の財政の健全化を確保するため、免除保険料率引き上げ凍結の解除が急がれる。(翁、渡辺)
免除保険料率引上げの凍結解除をし、将来の免除保険料率には、予定利率の引下げ・死亡率の改善・給付の引下げ分を反映させるべき。(堀)
凍結解除に伴う過去期間に係る負担増は、自己責任の下に財政健全化を図ることが原則である。その上で、基金責任とは言えない2004年制度改正によって負担が増加する部分を免除保険料率等で調整することを検討することとすべきである。(井手・岡本・矢野)
免除保険料の凍結解除は厚生年金本体の保険料の引上げを前提とするのではなく、給付抑制などの見直しとともに検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
免除保険料、最低責任準備金の凍結解除と、免除保険料の算定基礎の見直し、特に予定利率の適切な設定(すなわち現在の5.5%からの引き下げ)については、厚生年金基金財政の健全化、受給権保護の観点から大変重要である。(近藤)

【免除保険料率の上下限を見直すべきとする意見】
免除保険料の上下限を撤廃するか、少なくとも広げるべき。(渡辺)
免除保険料の上下限を撤廃するべき。(翁、堀)
免除保険料率の上下限(2.4%〜3.0%)についても撤廃し、個別化を徹底すべきである。(井手・岡本・矢野)

【最低責任準備金の見直しに当たっては、現行との連続性に留意するべきとする意見】
最低責任準備金の見直しを行うのであれば、早期に代行返上を行う厚生年金基金との間で不公平な取り扱いが生じることのないように留意すべきである。(井手・岡本・矢野)

【基金解散時の特例措置は、自己責任や公平性、確実性に留意すべきとする意見】
いわゆる代行割れの厚生年金基金が解散の取扱においても、自己責任による財政健全化が必要である。その上で、分割納付、または、金額の特例を設けるためには、国民に対して納得のできる説明が必要となる。その場合、分割納付中に経営破綻等が生じる可能性等に対して、将来の返済が確実に行われるための措置が必要である。(井手・岡本・矢野)
きちんとした返済計画が担保されるのか、分割納付中に母体企業が倒産した場合、それを誰が保証するのかという問題もあり、検討が必要。(小島)
特例措置については、積立金を満たしている基金との間で不公平感が出てこないか。(小島)

【代行制度をやめるべきとする意見】
代行制度はやめて、資金を厚生年金本体に戻すべきである。(小島)

【厚生年金基金連合会は、財政規律と情報開示を徹底すべきとする意見】
厚生年金基金連合会については、財政規律と情報開示の徹底とともに、資産運用による不足が発生した場合の解消方法を明らかにすることが必要である。(井手・岡本・矢野)
確定給付企業年金制度について見直すべき点はあるか。
【ポータビリティを拡充するべきとする意見】
確定給付企業年金のポータビリティについては、厚生年金基金連合会による中途脱退者の通算制度の拡大、企業型・個人型確定拠出年金への資産移換といった形で、実現することが必要。(堀)
企業年金の通算が必要であり、厚基連で全体をカバーするべき。(翁、小島)
確定給付企業年金実施企業を離職・退職した従業員の脱退一時金、及び確定給付企業年金が終了した場合に分配される残余財産については、移換先を個々の確定確給付企業年金の他、確定拠出年金(企業型、個人型)とすることができるようにすること。また、厚生年金基金を実施する企業を離職・退職した従業員の脱退一時金のうち、加算部分を確定給付企業年金又は確定拠出年金に移換することができるようにすべきである。(井手・岡本・矢野)

【支払保証制度を導入すべきとする意見】
確定給付企業年金について支払保証制度を設ける必要があるのではないか。(堀、小島、近藤)

【支払保証制度を導入すべきではないとする意見】
受給権保護は、継続基準・非継続基準に基づく財政検証等を実施することで十分得られる。モラルハザードを惹起する支払保証制度は将来に渡って導入すべきではない。(井手・岡本・矢野)
支払保証については、設計を間違えるとコストが大きくなり、基金にも大きな負担となる。情報公開や早期是正措置の仕組みで健全性を確保すべき。(翁)

【本人拠出分の課税上の制限を撤廃すべきとする意見】
自助努力支援の観点から本人拠出分の課税上の制限を撤廃するべきである。(井手・岡本・矢野)
確定拠出年金制度について見直すべき点はあるか。
【確定拠出年金の拠出限度額の引上げを図るべきとする意見】
確定拠出年金の拠出限度額の引上げを検討すべき。(翁、井手・岡本・矢野、堀)

【確定拠出年金制度の見直しや要件の緩和を図るべきとの意見】
マッチング拠出を行うべきである。(井手・岡本・矢野、堀)
脱退一時金の受給要件の緩和を含め中途引出の容認をすべきである。(井手・岡本・矢野、堀)
第3号被保険者も制度の対象にすべきではないか。(堀)
加入資格に一定の資格を設ける場合や、掛金の設定方法に勤続年数に応じた率や額を認めるなど、設計上の制約を一層緩和すべきである。(井手・岡本・矢野)

【拠出限度額の引上げ等については慎重であるべきとする意見】
賃金の後払いである既存の企業年金を確定拠出に移行することには反対であり、拠出限度額の引き上げには慎重であるべき。(小島)
マッチング拠出を認めるべきではない。賃金の後払いのための事業主拠出に従業員が積み増すというのはどういうことか、従業員拠出は貯蓄か年金かの性格を明確にする必要がある。(小島)
企業年金等に係るその他の論点についてどう考えるか。
【特別法人税を廃止するべきとする意見】
現在課税が停止されている特別法人税については、廃止すべきである。(井手・岡本・矢野、小島)
特別法人税を廃止するべき。廃止には公的年金等控除の見直しが必要。(堀)

【給付減額についての制限を見直すべきとする意見】
給付減額の要件については、合意手続きの簡素化などの要件緩和について早期に見直しを行うべき。(井手・岡本・矢野)

【確定給付型年金と確定拠出年金を組み合わせるべきとする意見】
最適な制度は、一つの企業の中で、企業あるいは従業員のニーズにより、従業員一人ひとりが確定給付型年金と確定拠出年金の最適な組み合わせを選択できる制度である。確定拠出型年金の拠出限度を固定的に決めるのは望ましくない。(若杉)

【一時金として受給する場合についての意見】
年金として受給する場合と比べて課税が不公平なので、一時金として受給する場合の課税を、10〜15年の有期年金として受給する場合の課税と同じにすべきではないか。(堀)

【財政検証についての意見】
非継続基準の財政検証については、これまで数次にわたり弾力化が図れてきたが、今後の状況に応じ、現行の最低積立基準額が予定利率の低下に伴い顕著に増加する仕組みのあり方を検討する必要がある。(近藤)

【企業会計基準を修正すべきとする意見】
企業会計基準については、中長期的観点から運営される年金制度の実態を反映したものとなるよう早急に修正すべきである。特に厚生年金基金の代行部分について、上記1のように過去期間分、将来期間分とも免除保険料等で政府が手当てすることが明確にされた場合には、企業会計上、代行部分は退職給付債務の算定対象から除外すべきである。
(近藤)

検討項目 論点 委員意見
12. 年金改革と他の社会保障制度改革
他の社会保障制度などとの関係で、年金の給付と負担の水準をどうとらえるべきか。
【給付と負担の水準は総合的に考えるべきとする意見】
医療、介護、年金のトータルの組み合わせで給付を見ていくことも必要。(杉山)
給付水準の設定に当たっては、医療、福祉、税制との関連を含めた総合的な検討が必要。(山崎)
医療、介護等も含めた社会保障の保険料負担ならびに税負担が、負担可能な水準となるように抑制すべきである。また、社会保障制度全体での給付の重複の見直しを検討すべきである。(井手・岡本・矢野)
負担水準については、他の社会保険料や税負担全体を考慮することが必要。(堀)
公的年金以外の収入を含めて、高齢世代と現役世代の実質的な均衡が図られるように、給付と負担の水準を設定すべき。(山崎)
少子化対策や雇用対策、税制等の様々な施策と有機的に連携させて議論を進めるよう関係各所に働きかけていくことが必要。(翁)
医療・介護などの社会サービスを通ずる再分配が機能すれば、年金制度内の垂直的再分配は弱めていいのではないか。国庫負担による再分配に限定し、それを低所得者に集中することが効率的ではないか。(大澤)
社会保障制度審議会勧告(1995年)(社会保険料や租税といった公的負担が増大したとしても、社会保障制度が充実されるならば、個人負担、例えば、医療や社会福祉における利用者負担、民間保険の保険料、家族による扶養、介護、育児等の負担などや、福利厚生面での企業の負担等が軽減されることとなる。逆に公的負担を抑制すれば、個人負担や企業負担が増大する。)と同意見。(大澤)

【国民負担率の上昇を抑制すべきとする意見】
医療・介護等を含めた現在の社会保険料負担は既に現役世代、企業にとって相当重く、安易な社会保険料の引上げを行うことなく、国民負担率の上昇を極力抑制していく必要がある。(岡本・矢野)
(敬称略)


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