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 一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

1 一般事業主行動計画の策定に当たっての基本的な視点

(1)  労働者の仕事と子育ての両立の推進という視点
 子育てをする労働者が子育てに伴う喜びを実感しつつ、仕事と子育ての両立を図ることができるようにするという観点から、労働者のニーズを踏まえた次世代育成支援対策を実施することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である。

(2)  企業全体で取り組むという視点
 企業による次世代育成支援対策は、業務内容や業務体制の見直し等をも必要とするものであることから、企業全体での理解の下に取組を進めることが必要である。このため、経営者自らが、企業全体で次世代育成支援対策を積極的に実施するという基本的な考え方を明確にし、主導的に取り組んでいくことが必要である。

(3)  企業の実情を踏まえた取組の推進という視点
 子育てを行う労働者の多少、企業の業種又は構成割合の高い労働者の職種、雇用形態等の違い等により、仕事と子育ての両立支援策への具体的なニーズは企業によって様々であることが想定されることから、関係法令を遵守した上で、企業がその実情を踏まえ、効果的な取組を自主的に決定し進めていくことにより、社会全体の取組を進めることが必要である。

(4)  取組の効果という視点
 次世代育成支援対策を推進することは、将来的な労働力の再生産に寄与し、我が国の経済社会の持続的な発展や企業の競争力の向上に資するものであることを踏まえつつ、また、個々の企業にとっても、当該企業のイメージ・アップや優秀な人材の確保、定着等の具体的なメリットが期待できることを理解し、主体的に取り組むことが必要である。

(5)  社会全体による支援の視点
 次世代育成支援対策は、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、国及び地方公共団体はもとより、企業や地域社会を含めた社会全体で協力して取り組むべき課題であることから、様々な担い手の協働の下に対策を進めていくという視点が必要である。

(6)  地域における子育ての支援の視点
 各企業に雇用される労働者は、同時に地域社会の構成員であり、その地域における子育て支援の取組に積極的に参加することが期待されていることや、地域において、子育てしやすい環境づくりを進める中で各企業にも期待されている役割を踏まえた取組を推進することが必要である。

 一般事業主行動計画の計画期間
 一般事業主行動計画は、経済社会環境の変化や労働者のニーズ等を踏まえて策定される必要があり、計画期間内において、一定の目標が達成されることが望ましい。したがって、計画期間については、各企業の実情に応じて、次世代育成支援対策を効果的かつ適切に実施することができる期間とすることが必要であり、平成17年度から平成26年度の10年間をおおむね2年間から5年間までの範囲に区切り、計画を策定することが望ましい。

 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標

 一般事業主行動計画においては、各企業の実情を踏まえつつ、より一層労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な雇用環境の整備その他の次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標を定める必要がある。
 目標については、育児休業の男女別取得率等の制度の利用状況に関するもの、仕事と子育ての両立が図られるようにするための制度の導入に関するもの等の幅広い分野から企業の実情に応じた目標を設定すべきものであるが、可能な限り定量的な目標とする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましい。
 また、各企業における労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするための雇用環境の整備に関する取組の状況や課題を把握し、各企業の実情に応じ、必要な対策を実施していくことが重要であるが、この際、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長が定めた「両立指標に関する指針」を活用することも効果的であるとともに、「両立指標に関する指針」による評価の結果を目標として定めることも考えられる。

4 その他基本的事項

(1)  推進体制の整備
 一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施を実効あるものとするため、まず、管理職や人事労務管理担当者に対し、その趣旨を徹底することが必要であるとともに、子育てを行う労働者を含めたすべての関係労働者の理解を得ながら取り組んでいくことが重要である。このため、各企業における次世代育成支援対策の推進体制の整備を図ることが必要であり、その方策として次のような措置を講ずることが望ましい。
 次世代育成支援対策を効果的に推進するため、人事労務担当者、労働者の代表等を構成員とした一般事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施のための社内委員会の設置等
 次世代育成支援対策に関する管理職や労働者に対する研修・講習、情報提供等の実施
 仕事と子育ての両立等についての相談・情報提供を行う窓口の設置及び当該相談・情報提供等を適切に実施するための担当者の配置

(2)  労働者の意見の反映のための措置
 仕事と子育ての両立を図るための雇用環境の整備に対する労働者のニーズは様々であり、必要な雇用環境の整備を効果的に実施するためには、こうした労働者のニーズも踏まえることが重要である。このため、労働者や労働組合等に対するアンケート調査や意見聴取等の方法により、次世代育成支援対策に関する労働者の意見の反映について、企業の実情に応じて工夫することが必要である。

(3)  計画の周知
 策定した一般事業主行動計画に定めた目標の達成に向けて、企業全体で取り組むため、計画を企業内に周知し、企業全体で取組を推進することが重要である。
 このため、策定した一般事業主行動計画については、啓発資料の作成・配布、研修・講習の実施等により、労働者に対して周知を行うことが期待される。特に、次世代育成支援対策を企業全体で推進するという意識を浸透させるため、経営者の主導の下、管理職や人事労務管理担当者に対する周知を徹底することが期待される。
 なお、一般事業主行動計画に基づき次世代育成支援対策を実施する場合、労働者の労働時間その他の労働条件の変更を伴うなど一定の場合には、就業規則、労働協約等に明記することが必要である。

(4)  計画の実施状況の点検
 一般事業主行動計画の推進に当たっては、計画の実施状況を把握・点検し、その結果を踏まえて、その後の対策の実施や計画の見直し等に反映させることが期待される。

(5)  基準に適合する一般事業主の認定
 法第13条の基準に適合する一般事業主の認定及び法第14条第1項の表示の制度を活用することにより、子育てしながら働きやすい雇用環境の整備に取り組んでいることを外部に広く周知することが容易となり、その結果、企業イメージの向上及び優秀な人材の確保、定着等を通じ、企業経営にメリットを生じさせることが期待できる。したがって、一般事業主行動計画を実施し、当該計画に定めた目標を達成した場合等に、認定を申請することを念頭に置きつつ、計画の策定やこれに基づく措置の実施を行うことが望ましい。また、当該認定を受けることを希望する場合には、法第13条の厚生労働省令で定める基準を踏まえた一般事業主行動計画を策定することが必要である。

 一般事業主行動計画の内容に関する事項

 五の一般事業主行動計画の策定に関する基本的な事項を踏まえ、計画期間、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標並びに実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期を記載した一般事業主行動計画を策定する。
 計画の策定に当たっては、次世代育成支援対策として重要なものと考えられる次のような事項を踏まえ、各企業の実情に応じて、必要な事項をその内容に盛り込むことが望ましい。

1 雇用環境の整備に関する事項

(1) 子育てを行う労働者等の職業生活と家庭生活との両立を支援するための雇用環境の整備
 妊娠中及び出産後における配慮
 母性保護及び母性健康管理を適切かつ有効に実施するため、妊娠中及び出産後の労働者に対して、制度を積極的に周知するとともに、情報の提供、相談体制の整備等を実施する。
 産前産後休業後における原職又は原職相当職への復帰
 産前産後休業の取得をした労働者について、当該休業後に原職又は原職相当職に復帰させるため、業務内容や業務体制の見直し等を実施する。
 子どもの出生時における父親の休暇の取得の促進
 子育ての始まりの時期に親子の時間を大切にし、子どもを持つことに対する喜びを実感するとともに出産後の配偶者を支援するため、子どもが生まれて父親となる労働者について、例えば5日間程度の休暇を取得しやすい環境を整備する。具体的には、子どもが生まれる際に取得することができる休暇制度の創設や、子どもが生まれる際の年次有給休暇又は育児休業の取得促進を図る。
 より利用しやすい育児休業制度の実施
 より利用しやすい育児休業制度とするため、その雇用する労働者のニーズに配慮して、その期間、回数等について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)に規定する育児休業制度を上回る措置を実施する。
 育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境の整備
 育児休業を取得しやすく、また、育児休業後の就業が円滑に行われるような環境を整備し、育児休業の取得を希望する労働者について、その円滑な取得を促進するため、例えば、次に掲げる措置を実施する。
(ア)  育児休業に関する定めの周知等
 男性も育児休業を取得できることや、労働者の育児休業中における待遇及び育児休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項について、労働者に周知する。
(イ)  育児休業期間中の代替要員の確保等
 育児休業を取得する期間について当該労働者の業務を円滑に処理することができるよう、当該育児休業期間について当該業務を処理するための労働者の確保、業務内容や業務体制の見直し等を実施する。
(ウ)  育児休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等
 育児休業をしている労働者の希望に応じて、当該労働者の職業能力の開発及び向上等のための情報の提供、円滑な職場復帰のための講習、育児等に関する相談その他の援助を実施する。
(エ)  育児休業後における原職又は原職相当職への復帰
 育児休業をした労働者について、当該育児休業後に原職又は原職相当職に復帰させるため、業務内容や業務体制の見直し等を実施する。
 短時間勤務制度等の実施
 働き続けながら子育てを行う労働者が子育てのための時間を確保できるようにするため、小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる労働者のうち希望する者が利用できる制度として、次に掲げる措置のうち適切なものを実施する。
(ア) 短時間勤務制度の実施
(イ) フレックスタイム制の実施
(ウ) 始業又は終業の時刻の繰上げ又は繰下げの制度の実施
(エ) 所定労働時間を超えて労働させない制度の実施
 事業所内託児施設の設置及び運営
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる労働者が利用することができる事業所内託児施設の設置及び運営について、他の企業と共同で設置することも含め、検討を行い、実施する。
 子育てサービスの費用の援助の措置の実施
 労働者からの委任を受けてベビーシッターを手配し、当該ベビーシッターに係る費用を負担するなど、小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる労働者が子育てのためのサービスを利用する際に要する費用の援助を行う。
 子どもの看護のための休暇の措置の実施
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる労働者の子どもが病気等の際に、その子どもの看護のために1年について5日以上の休暇を取得できる制度を導入する。
 勤務地、担当業務等の限定制度の実施
 希望する労働者に対して、子育てをしやすくすることを目的として、勤務地、担当業務、労働時間等を限定する制度を講ずる。
 その他子育てを行う労働者に配慮した措置の実施
 アからコまでに掲げるもののほか、子育てを行う労働者の社宅への入居に関する配慮、子育てのために必要な費用の貸付けの実施、子どもの検診や予防接種のための休暇制度の実施、子どもの学校行事への参加のための休暇制度の導入その他の子育てをしながら働く労働者に配慮した措置を講ずる。
 諸制度の周知
 育児休業、時間外労働の制限及び深夜業の制限の育児・介護休業法に基づく労働者の権利や、休業期間中の育児休業給付の支給等の経済的な支援措置などの関係法令に定める諸制度について、広報誌に記載する等、手法に創意工夫を凝らし労働者に対して積極的に周知する。
 育児等退職者についての再雇用特別措置等の実施
 出産や子育てのために退職し、退職の際、将来、再就職を希望する旨を申し出た者を優先的に採用する再雇用特別措置や母子家庭の母の就業促進のための措置を講ずる。

(2) 働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備
 所定外労働の削減
 所定外労働は、本来、例外的な場合にのみ行われるものであるという認識を深め、「ノー残業デー」や「ノー残業ウィーク」の導入・拡充、フレックスタイム制や変形労働時間制の活用、時間外労働協定における延長時間の短縮等、所定外労働を削減するための方策を検討し、実施する。企業内に安易に残業するという意識がある場合には、それを改善するための意識啓発等の 取組を行う。
 年次有給休暇の取得の促進
 年次有給休暇の取得を促進するため、年次有給休暇に対する意識の改革を図り、計画的付与制度を活用するとともに、労働者の取得希望時期をあらかじめ聴取し、年間の取得計画を作成すること等職場における年次有給休暇の取得を容易にするための措置を講ずる。
 多様就業型ワークシェアリングの実施
 短時間勤務や隔日勤務を導入すること等多様な働き方の選択肢を拡大する多様就業型ワークシェアリングの導入に取り組む。
 テレワークの導入
 テレワーク(情報通信技術(IT)を利用した場所・時間にとらわれない働き方)については、仕事と子育ての両立のしやすい働き方である点に着目し、その導入の推進を図る。
 職場優先の意識や固定的な性別役割分担意識等の是正のための取組
 職場優先の意識や固定的な性別役割分担意識等の働きやすい環境を阻害する職場における慣行その他の諸要因を積極的に解消するため、管理職を含めたその雇用する労働者すべてを対象として、情報提供、研修等による意識啓発を行う。

2 その他の次世代育成支援対策に関する事項
(1)  子育てバリアフリー
 多数の来訪者が利用する社屋等において、子どもを連れた人が安心して利用できるよう、託児室・授乳コーナーや乳幼児と一緒に安心して利用できるトイレの設置等の整備を行う。
 また、商店街の空き店舗等を活用して、託児施設等各種の子育て支援サービスの場を提供する。

(2)  子ども・子育てに関する地域貢献活動
 子ども・子育てに関する活動の支援
 地域において、子どもの健全育成、疾患・障害を持つ子どもの支援、子育て家庭の支援等を行うNPOや地域団体等について、その活動への労働者の積極的な参加を支援する。
 子どもの体験活動等の支援
 子どもの多様な体験活動等の機会の充実を図るため、職場見学を実施すること、子どもが参加する地域の行事・活動に企業内施設や社有地を提供すること、各種学習会等の講師、ボランティアリーダー等として社員を派遣すること、子どもの体験活動を行うNPO等に対する支援を行うこと等に取り組む。
 子どもを交通事故から守る活動の実施や支援
 子どもを交通事故から守るため、労働者を地域の交通安全活動に積極的に参加させる等、当該活動を支援するとともに、業務に使用する自動車の運転者に対する交通安全教育、チャイルドシートの貸出しによる再利用活動等、企業内における交通の安全に必要な措置を実施する。
 安全で安心して子どもを育てられる環境の整備
 子どもを安全な環境で安心して育てることができるよう、地域住民等の自主的な防犯活動や少年非行防止、立ち直り支援のためのボランティア活動等への労働者の積極的な参加を支援する。

(3)  企業内における「子ども参観日」の実施
 保護者でもある労働者の子どもとふれあう機会を充実させ、心豊かな子どもを育むため、子どもが保護者の働いているところを実際に見ることができる「子ども参観日」を実施する。

(4)  企業内における学習機会の提供等による家庭の教育力の向上
 保護者でもある労働者は、子どもとの交流の時間が確保しにくい状況にあるとともに、家庭教育に関する学習機会への参加が難しい状況にあるため、企業内において、家庭教育講座等を地域の教育委員会やNPO等と連携して開設するなどの取組により、家庭教育への理解と参画の促進を図る。

(5)  若年者の安定就労や自立した生活の促進
 次代の社会を担う若年者の能力開発や適職選択による安定就労を推進するため、若年者に対するインターンシップ等の就業体験機会の提供、トライアル雇用等を通じた雇入れ又は職業訓練の推進を行う。

 特定事業主行動計画の策定に関する基本的な事項

1 特定事業主行動計画の策定に当たっての基本的な視点

(1)  職員の仕事と子育ての両立の推進という視点
 子育てをする職員が子育てに伴う喜びを実感しつつ、仕事と子育ての両立を図ることができるようにするという観点から、職員のニーズを踏まえた次世代育成支援対策を実施することが必要であり、特に、子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取組が重要である。

(2)  機関全体で取り組むという視点
 特定事業主による次世代育成支援対策は、業務内容や業務体制の見直し等をも必要とするものであることから、それぞれの機関全体での理解の下に取組を進めることが必要である。このため、大臣や地方公共団体の長等の各機関の長を含め、機関全体で次世代育成支援対策を積極的に実施するという基本的な考え方を明確にし、主導的に取り組んでいくことが必要である。

(3)  機関の実情を踏まえた取組の推進という視点
 各機関においては、その機関の任務、所在する地域等により、勤務環境や子育てを取り巻く環境は異なることを踏まえつつ、その機関の実情に応じて効果的な次世代育成支援対策に取り組むことが必要である。

(4)  取組の効果という視点
 次世代育成支援対策を推進することは、将来的な労働力の再生産に寄与することを踏まえつつ、また、当該機関のイメージアップや優秀な人材の確保、定着等の具体的なメリットが期待できることを理解し、主体的に取り組むことが必要である。

(5)  社会全体による支援の視点
 次世代育成支援対策は、家庭を基本としつつも、社会全体で協力して取り組むべき課題であることから、様々な担い手の協働の下に対策を進めていくことが必要であり、特に、職員の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするための環境の整備が強く求められている中で、特定事業主においては、率先して、積極的な取組を推進することが必要である。

(6)  地域における子育ての支援の観点
 各機関に勤務する職員は、同時に地域社会の構成員であり、その地域における子育て支援の取組に積極的に参加することが期待されていることや、地域において、子育てしやすい環境づくりを進める中で各機関にも期待されている役割を踏まえた取組を推進することが必要である。

 特定事業主行動計画の計画期間
 特定事業主行動計画は、経済社会環境の変化や職員のニーズ等を踏まえて策定される必要があり、計画期間内において、一定の目標が達成されることが望ましい。したがって、計画期間については、各特定事業主の実情に応じて設定することができるものの、平成17年度から平成26年度の10年間のうち、おおむね5年間を1期とし、おおむね3年ごとに見直すことが望ましい。

 次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標
 特定事業主行動計画においては、各特定事業主の実情を踏まえつつ、より一層職員の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために必要な勤務環境の整備その他の次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標を定めることが必要である。
 目標については、育児休業の男女別取得率等の制度の利用状況に関するもの、仕事と子育ての両立が図られるようにするための取組に関するもの等の幅広い分野から各機関の実情に応じた目標を設定すべきものであるが、可能な限り定量的な目標とする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましい。

4 特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施に係る手続

(1)  推進体制の整備
 特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施を実効あるものとするため、まず、管理職や人事担当者に対し、その趣旨を徹底することが必要であるとともに、子育てを行う職員を含めたすべての職員の理解を得ながら取り組んでいくことが重要である。このため、各機関における次世代育成支援対策の推進体制の整備を図ることが必要であり、その方策として次のような措置を講ずることが必要である。
 次世代育成支援対策を効果的に推進するため、各部局における人事担当者等を構成員とした特定事業主行動計画の策定やこれに基づく措置の実施のための委員会の設置等
 次世代育成支援対策に関する管理職や職員に対する研修・講習、情報提供等の実施
 仕事と子育ての両立等についての相談・情報提供を行う窓口の設置及び当該相談・情報提供等を適切に実施するための担当者の配置

(2)  職員の意見の反映のための措置
 仕事と子育ての両立を図るための勤務環境の整備に対する職員のニーズは様々であり、必要な勤務環境の整備を効果的に実施するためには、こうした職員のニーズも踏まえることが重要である。このため、職員に対するアンケート調査や意見聴取等の方法により、次世代育成支援対策に関する職員の意見の反映について、機関の実情に応じて工夫することが必要である。

(3)  計画の公表
 法第19条第3項では、特定事業主は、特定事業主行動計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならないとされていることから、広報誌やホームページへの掲載等により適時かつ適切に公表することが必要である。

(4)  計画の周知
 策定した特定事業主行動計画に定めた目標の達成に向けて、機関全体で取り組むため、計画を機関内に周知し、機関全体で取組を推進することが重要である。
 このため、策定した特定事業主行動計画については、啓発資料の作成・配布、研修・講習の実施等により、職員に対して周知を行うことが期待される。特に、次世代育成支援対策を機関全体で推進するという意識を浸透させるため、大臣や地方公共団体の長等の各機関の長等の主導の下、管理職や人事担当者に対する周知を徹底することが期待される。

(5)  計画の実施状況の点検
 特定事業主行動計画の推進に当たっては、計画の実施状況を一括して把握・点検できる体制を整えた上で、各年度において、把握等をした結果を踏まえて、その後の対策の実施や計画の見直し等に反映させることが必要である。

 特定事業主行動計画の内容に関する事項

 七の特定事業主行動計画の策定に関する基本的な事項を踏まえ、計画期間、次世代育成支援対策の実施により達成しようとする目標並びに実施しようとする次世代育成支援対策の内容及びその実施時期を記載した特定事業主行動計画を策定する。
 計画の策定に当たっては、次世代育成支援対策として重要なものと考えられる次のような事項を踏まえ、各特定事業主の実情に応じて、必要な事項をその内容に盛り込むことが望ましい。

1 勤務環境の整備に関する事項

(1)  妊娠中及び出産後における配慮
 母性保護及び母性健康管理を適切かつ有効に実施するため、妊娠中及び出産後の職員に対して、次の制度等について周知する。
 危険有害業務の就業制限
 深夜勤務及び時間外勤務の制限
 健康診査及び保健指導のために勤務しないことの承認
 業務軽減
 通勤緩和
 また、あわせて、出産費用の給付等の経済的な支援措置についても、職員に対して周知する。

(2)  子どもの出生時における父親の休暇の取得の促進
 子育ての始まりの時期に親子の時間を大切にし、子どもを持つことに対する喜びを実感するとともに出産後の配偶者を支援するため、子どもが生まれて父親となる職員について、配偶者が出産するときの特別休暇制度について周知するとともに、例えば5日間程度の年次休暇等の取得を促進する。     また、このような休暇を取得することについて、職場における理解が得られるための環境づくりを行う。

(3)  育児休業等を取得しやすい環境の整備等
 育児休業や部分休業の取得を希望する職員について、その円滑な取得の促進等を図るため、次に掲げる措置を実施する。
 育児休業及び部分休業制度等の周知
 男性も育児休業を取得できることや、育児休業等の制度の趣旨及び内容や休業期間中の育児休業手当金の支給等の経済的な支援措置について、職員に対して周知する。
 育児休業等経験者に関する情報提供
 育児休業及び部分休業を実際に取得した職員の体験談をまとめた冊子の配布等を行うことにより、育児休業等を取得することのメリットを周知するとともに、育児休業等の取得を希望する職員の不安の軽減を図る。
 育児休業及び部分休業を取得しやすい雰囲気の醸成
 育児休業及び部分休業に対する職場の意識改革を進め、育児休業等を取得しやすい雰囲気を醸成する。
 育児休業を取得した職員の円滑な職場復帰の支援
 育児休業を取得している職員が円滑に職場に復帰できるよう、当該機関等が発刊している広報誌等の送付を行うとともに、職場復帰時に研修その他の必要な支援を行う。
 育児休業に伴う任期付採用及び臨時的任用制度の活用
 職員から育児休業の請求があった場合に、部内の人員配置等によって当該職員の業務を処理することが難しいときは、任期付採用及び臨時的任用制度の活用を図る。
 公共的施設における雇入れの促進等
 母子及び寡婦福祉法の規定に基づき、母子家庭の母等の公共的施設における雇入れの促進等を図る。

(4)  庁内託児施設の設置
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる職員が利用することができる庁内託児施設の設置について検討を行った上で、適切な対応を図る。

(5)  超過勤務の縮減
 超過勤務は、本来、公務のための臨時又は緊急の必要がある場合に行われる勤務であるという認識を深め、一層の縮減に向けた取組を進めていく必要があり、次に掲げる措置を実施する。
 小学校就学の始期に達するまでの子どものいる職員の深夜勤務及び超過勤務の制限の制度の周知
 小学校就学の始期に達するまでの子どもを育てる職員に対して、職業生活と家庭生活の両立を支援するための深夜勤務及び超過勤務の制限の制度について周知する。
 一斉定時退庁日等の実施
 国においては、既に「国家公務員の労働時間短縮対策について」(平成4年人事管理運営協議会決定)に基づき、全省庁一斉定時退庁日が実施されているところであるが、国又は地方公共団体を問わず、各機関の実情に応じて、独自に定時退庁日を設定する等の更なる取組を行う。
 事務の簡素合理化の推進
 事務の簡素合理化について、業務量そのものの見直し、OA化の計画的な推進による事務の効率化、外部委託による事務の簡素化、事務処理体制の見直しによる適正な人員の配置及び年間を通じた業務量の平準化による更なる取組を推進する。
 超過勤務の縮減のための意識啓発等
 超過勤務の縮減のための取組の重要性について、管理職を始めとする職員全体で更に認識を深めるとともに、安易に超過勤務が行われることのないよう意識啓発等の取組を行う。

(6)  休暇の取得の促進
 休暇の取得を促進するため、職員の休暇に対する意識の改革を図るとともに、職場における休暇の取得を容易にするため、次に掲げる措置を実施する。
 年次休暇の取得の促進
 計画的な年次休暇の取得促進を図るため、おおむね四半期毎の年次休暇の計画表の作成及び職場の業務予定の職員への早期周知を図る等、年次休暇を取りやすい雰囲気の醸成や環境整備を行う。
 また、人事担当部局においては、職員の年次休暇の取得状況を定期的に把握し、取得率が低い部署については、その管理職等からのヒアリングや指導を行う等の必要な取組を行う。
 連続休暇等の取得の促進
 ゴールデンウィーク期間、夏季(7月~9月)等における連続休暇、職員やその家族の誕生日等記念日における年次休暇、学校行事への参加等のための年次休暇等の取得の促進を図る。
 子どもの看護を行う等のための特別休暇の取得の促進
 子どもの看護を行う等のための特別休暇について、職員に周知を図るとともに、当該特別休暇の取得を希望する職員が、円滑に取得できる環境を整備する。

(7)  転勤についての配慮
 官署を異にする異動を命ずる場合において、それにより子どもの養育を行うことが困難となる職員がいるときは、その状況に配慮する。

(8)  宿舎の貸与における配慮
 子育てをしている職員に対して、仕事と子育ての両立にも配慮した宿舎の貸与に努める。

(9)  職場優先の環境や固定的な性別役割分担意識等の是正のための取組
 職場優先の環境や固定的な性別役割分担意識等の働きやすい環境を阻害する職場における慣行その他の諸要因を解消するため、管理職を含めた職員全員を対象として、情報提供、研修等による意識啓発を行う。

2 その他の次世代育成支援対策に関する事項

(1)  子育てバリアフリー
 外部からの来庁者の多い庁舎において、子どもを連れた人が安心して来庁できるよう、乳幼児と一緒に安心して利用できるトイレやベビーベッドの設置等を適切に行う。

(2) 子ども・子育てに関する地域貢献活動
 子ども・子育てに関する活動の支援
 地域において、子どもの健全育成、疾患・障害を持つ子どもの支援、子育て家庭の支援等を行うNPOや地域団体等について、その活動への職員の積極的な参加を支援する。
 子どもの体験活動等の支援
 子どもの多様な体験活動等の機会の充実を図るため、職場見学を実施すること、子どもが参加する地域の行事・活動に庁舎内施設やその敷地を提供すること、各種学習会等の講師、ボランティアリーダー等として職員の積極的な参加を支援すること等に取り組む。
 子どもを交通事故から守る活動の実施や支援
 子どもを交通事故から守るため、地域の交通安全活動への職員の積極的な参加を支援するとともに、公務に関し自動車の運転を行う者に対する交通安全教育等の交通安全に必要な措置を実施する。
 安全で安心して子どもを育てられる環境の整備
 子どもを安全な環境で安心して育てることができるよう、地域住民等の自主的な防犯活動や少年非行防止、立ち直り支援の活動等への職員の積極的な参加を支援する。

(3)  子どもとふれあう機会の充実
 保護者でもある職員の子どもとふれあう機会を充実させ、心豊かな子どもを育むため、子どもが保護者の働いているところを実際に見ることができる「子ども参観日」を実施する。
 また、各機関におけるレクリエーション活動の実施に当たっては、当該職員のみだけではなく、子どもを含めた家族全員が参加できるように配慮する。

(4)  学習機会の提供等による家庭の教育力の向上
 保護者でもある職員は、子どもとの交流の時間が確保しにくい状況にあるとともに、家庭教育に関する学習機会への参加が難しい状況にあるため、各機関内において、家庭教育講座等を開設するなどの取組により、家庭教育への理解と参画の促進を図る。


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