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給付と負担の在り方に関する意見の整理(案)

論点 委員意見
(1)少子化の進行等の社会経済情勢の変化を踏まえて給付と負担を見直す方法について、どのように考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問2
(資料6 P14)
世論調査 Q11
(資料7 P35〜37)
〔資料5−2 P1〜4 参照〕
【給付水準を維持するべきとする意見】
モデル年金の給付水準をもらえる人ばかりではなく、また、高齢者の医療費負担も増えていく。給付水準を引き下げるべきではない。基礎年金を税方式化すれば、将来的にも15%程度の保険料率で今の給付水準を維持できる。(小島)
段階的に保険料の引上げと給付の引下げを行うという今回示された案では、若い世代の不信感が強くなる。賃金が上がらず、自助努力で老後に備えるだけのゆとりがないので、あらかじめ給付水準が決まっていることが必要。(山口)
保険料固定方式の問題は、自分の受給する年金額が裁定時まで分からないことだ。(大山)

【保険料を固定することに賛成する意見】
保険料固定方式については賛成。(矢野・神代・翁)
保険料固定方式については、負担に対する先の見えない不安から解放されるので賛成。(杉山)
現在の厳しい経済情勢の下で、保険料引上げについて国民の合意を得、かつ、保険料引上げについての政治的リスクを避けるために、将来の段階保険料を国民に明示し、かつ、それを固定するという約束をするのは止むを得ない選択。(堀)
制度が持続的なものとなるためには国の負担力が重要であるため、給付と負担の見直しについては、負担を軸に考えるべきである。(岡本)
スウェーデン改革のいくつかの要素のうち、保険料を固定して社会経済情勢の大きな変化に対しては自動的に給付水準を調整するという考え方は、我が国にも応用できるのではないか。(近藤)
制度の見直しのたびに給付の抑制と負担の増加の繰り返しで、制度に対する国民の信頼は揺らぎ始めている。(渡辺)

【保険料固定方式を採用した上で、さらに講ずべきことを検討するべきとする意見】
給付乗率の引下げ、受給開始年齢の引上げなど、高年齢層の世代も負担を分かち合う仕組みを考えるべきである。(翁)
世代間格差の是正のため、給付乗率、モデル年金の見直し、高額所得者への給付制限等についても議論する必要があり、それぞれの財政への影響を示すべきである。(岡本・矢野)
保険料固定方式の採用にあたっては、世代間の不均衡を是正するために、給付面と負担面の双方での見直しを急ぐべき。(山崎)
(2)将来の最終的な保険料水準についてどう考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問3、7
(資料6 P15、19)
世論調査 Q10
(資料7 P30〜34)
〔資料5−2 P5〜6 参照〕
【20%程度にすべきとする意見】
企業にとっては、法定福利費の負担が大きくなっているため、保険料率はできるだけ抑えるべきであるが、「方向性と論点」に記載されている保険料率20%は参考にするべきである。(神代)
最終保険料率は20%程度が許容できる限度として、給付水準を維持するための方策について検討する必要がある。(大山)
将来の保険料水準は、前回改正で設定された20%程度。その程度であれば、諸外国との比較でみても許容されるべき。(山崎)

【20%を下回る水準とすべきとする意見】
負担の水準については、国民負担率全体を考えることが必要。高齢化が加速する中で年金以外の社会保障に要する負担の増加も予想されるので、公的年金の最終保険料率は20%より大幅に低くするべきである。(岡本・矢野)
医療保険や介護保険の負担を考えると、年金の最終保険料20%は大きすぎるのではないか。(翁)

【20%を下回る水準でも給付水準の維持は可能とする意見】
空洞化の解消、厚生年金の適用拡大、さらに遺族年金の見直し等を行えば、最終保険料を20%まで上げなくても今の給付水準を維持できる。また、基礎年金を税方式化すれば、15%程度の保険料率で十分給付水準の維持は可能。(小島)
(3)保険料の引上げ方についてどう考えるか。
【保険料の引上げは不可欠とする意見】
少子高齢化が大幅に進む中で、公的年金制度を将来も維持するためには、保険料引上げの凍結解除と段階的引上げは必要不可欠。(堀)
保険料の引上げの凍結は、財政規律という観点からは好ましくない。世代間の負担の公平を考え、できるだけ早く最終保険料率に到達させるべき。西欧諸国の保険料水準と比較すると、我が国はまだ低い段階にある。引上げを怠ると、高齢化のピーク、あるいはその後の保険料水準が極めて高くなる。(近藤)

【保険料引上げ計画を前倒しすべきとする意見】
保険料の引上げ計画を前倒しするべき。少なくとも前回改正での保険料凍結の影響は早急に解消すべき。前倒しにあたっては、年齢別の保険料引上げ計画もありうるのではないか。(山崎)
最終的な保険料率への引上げは、次世代への負担をできるだけ軽くするためにも、2025年といわず、到達時期を前倒しする方向で検討を進めていく方がよいと思う。(杉山)
保険料の引上げが凍結され、計画より5年遅れている状況である。少しでも早く最終保険料に到達すべき。(近藤)
保険料の小刻みな引上げは、政治経済情勢によって実現できなくなる可能性があり、最終保険料を低くするためにも、保険料を早めに引き上げるべきである。(翁)

【段階的な保険料の引上げは問題があるとする意見】
保険料を長期にわたり段階的に引き上げ、時間をかけて給付調整をする場合、将来世代に負担増と給付削減というしわ寄せが生じる。(岡本・矢野)

【安易に保険料を引き上げるべきでないとする意見】
企業の活力を奪い、経済の活性化を阻害し、さらには企業の雇用維持努力に棹さすことになるので、安易に保険料負担を引き上げるべきではない。(矢野)
(4)マクロ経済スライドを行うときのスライド調整率について、どう考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問4、5
(資料6 P16〜17)
〔資料5−2 P7 参照〕
【マクロ経済スライドが適当であるとする意見】
手取り総賃金という国全体の経済力(=保険料負担能力)の伸びに見合ったスライドを行うというもので、負担者の観点からは理論的に正当化し得る。(堀)

【実績準拠法によるべきとする意見】
将来予測の変動によって変わる将来見通し平均化法よりも、実績準拠法が望ましい。(堀)

【将来見通し平均化法によるべきとする意見】
給付面に関しては、将来見通し平均化法などにより、水準適正化を前倒しするべき。(山崎)
実績準拠法では2025年以降に給付の調整が集中するため、現役世代の納得を得ることは困難。少子化を見通して早めに給付水準を調整していくべき。(矢野)

【長寿化などへの対応の必要性を指摘する意見】
既裁定年金について、寿命の伸びを給付の調整に反映するような仕組みが組み込めないか。(近藤)
寿命が非常に伸びた場合には、スウェーデン方式のような考え方を入れるかどうか、議論するべきである。(神代)
給付スライドについては、少子高齢化、運用利回りの低下などのリスクを自動的に給付額に反映できる仕組みとするべきである。(翁)
(5)給付水準の下限について、どう考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問6
(資料6 P18)
【給付水準が大幅に下がった場合は保険料も見直すべきとする意見】
将来の給付水準が定まらないため、老後の生活不安をもたらすおそれがある。給付水準があまりにも下がりすぎた場合には、保険料の見直しも必要ではないか。(堀)

【何らかの基準で給付水準の下限を検討すべきとする意見】
生活保護基準と年金給付水準の間には直接的な関連性はないが、社会保険年金に防貧機能が期待されていることからすれば両者が全く無関係だとも言えない。少なくとも基礎年金の給付水準の下限について は生活保護の基準や改定方式が手がかりになるように思う。(山崎)
経済状況次第で所得代替率が45%以下に落ちては老後の保障にならないため、給付水準の維持については議論を深めるべきである。(大山)

【世帯類型別のモデル年金を設定するべきとする意見】
被用者世帯における給付水準の下限を論ずる場合、所得代替率は世帯類型別に相当の差がある。所得代替率で給付水準の妥当性を判断するのであれば、世帯類型別の試算が必要。(井手)

【ILO第102号条約との関係を指摘する意見】
保険料固定方式については、給付水準が将来的に低下していくため、ILO第102号条約との関係を整理する必要がある。(小島)
我が国が批准したILO第102号条約の最低基準に抵触することにならないか検討が必要。(堀)
スウェーデン型で、環境変化が大きい場合、給付水準が限度を超えて下がってしまうことについては、一定の限度を設ける必要がある。ILO第102号条約にあるような水準がひとつの目安。(近藤)
ILO第102号条約
「標準受給者(年金受給年齢の妻を有する男子)について、30年拠出した場合に従前の所得額の40%の給付を確保すること。」
(6)年金改定率の下限について、どう考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問9、10
(資料6 P21〜22)
〔資料5−2 P7 参照〕
【名目年金額下限型を支持する意見】
年金改定率の下限については、名目年金額下限型にするべきである。(大澤)
物価下限型よりも名目年金額下限型の方がより望ましいのではないか。(堀)
名目年金額下限型を採用するか、あるいはさらに踏み込んで、一定水準を超える年金については年金額の改定を当分の間凍結するということも考えられよう。(山崎)

【物価下限型及び名目年金額下限型の問題点を指摘する意見】
物価下限型を採用すれば既裁定者については調整が十分働かない。名目年金額下限型を採用すれば、名目額が保証されるため、スライド率に係る指標が大幅なマイナスとなった場合に調整が十分働かない。 これでは、世代間の負担と給付のアンバランスの是正の面で不十分。次期改正において、相当程度の引下げを実施していく必要があるので、名目額を減らすことも聖域化しないで検討すべき。(岡本・矢野)

【賃金と物価の関係を踏まえる必要があるとする意見】
既裁定者の物価スライドについては、賃金下落率が物価下落率を下回るような状況では債務が拡大してしまうため、そうした期間のスライドの在り方については議論が必要である。(翁)
(7)現在の年金受給者に対しても、一定の給付水準の調整を求めていくことについて、どう考えるか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問9、10、11
(資料6 P21〜23)
〔資料5−2 P7 参照〕
【既裁定年金についても調整するべきとする意見】
年金制度に対する国民の不信感を払拭するためには、全ての世代が痛みを分かち合うことが必要。既裁定年金についても、速やかに給付水準の調整対象とするべきである。(岡本・矢野)
労働力人口が減り始めた場合、現役世代の協力を得るためには、既裁定年金についても調整をする必要がある。(神代・山崎)
既裁定年金も適正化すべき(物価スライドを停止した従前額保障方式)。(堀)
平均余命の延びに応じて既裁定年金を減額することは、生涯の受給総額が変化しないので受け入れられるのではないか。(近藤)
既裁定年金にも可処分所得スライドを復活させ、現役世代の手取り賃金の伸びを反映した調整を行うべき。(小島)
本来制度としてあるべき水準として、物価スライドについて、過去3年間停止している1.7%分も全て反映させた後の水準を前提に検討すべきである。(岡本・矢野)

【公的年金等控除を見直すべきとする意見】
年金課税の適正化も世代間の不均衡を早期に是正する上で効果的。(山崎)
拠出段階で非課税であること、給与所得等と比べ優遇しすぎていること等から、公的年金等控除は縮減する必要がある。(堀)
拠出時・運用時非課税、受給時課税の原則を徹底し、現役世代の課税最低限を上回らない水準にまで課税最低限を引き下げるべき。公的年金等控除は縮小・廃止すべき。(岡本・矢野)
経済的弱者ではない高齢者には負担を求めるという所得再分配政策を考えていくべき。(翁)
税制は、高齢者も現役と同様とすべき。(若杉)
年金課税は見直すべきだが、その分の税収は年金財源に繰り入れることを前提とすべき。(小島)
(8)マクロ経済スライドの指標としては、何が適当と考えるか。
〔資料5−2 P8〜9 参照〕
 
(9)基礎年金と報酬比例年金について、別個に給付水準の調整を行うことについてどう考えるか。
【基礎年金については給付水準の調整はするべきではないとする意見】
前回の年金改正で最終的に基礎年金については手を付けないという形で決着が着いたので、基礎年金の給付水準の調整はするべきではない。(大山)

【基礎年金について給付水準の調整をするべきであるとする意見】
「方向性と論点」では基礎年金の水準も調整することとしているが、第1号被保険者の定額保険料を負担可能な範囲内に収めるためには、やむを得ないのではないか。(堀)

【基礎年金と報酬比例年金について、別個に調整をするべきとする意見】
基礎年金の給付水準の下限については生活保護の基準や改定方式が手がかりになるように思う。一方、二階部分の年金額の改定については、名目年金額下限型を採用するか、あるいはさらに踏み込んで、一定水準を超える年金については年金額の改定を当分の間凍結するということも考えられよう。(再掲)(山崎)
(10)前回改正法に規定された基礎年金の国庫負担割合の引上げを、どのように実現するか。
〔関連する意識調査の項目〕
有識者調査 問8
(資料6 P20)
〔資料5−2 P10〜11 参照〕
【基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるべきとする意見】
将来の保険料を負担可能なものとするためには、基礎年金の国庫負担割合の3分の1から2分の1への引上げが必要。(堀)
現役世代や企業の負担が過度に重くならないよう、基礎年金の国庫負担割合を2分の1へ引き上げるべきである。(岡本)
基礎年金については、全ての高齢者に一律に支給するのではなく、一定の所得を有する高齢者は支給停止又は減額などにより給付総額の抑制を行った上で、次回改正で安定財源として消費税を活用して、基礎年金の国庫負担を2分の1へ引き上げるべきである。(岡本・矢野)
保険料負担の上昇をできるだけ抑制するため、基礎年金については将来的な全額税方式を射程に、国庫負担を早急に2分の1に引き上げるべき。(大山・山口・向山)
税財源の持つメリットを活かし、保険料の上昇幅を抑えるためにも、国庫負担の割合を2分の1にすべき。(渡辺)
国庫負担水準の2分の1への引上げの趣旨は、最終保険料率を抑えるためである。(神代)

【基本的には消費税や年金税制の見直しで財源を賄うこととする意見】
国庫負担を2分の1に引き上げることが望ましく、その財源は、年金税制の適正化と消費税引上げによる増税分を充てるのが望ましい。(堀)
年金税制の改革による税収を、基礎年金国庫負担2分の1への所要財源には及ばないものの、引上げの財源とすることが考えられる。(神代)
基本的には、消費税を目的税として充てるのが望ましいが、現状では消費税の引上げは妥当でない。当面は歳出構造の見直しで対応すべき。(渡辺)

【基本的には一般財源で賄うこととする意見】
国庫負担の2分の1への引上げ財源は、歳出の見直しにより、一般財源で賄うべきである。(小島)

【間接税を所得保障の財源とすべきでないとする意見】
比較的低所得で子育てをしている世帯や母子家庭など、消費性向の高い世帯にとっては、消費税負担は不釣合いに重い。逆進性を持つ間接税を所得保障の財源とするのは不適当。(大澤)

【国庫負担の引上げについては、低所得者や過去期間分の債務の償却に着目してもよいとする意見】
国庫負担割合の引上げ分については、低所得者個人に着目した国庫負担の要素を組み込むべきではないか。また、基礎年金の過去期間分の債務の償却に重点を置いて配分するという考え方を取り入れてもよい。その場合、高齢者も相当な財源を負担することが妥当であり、仮に消費税を引き上げて対応するのであれば、それに伴う物価上昇分は年金スライドの対象から一部または全部控除する対応が必要。(山崎)

【国庫負担水準については国庫負担の意義や財源の議論をした上で検討すべきとする意見】
保険料も税も国民負担という点では同じである。国庫負担は、最低保障年金として位置付けるのかといった将来像を明確にすることが必要であり、国庫負担の意義や財源の議論と切り離して、水準引上げの議論をすることは難しいのではないか。(翁)

(敬称略)


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