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上記第1のとおり、脳及びせき髄の損傷による障害については、第1級から第9級までは原則として1級の間隔を設けた上で、労働能力に及ぼす影響を総合的に判定して等級を認定することとしている。
これは、定量的な評価が難しい障害について、障害の状態に応じた障害等級の設定という法的な利益と明確な根拠もないまま基準を細分化することによる認定実務の混乱という不利益を比較衡量した結果と考えられる。
しかしながら、脳及びせき髄の損傷による障害の場合においてもその程度が軽い場合には、第12級以下の障害等級として評価されるところ、第9級と1級の間隔をもつ第11級は設けられていないので、第9級との関係では何故11級が設けられていないのかとの疑問が生じる。 |
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上記1の点に関して第9級と第12級の間に、第11級を新設するという意見がある。
この意見は、現行の規定では概念的に上記の等級間の評価の幅が大きすぎると考えられること、第9級には及ばないものの、第12級に該当する平均的な障害よりは明らかに重篤な状態の場合、第12級として認定することに一定の抵抗感を持たざるを得ないときもあることから、よりきめ細かな障害の評価を行う必要性があることを根拠にするものである。
また、新設する級を「11級」とした場合、直近下位の障害等級は「12級」となり、格差は10級を新設するときと同様に隣接することとなるが、この場合は、「就労制限が何らかの形である状態が11級以上」、「就労制限がない状態が12級以下」と「就労制限の有無」により概念的に明確に区分できることができることを指摘している。 |
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これに対して、第11級を新設する場合には、次のような問題点があるとの指摘がある。
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第9級との関係では、第11級は1級の格差を持って障害等級を設定できるものの、既に第12級が設定されているところから、第12級と第11級は隣接することとなる。
したがって、第12級と第11級は、「就労制限の有無」により概念的には区分できるものの、実際には行動、動作等の制限や麻痺等の程度により障害等級を決定することから、12級と11級を明確に区分することは非常に困難であると言わざるを得ないこと。
さらに「就労制限」には至らないめまいや疼痛と「就労制限」に該当するめまいや疼痛を区分することは、客観的な尺度がない中では非常に困難であること |
| (2) |
定量的な評価の難しい障害について、明確な基準がないままに障害等級を細分化することは現場における認定実務の混乱をもたらしかねないこと |
| (3) |
11級により評価すべき具体的な障害が必ずしも明らかではないこと |
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結論
第9級と第12級の間には第1級から第9級までの間と違って2級の差があること、「相当程度の職種制限がある」程度には及ばないものをすべて「労働には通常差し支えないが、時には差し支えがある」と評価することは必ずしも妥当ではないことから、第11級を新設する必要性が存することについては相当の論拠があるものと考える。
しかしながら、第11級を新設した場合には、既に第12級が設けられていることから、第11級と第12級が隣接することになる。
第11級と第12級は概念的には区分することができるものの、現時点においては第12級に当たる障害と第11級に当たる障害を的確に区別することは困難であり、現場における認定実務の混乱が懸念されることから、本検討委員会としては、等級の新設問題については今後の検討課題とし、全体的な障害等級のあり方を踏まえて慎重に検討すべきであるとの結論に至った。
なお、今後11級と評価することが妥当であると思われる事例の収集及び12級と11級を明確に区分できる医学的な知見の収集に努め、できる限り早期にこの問題に関して改めて検討を行うべきである。
以上 |