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資料5

町野委員のご意見


 結論として、「専門委員会報告」と「案1」の趣旨に沿った、次のような文章にすべきだと思う。

 「1) 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療によって生まれた子が、知ることができる提供者の個人情報の範囲。

 提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療によって生まれた子は、○○歳に達した後、××××に、当該提供者が承認した範囲内の個人情報(その同一性を特定できるものを含む。)の開示を求めることができる。」


 やはり「案2」のように、一気に「子の出自を認める権利」を全面的に認めることは時期尚早であると思われる。
 これを行うことは、

 1.  自己の.同一性開示を承認した提供者のみからの提供を認める、
 2.  子に、なるべく早い時期に、
a.  子が提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療によって生まれた者であること、及び
b.  子には、自分の出自を知る権利があることを告知する義務がある、

 としなければならないだろう。権利のあることを知らない者は権利を行使することができないからである。
 これによって提供者も少なくなり、AIDにより子を持つことを止める者も出てくると思われる。
 そのことを措くとしても、子がアイデンティティを確立しうるためには、そして子の福利のためには、子が出自を知らなくてはならない、ということはできないと思われる。また、子の出自を知る権利は、匿名のまま配偶子等を提供しようとする者の善意、親権者等の子への配慮を考慮することなく貫き通すべきものとは思われない。少なくとも、これを国民に強制すべきものとは考えられない。
 現在は「案1」を採用し、その枠内で漸進的に、子の出自を知る権利が実現されていることを期待すべきものと思われる。
 私は、子が自己の出自を知ろうとする希望も理解しているつもりである。また、AIDに対してポジティヴな倫理観を持っているわけではない。
 だが、それが積極的であったかには議論の余地があるにせよ、AIDによっても子を持つことを求める人々の希望を日本社会が受け入れてきたこと、日本社会は、AIDによって生まれてきた子であることを隠すことによって家族関係を作ろうとする人々の立場も一概に否定しては来なかったことも考えなくてはならない。これを根底からいっぺんにひっくり返すべきではない。


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