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資料4

水質検査計画について

(担当主査:国包委員)


1.基本的事項

 水質検査は、水質基準の適合状況を把握するために不可欠であり、水道水質管理の中核をなすものであるが、一方で、その実施に当たっては水道事業者等に対し大きな負担を強いるものである。このため、水質検査は、「水質基準の適合状況を確実に把握できること」との前提に立ちつつも、効率的・合理的なあり方が求められている。
 この点については、旧生活環境審議会水道部会水質管理専門委員会の「今後の水道水質管理のあり方について」(平成12年5月)において、水質検査計画を中心に据えた水道水質管理のあり方について検討が行われている。
 本専門委員会は、同報告の基本的な考え方は現時点でも有効であり、現在の状況を踏まえ見直した上で、水質検査の適正さ、透明性を確保するものとして水質検査計画を制度化することが適当であると考える。ここでは、このような方針の下、水質検査計画における水道事業者、都道府県及び国の役割、水道事業者による水質検査計画のあり方、水質検査計画として記載すべき事項について検討を行った。


2.関係者の役割について

 水道水質管理の中核となる水質検査が適正に実施されるには、これに関係する水道事業者、都道府県及び国がそれぞれの役割を適切に果たす必要がある。水質検査計画における関係者の役割についてはこれまでの検討を踏まえつつ、水道水質管理体制等の現状、平成13年の水道法の改正や本専門委員会における水質基準の見直し等の検討を勘案すれば、以下のとおりとすることが適当である。
 また、水道事業者は、計画の内容について情報公開し、計画の決定に際して、需要者の参加を促進することが重要である。
 なお、水質検査に当たっては都道府県の機関や指定検査機関の役割も重要であり、その詳細については、水質検査の精度と信頼性保証の中で触れられているので、ここでは省略するが、水質検査に当たっての精度管理に関しても留意する必要がある。

 (水道事業者の役割)
  ・  水質検査の適正な実施、需要者への適切な情報提供のため、水源種別、過去の水質検査結果、水源周辺の状況等について総合的に検討し、自らの判断により水質検査の内容を計画(以下「水質検査計画」という。)として定め、これを精度管理に配慮して実施し、その結果を適切に評価・公表する。

 (都道府県の役割)
  ・  水道事業者の定める水質検査計画について、主に流域の視点から必要な助言、指導を行い、計画がより流域の実状に即したものとなるよう協力する。
  ・  都道府県知事認可の水道事業者に対しては、監督者の立場から、計画の不備に起因する問題が生じた場合には、必要な是正措置を求める。

 (国の役割)
  ・  水道事業者がその規模や水源の状況に応じた効率的な水質検査計画を策定することができるよう、水道法上の責務として遵守することが必要な水質管理の考え方を明確にするとともに、水質検査計画のための指針の策定等により技術的な支援を行う。
  ・  厚生労働大臣認可の水道事業者に対しては、監督者の立場から、計画の不備に起因する問題が生じた場合には、必要な是正措置を求める。


3.水道事業者による水質検査計画について

 水道事業者に義務づけられる水質検査については、検査項目の省略、検査頻度や検査地点の選択等の判断は水道事業者自らが責任を持って行うものであるが、水質検査の合理化・効率化を図る上ではそれが適正である理由が明確であって、水道の需要者に対しても説明できる内容であることが重要である。このため、水道事業者による水質検査計画については以下のとおりとすることが適当である。

  ・  水道事業者は、水質検査の内容(検査項目、検査頻度、検査地点等)の適正化及び透明性を確保するため、水源の種別、水源の状況(水質、環境条件や汚染の動向)、浄水処理方法、送水・配水・給水の状況等を考慮し(すなわち、「資料3 水質検査のためのサンプリング・評価について」の考え方を踏まえ)、計画的に水質検査計画を定める。
  ・  水質検査計画には、水質検査計画に関する基本方針、水道事業の概要、水質検査の方法(水質検査項目、検査頻度、検査地点等)及びその設定根拠、水質検査計画及び検査結果の公表方法、その他水質検査計画の実施に際し配慮すべき事項について定める。
  ・  水道事業者は、水質検査計画に規定する方法で水質検査を実施するとともに、水質検査の結果を評価し、必要に応じて見直す。
  ・  水道事業者は、水質検査計画に規定する方法に基づき水質検査計画及び検査結果を需要者に対し公表する。
  ・  監督行政機関は、水道事業者が策定した水質検査計画について、必要があると認める場合は、水道事業者に対し、報告徴収及び立入検査を行い、計画内容の見直し等の技術的助言・指導を行う。
  ・  臨時に行う水質検査については、水源の環境条件の変化や突発的な水質変化に対応して、水道原水から給水栓水において実施すべきとの観点から計画に位置づける。
  ・  水質管理目標設定項目等については、地域の実情に応じて、必要な項目を選定し、水質検査計画に準じた扱いをする。
  ・  原水については、水道水質の管理上の重要性が高く、水質検査の実施にあたっては、併せて原水の水質監視を行うことが望ましい。

水質検査計画の概要の図

図 水質検査計画の概要


4.水質検査計画のための指針について

 水質検査計画を具体的に策定するにあたって必要な事項について以下に検討を行った。

4.1 水質検査計画に記載すべき事項について

 水質検査の適正さ、透明性を確保するものとして水質検査計画を策定する上では、少なくとも以下の事項が記載されることが適当である。

水質検査計画に関する基本方針
水道事業の概要
水質検査項目・検査頻度・検査箇所及びその根拠
水質検査計画及び検査結果の公表の方法
その他水質検査計画の実施に際し配慮すべき事項
4.2 水質検査計画に関する基本方針

 水質検査計画を策定した趣旨・策定に際しての方針等について明らかにすると共に、計画期間を定めることが適当である。なお、水質検査のためのサンプリング・評価についての検討結果を踏まえると、計画は、原則として毎年度毎に策定し、3年間を1単位として定めることが適当である。

4.3 水道事業の概要

 水質検査計画を策定するに当たっての基礎的情報として少なくとも以下の事項を記載することが適当である。

主要な給水区域
主要な水源の名称及び種別
主要な浄水場の名称及び浄水方法
水質の状況(水源から給水栓における水質の状況、水質検査の結果の概要)
その他必要な事項
4.4 水質検査項目

 水質検査を行う項目については、「資料3 水質検査のためのサンプリング・評価について」の考え方に基づき、水質基準項目ごとに水質検査の省略の有無を設定することが適当である。なお、水質検査を省略することとした項目についても、水質の状況に変化がないことを定期的に確認するために、少なくとも3年に1回ごとに水質検査を行うこととすることが適当である。

4.5 水質検査の頻度

 水質検査の頻度については、「資料3 水質検査のためのサンプリング・評価について」の考え方に基づき、水質検査を行う項目毎に水質検査の頻度を設定することが適当である。

4.6 水質検査の採水地点

 水質検査の採水地点については、「資料3 水質検査のためのサンプリング・評価について」の考え方に基づき、水質検査の採水地点及び地点数を設定することが適当である。

4.7 臨時の水質検査

 臨時の水質検査については、「資料3 水質検査のためのサンプリング・評価について」の考え方に基づき、臨時の水質検査を行うための要件、水質検査を行う項目を定めることが適当である。

4.8 その他水質検査計画の実施に際し配慮すべき事項

 その他、水質検査計画の実施に際し配慮すべき事項として、以下の事項についても記載することが適当である。

水質検査結果の評価に関する事項
水質検査計画の見直しに関する事項
精度管理に関する事項
関係者との連携に関する事項

5.今後の検討課題

 水質検査計画は、給水栓における水質基準への適合を確認するための水道法第20条に基づく水質検査について作成されるものである。このため、定期の水質検査における原水等の水質測定や水質管理目標設定項目といった水質基準以外の項目の水質測定については対象としなかったものの、その重要性から、水質検査計画に準ずる形で実施することが望ましいとしたところである。
 これまで、原水の水質監視等については、現行の監視項目の取扱いも含め、都道府県の策定する水道水質管理計画において位置づけられている。この水道水質管理計画はおよそ10年あまり継続して実施されてきており、一定の有効性は確認されていることから、当面、継続することが適当であるものの、本専門委員会の検討を踏まえ、今後見直しが必要となってこよう。


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