参考資料3 |
I 総論
1.基本的考え方
(1) | 改革の方向 |
(2) | 自主・自立の地域社会の形成 |
2.国と地方の役割分担に応じた事務事業の在り方について
(1) | 本意見の位置付け |
(2) | 国庫補助負担事業について |
(3) | 各省庁と合意できなかった事項の取扱い |
II 分野別の見直し方針と具体的措置の提言
1.社会保障
(1) | 地域における保健・医療・福祉の一層の総合化の推進 |
(2) | 民間企業、NPO等の多様な主体の幅広い参画による共助社会の構築 |
(3) | 必置規制的なものの全般的、経常的な検証と見直し |
(4) | 知恵とアイディアの地域間競争を視野に入れた、国の関与の見直しによる地方の自主性・自立性の強化 |
(5) | 社会保険分野における国・地方の関係 |
(6) | 地方支分部局と地方の新たな関係の構築 |
2.教育・文化 (略)
(1) | 初等中等教育に関する国の関与の在り方 |
(2) | 義務教育費国庫負担制度の見直し |
(3) | 国・地方の役割分担に応じた財政的措置の在り方 |
(4) | 総合行政の観点からの教育用施設の有効活用 |
(5) | 生涯学習、社会教育分野における国の関与の抜本的見直し等 |
(6) | 必置規制的なものの全般的、経常的な検証と見直し |
3.公共事業 (略)
(1) | 公共事業関係長期計画等の見直し | ||||||
(2) | 補助事業等における国と地方の関係の明確化 | ||||||
(3) | 事業主体としての国と地方の役割分担の明確化と直轄事業に係る国と地方の関係の明確化 | ||||||
(4) | 社会資本の管理に係る国の関与の縮小 | ||||||
(5) | 個別の公共事業分野における課題への対応 | ||||||
(6) | 「改革と展望」の期間中における国庫補助負担事業の廃止・縮減等の改革の在り方
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(7) | 公共事業の将来的な姿 |
4.産業振興 (略)
(1) | 時代の変化に沿った農林水産業振興政策の見直し |
(2) | 地域間競争を促す国の中小企業政策等の在り方について |
5.治安その他 (略)
(1) | 警察制度 |
(2) | 消防制度 |
(3) | その他 |
地方分権改革推進会議は、平成13年7月、内閣総理大臣の諮問機関として、3年間の期間を限って設置された。そして、その初会合において、小泉内閣総理大臣から、「国と地方公共団体の役割分担に応じた事務及び事業の在り方並びに税財源配分の在り方、地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制整備その他の地方制度に関する重要事項」について、地方分権の一層の推進を図る観点から、調査審議を行うべき旨の諮問を受けた。
小泉内閣総理大臣の諮問は、地方分権改革という視点から「この国の在り方」を問うものであり、これに答えることは、21世紀に適合した分権型行政システムの構築への道筋を明らかにすることにほかならない。
この重要な任務を限られた期間で果たすため、当会議は、諮問事項のうち、国と地方の役割分担に応じた事務事業の在り方から重点的に審議することとし、関連して整理が必要な財政措置は調査審議の対象として取り上げるが、全体の税財源配分の在り方については、事務事業の在り方に関する審議動向を踏まえ検討することとした。
この審議方針に基づき、会議発足以来これまでに、本会議21回、小委員会21回、本会議・小委員会合同会議7回の計49回にわたる会議の開催並びに三重県及び静岡県での地方視察を行い、関係省庁、地方公共団体及び各界の有識者からヒアリングを行うとともに、精力的に審議を重ねてきた。
この間、重点的に審議を行うべき分野や論点の整理を行った「中間論点整理」(平成13年12月)、内政の全般にわたる基本的な改革の方向を整理するとともに、当会議としての地方分権改革についての基本的考え方を取りまとめた「事務・事業の在り方に関する中間報告」(以下、中間報告。平成14年6月)を世に問うてきた。
今般、国と地方の役割分担に応じた事務及び事業の在り方について、当会議としての見解を取りまとめるに至ったので、内閣府本府組織令第四十条の四第一項に基づき、内閣総理大臣に意見を述べるものである。
政府においては、本意見を尊重し、適切な判断を下されることを期待するものである。
地方分権改革推進会議は、本年6月17日に中間報告を公表して以来、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主・自立の地域社会からなる分権型システムの構築を目指して、事務事業の見直しを中心に取り組んできた。
国・地方を通じて、今日、我が国の財政の危機的状況は、一段とその深刻の度を深めつつある。このような状況を克服し、今後ますます進む少子高齢化の時代に、これまで我が国が築き上げてきた豊かな社会を維持していくためには、国も地方も従来の発想を転換し、その行政システムを持続可能なものに変えていかなければならない。それには、現行のシステムを抜本的に見直し、大胆な改革を断行することが必要である。
当会議が、分権型システムの構築を目指すのは、このような時代にあって、行政改革を着実に推進し、我が国の活力を回復し維持していくためには、これまでの集権的なシステムを転換することが不可欠であると考えるからである。
国の役割は、国際社会における国家の存立にかかわる事務や全国的に統一して定められるべき諸活動等に関する基本的な準則に関する事務、また全国的な規模又は視点に立って実施されなければならない施策や事業など、国が本来果たすべき役割に重点化し、それ以外の住民に身近な事項に関しては地方の自主的、自立的な判断に委ねるとともに、国が地方に対して関与を行わざるを得ない場合にも、それらは必要最小限にとどめられなければならない。
なお、このことは、国の役割が低下することを意味するものではなく、国はこれからの時代において、国の本来の役割に基づいて戦略的な行政の展開を要請されていることを指摘しておきたい。
このような改革を推進するために、当会議は、中間報告において、次のような5つの改革の方向を示した。
(1) | 国と地方の役割分担の適正化:ナショナル・ミニマムの達成からローカル・オプティマムの実現へ |
(2) | 地域における行政の総合化の推進 |
(3) | 地方の創意工夫の発揮と知恵とアイディアの地域間競争 |
(4) | 地方における自立的な財政運営が可能なシステムの形成 |
(5) | 国の決定についての地方の参画の確保 |
これらをより敷衍して述べれば、地域ごとの最適状態を意味する「ローカル・オプティマム」の実現とは、地方の自己決定と限られた資源の有効な利用を妨げている、地方に対する国の種々の関与・規制や補助金等による関与を縮減・廃止し、各地域において、住民のニーズに応じた最適の政策の形成や統合が可能になるような状態を目指すことである。
これまでは、政策分野ごとに達成すべき目標値を設定し、それをどの地域も最低限満たすべき基準である「ナショナル・ミニマム」として、その達成を目指して事業を計画し実施していく傾向が見られた。しかし、一定期間の努力によって、ひとたびその目標が達成されると、その値を更に引き上げ、次の時代には、それが新たな目標値として設定されるというサイクルが繰り返されてきた。そして、この目標を達成するために、国は地方に対して多くの関与を行い、また補助金を通して、それを実現する仕組みを作り上げてきた。
「ナショナル・ミニマム」についてのこのような考え方やその達成のための仕組みが存在する限り、国の地方への関与は止まず、国と地方の明確な役割分担に基づいた地方の自主性、自立性は育ち得ない。先進諸国へのキャッチ・アップを目指していた時代はともかく、その段階に到達した今日の我が国にあっては、このような考え方自体を改め、その仕組みを廃止すべきである。そして、それぞれの事務の性質に応じて担い手として最もふさわしいレベルの地方公共団体や国に事務権限を配分するという原則、すなわち「補完性の原理」に基づいて役割分担を適正化することによって、地方の役割とされた事務については、地方が自主的・自立的に最適の形態でそれを実施できるようにすべきである。
このような「ローカル・オプティマム」を追求することは、当然に、政策分野の縦割り的発想を脱却し、それぞれの地域の視点から、複数の分野の政策を総合的かつ柔軟に立案し事業を実施していく「行政の総合化」を目指すことにほかならない。そして、そのために、地方が創意工夫をして、知恵を絞りアイディアを出し合うことは、地方の個性の発揮を促す。こうして、「地方の創意工夫の発揮と知恵とアイディアの地域間競争」が展開されることが、地方の活性化と発展に結びつくことになろう。
自己決定・自己責任の原則の下で、地方のこのような行動は地域住民の福祉の増進をもたらすとともに、地方行政改革の推進、行政運営の効率化にも寄与する。明確に地方の役割とされた事務について、地域住民が、必要な行政サービスの水準を自ら決定できるとともに、そのための負担についても決定できるような仕組み、換言すれば、住民が「歳出」のみならず「歳入」についても自主的に決定できる「受益と負担の関係が明確な仕組み」を作ることによって、初めて規律ある「自立的な財政運営が可能なシステム」が生まれることになると考える。
また、このように国と地方との適正な役割分担の下で、地方が自主的・自立的に行動できるようにするためには、地方の役割に関わる制度の創設・変更、計画の策定・変更、負担の決定等を行う場合、また、地方個別の事務事業に関わる決定等を行う場合には、これまでしばしばみられたような国の優位を前提とした決定の在り方を改め、国と地方が「対等協力」の関係にあることを前提として、それらの「国の決定に地方が参画する機会」が、可能な限り制度的に確保されなくてはならない。
それでは、このような当会議の改革の方向が目指す自主・自立の地域社会の姿とはどのようなものか。
現在、都道府県、市町村は、変わりつつある社会環境の下で、様々な改革に取り組んでいる。多くの地方が、行政評価の導入やNPOとの連携の推進等、行政改革を進め、新たな住民自治の在り方を模索しているとともに、全国的な市町村合併の推進によって、基礎自治体としての市町村の枠組みそのものの再編も行われつつある。
もとより、我が国の市町村の規模や行財政の能力には大きな幅があり、市町村合併が進んだ結果誕生する市町村にも多様なものがあろうが、当会議が改革によって目指しているのは、地域社会が自主的・自立的な活動を行うことによって活力を発揮できるような分権型システムを構築することであり、とりわけ地方自治の自主的・自立的な担い手として、一定の規模としっかりとした行財政運営の基盤を持ち、地域の発展において先導的な役割を果たすようなたくましい地方都市の誕生を期待したい。
このような地方都市が多数生まれ、それらが政策の立案、効率的な財政運営、新たな住民自治の仕組み等において、相互に知恵とアイディアの競争を展開することが、住民のニーズに応じた地域社会の形成と発展に資するとともに、我が国全体の発展にも結びつくものと考える。
基本的考え方で示した改革を推進していくためには、まず地方が自己決定・自己責任の原則に基づいて自主的・自立的な行政運営を行うことができるように、国と地方の役割分担を明確化し、国の地方に対する関与を廃止・縮減しなければならない。
そのような観点から見たとき、既に第一次の地方分権改革によって国の関与の縮減が図られたものの、中間報告でも指摘したように、まだ多数の法令による義務付けや必置規制等が残存している。地方の自主的・自立的な決定・行動を妨げているそれらの関与を廃止・縮減し、国と地方の役割分担を明確化するためには、法令の改正を含む事務事業の見直しが不可欠である。
例えば、公共事業において直轄事業に係る地方の負担を求める場合に、地方の意見を反映することが制度上認められていない事例や、また、類似した事業でありながら、所管する省庁が異なるために、地方において総合化ができない事業もある。地方からの要望が強いにもかかわらず、合理性を欠く種々の規制や必置規制によって、地方の創意工夫の発揮を妨げているケースも見られる。
当会議は、このような我が国の行政システムの現状と我々に課せられた課題についての認識に基づいて、これまで国と地方の役割分担を明確化し、それを踏まえて事務事業の在り方を見直すことに取り組んできた。その成果の一端は、中間報告として、改革に当たっての基本的な考え方と内政全般にわたる改革の方向について取りまとめた。
この中間報告を公表した後、政府においても地方分権改革に密接に関連する重要な方針、すなわち、経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002(以下、基本方針2002)が閣議決定された(6月25日)。基本方針2002においては、(1)地方分権改革推進会議の調査審議も踏まえつつ、福祉、教育、社会資本などを含めた国庫補助負担事業の廃止・縮減について、内閣総理大臣の主導の下、各大臣が責任を持って検討し、年内を目途に結論を出す、(2)これを踏まえ、国庫補助負担金、交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方を三位一体で検討し、それらの望ましい姿とそこに至る具体的な改革工程を含む改革案を、今後一年以内を目途に取りまとめる、とされている。
そして、この政府の動きと当会議の審議の歩調を合わせるべく、小泉内閣総理大臣から当会議に対し、総理指示として、基本方針2002を踏まえ、三位一体の改革につながる国と地方の事務事業の在り方等に関する原案について10月を目途に作成し、提出するよう要請がなされた。
この総理指示に応えるべく、中間報告で示した各行政分野における改革の方向を基礎としつつ、国庫補助負担事業の在り方についても重点を置き、事務事業の見直しの具体的な改革案の提出に向けて、精力的に審議を行ってきた。本意見は、当会議の1年4か月にわたる審議を集大成したものであり、国と地方の役割分担に応じた事務事業の在り方についての結論を示すものである。
本意見においては、義務教育費国庫負担制度を始めとする基幹的な制度についても聖域なく見直しの対象とするとともに、国が取るべき措置について、その措置が取られるべき期限を明示するなどできる限り具体的な記述に努めることにより、内政全般にわたる地方分権改革を早期に実効あるものとすることを目指している。
国庫補助負担事業については、総理指示を踏まえ、当会議として、事務事業の在り方についての検討の中で調査審議に取り組んできたところである。具体的には、各行政分野における国と地方の役割分担の明確化や、国の地方に対する関与の在り方の見直しと併せて、国庫補助負担事業の在り方について検討することとした。国庫補助負担金のみに焦点を当てるのではなく、地方の裁量を拡大することを通じて、住民ニーズに適合した事業がより効率的に行い得るようにすることが重要であると考えたからである。
本意見においては、分野別各論において記述しているとおり、国の関与を大幅に縮減し、地方の権限と責任を大幅に拡大するとの観点から、各分野の主要な国庫補助負担事業の在り方について廃止・縮減の方向を提言し、関連する国庫補助負担金の在り方についても言及をしている。本意見で具体的に取り上げたもの以外にも、数多くの国庫補助負担事業が存在するが、広く他の分野においても、本意見で示した改革の理念・方向に沿って、基本方針2002を踏まえ、見直しが行われるべきである。
また、地方分権推進計画に示されているような、国庫負担金と国庫補助金の区分に応じた整理合理化、同化・定着・定型化した事務や人件費に係る補助金の一般財源化等その性質に応じた整理合理化など、従来行われてきた国庫補助負担金の整理合理化のための努力や、毎年の予算編成過程等を通じて行われてきた国庫補助負担金の整理合理化のための努力は、引き続き重要である。
平成15年度予算においては、基本方針2002を踏まえ、国庫負担金と国庫補助金の区分に応じた整理合理化を推進することとされ、国庫負担金等については、既存の制度や事業の抜本的見直しを進めるとともに、国庫補助金のうち公共投資関係費や裁量的経費について、5%の削減を目指すこととされている。
当会議としても、このような方針は基本的に支持すべきものと考えており、今後とも政府における積極的な取組みを強く期待したい。
当会議は、国と地方の役割分担に応じた事務事業の在り方の審議において、これまでの地方分権改革では踏み込み得なかった分野についても、正しく聖域なく見直しの対象として取り上げてきた。このため、当会議と関係省庁との間で見解が対立する論点は、数多く存在した。
我々は、これまでの審議において、関係省庁からの意見聴取や質疑を通じて、地方分権改革に対する共通認識を醸成すべく努めてきた。特に中間報告を公表して後は、具体的な改革案について、コンセンサスの形成を図るべく、事務局を通じた調整も含め、全精力を注ぎ集中的に審議を行ってきた。しかし、残念ながら、一部の事項については合意を得るに至らなかった。
今回、当会議は、各省庁と合意した事項のみならず、あえて、合意に至らなかった事項も含め意見を提出することを選択した。なぜなら、地方分権改革は、政府が主導する構造改革の一翼を担うものであり、たとえ合意に至らなかった事項であっても、「地方にできることは地方に委ねる」との原則に基づき21世紀の分権型行政システムの原案を提示することこそが、内閣総理大臣の諮問機関としての当会議に期待される役割であり、総理指示にも沿うものであると考えたからである。
当会議発足以来の審議を振り返り、特に昨年以来三度にわたって実施された各省からのヒアリングを通して、我々が痛感するのは、分権型システムへの転換に向けて、国と地方の意識を改革していくことの重要性である。
関係各省庁は、当会議の要望に対して、特に総理指示が出されてからは、概して、総論においては協力的な姿勢を示し、地方分権を指向する改革に取り組んでいることを強調するものの、各論である個別の事務事業の見直しに関しては、国主導の発想が払拭されていないケースも見られ、まだ当会議の見解とは距離があるものが少なからず見られる。
我々の認識は、既に成長を当然の前提とした「右肩上がりの時代」は終焉しているとともに、これからは人口が減少し、少子高齢化がますます進行する時代に入ることから、かつての需要の増加を前提とし、それを充足することを目標として作られた制度は抜本的に見直されるべきであるというものである。だが、関係省庁の主張には、そのような制度の存在意義はまだあるという見直しに消極的な姿勢も見られた。
また、1.「基本的考え方」で述べたように、従来のナショナル・ミニマムの発想とそれに基づいた仕組みを改めるべきであるという我々の見解に対しては、公共事業に関して、全国的に一定の水準を達成することが国の責務であるという主張や、国の直轄事業に関して、地方もその事業によって受益する以上、国と地方が協力して国主導の下に事業を実施し、地方も応分の負担をすることにも合理性があるという主張も聞かれた。
さらに、過去の公共投資によって社会資本の蓄積が進んでいる以上、社会資本形成のための事業は縮小されてしかるべきであるという我々の認識に対しても、まだ社会資本の蓄積が十分ではない分野も多く、その充実・整備に向けた努力が今後も必要であるという見解が国のみならず地方からも聞かれた。
類似した事業でありながら、所管する省庁が異なるため、地方レベルでの行政の総合化を妨げている例もまだ多く、関係省庁からは、協議の場の設置等の改善策の提示はなされたものの、それを超える一元化・総合化への提案は不十分と言わざるを得ず、地方の自主的な選択による総合化を求める我々の要望との隔たりがあるように思われる。
また、事務事業の実施体制について、創設当初と前提条件が変わったにもかかわらず、当初の形態が維持されている合理性を欠いた組織や職員の必置規制の見直しも強力に進められるべきであるし、補助金を政策誘導の手段として位置付ける発想も改められるべきである。
当会議は、何よりもこのような国の意識やそれに基づいて創られ運用されている制度の改革が重要と考える。1.(1)「改革の方向」で述べたように、国は国が本来果たすべき役割を重点的に担い、国と地方の役割分担を明確化し、地方が担うべきことは地方の自立性に委ねられるべきであり、また、両者が協力して実施しなければならない事務事業に関しては、その決定と実施において国と地方の対等な関係が確保されるべきである。
それとともに、本意見で提言した国の関与の廃止・縮減により、行政運営の自主性・自立性を拡大した地方には、住民福祉の増進に向け、地方自治の担い手であることを自覚し、自己決定・自己責任の原理に基づいて、主体的に改革に取り組むことを期待したい。併せて、国に対して財政的援助を求めても、もはや国にその余裕がないという状況を認識し、自ら更なる行政改革に取り組むことを求めたい。
人々の日々の暮らしに密着した社会保障行政は、身近な行政主体である地方公共団体によって実施されるべきものであり、実際に、近年、多くの社会保障施策は地方分権の推進と一体となって展開されてきている。
当会議としては、こうした流れを更に一層推し進め、国が決めたことの単なる実施を地方に委ねるのではなく、諸施策・諸サービスの実施に際して、地域の実情を踏まえた地方公共団体の主体的判断がより可能となるよう、現行の国による種々の関与を抜本的に見直していくべきと考える。制度の根幹は国が企画・立案するものとはいえ、地方公共団体が実施するに当たっては、行政サービスを受ける住民のニーズに即応したものとすべきであり、行政側の組織的・制度的問題がそうした対応を妨げている面があるとすれば、直ちに見直さなければならない。
他方、我が国においては、少子高齢化社会を前に、社会保障諸制度の抜本的見直しが現在進められている。国と地方の事務事業の在り方の問題については、制度見直しの結果を踏まえるべき部分も多いが、今後の我が国社会保障制度を支えていく上での地域社会の重要性に十分留意し、以下に述べる当会議の指摘、提言をも踏まえつつ諸制度の見直し議論は進められるべきと考える。
地域における行政の総合化の必要性については、これまで当会議の報告等でも繰り返し強調してきている。総合行政化は、何でもまとめればよいという意味ではなく、地域住民のニーズに応じた最適の組合せを地域ごとの判断で実現すべしということであって、いわば行政執行に当たってのローカル・オプティマムの追求というべきものである。行政サービスの水準に関するナショナル・ミニマム、ローカル・オプティマムについては、種々の議論があるにせよ、中央官庁の縦割りに捕われない、地方独自の選択による最適な行政の組合せを追求するとの側面での地域ごとの最適化については、異論はないと思われる。
暮らしに密着した社会保障分野、特に、保健、医療、福祉等の分野においては、これまで築き上げてきた総合行政化の流れを更に強化し、時代とともに変化する住民ニーズへの的確な対応が図れるよう常に留意すべきである。
こうした基本方針の下、当会議として、以下のような具体的措置を求めるものであるが、このうち国の当局と意見の隔たりの大きい幼保一元問題について若干付言したい。
(幼保一元問題)
保育に欠ける児童のための福祉施設である保育所と、就学前の幼児教育機関である幼稚園との間には、国が主張するように確かに制度的には越えがたい垣根がある。しかしながら、我が国の現状に鑑みれば、地域によっては幼稚園と保育所はほとんど均質化しており、国が主張するような強固な差異は感じられないのが実情である。幼稚園と保育所が、教育と福祉という制度的趣旨よりも、親の就労形態等によって区分けされており、特に保育所は働く女性のための児童預かり施設という側面を強く有するに至っていると考えられる。
必要な児童福祉施策は引き続き実施するとしても、施設としての幼稚園と保育所、制度としての幼稚園教育と保育は、それぞれの地域の判断で一元化できるような方向で今後見直していくべきである。いずれも長い経緯を有する制度であり、以下の提言にもあるように、まずは幼稚園教諭と保育士の資格の一元化を積極的に推進し、それと並行して幼保の制度的一元化へ向けた検討を進めていくべきである。
さらに、かかる制度見直しに際しては、補助負担事業見直しの見地からも検討が行われるべきである。即ち、自治事務たる保育所の運営への国の関与が強すぎるが故に、地方の要望にもかかわらず一元化ができないのであるとすれば、まずは当該関与の根拠となっている児童福祉法等にまで踏み込み、そこで規定されている保育所運営についての国の関与を根元から見直すべきである。そして、保育所の設置、運営については全面的に地方の判断に委ねるべきとの合意が形成されるのであれば、それに併せて保育所運営費負担金等の国による補助負担金の一般財源化等も検討されるべきと考える。
現在、内閣において検討が進められている構造改革特区に関連して、幾つかの地方公共団体から幼保一元を可能とする旨の要望が出されている。特区をパイロットケースとして先行させるのも一案であろうが、当会議としては、上記のように幼稚園、保育所に対する国の関与を根元から見直し、併せて当該関与の裏打ちをなす補助負担金も見直すことで、基本的に地方ごとの判断で一元化も可能とする方向での検討を求めたい。そして、地方ごとの創意工夫を生かした積極的取組みを可能とすることで、政府が目標とする待機児童の解消も、より一層促進されるものと考える。
【 地域における保健・医療・福祉の一層の総合化の推進の観点からの具体的措置 】
○ 総合化等が可能な範囲の周知徹底【平成14年度中に実施】
保健所、福祉事務所、児童相談所、身体障害者更生相談所など地方公共団体に置かれている保健・福祉に関する事務所に関しては、各地方公共団体の判断によって統合が可能となっている。
住民の利便性、地域の実情等を考慮して総合行政化を進めたいと考えている地方公共団体の取組みを支援するため、これらの事務所の統合等が可能である旨の通知を平成14年度中に発出し、周知徹底を図る。
○ 総合化・統合化事例の集積と紹介【平成15年度中に実施】
地方の総合行政に関する取組みについて、平成15年度に調査を行い、効果を上げている事例を事例集として地方公共団体向けに公表することにより、地方の総合行政に関する取組みの参考に供する。
○ 教育・警察行政との連携・人事交流【逐次実施】
福祉行政が教育行政や警察行政などと連携を図りながら施策を進める必要性が高まっていることから、特別支援教育(教育上特別な支援を要する障害のある児童生徒に対する教育)、児童虐待などの分野を中心としてこれらの行政分野との連携を更に進め、福祉行政の活性化を図る。
○ 児童虐待等についての市町村の役割の強化【平成17年度までを目途に検討・結論】
件数が大幅に増加している児童虐待等については、都道府県、政令指定都市に置かれる児童相談所を中心として対応がなされているが、児童虐待の防止等に関する法律の見直し結果(平成16年秋を目途)も踏まえ、児童虐待の早期発見、発生予防等を進める観点から、市町村の役割の強化について検討を行い、平成17年度までを目途に結論を得る。
〔幼保一元問題〕
○ 事例の紹介、厚生労働・文部科学省間協議の継続【逐次実施】
地方の幼稚園・保育所の運営の参考に供するために、幼稚園と保育所の連携事例について平成14年4月からインターネットによる事例紹介を行っているが、今後、一体的運営・施設の統合の事例紹介などについて充実を図るとともに、施設・職員の配置基準等についても地方からの具体的要望を受け、幼保の一体的運営を可能な限り容易にする方向で厚生労働、文部科学両省の協議を進めていく。
○ 幼稚園教諭・保育士の資格の一元化等【平成15年度中に検討・一定の結論】
幼稚園教諭、保育士の養成課程については、両資格を取得しやすくなるよう見直された新カリキュラムが平成14年度から施行されているが、資格の一元化に向けた動きを一層促進する観点から、幼稚園教諭資格を持つ者が保育士資格を取得しやすくする方法について、平成15年度中に検討し早期に結論を得る。
また、当会議としては、次に述べる制度の一元化の環境整備を図る観点から、両資格の一元化等に向けた更なる検討を強く求める。
○ 幼稚園・保育所の制度の一元化【継続的検討】
地域における幼保の一体的運営の事例集積や、両方の資格者の増加状況等を踏まえつつ、並行して幼保の制度そのものの一元化について検討を行う。
当会議としては、地方からの強い一元化要望や地域における子供の養育の実態等に鑑み、本件については根本にある児童福祉法等に基づく国の関与の在り方にまで遡って検討を行い、同時に補助負担事業見直しの側面から保育所運営費負担金制度等の見直しも念頭に置くべきと考える。
(2)民間企業、NPO等の多様な主体の幅広い参画による共助社会の構築
社会保障の各種サービスは、既に多様な主体によって供給されているが、利用者の利便向上や各地域の多様な取組みが可能となるよう、一層の民間活力の活用や、NPO等の様々な主体との連携強化に向けた取組みを行うべきである。
この問題は「官から民へ」という規制改革の流れの中で多くの検討がなされているが、地方分権改革の立場からも、国による地方への関与が民間主体の参画を妨げていないかとの観点、さらに、単に民間や市場へ委ねるということではなく、地方公共団体と多様な民間主体や地域住民との協働による共助社会の構築を進める観点から、引き続き重視して参りたい。
【 民間企業、NPO等の多様な主体の幅広い参画による共助社会の構築の観点からの具体的措置 】
○ 公設民営に関する周知【平成15年度に実施】
社会福祉施設の公設民営やPFIの活用に関する実態調査を行い、平成15年度にその調査結果を地方公共団体に対して周知を行うことにより地方公共団体による多様な公立施設の運営を支援する。
この他、PFI制度を活用した公設民営については、まだ実績が少ないことから、地方公共団体向けのマニュアル等の作成、担当者を集めた研修会の開催などを継続的に行うことにより地方の取組みの参考に供する。
○ 民間主体の一層の事業参入【逐次実施】
在宅福祉やケアハウス、保育所などNPOや民間企業の参入が可能となっている分野において、地方からの要望も踏まえ、多様な事業主体による多様なサービス供給が行われるよう支援を行っていく。
○ 保育所の公設民営の促進【措置済み】
平成12年3月に保育所の設置主体の制限を撤廃し、NPO、株式会社等による保育所の運営を可能にするとともに、平成13年11月に児童福祉法の改正により公設民営を促進する旨を児童福祉法に規定し、国庫補助、起債等について公設民営を行う場合の促進策を講じている。
○ 公設民営型ケアハウスの整備促進【措置済み】
民間企業等によるケアハウスの設置・運営を可能にするとともに、平成13年度第1次補正予算において、PFI法に基づく選定事業者が公設民営型ケアハウスの設置を行う場合の買取り費用について国庫補助の対象としている。
○ 水道事業に関する業務委託【措置済み】
平成14年4月から、浄水場の運転管理や水質管理等、高い技術力を要する業務を他の水道事業者又は当該業務を実施できる経理的・技術的基礎を有する民間事業者等に委託することを可能としている。
地方の行政執行体制に対する国の関与の廃止・縮減の方針は、先の総合行政化の推進においても述べたところであるが、従来から議論されてきている必置規制――地方行政の組織や職員の資格・配置等に関する国による義務付け――のような国の関与については、常に、単独のテーマとして全般的、経常的に見直しがなされることが必要である。
これまでも社会保障分野においては、積極的に必置規制等の見直しが図られてきているが、今後のより一層の見直しに向けて、当会議として以下の提言を行うものである。このうち、国の当局と意見の隔たりの大きい保健所長の医師資格要件の問題について若干付言する。
(保健所長医師資格要件の廃止)
住民の健康と安全を確保するためには、保健所長(福祉事務所等との統合機関の場合は、保健所部門の長)は医師でなければならないというのが、国の主張である。これに対し当会議の立場は、保健所に医師が必須である点は認めた上で、場合によっては地方公共団体の判断で、保健所長は医師ではない者を充てるという選択肢も認めるべきであるというものである。
こうした要望は、以前より地方公共団体から寄せられている。地方の責任において、保健所ないし保健所部門の適切な人員配置を行いたいとの意思と意欲のある場合に、「国から地方へ」の基本方針に照らせば結論は自ずと明らかであると考える。それは決して住民の健康と安全を軽視するということではなく、より適切な保健所運営、より適切な健康と安全の確保に向けた地方ごとの主体的判断を尊重するということであり、当会議としてはかかる地方要望に応えるべく、国に見直しを求めたい。
【 必置規制的なものの全般的、経常的な検証と見直しの観点からの具体的措置 】
〔行政組織に関する必置規制の見直し〕
○ 児童相談所・児童福祉司を含めた児童福祉サービスの在り方についての検討【平成16年を目途に検討・結論】
児童福祉サービスの提供体制について、都道府県や政令指定都市に置かれている児童相談所や児童福祉司の在り方を含め、平成13年12月から社会保障審議会児童部会で行われている議論を踏まえながら子どもを取り巻く環境の変化に対応するよう見直しを進め、平成16年を目途に結論を得る。
〔職員に関する必置規制の見直し〕
職員の資格要件をはじめ職員に関する必置規制等については、地方の裁量を広げる方向で不断の見直しを行う。具体的には以下のものについて見直しを行う。
○ 任用資格の在り方の見直し【平成18年度までを目途に実施】
身体障害者福祉司、知的障害者福祉司の任用資格について、より一層の活用を図る観点から任用に係る効率的な研修制度の在り方を含め検討を行い、身体障害者・知的障害者福祉制度に係る次期見直し(平成18年度までを目途)の際に措置する。
○ 社会福祉主事に係る規定の在り方の見直し【平成14年度を目途に検討・結論、平成15年度を目途に実施】
社会福祉主事について、より一層の活用を図るための方策について規定の在り方を含めて検討を行い、平成14年度を目途に結論を得て、平成15年度を目途に措置する。
○ と畜検査員の在り方の見直し【平成15年を目途に実施】
牛海綿状脳症(BSE)の発生に伴い、食肉の安全性を確保するために獣医師が機動的にと畜検査に関われるように、食品安全対策の見直しの一環として、と畜検査員の在り方についても見直しを行い、当該見直しの結果を踏まえて平成15年を目途として提出する法改正で併せて措置する。
○ 保健所長の医師資格要件の廃止【平成14年度中に検討開始】
保健所への医師の必置を維持しつつ、保健所長の医師資格要件の廃止については、平成14年度中に厚生労働省において保健所長の職務の在り方に関する検討の場を設ける。
なお、当会議としては、当該検討の場において保健所長の職務に関する関係者間の幅広い議論が行われ、その上で医師資格要件廃止の方向で見直しがなされることを強く求める。
〔審議会等に関する必置規制の見直し〕
○ 審議会等を目的別に区分の上、必置規制を全面的に見直し【平成16年から平成18年度までを目途に段階的に実施】
都道府県等に置かれる審議会等を目的別に分けて見直しを行う。なお、審議会等の名称規制については廃止する方向で見直す。
(政策の企画立案に関する意見を述べる審議会等)
主として政策の企画立案に対して意見を述べる審議会等については、地方公共団体が独自の判断で設置できるようにする方向で見直しを行う。当面、具体的には以下のものについて見直しを行う。
・ | 職業能力開発に関する審議会等(次期法改正(平成18年度までを目途)の際に措置) |
・ | 地方精神保健福祉審議会(次期法改正(平成17年を目途)の際に措置) |
・ | 都道府県生活衛生適正化審議会(適正化規程の認可等の付議事項が生じた場合にその都度設置すれば足りる旨を平成14年1月に周知) |
(第三者機関的な審議会等)
個人の具体的権利義務に関わる処分を行う第三者機関として設置が義務付けられている審議会等について、そうした機能の必要性は前提としながら、組織・設置の在り方については地方公共団体の判断を尊重する方向で検討を行う。当面、具体的には以下のものについて見直しを行う。
・ | 結核診査協議会(結核対策全体の見直しの中で検討し、当該見直しの結果行われる法改正(平成16年を目途)において措置) |
・ | 感染症診査協議会(結核対策全体の見直しの中で検討し、当該見直しの結果行われる法改正(平成16年を目途)において措置) |
・ | 地方社会福祉審議会(次期法改正(平成18年度までを目途)の際に措置) |
・ | 都道府県児童福祉審議会(平成14年度中に検討の結論を得て、直近の法改正(平成17年度までを目途)時に措置) |
(4)知恵とアイディアの地域間競争を視野に入れた、国の関与の見直しによる地方の自主性・自立性の強化
当会議は中間報告において、地域住民の選択に基づくローカル・オプティマムの実現や、知恵とアイディアの地域間競争の促進を図っていく方向で、国の関与を見直していくべきであるとしたところである。
社会保障制度の根幹にかかる部分は国が負うべきものとしても、真に必要最低限のもの以外は可能な限り地方の判断、地方の裁量に委ね、地方の責任において行政を展開し、それを住民が評価していく体制に移行していかなければならない。それは決して社会保障行政の後退ではなく、地方が判断する部分の拡大である。その結果としての地域間の違いは、それが地域の実情を踏まえ、地域住民の優先順位に則ったものである限り、国が心配すべき「格差」ではなく、尊重すべき地域間の「差異」であり、その地域の個性である。
かかる基本方針の下、当会議として以下の提言を行うものであるが、このうち国の当局との意見の隔たりの大きい保育所調理施設問題について若干付言する。
(保育所調理施設の見直し)
保育所は家庭に代わる機能を有するものであり、台所のない家庭がないのと同様、調理施設のない保育所はない、というのが国の立場である。
当会議としても、保育所に調理施設はあってよいと考える。しかし、必ず調理施設を設置しなければならないと国が一律に義務付ける必要性は認められない。こうした国による最低基準の義務付けが、地方の判断による機動的な保育所の設置や運営を妨げているとすれば、政策そのものとしても疑問であり、また、今日の社会情勢や食品保存・流通技術に鑑みれば、何故そこまで国が義務付けなければならないのかが不明である。
現在、この義務付けは省令で定められており、当該要件を満たさなければ国から保育所施設整備の補助負担金が交付されない仕組みとなっている。こうした保育所に対する補助負担制度が地方の自主的判断を過度に損なっているとすれば、先に述べた幼保一元の観点からの保育所運営費負担金等の検討と併せ、本件との関連で保育所等の社会福祉施設に対する施設整備費補助負担金を見直し、その一般財源化等も検討されるべきと考える。
なお、その他の国による最低基準等の義務付けに関しても、かかる国の関与が補助負担制度によって担保されている場合においては、当然のことながら国の関与の見直しと同時に、対応する補助負担金についても廃止・縮減が図られるべきであると考える。
【 知恵とアイディアの地域間競争を視野に入れた、国の関与の見直しによる地方の自主性・自立性の強化の観点からの具体的措置 】
〔国が設定している各種最低基準等の見直し〕
○ 特別養護老人ホームのホテルコストの利用者負担【平成15年度に実施】
平成15年度の介護報酬の改定において、全室個室、ユニットケアの居住福祉型特別養護老人ホームに係る介護報酬項目を設け、低所得者に対する配慮を行いながら、その居住費部分を利用者負担とする方向で検討を行い、措置する。
○ 保育所の調理施設の見直し【平成14年度中に実施、継続的検討】
保育所の調理施設設置に係る義務付けについての検討を継続する一方、当面、調理施設に係る防火構造の義務付けについては緩和する方向で検討し、平成14年度中に措置をする。
なお、当会議としては、保育所の調理施設の設置は国が全国一律に義務付けを行うべきでなく、地方公共団体が地域の実情に合わせて判断を行うべきと考えることから、当該義務付けを廃止する方向での検討を求めたい。
○ 国が全国的に保障するサービス水準の全般的、経常的見直し【継続的検討】
当会議の方針を踏まえ、国が設定している最低基準等について今後とも全般的、経常的に見直しを行う。国が全国的に確保するサービス水準を引き下げ、地方の裁量に委ねてよい部分を拡大する余地がないか随時検証し、併せて関連する国庫補助負担金等の財政措置の在り方についても見直す。
○ 補助事業に係る統合等についての見直し【継続的検討】
社会保障分野における国庫補助事業について、地方公共団体の創意工夫の余地を広げるため、共通の目的を持つ補助事業を統合し、補助金交付は総額で行い、各補助事業への配分については地方公共団体の裁量に任せる統合補助金的な補助金制度の創設について検討を行う。
○ 医療法人の理事長要件の緩和 【措置済み】
病院経営と医療管理とを分離して医療機関運営を行う道を開くため、合理的な欠格事由のある場合を除き、理事長要件を原則として撤廃する通知を平成14年4月に発出した。
○ 保育所に係る職員・施設基準の見直し【措置済み】
保育所の短時間勤務保育士の配置制限の撤廃、保育所の分園数の上限を撤廃する通知を平成14年5月に発出した。
○ 児童扶養手当に関する見直し【措置済み】
児童扶養手当について、就労等による自立を促進する等の観点から、平成14年8月から所得制限等の見直しを実施しており、また、受給期間が5年を超える者に対して給付を減額する等の改正法案を平成14年3月に国会に提出した。
〔地方がより主体的に事務事業を行うための国の関与の見直し〕
○ 公立福祉施設の整備に対する負担規定の補助規定化【平成18年度までを目途に実施】
公立の社会福祉施設(特別養護老人ホーム等)の整備が地方の事務であることをより明確にするため、施設整備に対する国・都道府県の負担規定については、関係省庁と連携しながら補助規定化する方向で検討を行い、次回の法改正(平成18年度までを目途)の機会をとらえて措置する。
○ 福祉事務所設置等の際の同意を要する協議の廃止【平成18年度までを目途に実施】
町村が福祉事務所を設置・廃止する場合の都道府県の同意を要する協議については、現在の町村福祉事務所の在り方に関する調査を実施した上で廃止する方向で検討を行い、次回の社会福祉法の改正(平成18年度までを目途)時に措置する。
○ 児童相談所の建築等に要する費用負担に関する同意を要する協議の廃止【平成14年度中に実施】
児童相談所、児童福祉施設又は職員の養成施設の用に供する建物の建築、買収又は改造に要する費用の負担に関する厚生労働大臣の同意を要する協議については、廃止する方向で検討を行い、平成14年度中に必要な政令改正を行う。
○ 市町村の判断のみで給付可能な補装具の種目の追加【平成15年度中に検討・結論】
身体障害者更生相談所の判定を要さずに市町村のみの判断で給付ができる補装具の種目の追加については、平成7年7月及び平成13年6月の改正の効果や現場の反応等を見極め、関係者からの要望の集積を踏まえながら平成15年度中に更なる追加が可能かどうか判断する。
○ 知的障害者地域生活援助事業の開始に関する厚生労働大臣の事前協議の廃止 【措置済み】
知的障害者地域生活援助事業の開始に関する厚生労働大臣の事前協議について、平成14年3月に通知の改正を行い、これを廃止した。
〔住民により身近な行政主体への権限の移譲〕
○ 知事資格の養成施設の指定等の権限の移譲【平成18年度までを目途に実施】
知事資格とされている栄養士、調理師、製菓衛生師に係る養成施設の指定等の国の権限については、都道府県における事務の効率的な執行等の観点から、次期法改正(平成18年度までを目途)時に国から都道府県へ権限を移譲するための改正を行う方向で検討を進める。
○ 障害児の施設入所決定事務の市町村への移譲【平成18年度までを目途に検討・結論】
障害児・障害者に係る事務について、市町村で一元的な実施を進める観点から、平成15年度から施行される支援費制度の実施状況を勘案しつつ、障害児の施設入所決定の事務に係る権限を都道府県から市町村に移譲する方向で検討を行い、平成18年度までを目途に結論を得る。
年金・医療等の社会保険分野においては、現在、制度の抜本的見直しが進められている。この分野においては、多くが国の事務である中で、国民健康保険と介護保険については地方の事務とされているところであり、当会議としては以下に述べるように、特に国民健康保険に関し、市町村の現状を十分に踏まえて制度見直しの検討が進められるべき点を強調したい。
【社会保険分野における国・地方の関係に関する具体的措置】
○ 国民健康保険の保険者の在り方の見直し【平成14年度中に検討・結論】
小規模な国民健康保険の保険者については、保険者の広域化支援策が講じられているが、平成14年度中に策定される保険者の統合・再編等に関する基本方針の検討においては、市町村の現状を十分踏まえながら検討を行う。
○ 介護保険の運営実績を踏まえた国の関与の在り方の見直し【逐次実施】
介護保険に関する国の関与の在り方については、制度の成熟度や定着度等も勘案する必要があるが、介護保険法施行後5年を目途に行うとされている制度の見直しも念頭に置きつつ、地方公共団体からの具体的要望を受けて、随時必要な検討を行い、所要の措置を講ずる。
国と地方の事務事業の在り方は、当然ながらそれを担う受け皿としての国・地方の行政体制の在り方と密接に関連するものであり、この観点から、当会議としては地方分権改革と省庁再編の結果、新たな位置付けがなされた国の出先機関である地方支分部局の役割等について引き続き注視していくべきであると考える。
以下においては、一般的な提言に続けて、具体的な事例として、社会保障分野において新たに生まれた地方支分部局である地方労働局に関する具体的措置の提言を行うものである。
【 地方支分部局と地方の新たな関係の構築の観点からの具体的措置 】
○ 行政手続の地域での完結【逐次実施】
地方支分部局の実質的決定権の拡大を図るよう、中央省庁に継続的検討を求めるとともに、例えば、所掌事務についてのマニュアル充実等の条件整備を進め、地方支分部局限りで事務が行えるような体制の確立を進める。
○ 雇用対策における積極的な情報交換等の推進【逐次実施】
雇用問題に関する地方の高い問題意識を十分踏まえ、積極的な情報交換を進めるとともに、求人相談に関し地方公共団体が「しごと情報ネット」を活用することにより国のハローワーク等との有効な連携が図られるよう努める。
○ 高齢者、障害者等地域性の強い施策に係る職業紹介についての都道府県への開放【平成14年度中に検討・結論】
高齢者、障害者などを対象とした地域性の強い施策を展開する上で必要な職業紹介については、国と地方の二重行政となることのないよう配慮をしながら、都道府県も一定の役割が担うことができる方向で検討を行い、平成14年度中に結論を得る。
地方分権改革推進会議に課せられた課題は、「地方にできることは地方に委ねる」との原則に基づき、国と地方の役割分担を明確化することによって、国は、国でなければ果たしえない役割に徹し、地方は、地域住民の自主的な選択によってそのニーズに応えられる公共サービスを提供する総合行政の主体としての役割を果たし得る存在へとしていくことである。
この課題を達成するため、本意見においては、広く内政全般にわたり、国の地方への関与の廃止・縮減を図るべく、国が取るべき措置についてできる限り具体的にかつ期限を明示するよう努めるとともに、各省庁と合意できなかった事項についてもあえて当会議としての見解を示している。今後、国の地方への関与の廃止・縮減と、それに基づく国庫補助負担事業の廃止・縮減の議論は、経済財政諮問会議を始めとする政府部内での議論へとその場を移すことになる。
他方、地方の側にも、地方分権改革の担い手としての覚悟と体制整備を求めたい。当会議は、地方分権改革の制度的枠組みを提示することはできるが、それを具体化し、改革の果実を住民に提供することは、正しく全ての地方公共団体に課せられた責務なのである。
今後、当会議の審議は次の段階に移行する。本意見で示した国と地方の役割分担に基づき、また年末までに取りまとめられる国庫補助負担事業の廃止・縮減についての政府の方針を踏まえ、国と地方の税財源配分の在り方について、基本方針2002に示されているとおり国庫補助負担金、地方交付税交付金及び税源移譲を含む税源配分を三位一体で検討していく。併せて、地方行財政改革の推進等行政体制の整備についても、全ての市町村において市町村合併に向けた真剣な検討が行われ、具体的な成果につながることを期待するとともに、新たな行政体制の在り方を検討する予定である。
今後とも、政府、地方公共団体はもとより、自主・自立の地域社会を目指す全ての関係者の理解と協力を願うものである。
議長 | 西室 泰三 | 株式会社東芝取締役会長 |
議長代理 (小委員長) | 水口 弘一 | 株式会社野村総合研究所元社長 |
委員 | 赤崎 義則 | 鹿児島市長 |
岩崎美紀子 | 筑波大学社会科学系教授 | |
岡崎 洋 | 神奈川県知事 | |
神野 直彦 | 東京大学大学院経済学研究科教授 | |
竹内佐和子 | 東洋大学経済学部教授 | |
寺島 実郎 | 株式会社三井物産戦略研究所所長 | |
森田 朗 | 東京大学大学院法学政治学研究科教授 | |
吉田 和男 | 京都大学大学院経済学研究科教授 | |
吉永みち子 | ノンフィクション作家 |
【平成14年】
開催日 | 会議名及び議題 |
7月9日(火) | 第21回本会議〔フリートーキング(今後の審議の進め方等)〕 |
7月29日(月) | 第22回本会議〔総務省ヒアリング(国庫補助負担事業、国庫補助負担金の在り方等)、フリートーキング〕 |
8月29日(木) | 第23回本会議〔財務省ヒアリング(国庫補助負担事業、国庫補助負担金の在り方等)、フリートーキング〕 |
9月3日(火) | 第24回本会議〔地方3団体ヒアリング(全国知事会、全国市長会、全国町村会)〕 |
9月12日(木) | 第20回小委員会〔文部科学省ヒアリング(教育、文化)、フリートーキング〕 |
9月20日(金) | 第21回小委員会〔厚生労働省ヒアリング(社会保障)、フリートーキング〕 |
9月24日(火) | 第22回小委員会〔国土交通省ヒアリング(1)(公共事業)、フリートーキング〕 |
9月27日(金) | 第23回小委員会〔環境省ヒアリング(公共事業)、国土交通省ヒアリング(2)(公共事業)、フリートーキング〕 |
10月1日(火) | 第24回小委員会〔農林水産省ヒアリング(公共事業、産業振興)、フリートーキング〕 |
10月4日(金) | 第25回本会議〔有識者ヒアリング:(1)梶原拓岐阜県知事、(2)黒澤丈夫群馬県上野村長、(3)加藤秀樹構想日本代表〕 |
10月7日(月) | 第25回小委員会〔分野別各論の論点の審議〕 |
10月10日(木) | 第26回小委員会〔分野別各論の論点・総論(骨子案)の審議〕 |
10月18日(金) | 第26回本会議・第27回小委員会合同会議〔意見(素案)の審議〕 |
10月24日(木) | 第27回本会議・第28回小委員会合同会議〔意見(案)の審議〕 |
10月29日(火) | 第28回本会議〔意見(案)の審議〕 |