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平成14年8月29日

厚生労働省の科学技術政策について

 標記については、厚生科学審議会科学技術部会科学技術政策にかかかる専門委員会において、厚生労働省の所管する科学研究の重要性の高まりを踏まえ、厚生労働省の科学技術の研究課題や推進方策について総合的に検討を行っておりましたが、今般、別添のとおり取りまとめが行われ公表いたしましたので、お知らせいたします。


照会先
厚生労働省大臣官房厚生科学課
(代表)03−5253−1111
(直通)03−3595−2171
担当・内線 中垣(3803)原口(3804)


厚生労働省の科学技術政策
厚生科学審議会
専門委員会取りまとめ

基本的考え方
ゲノム・たんぱく質科学関連技術やナノテクノロジー等生命科学の発達により、
・先端科学を活用して先端医療を実用化し、普及を図る
 ゲノム創薬、再生医療関連技術、人工臓器を含む新たな医療機器開発、臨床研究の推進によるテーラーメイド医療のノウハウの確立
・予防科学を活用して疾病予防を進め、健康寿命の延伸を図る
 遺伝子診断や、生体異常の指標(バイオマーカー)、高度画像解析機器等を利用した早期診断を行うとともに適切な時期に予防策を講じる新公衆衛生戦略の推進、生活習慣病の予防知識の普及
・安全科学を活用して安全な食品等を提供し、生活上の高度な安全・安心を確保
 微量検出技術の開発、リスク分析の考え方に基づく安全対策が可能となりつつある。そこで、治験推進体制の整備、臨床研究の推進による知見の集積等の関係施策とともに、研究開発を推進し、これらの実現を目指す。
少子高齢化への対応(疾病構造の変化への対応、社会保障制度の安定)
倫理問題への対応、国際的貢献
研究課題
先端科学技術の開発と応用(ゲノム・たんぱく質科学、ナノ・メディスン等)をはじめとする11課題に取り組む。
科学技術をめぐる状況
1.社会状況変化
少子高齢化、情報化の進展
2.生命科学の進展
本格的ポストゲノム時代の到来
ヒト幹細胞の研究の進展
3.安全確保等の要請の高まり
先端医療技術の臨床応用の進展、遺伝子組換え食品の広がり
自殺者の増加、児童虐待の深刻化、労働災害の状況
4.行政の取り組みの進展
ミレニアムプロジェクト、メディカルフロンティア戦略
対がん10ヵ年戦略、障害者基本計画
健康日本21、健康増進法
推進方策
1.研究体制
公募や適切な研究評価による開かれた研究体制の確保
独創的発想による成果を期待できる競争的研究資金を活用
政策医療ネットワークなど公私の医療機関・医師等との連携
2.研究機関の整備と効果的運営
中核となる拠点を整備し、大型の実験施設の活用等、研究機関の連携を推進
(ゲノムの大規模解析、たんぱく質の大規模解析、ES細胞の樹立、研究用資源の確保、臨床研究データマネージメントなど)
3.人材育成
研究に必要な人材、医工学連携分野、臨床研究コーディネーター、生命倫理分野の専門家
研究評価の担当者、若手研究者、研究指導者
4.産学官連携と技術移転
技術移転機関(TLO)の設置
研究成果物の機関帰属への転換及び報奨金規定の整備
医薬品産業や医療機器産業についての戦略を策定
研究成果データベースを整備


研究課題

1.先端科学技術の開発と応用
ア.ゲノム・たんぱく質科学関連技術
 糖尿病、高血圧、がん等社会的影響の大きい疾患に関わるヒトゲノムの多型解析や、疾病・薬剤反応関連遺伝子の解析を進め、テーラーメイド医療の実現を図る。また、ゲノム創薬、医薬品候補物質のスクリーニング手法(トキシコゲノミクス)の確立、たんぱく質・ペプチドの機能・構造解析と応用、遺伝子治療、細胞治療や再生医療、移植医療の安全確保と推進に取り組む。
イ.ナノテクノロジーや情報通信技術等の先進技術を活用した融合領域
 世界的にも高水準のナノ生物学や超微細加工技術、画像診断技術等の融合的研究を進め、身体機能の解析 (高度画像解析機器)、身体機能の補助(手術ロボット)、身体機能の代替(人工臓器・組織)等への応用を進める。また、患者や障害者のニーズに基づく生活支援・社会参加を促進する機器の開発や、ナノテクを医療に応用するナノメディシン(病態解明、薬物伝送システム、小型・精密治療機器)の研究を進める。

2.少子高齢化に対応した生活習慣病をはじめとする疾患の予防、治療等に関する研究
 最先端科学を活用したがん、循環器疾患、糖尿病等の生活習慣病に係る本態解明及び予防・治療等に関する研究
 根拠に基づく医療(EBM)等の推進
 生活習慣病の予防
 妊娠障害の機序解明及び治療法の研究

3.感染症及び免疫系疾患に関する研究
 新興感染症等の病原体の解明、ワクチン・抗生物質開発、検査・サーベイランス・流行予測等の感染症対策
 アレルギーなど免疫系疾患、特に難治性の自己免疫疾患の予防・診断・治療法の開発

4. こころの健康と精神疾患、神経・筋疾患等に関する研究
 分子的・遺伝的研究、脳画像のモニタリングなどによる発症機構の解明及び診断・予防・治療法の開発
 こころの健康問題の研究及びこころの健康管理・精神的ケアの展開
 精神疾患、難治性の神経・筋疾患の病因解明と予防・診断・治療法の開発
 精神作用物質依存及び司法精神医学

5.食品、医薬品、医療・福祉機器及び化学物質に係る安全の確保
ア.リスク分析の考え方に基づく適正な対策の実施
イ.食品安全の確保
 食中毒情報をはじめ、食品に関する安全情報の収集・評価・提供や、新たな試験分析方法を開発し、適切に監視を実施。特に、迅速・簡便・確実に遺伝子組み換えの有無を検知し、混入率を測定する方法や、特定保健用食品素材の安全性・有用性、添加物等の化学物質の迅速・効果的な分析法や安全性の評価手法の研究開発を推進。また、牛海綿状脳症発生のメカニズム及びリスクの解明に関する研究を推進。
ウ.医薬品及び医療・福祉機器の有効性・安全性及び適正使用に関する研究
エ.化学物質に係る安全確保
オ.水道水の安全確保
カ.生活環境の安全確保

6. 医療安全対策と健康危機管理の推進
ア.医療安全対策
イ.健康危機管理の推進

7.臨床研究の活性化と研究成果の活用
ア.基礎研究の成果を臨床につなぐ橋渡しの研究(トランスレーショナル・リサーチ)の推進
イ.画期的医薬品等の実用化のための治験や根拠に基づく医 療の推進のための臨床研究の推進
ウ.ゲノム疫学研究やコホート研究などの大規模疫学研究の推進
エ.高齢者、障害者等のQOLの向上に関する研究の推進
オ.組織・細胞・遺伝子バンク等研究資源の確保

8.労働安全衛生の向上
ア.ロボット・自動化技術等の労働災害防止対策への活用
イ.労働安全衛生分野における機械、工法、材料等のリスク評価に関する研究
ウ.人間工学の応用と労働環境の改善
エ.産業社会の変化による労働者の生活と健康上の課題に関する研究
オ.作業有害因子の生体影響及び労働者の健康に関わる予防対策の推進

9. 社会保障政策に関する研究
ア.社会保障政策に関する研究及び政策推進のための内外における情報、データの収集・分析等
イ.研究成果の大学等への提供を通じた社会保障研究及び人口問題研究の振興、国民への普及による理解の形成並びに国民合意形成の推進

10.生命倫理への配慮とパブリック・アクセプタンスの確保
  倫理問題に配慮したガイドラインの策定、生殖補助医療に係る法整備や、情報提供等患者が安心して協力できる仕組みづくりに取り組む。また、研究の透明性確保や先進医療を受ける機会の提供等の観点からの情報提供に努める。

11. 国際貢献の推進
ア.途上国の社会保障制度の構築や人口政策への協力
イ.世界的な感染症対策を推進するための政策及び研究での協力
ウ.世界的な生活習慣病等の疾患対策を推進するための研究及び教育での協力
エ.産業安全・労働衛生に関する国際的な研究協力の実施
オ.食品、医薬品、医療・福祉機器の基準の国際調和の推進への積極的貢献及び水道水質の国際ガイドライン策定への貢献


推進方策

1.研究体制
研究課題の公募を原則とするとともに、適切な研究評価による開かれた研究体制の確保
レギュラトリー・サイエンスの分野においても、独創的発想による成果を期待できる競争的研究資金を活用
政策医療ネットワークをはじめ公私の医療機関・医師、地方衛生検査所等との連携

2.研究機関の整備と効果的運営
 次の分野について中核となる拠点を整備し、大型の実験施設の活用等、研究機関の連携を推進。
(1)ゲノムの大規模解析(国立がんセンター)
(2)たんぱく質の大規模解析(医薬基盤技術研究施設(仮称))
(3)遺伝子治療に用いるベクターの安全性確保(国立医薬品食品衛生研究所、国立感染症研究所)
(4)ES細胞の樹立(国立成育医療センター)
(5)研究用資源の確保
  (霊長類:国立感染症研究所 (カニクイザル)
国立精神・神経センター(マーモセット)
  細胞、遺伝子等:医薬基盤技術研究施設(仮称)
  薬用植物:国立医薬品食品衛生研究所)
(6)先進医工学、ナノメディシン(国立循環器病センター)
(7)臨床研究データマネージメント(国立国際医療センター、国立がんセンター)

3.人材育成
研究に必要な人材、医工学連携分野、臨床研究コーディネーター、生命倫理分野の専門家
研究評価の担当者、若手研究者、研究指導者

4.産学官連携と技術移転
 技術移転機関(TLO)の設置、研究成果物の機関帰属への転換及び報奨金規定の整備
 医薬品産業や医療機器産業について、長期的視点に立った戦略の策定
 研究成果の活用や国民の理解の増進のため、研究成果データベースを整備


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