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III 平成6年の在職老齢年金制度改正の効果に係る検討

厚生年金被保険者比率

(1) 平成6年改正において、在職老齢年金制度に関し、手取額を賃金の増加に応じて逓増させるという大きな制度変更が行われた。しかしながら、近年における「人口に占める厚生年金被保険者の割合」の推移をみた場合、改正前後で変化はうかがわれない。(図14、図15、図16)

(2) 一方で、「人口に占める在職老齢年金受給者の割合」は平成6年を境に顕著に増加している(特に女性)。

(3) これらからみる限り、平成6年改正は60歳前半層における全体としての厚年被保険者の拡大に必ずしもつながらず、むしろ被保険者集団の中での在職老齢年金の受給者の相対的拡大(年金受給権を行使せずに就労する者の相対的減少)をもたらした可能性がある。

(参考)平成8年高年齢者就業実態調査報告によれば、在職老齢年金受給者のうち、男の14.5%。、女の3.3%が「新たに就業した」としているものの、男の79.6%、女の95.4%は「影響しなかった」としている(図17)。


賃金(標準報酬)

(1) 一方、高齢者の標準報酬分布の変化をみても、平成6年の改正前後で在職老齢年金受給者に係る賃金(標準報酬)の変化はうかがわれない。(図18)

(2) このことから、平成6年改正前の仕組み(各年金額ごとに賃金(標準報酬)の多寡にかかわらず手取額がほぼ一定となるよう年金額が調整される仕組み)を前提とした企業の賃金決定行動が、改正後においてもなお維持されている可能性がある。

(参考)平成8年高年齢者就業実態調査報告によれば、賃金決定の際に在職老齢年金受給額を考慮したとする事業所の割合は、改正前28.5%、改正後30.2%であり、改正前後で大きな変化はない。

(図14)

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(全体)−人口に占める割合−

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(全体)−人口に占める割合−
出典:「労働力調査」(総務庁)、「事業年報」(社会保険庁)
厚年被保険者については「事業年報」(社会保険庁)より推計


(図15)

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(男子)−人口に占める割合−

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(男子)−人口に占める割合−
出典:「労働力調査」(総務庁)、「事業年報」(社会保険庁)
厚年被保険者については「事業年報」(社会保険庁)より推計


(図16)

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(女子)−人口に占める割合−

60歳前半層の者にかかる就業等の状況(女子)−人口に占める割合−
出典:「労働力調査」(総務庁)、「事業年報」(社会保険庁)
厚年被保険者については「事業年報」(社会保険庁)より推計


(図17)

在老受給者について制度改正(平成6年)の就業面に与えた影響について

在老受給者について制度改正(平成6年)の就業面に与えた影響について
資料出所:労働省「平成8年高年齢者就業実態調査」


(図18)

標準報酬月額別在老受給者(新法厚年)数・割合

在老受給者について制度改正(平成6年)の就業面に与えた影響について
出典:事業年報(社会保険庁)


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