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資料4
ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)心理学・カウンセリング部門
不妊カウンセリングのガイドライン

不妊カウンセリングの定義 確定したものはない

患者中心ケア(patient-centered care)とカウンセリング(counselling)を区別している
 ‐患者中心ケアは医療機関でルーティン業務の一部として提供される。このアプローチはすべての医療チームメンバーにいつでも期待される。目的は患者とスタッフのコミュニケーションプロセスを促進し、患者を単なる生物的存在ではなく一個人として尊重することである。不妊カウンセラーも医療チームの一員としてこのケアに関わるが、カウンセリングは熟練した不妊カウンセラーのみが行う。

イギリスにおける不妊カウンセリング(Bryan & Higgins, 1995より)
 1990年の受精胎児問題条例(HFE法)以来、公認の施設で治療を受けているすべての不妊カップル、配偶子や胚を提供しようと考えているすべての人々、さらに18歳以上のすべての子どもが、遺伝情報を詳しく知ることができるカウンセリングを受けられるようになった。

カウンセリングの主体:
 初期には熟練したカウンセラーが不足→現在では英国不妊カウンセリング協会(BICA)の援助で養成

カウンセリングの客体:
 療法のパートナーに対して個別あるいは両者一緒に、あらゆる治療と共に行われるべきもの

問題を抱えていてカウンセリングが必要なカップルでも、受けたがらないことがある。特に男性にその傾向が強いが、そのような人にこそカウンセリングが必要である

カウンセリングの目的:
 カップルによって目的は異なる 個別的ケアの重視

不妊カウンセリングの4つの側面:

(1) 情報カウンセリング(giving information):すべてのカップルは、不妊の検査、治療、およびその成績についての事実に基づいた情報、指導を受けるべきである。この情報は担当の不妊専門医によって無条件に提供されるべきものであるが、患者はしばしば余裕のある第三者とも相談したいと考える。そのため、治療施設で印刷物が用意されている他、受精胎児問題管轄局(HFEA)やボランティア団体などでも役に立つ印刷物を提供してくれる。
(2) 影響カウンセリング(implications counselling):カップルに対して、あるいはすでに子どもがいればその子どもを含めたすべての関係者に対して、彼らが選べる選択肢の、それぞれの結果について考える手助けをする必要がある。この探索は、時には感情的に非常に苦痛であったり、大変時間がかかったり、進めていく上で精神的に難しい問題が持ちあがったりする。IVFを行うにあたって何個の受精卵を移植するか、あるいは残りの凍結された受精卵をどのように取り扱うかといった、きわめて現実的でかつ感情的な問題には、特に慎重な配慮が必要である。
(3) 支援カウンセリング(support counselling):不妊の検査や治療はしばしばかなりのストレスとなる。特に、生殖補助技術による受胎が失敗した後や、これ以上治療が続けられなくなってしまった時には、精神的な支援が必要である。多くのカップルは、友人、身内の人々、ボランティアの支援を必要とするが、そうした人々自身の多くも、カウンセラーの指導が有効である。
(4) 治療カウンセリング(therapeutic counselling):治療カウンセリングは、癒しに重点を置いている。特に不妊カップルは厳しい環境下にあるので、そのことを理解し、受け入れるようなカウンセリングを行うことが重要である。カウンセリングが必要ないカップルもいる一方、長い間折にふれて支援が必要なカップルもいる。

・ 不妊カウンセラーの要件
 HFEAでは不妊カウンセラーの最低要件として、ソーシャルワークの学位(あるいは同等の訓練)、または英国カウンセラー協会の会員(あるいは同等の資格)を求めている。

⇒要件は国によって異なるが、最低限メンタルヘルスに関する専門的訓練を受け、不妊の医学的、心理学的側面に関する訓練を受けていることは必須としている


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