2 医師臨床研修の現状と必修化の概要
(1)医師臨床研修の現状
現行の医師臨床研修は、医師法第16条の2の規定に基づいて医学を履修する課程を置く大学に附属する病院(以下、「特定機能病院等」という。)又は、厚生労働大臣が指定する病院(以下「臨床研修病院」という。)で行われている。
平成13年4月現在、医師臨床研修を行う病院数は臨床研修病院476病院(うち一般病院461、病院群118群、精神病院15)、特定機能病院等134病院である。
全国の二次医療圏(363医療圏)のうち、臨床研修病院及び特定機能病院等を有する二次医療圏は186医療圏(全国の二次医療圏数の51.2%)であり、有さない二次医療圏は177医療圏(同48.8%)となっている。
平成11年度における医師臨床研修の対象者は、15,041人(2学年の合計)、実施者は13,079人(対象者全体の87.0%)となっており、そのうち特定機能病院等で実施する者は約75%、臨床研修病院で実施する者は約25%となっている。
(2)医師臨床研修必修化の概要
医師臨床研修制度の抜本的な改善の必要性については、過去厚生省医療関係者審議会臨床研修部会において審議が行われ、平成6年12月に、中間まとめとして、医師臨床研修を「基本的には必修とするとともに、その内容等の改善を図ることが望ましい」との意見が取りまとめられた。
これを踏まえ、同部会の下に臨床研修検討小委員会が設けられ、臨床研修の必修化を具体的に実施に移す上での論点の検討が重ねられ、平成11年2月、同審議会において医師臨床研修必修化について、その実施方法、研修内容、研修修了の認定等の大枠が取りまとめられた。
このような議論を踏まえ、医師臨床研修の必修化のための医師法等の改正を行う「医療法等の一部を改正する法律」が、平成12年11月30日に第150回国会において可決成立し、医師の臨床研修の必修化の部分については平成16年4月から施行されることとされた。
医師臨床研修に関する医師法等の改正内容は次のとおりである。
- (1) 診療に従事しようとする医師は、2年以上、医学を履修する課程を置く大学に附属する病院又は厚生労働大臣の指定する病院において、臨床研修を受けなければならない。(医師法第16条の2関係)
- (2) 臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るように努めなければならない。(医師法第16条の3関係)
- (3) 厚生労働大臣は、臨床研修を修了した者について、その申請により、臨床研修を修了した旨を医籍に登録するとともに、臨床研修修了登録証を交付する。(医師法第16条の4関係)
- (4) 臨床研修を修了した旨の登録を受けようとする者等は、実費を勘案して政令で定める額の手数料を納めなければならない。(医師法第16条の5関係)
- (5) 臨床研修を修了した旨の登録を受けた医師でない者が診療所を開設する場合には、都道府県知事等の許可を受けなければならない。(医療法第7条関係)
- (6) 病院等の開設者は、臨床研修を修了した旨の医籍への登録を受けた医師に、その病院等を管理させなければならない。(医療法第10条関係)
なお、第150回国会参議院国民福祉委員会において、「医師及び歯科医師の臨床研修については、インフォームドコンセントなどの取組や人権教育を通じて医療倫理の確立を図るとともに、精神障害や感染症への理解を進め、更にプライマリ・ケアやへき地医療への理解を深めることなど全人的、総合的な制度へと充実すること。
その際、臨床研修を効果的に進めるために指導体制の充実、研修医の身分の安定及び労働条件の向上に努めること。」について、政府は適切な措置を講ずるべきである旨の附帯決議がなされている。