○ 65歳以上の療養型病床群入院患者のうち、受け入れ体制が整えば退院可能な患者の割合は約4割とされている(平成11年10月、患者調査)。
○ また、別の調査でも、医療保険適用の療養病床等の入院患者のうち、福祉施設や在宅によって対応できる患者は約4割で、その半数は入院期間が6ヶ月を超える者であることが示されている(平成13年3月、医療経済研究機構調査)。
○ このため、次期介護保険事業計画策定のため国が定める参酌標準においては、入院医療の必要性が低い長期入院患者のうち退院の可能性が高い者について、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、グループホーム等にて受け入れることを考慮するものとする(別添1)。
○ このうち介護老人保健施設については、既存資源の有効利用の観点から、療養病床等を転換して老人保健施設を開設する「転換型老人保健施設」を特例で設けることを検討する(別添2)。
○ なお、介護療養型医療施設については、他の介護施設と比較して計画数を下回っている(別添3)。他方、入院患者のうち福祉施設や在宅によって対応できる者が4割近くを占めるとの報告もある(平成13年3月、医療経済研究機構調査)こと等を踏まえ、入院を要する患者に必要な病床数を見直し、その確保を図るとともに、介護報酬のあり方についても検討を進める。
(参考)
現在、中央社会保険医療協議会においては、入院医療の必要性が低いが患者側の事情により長期に入院している患者への対応として、療養病床等に入院している患者のうち入院期間が6ヶ月を超える者(難病、精神疾患、結核患者等の別途定める者を除く。)について、入院基本料を特定療養費化する案が検討されている。
(別添1)
参酌標準の基本的考え方
介護保険施設の利用者の総数の見込みについては、平成19年度における65歳以上人口のおおむね3.2%を標準として、地域の実情に応じて定めることが適当である。この場合においては、平成19年度における65歳以上人口に対する75歳以上人口の割合の見込みを勘案した補正を行うことが望ましい。 指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び指定介護療養型医療施設のそれぞれの利用者の数の見込みについては、それぞれ平成19年度における65歳以上人口のおおむね1.5%、1.1%及び0.6%を参考として、地域の実情に応じて定めることが適当である。 ※上記に痴呆対応型共同生活介護等を加えると、全体では3.5%となる。 |
(考え方)
(1) 平成14年度における施設サービス利用者見込み数に、療養病床等における長期入院患者のうち退院可能性が高い者の数を勘案し、その数の65歳以上人口(約2300万人)に対する割合が3.2%であることから、これを平成19年度における施設全体のサービス量見込みの標準とする。
施設種類ごとの利用者の数についても、これと同様の考え方により見込むものとする。
(2) 要介護状態となった場合でも可能な限り居宅で生活を営むことができるようにするという介護保険の基本理念を踏まえ、自宅での生活を継続することが困難な者のために多様な受け皿の整備を図る観点から、居宅サービスの中でも居所を移して利用する痴呆対応型共同生活介護及び特定施設入所者生活介護の利用者数について、新たに目標の数値として0.3%(平成19年度における65歳以上人口に対する割合)を定める。
これを上記の3.2%と合わせれば、3.5%となる。
(3) 地域によって、後期高齢者の割合が異なることから、高齢者人口に対する要介護者の発生率に差があることが予想される。地域ごとに施設サービス量の目標設定を行う際には、高齢者人口に対する比率に加え、このような要介護者の発生率を考慮することが望ましい。
※ 各地域における高齢者人口に対する後期高齢者の割合について、全国平均的な割合との乖離に応じた指標を用いることが適切である。
[参考:後期高齢者数による調整方法]
後期高齢者補正係数は、介護保険の調整交付金の交付額の算定に関する省令(平成12年厚生省令第26号)第5条に規定する後期高齢者加入割合補正係数を使用。
平成12年度における介護保険給付費財政調整交付金の算定に使用される割合をもとに算出される数値により仮置きすると、次のとおり。
0.104 |
前期高齢者加入割合×0.03+後期高齢者加入割合×0.21 |
(参考)
第1期介護保険事業計画策定の際の「参酌標準」について
※ 介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施を確保するための基本的な指針(平成11年5月厚生省告示第129号)の抜粋
別表第二
一 居宅サービス及び居宅介護支援
1 訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション及び通所介護又は通所リハビリテーション並びに短期入所生活介護又は短期入所療養介護
次に掲げる組合せを標準として、居宅要介護者等の利用に関する意向を勘案して、量の見込みを定めること。
要支援 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | ||||||||||||
通所型 | 訪問型 | 通所型 | 訪問型 | 通所型 | 訪問型 | 通所型 | 訪問型 | 痴呆型 | 医療型 | 通所型 | 訪問型 | 痴呆型 | 医療型 | 通所型 | 訪問型 | 医療型 | |
訪問介護 (回/1週) |
2 | 3 | 5 | 3 | 5 | 5.5 | 7.5 | 1 | 6.5 | 9.5 | 8.5 | 1 | 8.5 | 12 | 13 | 9 | |
うち巡回型 (回/1週) |
7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 7 | 14 | 14 | 14 | ||||||||
訪問入浴介護 (回/1週) |
0.5 | 0.5 | |||||||||||||||
訪問看護 (回/1週) |
0.25 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0.5 | 3 | 2 | 2 | 0.5 | 3 | 2 | 2 | 3 | |
訪問リハビリテーション (回/1週) |
1 | 1 | 1 | 1 | 1 | ||||||||||||
通所介護又は通所 リハビリテーション (回/1週) |
2 | 1 | 2 | 1 | 3 | 2 | 3 | 2 | 4 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 1 | 0 | 0 |
短期入所生活介護又は 短期入所療養介護 (週/6月) |
1 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 3 | 6 | 6 | 6 |
(注1) | 「通所型」とは、居宅要介護者等が主として通所サービス(通所介護又は通所リハビリテーションをいう。以下この注において同じ。)の利用を希望する場合(痴呆型を除く。)、「訪問型」とは、居宅要介護者等が主として訪問サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護又は訪問リハビリテーションをいう。以下この注において同じ。)の利用を希望する場合(医療型を除く。)、「痴呆型」とは、居宅要介護者等のうち要介護3又は要介護4に該当するもの(痴呆の状態にあるものであって寝たきりの状態にないもの限る。)が主として通所サービスの利用を希望する場合、「医療型」とは、居宅要介護者等のうち要介護3、要介護4又は要介護5に該当するもの(治療を必要とする状態にあるものに限る。)が主として訪問サービスの利用を希望する場合をいう。 |
(注2) | 訪問介護については、1回当たり1時間程度(巡回型にあっては、1回当たり30分程度)を単位としている。 |
(注3) | 居宅要介護者等の利用に関する意向を勘案して、訪問介護、訪問看護、訪問リハビリテーション又は通所介護若しくは通所リハビリテーションの利用に代えて、訪問入浴介護の利用を見込んでも差し支えない。 |
2 居宅療養管理指導、痴呆対応型共同生活介護、特定施設入所者生活介護及び福祉用具貸与並びに居宅介護支援
居宅療養管理指導 | 居宅要介護者等(通院が困難である等の状態にあるものに限る。)が原則としてかかりつけ医による医学的管理を利用することを前提として、現に利用している者の数及び居宅要介護者等の利用に関する意向を勘案して、量の見込みを定めること。 |
痴呆対応型共同生活介護 | 要介護者であって痴呆の状態にあるものの数及び利用に関する意向を勘案して、量の見込みを定めること。 |
特定施設入所者生活介護 | 現に利用している者の数を勘案して、量の見込みを定めること。 |
福祉用具貸与 | 車いす、特殊寝台、歩行器等の主要な福祉用具について、居宅要介護者等の要介護状態区分及び状態像に応じて、居宅要介護者等の利用に関する意向を勘案して、量の見込みを定めること。 |
居宅介護支援 | 居宅要介護者等が原則として利用することを前提として、居宅要介護者等の数を勘案して、量の見込みを定めること。 |
二 施設サービス
介護福祉施設サービス 介護保健施設サービス 介護療養施設サービス |
介護保険施設の利用者の総数の見込みについては、目標年度における65歳以上人口のおおむね3.4%を標準として、定めることが必要である。この場合においては、目標年度における65歳以上人口に対する75歳以上人口の割合の見込みを勘案した補正を行うことが望ましい。 指定介護老人福祉施設、介護老人保健施設及び指定介護療養型医療施設のそれぞれの利用者の数の見込みについては、おおむね8:7:5程度の比率を参考として、地域の実情に応じて定めることが必要である。 |
(別添2)
療養病床の介護老人保健施設への転換特例について(案)
1.基本的考え方
(1) 医療資源の有効活用と介護基盤整備促進を図る観点から、病院が既設の療養病床の転換により介護老人保健施設を開設する場合に、施設及び構造設備について一定期間の特例措置を設ける。
(2) 特例が受けられるのは、病院の既設の療養病床が病棟単位で病床転換を行う場合であり、介護老人保健施設の基準の特例は下記「2.」の通り。
(3) 人員基準、運営基準及び介護報酬については、現在の病院等併設の介護老人保健施設と同様とする。
2.特例の内容
療養室(共用不可、1室4人以下、1人あたり8平方メートル以上を特例で6.4平方メートル以上(病床転換による療養病床からの転換の場合は6平方メートル以上)、5年以内改善の計画)
診察室(共用可)
機能訓練室(共用可、定員×1平方メートルを特例で40平方メートル以上、5年以内改善の計画)
談話室(共用不可)
食堂(定員×2平方メートルで共用可)
浴室(特別浴槽、共用可)
レクリエーション・ルーム(共用可)
廊下幅(片廊下1.8m以上、両廊下2.7m以上を、特例で待避部分があれば転換前の廊下幅で可)
洗面所(共用不可)
便所(共用不可)
サービス・ステーション(共用不可)
調理室(共用可)
洗濯室又は洗濯場(共用可)
汚物処理室(共用可)
エレベーター(共用可)
(別添3)
介護療養型医療施設病床数の現状と課題
○平成13年9月1日現在の、療養病床等の総数は35万9千床、うち介護保険適用は11万9千床であり、介護療養型医療施設の平成13年度計画病床数19万4千床に対する計画達成率は61%である。
○都道府県別の計画達成率は、宮城県の25.7%から沖縄県の98.7%まで地域差があり、40%未満の都道府県の数が11、40%以上60%未満が11、60%以上80%未満が12、80%以上が13となっている。老人保健福祉圏域数353のうち、90%以上の達成率を示す圏域数は70である。
○介護保険適用病床数が計画数を下回っている理由としては、医療機関側からの意見として、平成12年8月の全日本病院協会の調査では、介護療養型医療施設を取得しなかった理由として、「制度・報酬の先行き不安」、「様子を見ている」という理由が多く、「要介護老人が入院していない」、「経済的理由」、「関連施設を持っているため」等の理由も挙げられている。平成13年3月の医療経済研究機構の調査では、医療型から介護型への転換時の課題として、「医療・介護保険制度の先行きが課題である」という回答が多く、「介護支援専門員の養成が課題」、「従事者の増員が課題」、「おむつ代の徴収ができないことによる収入減」、「重度障害者の自己負担増加」、「病床規制による参入制限」、「介護保険対象者でない患者の受け入れができなくなること」等といった内容があげられている。平成13年10月の日本医師会の報告書では、介護保険への移行が進んでない要因として、「診療報酬と介護報酬額の差」「おむつ給付の取り扱いの違い」「地方単独事業による自己負担免除対象者の取り扱いの違い」等が指摘されている。
○また、介護保険適用病床数が少ない理由の中には、計画病床数設定時に、保険料水準への影響が大きくなる可能性のある地域で、医療と介護の療養病床の分担について医療関係団体も含めた協議が行われ、当初の12年度推計19万床が、計画設定時には17万8千床に減少したこと等もあると思われる。
○介護療養型医療施設の必要病床数を確保するためには、従来より行ってきた都道府県課長会議における各施設の計画達成率の公表等に加え、高齢者等の長期入院に係わる医療保険と介護保険の機能分担や、介護保険施設間の機能分担を明確にしていく中で、他の介護施設では対応困難で介護療養型医療施設への入院を要する患者に必要な病床が確保されることについての理解を深めていくことが課題であると考えられる。