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年金の給付誤りの再発防止について



平成15年12月18日(木)

 去る6月に公表した年金の給付誤りにつきましては、多数の年金受給者の方々に対し、多大なご迷惑をおかけいたしました。
社会保険庁としましては、今般の年金給付誤りを年金の信頼性に関わる問題として重く受け止め、事故再発防止策検討委員会(委員長 社会保険庁長官)において年金の給付誤りの再発を防止するための方策について検討を行い、この度報告書をとりまとめましたので、お知らせいたします。


【照会先】
社会保険業務センター
総務部庶務課
電話03-5344-1100(内線5016)
総務部企画調整課
電話03-5344-1100(内線5053)


年金の給付誤りの再発防止について(概要)


I 年金の給付誤りの概要と改善措置

 今般の給付誤りの概要については既にお知らせしていますが、これに関しては次のとおり改善措置を講じました。

  1. 加給年金の過払い

    【概要】
    年金給付システム変更の際のプログラムミスにより、老齢厚生年金の受給権者の一部について、支給を停止すべき加給年金を支給していたため、過払いが発生した。
    《 6,249人 約24億1千万円 》

    【改善措置】
    原因のプログラムミスについては本年3月に修正した。
    このプログラムミスは、社会保険庁の指示がシステム開発委託先の作業に反映されなかったために生じたことから、システム開発における社会保険庁から委託先への指示方法及びその相互確認について徹底を図った。

  2. 振替加算の未払い

    【概要】
    「年金受給報告書」の報告漏れが生じたため、夫、妻それぞれの年金受給状況に応じて妻が65歳に到達した際に行うべき振替加算の一部が行われず、未払いが発生した。
    《 33,400人 約250億円 》

    【改善措置】
    年金受給報告書は、社会保険事務所から社会保険業務センターに報告されるものであるため、本年9月の全国社会保険事務局長会議、10月の全国社会保険事務所長会議において事務処理の再徹底を図り、また本年11月には全国の社会保険事務所に対し事務処理に疑義が生じないよう詳細な事務処理手順を示した。

II 事故再発防止策検討委員会報告書の要旨

 今般の給付誤りの原因については既に改善措置を講じたところですが、社会保険庁においては今般の年金給付誤りを年金の信頼性に関わる問題として重く受け止め、本年7月31日に社会保険庁長官を委員長とする「事故再発防止策検討委員会」を設置しました。
この委員会において、給付誤りの再発を防止するためのより良い業務体制等を構築するため、丸1システム開発及び丸2内部処理体制の両面から検討を行い、今般、以下を要旨とする報告書をとりまとめました。

  1. システム開発における改善策

    (1) 制度改正等がシステムに及ぼす影響範囲の洗い出し方法の改善
    制度改正等によりシステム開発を行う際には、当該改正等が既存のシステムのどの部分に影響を与えるか、社会保険業務センターにおいて主に目審査でその洗い出し作業を行っているが、これを的確かつ効率的に行えるように、機械的に洗い出しのできるシステムを構築する。
     
    (2) システム開発委託先に対する指示方法等の改善
    社会保険業務センターがシステム開発委託先に行う指示は、文書によることを徹底する。また、指示事項が成果物に正確に反映されていることの相互確認を徹底する。
     
    (3) 作成したプログラムが適正に稼働することを確認するためのシステムテストの充実
    システム開発委託先は、プログラム作成の最終段階で、プログラムが設計どおり稼働するかテストデータを処理させて検証している。このテストデータを作成する際には、過去のテストデータの中から適切なものを抽出して活用することが有効であることから、この抽出作業を効率的に行えるように、過去のテストデータを類型的に整理する。
    また、システム開発委託先が行うシステムテストについて、プログラム機能面からのテストに加えて、業務処理機能面からのテストを追加する。
     
    (4) 作成したプログラムが適正に稼働するかについての業務処理に沿った検証の改善
    作成したプログラムは、システム開発委託先におけるシステムテストの後、社会保険業務センターにおいて実際の業務処理に沿って、適正に稼働するかの検証を行っている。
    この検証作業においては、データの入力や処理結果の確認等を現在は手作業で行っていることから、これをより短期間で効率的に実施できるように、できる限り機械化を図る。
     
    (5) システムテストを行う際のテスト環境の充実
    システムテストを行うためのテスト環境が不十分であることから、テスト時間に制約がかかる状態になっている。
    このため、オンライン稼働中であってもシステムテストができるように、記憶装置の増設などテスト環境の充実を図る。

  2. 内部処理体制の改善策

     年金給付誤りを防止するためには、日常業務を的確に実施するとともに、事故等の発生時により一層迅速に対応できる体制を整備することが重要であることから、日常業務の的確な実施のための方策、危機管理体制の確立及び職員研修等のあり方について、次のとおり改善策をまとめました。

    (1) 日常業務を的確に実施するための方策

    丸1日常業務のルールの徹底
     日常業務処理の方法、手順等を定めた事務処理要領等を充実する。(センター・事務所)
     業務処理の過程で生じた疑義照会等を迅速、的確に解決するためのルールを改善する。(センター)
     社会保険業務センターと社会保険事務所等との間の円滑な事務処理を促進するための事務打合会を定期的に開催する。

    丸2日常業務のチェックの充実
     日常業務が適正に実施されているかチェックするため、年金給付適正化委員会を所長直轄の組織にするなど機能を強化する。(センター)
    また、業務運営が適切に実施されているかのチェックを担う業務運営監査官(仮称)を新設する。(センター:平成16年度定員要求中)
     システム監査担当部署の監査内容及び体制を強化する。(センター)
     社会保険事務所における業務処理のチェックを充実する。(事務所等)
    (2) 業務処理における危機管理体制の確立

    丸1 危機管理体制の確立
    年金給付誤り等の発生時に、より一層迅速的確に対応できるように、報告連絡体制の明確化、年金給付適正化委員会の機能強化、苦情等に対する統一的対応、オンライン事故等の復旧のための緊急処理体制の明確化等を内容とする危機管理マニュアルを整備する。(センター)

    丸2年金給付誤りに係る公表のあり方
     全国的な広がりの可能性のある年金給付誤りに係る事象については、速やかに幹部に報告し、公表する。
     年金給付誤りの発生から調査終了までに長期間を要すると見込まれるものについては、途中段階であっても、必要に応じて公表する。
    (3) 年金受給者の立場に立った事務処理を徹底するための職員研修等のあり方

    職員の業務処理の習熟及び資質の向上、並びに職員が業務に携わる際の目的意識の向上を図るため、各種研修の充実を図る。(センター)


(参考1)社会保険業務センター等における年金給付事務とシステム開発の現状


社会保険業務センター等における年金給付事務とシステム開発の現状の説明図

 件数等は平成13年度における数値。
 上記の業務のほか、厚生年金・国民年金の適用・保険料徴収等の事務、政府管掌健康保険等に係る事務をオンラインシステムにより処理。

「社会保険業務センター等における年金給付事務とシステム開発の現状」拡大版

(参考2)事故再発防止策検討委員会設置要綱


  1. 設置
    平成15年6月に確認された厚生年金保険等の給付誤りの発生を踏まえ、このような事故が再発することのないよう、システム開発における事故防止対策、地方支分部局を含めた社会保険庁の内部における事務処理体制の改善策等について検討を行い、必要な改善策を取りまとめるため、社会保険庁に事故再発防止策検討委員会(以下「検討委員会」という。)を設置する。

  2. 業務
    検討委員会は、年金給付事務に関する事故防止に係る次の業務を行う。
    (1) システム開発における事故防止対策の検討
    (2) 地方支分部局を含めた内部処理体制の改善策の検討
    カッコ
    年金給付業務に関する危機管理のあり方
    給付誤りにつながる事象の調査の実施及び公表のあり方
    業務処理誤りのチェック体制のあり方
    年金受給者の立場に立った事務処理を徹底するための職員研修等のあり方 等
    カッコ閉じる

  3. 組織
    検討委員会の構成は、次のとおりとし、委員長は社会保険庁長官をもってあてる。
    委員長  社会保険庁長官
    副委員長  社会保険庁次長
    社会保険庁運営部長
    社会保険業務センター所長
    社会保険大学校長
    構成員  社会保険庁総務部総務課長
    社会保険庁総務部総務課人事調整官
    社会保険庁総務部職員課長
    社会保険庁総務部経理課長
    社会保険庁総務部地方課長
    社会保険庁運営部企画課長
    社会保険庁運営部年金保険課長
    社会保険業務センター副所長
    社会保険業務センター総務部長
    社会保険業務センター情報管理部長
    社会保険業務センター業務部長
    社会保険業務センター年金番号管理室長
    社会保険業務センター中央年金相談室長
    社会保険大学校副校長

  4. 事務局
    検討委員会の事務局は、社会保険庁総務部総務課とする。

  5. 作業部会
    検討委員会の下に、実務的な検討を行うための作業部会を置く。

  6. その他
    (1) 検討委員会は、平成15年7月31日から設置する。
    (2) 検討委員会は、必要に応じて、随時有識者の意見を求めることができる。
    (3) 検討委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が定める。

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