Home > お知らせ一覧 > 平成28年度 卒業式 園長式辞

poster29

poster29

(7.6MB)

banner2

banner2

平成28年度 卒業式 園長式辞

看護学校卒業式式辞

平成28年3月7日

園長 藤田邦雄

長島愛生園附属看護学校37期生、14人の皆さん、卒業おめでとうございます。ご父兄の皆様おめでとうございます。来賓としてご列席いただきました、瀬戸内市、邑久光明園、岡山医療センター、愛生園入所者自治会、岡山県看護協会、瀬戸内市民病院の代表の方々、そして講師の先生方、お忙しいところを有難うございます。

もう2週間もすれば長島の桜も咲き始めますが、卒業生の皆さんの大半は今日にも寮から出て、この花を見ることがないのだと思うと寂しく感じます。

中国の唐の時代西暦670年頃の詩に

「年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず」というのがあります。

花は毎年同じように咲くが、人は年ごとに変わっていくという意味です。

本日卒業されるみなさんは、これから年ごとに成熟し、希望に満ちた将来が待っていることは疑いありません。

桜を詠んだ和歌で最も有名なものとして

「ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月(もちづき)の頃」という歌があります。

西行の歌で、願いが叶うならば、何とか桜の下で春に死にたいものだ。しかも草木の萌え出ずる如月(陰暦二月)の満月の頃がいいという意です。

西行は本当にその時期にあたる1190年3月31日に亡くなっています。

この上ない美しさの中に、死というものをイメージするのは洋の東西を問わないといえます。

卒業されるみなさんはちょうど3週間前に国家試験が済んだばかりなので覚えておられるはずですが、日本の男性と女性の平均寿命、そして出生数、死亡数は言えますね。私が授業でお話したところですから。男性80才、女性87才、年間100万人生まれ、130万人が亡くなっています。生まれる人はほとんど99%が病院と診療所でうまれ、なくなる人の80%は病院、診療所で死亡しています。私たちは生まれる人、亡くなる人のほとんどに立ち会っているのです。

赤ちゃんが生まれるときは、たいてい数日の入院で喜んで退院してもらえます。亡くなるほうはどうでしょうか。患者さんは病気を治し、死を免れるために入院しています。しかし考えるまでもなく最終的には誰一人としてそれを免れることはできないのです。医学あるいは医師にとって患者さんの死は敗北といえますが、私たちは死をもっとポジティブにとらえる必要があります。看護師は患者さんとともに死を受容し癒す主な役割であると思います。

長島愛生園附属看護学校を卒業されるみなさんは、ここで亡くなる人や、死よりつらい思いをした人たちと接することによって、生きること死ぬことについて普通の看護学校の卒業生より明確なイメージを持っているはずです。それはこれからの看護師としての仕事に生きてくると思います。

今みなさんはこれから看護師としてうまくやっていけるか不安をもっているのではないでしょうか。新しい職場では新人看護師の研修で仕事をスタートするようになります。まず看護師として知識技術を磨き5年くらいは、腰を据えて頑張って下さい。そこを乗り切れば、看護の面白さも理解でき、一生の仕事として続けることができると思います。かなりの新人が数年のうちに仕事を離れてしまう現状があります。病院、看護協会、都道府県は離職防止に力を入れていますが、ご家族も応援していただくようよろしくお願いいたします。

最後になりますが、私たち職員も入所者の人たちも皆さんの笑顔に、随分元気をもらいました。ありがとうございました。これからも笑顔を忘れないように下さい。

皆さんのこれからが看護師という職業人として大成するように、そして個人生活のうえでも幸せに恵まれるように祈って式辞と致します。