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平成26年度 卒業証書授与式 学校長式辞

看護学校卒業式式辞                     平成27年3月4日

 

園長 藤田邦雄

 

長島愛生園附属看護学校36期生、27人の皆さん、卒業おめでとうございます。ご父兄の皆様おめでとうございます。

長島の桜は一見まだ冬の装いですが、近づけば蕾が膨らんでいるのがわかります。厳しい2年間を無事乗り切って卒業式を迎えこれから花開こうとしている皆さんを、学校の教職員、長島愛生園の職員、入所者の皆様はこぞって喜んでいます。来賓としてご列席いただきました、瀬戸内市、邑久光明園、岡山医療センター、愛生園入所者自治会、岡山県看護協会、瀬戸内市民病院の代表の方々、そして講師の先生方、お忙しいところを有難うございます。

 

ただ今、卒業証書をお渡しましたが、ほとんどの人は今日にもこの長島から旅だって行かれます。看護学校は皆さんの思い出の一部になりつつありますが、記憶として残るのは寮生活と実習ではないでしょうか。この頃大学生はワンルームマンションを借りて一人で住むことが普通になり、学生寮や下宿は流行りません。愛生園の看護学生宿舎も、数年前に個室にしましたが、風呂やトイレ、食堂は共有なので共同生活の部分もたくさん残っていて、窮屈な思いをしたのではないでしょうか。寮や実習では好むと好まざるとに関わらず、仲間たちと毎日濃厚に交りながら、何とかやってきたことと思います。寮の規則や自治会で解決できた問題もうまくいかなかったこともあるでしょう。十人十色と申しますが、人が10人いれば必ず考えの違う人がいるものです。そのような中で最高ではなくても、みんながそこそこ幸せにやっていくための加減、いわゆる“智恵”というものが身についたと思います。それは患者さんや同僚との関係の中で仕事をする看護師という職業に、必要なことです。

 

1957年から72年まで長島愛生園で精神科の医師として勤務した神谷美恵子先生について今年の卒業生はご存知ですね。昨年の1月11日に「神谷美恵子生誕100年記念の集い」を、岡山市民会館で行いました。皆さんにも1500人もの観客の整理を手伝ってもらい大助かりでした。有り難うございました。
神谷美恵子の有名な著作のひとつ「人間を見つめて」の最後の部分をご紹介します。

ひとりの人間のからだの中で、さまざまの細胞が分業と協力の体制を作っているように、人間の社会も分業と協力によって組織される。もしひとびとが、人間と地球と宇宙を支えるものについて思いをひそめ、そこからくる大いなる許しと配慮を感謝するならば、人と人とは、おのずから温かい心で手をつなぐことであろう。それが外部の問題ととりくむのに是非必要な前提だと思う。
ひとの存在意義、あるいは社会の中での自己の存在に関する含蓄に富んだ言葉です。

 

目の前のこととして看護師として知識技術を磨く必要もあります。皆さんは就職後、新人看護師の研修体制のなかで仕事をスタートするようになります。国家試験合格だけでは、看護師としてひとの期待に応えることは無理です。長い道のりですが5年くらいは、腰を据えて頑張って下さい。
最後にひとつだけよいことを申しあげます。笑顔と挨拶。これは最高です。長島愛生園での皆さんの笑顔に、私を含め職員も入所者の人たちも随分元気をもらいました。これからも笑顔と挨拶だけは忘れないようにして下さい。

皆さんのこれからが看護師という職業人としても、そして個人生活のうえでも幸せに恵まれるように祈って式辞と致します。