厚生労働省

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戦後社会保障制度史

政策統括官付社会保障担当参事官室

○社会保障制度とは

・すべての国民を対象とする公的年金、医療・介護保険、子育て支援、生活保護、福祉、公衆衛生などの社会保障制度は、私たちの暮らしを支える最も重要といっても過言ではない、社会基盤です。

社会保障制度とは

※社会保障制度とは(PDF:95KB)

○時代の要請に応えてきた社会保障制度

・我が国において「社会保障」という言葉は、昭和21年11月公布の日本国憲法に用いられたことを契機に一般化したといわれています。その後、現在に至るまで、社会保障制度は戦後の復興と経済成長、人口の急増、産業構造の大転換、国土開発、人口移動、少子高齢化の進展など、経済社会や人口構造のめまぐるしい変化に直面しながらも、各時代における人々の努力により、社会保障制度に対する国民各層の様々なニーズに応え、その充実が図られてきました。

社会保障制度の変遷

※社会保障制度の変遷(PDF:54KB)

(参考)日本国憲法第25条

第25条すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

○直面する課題

・しかし、21世紀を迎えた今日、経済社会を取り巻く環境が大きく変化する中で、社会保障制度は様々な課題に直面しています。その中でもとりわけ深刻な課題として、少子高齢化の進行があげられます。

・社会保障制度を持続可能なものとしつつ、経済社会の様々な変化にあわせて、時代が求める役割を果たすことができるものとなるよう、その機能を強化していくことが必要です。

我が国の人口の推移

※我が国の人口の推移(PDF:66KB)

社会保障給付費の推移

※社会保障給付費の推移(PDF:82KB)

・今回は、戦後以降の社会保障の歴史を紐解き、それぞれの時代において社会保障にはどのような役割が求められ、それがどのような制度の創設や見直しにつながってきたのかを振り返って、社会保障への理解、関心を深めていただき、或いは、これから社会保障にどういう役割を期待し、そのためには何が必要なのかに思いを馳せていただくきっかけになれればと考えています。

○昭和20年代(戦後の緊急援護と基盤整備)

・第2次世界大戦後の復興期であるこの時代、社会保障分野ではアジア各地からの引揚者や失業者などを中心とした生活困窮者に対する生活援護施策、劣悪な食糧事情や衛生環境に対応した栄養改善とコレラ等の伝染病予防が緊急の対策として求められました。

・また、この時期は、日本国憲法により、国民の生存権の保障や社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上等についての国の責務が明確にされるとともに、GHQの強力な指導の下に、制度の創設や行政機構の整備が進められていった時期でもありました。

昭和20年代 戦後の緊急援護と基盤整備

※昭和20年代(PDF:55KB)

○昭和30・40年代(国民皆保険・皆年金の実現と社会保障制度の発展)

・昭和30年代の高度経済成長により国民の生活水準が向上するに伴い、生活困窮者や援護が必要な人々に対する救済対策に加え、一般の人々が疾病にかかったり、老齢になるなどにより貧困状態に陥ることを防ぐ施策の重要性が増加していきます。

・経済社会が戦後の混乱からの立ち直りを見せる中で、全国民をカバーする社会保障制度の確立を求める声が高まり、病気にかかった場合の医療費保障や老後の所得保障等などが確保されることになりました。(国民皆保険・皆年金の実現)

・さらに、社会福祉の分野での老人福祉法や児童手当法の制定、老人医療費支給制度の創設、医療保険制度や年金保険制度などにおける各種給付の充実を図り、この時代に我が国の社会保障制度の体系がほぼ整いました。

昭和30・40年代 国民皆保険・皆年金と社会保障制度の発展

※昭和30・40年代(PDF:57KB)

○昭和50・60年代(安定成長への移行と社会保障制度の見直し)

・オイルショックによる高度経済成長時代の終焉、経済の安定成長化、緊縮財政への移行、さらには高齢化の進展といった経済社会の変化の中で、当面する財政問題との調和を図る観点から、行財政改革の一環として社会保障制度の全面的な見直しが行われました。

・具体的には、社会保障費用の適正化・効率化を目指し、壮年期からの健康づくりと老人医療費の公平な負担を図ることを目的とした老人保健制度の創設や健康保険法等の一部改正、年金制度における基礎年金の導入や給付水準の見直しによる給付と負担の公平化などが行われました。

昭和50・60年代 安定成長への移行と社会保障制度の見直し

※昭和50・60年代(PDF:56KB)

○平成以降(少子高齢社会に対応した社会保障制度の構造改革)

・昭和50年代後半頃から人口の高齢化に対する取組が大きな課題となってきましたが、我が国では、諸外国では類のないスピードで高齢化が進行し、平成6年には高齢化率が14%を超え、本格的な高齢社会が到来しました。併せて、合計特殊出生率が平成元年にそれまでの戦後の最低値を更新、その後も低下を続けたことにより、少子化が進行し、ついには平成17年に人口減少社会に突入しました。

・少子高齢化の進展と併せて、バブル経済の崩壊を契機として、我が国は低経済成長時代を迎えました。

・こうした中で、社会保障給付を国民全体で公平に負担し、経済社会と調和を図りつつ、社会保障制度に対する国民の需要に適切に対応するための改革が進められていきます。

・特に近年は、長期的な社会保障給付の伸びを抑制し、制度の持続可能性を高める観点から、年金、介護、医療にわたる一連の制度改革を実施しました。このような改革を行ってもなお給付の伸びが国民経済の伸びを上回る見通しとなる医療や介護については、必要なサービスの確保と質の維持・向上を図りつつ、効率化等による供給コストの低減に向けた取組を進めています。

平成以降 少子高齢社会に対応した社会保障制度の構造改革

※平成以降(PDF:56KB)

○新たな時代に向けて

・今、我が国で起こりつつある、人口構造の高齢化による社会保障関係給付の増加、少子化に伴い社会保障制度のみならず社会経済を支える労働力人口減少の見込みなどの変動は、社会保障の今後を考える上で難しい課題です。

・しかしながら、人々が安心して生まれ、育ち、学び、働き、年齢を重ねていくためには、こうした課題に向かい合って、少子高齢化が進む中にあって社会保障に求められる役割・機能を強化し、将来にわたって安定した制度にしていくことが重要です。

・駆け足で歴史を振り返ってみましたが、社会保障はこれまでも様々な時の課題に直面しながら発展、継続をしてきました。現在直面している課題にも、これまでの歴史と同様に、幅広い議論を行い、国民の皆さまの協力を得ながら対応し、社会保障制度をより安心できるものとして次の世代に引き継いでいくことが必要と考えています。

※参考文献

・平成11年厚生白書

・平成20年厚生労働白書

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