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児童虐待関係の最新の法律改正について

児童虐待関係の最新の法律改正について

 ここでは、児童虐待関係の最新の法律改正について解説するとともに、一人でも子どもを悲惨な虐待から救うために国民の皆さん一人ひとりにお願いしたいことについてお話します。

1 児童虐待が増えています。

 児童虐待を受けた児童を保護する児童相談所という役所がありますが、そこに寄せられた児童虐待の相談は、平成22年度で55,152件(速報値で、かつ、宮城県、福島県、仙台市を除いて集計した数値)です。統計を取り始めた平成2年から一貫して増加し続けています。

グラフ

※ 虐待による死亡事件は、毎年50件〜60件程度発生しており、実に週に1回のペースで起こっています。




2 なぜ、児童虐待の相談が増えたのでしょうか。

  1. [1]家庭・地域の養育力の低下
    核家族化や地域のつながりが希薄になってきたことによって、子育てしにくい社会になってきたと言われています。昔は、大家族の中で親戚や隣・近所に助けてもらいながらみんなで子育てしていましたが、現在は家庭での子育てが孤立しやすくなっている面があります。
  2. [2]児童虐待の認識の広まり
    悲惨な事件が報道されたり、制度改正や広報の強化などにより、国民の皆さんが児童虐待という社会問題に関心を持つことにより、これまで気づかれなかった児童虐待が児童相談所につながるようになってきたと言われています。



3 児童虐待の増加を受けて、どのような政策を行ってきたのでしょうか。

児童虐待が社会問題化するにつれて、以下のような制度改正による対策が強化されてきました。(参考1)

  1. [1]児童虐待防止法の制定(平成12年11月スタート)
    児童虐待を防止するための法律ができました。児童虐待の定義(※)や国民のみなさんの児童虐待を発見したときの通告義務が明記されました。
  2. [2]児童虐待防止法・児童福祉法の改正(平成16年10月から順次スタート)
    児童虐待の定義の拡大、通告義務の拡大、市町村の虐待対応の役割の強化などが行われました。
  3. [3]児童虐待防止法・児童福祉法の改正(平成20年4月スタート)
    児童の安全確認のための強制的な立入調査、保護者に対する児童の面会の制限など虐待を受けた子どもを救うために行政の役割が強化されました。
  4. [4]児童福祉法の改正(平成21年4月スタート)
    生後4か月までの乳児のいる家庭すべてを訪問する事業など市町村が行う子育て支援の強化や、虐待を受けた児童を保護するための里親制度の拡充など、虐待の予防を含む様々なサービスが増えました。


※ 児童虐待の定義

  1. [1]身体的虐待
    殴る、蹴る、激しく揺さぶる、熱湯をかける、首を絞める、タバコの火を押しつける、おぼれさせる、逆さ吊りにする、冬に戸外に閉め出すなど。
  2. [2]性的虐待
    子どもへの性交、性的行為を強制する、性器や性交を見せる、ポルノ写真の被写体に強要するなど。
  3. [3]ネグレクト(養育放棄)
    適切な食事を与えない、風呂に入れない、家に閉じ込める(子どもが学校に行きたがっているのに、行かせない)、重大な病気になっても病院に連れて行かない、乳幼児を家に残したまま度々外出する、パチンコ店の駐車場の自動車内に乳幼児を放置する、同居人による[1]、[2]、[4]の虐待を放置するなど。
  4. [4]心理的虐待
    ことばで脅す、無視する、心を傷つけることを繰り返し言う、他のきょうだいと激しく差別するなど。


児童虐待防止対策の経緯

 以上のように、対策が強化されてきたところですが、これまでの制度改正は、子どもを救うために児童相談所の機能を強化したり、市町村が行う子育て支援の強化など、行政側の対応の強化がメインでした。

 一方、児童虐待をしても親は親権者のままですから、親は親権を盾に児童相談所の介入を拒んだり、虐待を受けた子どもが保護されて、里親さんに預けられたり、タイガーマスク運動で有名になった児童養護施設などに預けられたとしても、強く子どもの引取りを求めたり、様々な不当な主張をするといった問題がありました。

そこで・・・




4 親権制度の見直しが行われました。【最新情報!】(参考2、参考3)

【課題[1]】虐待をした親でもなかなか親権が制限できない。




 これまでも、虐待などをした親の親権を家庭裁判所の裁判によって失わせる制度はありました。しかし、「親権喪失(しんけんそうしつ)」といって、親権の全てを無期限に奪うという非常に効果の大きなものでした。 このため、児童相談所でも一時的に、虐待をした親から子どもを救い里親さんや施設にあずけるのはともかく、親権喪失までしてしまうと、親子の縁を切るようなことにもなりかねず、家庭裁判所への申立てをちゅうちょすることもありました。
├→ 【解決策[1]】2年を上限とする「親権の停止制度」という柔軟な制度ができました。




 親権喪失に加えて、2年を上限として家庭裁判所の裁判によって親権を一時的に停める制度ができ、親権が停止された期間の親や家庭環境の改善を図り、その効果を勘案して再び親権を停止や喪失させるか、あるいは親に親権を戻すかという選択ができるようになります。
 これにより、例えば里親さんや施設に預けられている子どもがより安心して過ごせるとともに、虐待をした親や家庭環境の改善も促されることが期待されます。
└→ 【解決策[2]】施設長や里親さんの子育てについて、親権者が不当な主張をすることを禁止しました。
 家庭裁判所の裁判による親権の停止まではしないけど、虐待を受けた子どもが里親さんや施設に預けられている場合に、親が医療を受けることに同意しないとか、子どもの意に反し勝手に高校に退学届を出すなど、施設や里親に不当な主張をすることを禁止しました


【課題[2]】未成年後見人を引き受ける人が少ない。




 親のいない子どもや、両親が親権の喪失・停止の裁判を受けた子どもには、親権者と同じような役割を果たす「未成年後見人」を家庭裁判所が選任することになります。
 現在の民法では、個人で、しかも1人で未成年後見人にならないといけないので、子どもに対する責任を一手に引き受けなくてはならず、負担が大きいと言われています。
├→ 【解決策[1]】法人の未成年後見や複数で未成年後見人となることも可能となります。




 法人が職務として未成年後見人となることが可能になります。 法人が職務として未成年後見人となることが可能になります。これにより、例えば児童養護施設を経営する法人が児童養護施設出身者の未成年後見人となり、引き続き後ろ盾となることが期待されます。
 複数の個人(又は法人)で未成年後見人となることが可能になります。これにより、例えばおじいさん・おばあさんが両親の代わりとして2人で未成年後見人となることもできます。
 さらに、日々の子育て(身上監護)は親戚が、遺産などの子どもの重要な財産の管理は弁護士などの専門家が、それぞれ分担して未成年後見人となることもできます。
└→ 【解決策[2]】里親さんに預けられている子どもや児童相談所が一時的に保護している子どもに親権者がいない場合は、児童相談所長が親権を行えるようにしました。
 未成年後見人が見つからない場合には、子どもが里親さんに預けられている場合や児童相談所が一時的に保護している場合には児童相談所長が親権を代行することになります。
 子どもが施設に入所している場合は、これまでどおり施設長が親権を代行することになります。これまでは、里親さんに預けられている場合や、児童相談所が一時的に保護している場合には、このような受け皿がありませんでした。


 このような新しい制度が、平成24年4月1日(予定)にスタートします。厚生労働省では、新しい制度の具体的な使い方について、ガイドラインを作成中です。



民法等の一部を改正する法律の概要







児童虐待の防止等を図るための親権に係る制度の見直しの要点



【コラム】 親権て、なあに?

(参考3)


 親権とは、親が子どもを育てる権利と義務の総称です。みだりに他人から子育てについて干渉されないという意味で「権利」ですが、子どもをちゃんと育てる責任があるという意味で「義務」でもあります。

1 親権の中身は?


 大きく分けると、以下の2つです。
○ 身上監護権(しんじょうかんごけん)・・・子どもの身の回りの世話をしたり、教育をしたり、しつけをしたりする権利・義務です。
○ 財産管理権(ざいさんかんりけん)・・・子どもの財産を管理したり、子ども名義の契約などについて同意をしたり、代理をする権利・義務です。

2 親権は誰が持っているの?


 父母が親権者です。父母が結婚している間は、共同で親権を行いますが、離婚の場合にはどちらか一方を親権者に決めます。

3 親権は奪われることがあるの?


 親権は、子どもがちゃんと育つために与えられたものですから、虐待や育児放棄など子どもにひどいことをしたような場合は、家庭裁判所の裁判によって奪われることがあります。現在は、親権全体が奪われる「親権喪失宣告(しんけんそうしつせんこく)」と、財産管理権のみが奪われる「管理権喪失(かんりけんそうつ)」という仕組みがあります。

4 親権が奪われた場合や、親のいない場合はどうなるの?


 家庭裁判所が未成年後見人を選ぶことになります。親代わりとして子どもを育てている親戚が選ばれたり、子どもと同居していなくても弁護士などの専門家が選ばれることもあります。実際には引き受ける人がいないこともあります。
 また、育てる人がいなくて、児童養護施設などに入所している場合は、未成年後見人が見つかるまで、施設長が親権を行います。




5 みなさんにできること

早期発見

 厚生労働省では、このように新しい制度作りなどを進めていますが、児童虐待というのは「家庭」という外から見えにくい場所で起こり、被害者である子どもが助けを自ら求めることは難しいので、中々気づきにくいものです。
 しかし、なるべく虐待が深刻になる前に子育ての問題を抱える家庭の支援したり、虐待が起こっている場合でも早めに子どもを保護することが大切です。
 早めに、発見し対応すれば、虐待の深刻化も防げますし、子どもの心と体の傷の浅いうちに保護することが可能だからです。

早期相談・通報 (参考4)

【子育て中の方】
○ 子育てに悩んだ場合は、早めにお住まいの市町村や地域の児童相談所に御相談ください。相談にのってもらえる上に、様々な支援を受けられる場合があります。

【みなさん】
○ 児童虐待を受けたと思われる子どもを発見したら、お住まいの市町村や地域の児童相談所に連絡してください。

(参考4)児童相談所全国共通ダイヤル   0570−064−000

全国どこからでも、お住まいの地域の児童相談所に電話をおつなぎします。

  • ※ 一部、本システムに未加入の地域があります。 (未加入の場合は、児童相談所の電話番号がアナウンスされます。)  加入率 95.1%(平成23年1月25日現在)



雇用均等・児童家庭局総務課
虐待防止対策室

直通  03−3595−2166
内線  7946
FAX   03−3595−2668


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