厚生労働省

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少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究

<政策科学総合研究>


●研究目的:少子化関連施策の効果を人口学、社会学、経済学保健福祉学等の見地から評価し、今後の少子化対策のあり方や出生率の見通しについて調査し、施策の立案に資することを目的とした。

●方法: 家族政策変数と労働政策変数をシミュレーションモデルとして構造化し少子化対策変数の操作的変化が出生率におよぼす影響を分析し、政策変数の変動効果が将来人口に及ぼす影響を人口推計により評価した。その前提として、出生率に影響を及ぼす社会経済的な背景要因を調査の個票データの多変量回帰分析を行った。

●結果概要: 政策変数の影響効果を外生的に発生変化させて、少子化対策効果を将来の出生率として推定すると、保育所定員数(現物給付の代理変数)、児童・家族関係給付費(現金給付の変数)と、労働政策変数である女子短時間就業率(週35-42時間就業率)、女子正規就業率(週35時間以上就業率)、女子非正規賃金の代理変数のすべてを年率2%で変化する政策を実施すると2030年の合計特殊出生率は1.57(経済成長率0%を想定)から1.61(同年率2%を想定)の範囲に上昇し、最大1.72(政策変数3%変化)の上昇が推定される(図1)。

■政策への反映方法の提言:子育て家族への支援水準(保育需要への対応や児童手当等の給付水準)や雇用労働環境(就業時間、非正規就業の割合等)が現状のまま留まると将来の出生率水準に改善が期待できない(図1)。従って家族労働政策をより強力に推進する必要がある。
現在の出産退職という就業行動は、税を始めとする財政上の損失に繋がっており、機会費用を低減させる労働政策は財政上の効果(図2)をもたらし、出生率の回復にも貢献する。それゆえ、女性の就業人口の拡大と出産子育ての両立支援には保育支援を通じた家族政策が不可欠で、それによって将来の労働力供給の減少に対して有効な対応策となることを示唆している。

図1.政策変数が年率2%で変化する場合の出生率変化

図1.政策変数が年率2%で変化する場合の出生率変化

図2. 正職員と労働者の所得税納税額

図2. 正職員と労働者の所得税納税額

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