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III.リスクに応じた化学物質の審査・規制制度の見直し等について

(1)基本認識
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
89  化審法がリスクを基準に化学物質の管理を考える方向に変化していることは、化学物質の管理を実行的に考える上で歓迎すべきである。 2
90  化学物質の審査・規制制度において、物質の性状・有害性(ハザード)に加えて物質の暴露可能性を考慮に入れた「リスク評価・管理」の観点をはっきりした形で導入したことは、化審法三十年の歴史の中で画期的とも言えることであり、賛同するとともに高く評価したい。  
91  3の(暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直し)は管理の現状にとって重要な項目にあたり今次改正で是非実現を図っていただきたい。  
92  最近の国際動向を踏まえ、「化学物質の審査・規制制度を見直し、有害性とともに曝露もあわせて考慮したリスク評価・管理の観点から、更に効果的かつ効率的な制度とすべきである。」との考えに賛同するとともに、是非ともこの考え方に基づき、化学物質の総合的な管理政策を進めて頂きたい。  
93  p1の説明を読むと、既存物質の点検はとくに人への健康に係る毒性について十分になされているという印象をもてない。そのことによって不具合はなかったのだろうか。有害性の評価を促進するような方法やしくみを含めることも検討してほしい。  これまでの既存化学物質の安全性点検では、化学物質の製造・輸入数量や構造等から判断して優先順位の高いものから順次評価が行われてきています。こうした状況を踏まえ、本報告では、今後の既存化学物質の有害性評価の推進に関して、事業者及び国が、相互に十分連携しつつ、それぞれの役割に応じて計画的に実施していくべきと考えます。また、有害性評価を促進するため、簡易評価手法も含めた更なる有害性評価手法の開発や人材の育成等の環境整備を進めるとともに、事業者が入手した有害性情報の報告制度の導入によっても、それらの有害性情報が既存化学物質の評価に活用されることが期待されます。  

(2)難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質に関する対応
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
94  難分解性で高蓄積性の性状を有する化学物質は、それ自体でも生態系へ何らかの悪影響を与えていると考えられるから、これらを法令に基づく一定の管理下に置くことは賛成である。  
95  13ページ「・・・事後的な追加試験等の実施は・・・」を「・・・追加試験等の実施は・・・」とする。
(理由) 12ぺ一ジ 15行から21行までにある記述によります。
 追加試験の実施は、「事前審査」の段階ではなく、「事後的」であることを明確にするため、原案のままとさせていただきます。  
96  13ページ「・・・長期毒性等がある場合には・・・」を「・・・長期毒性等が予想される場合には・・・」とする。(理由) 12ぺ一ジ 15行から21行までにある記述によります。  ここでは、有害性の調査を指示した化学物質に関して得られた試験の結果に基づき長期毒性等の有無について判断し、長期毒性等がある場合には速やかに措置をとることとしており、予想ではないことから、原案のままとさせていただきます。  
97 III.2.の最終段落(○なお、人の健康に・・・)に下記文章の追加を求めます。
 「この際、1.難分解性・高蓄積性・長期毒性ありのケースや、2.難分解性・低蓄積性・長期毒性の疑いありの場合、有害性調査の指示のケースに安全性の確認資料として行う動物を使った各種長期毒性試験において、できる限り代替法の使用を検討すること。」
(理由)
  欧米などでは動物実験の削減は国民の大きな関心ごとの一つです。
 難分解性・高蓄積性・長期毒性あり、難分解性・低蓄積性・長期毒性の疑いありのケースでは、動物実験でその安全性を確認することばかりが強調されていますが、行政として、動物を使わない方法を企業や研究施設が自主的に研究するのを促進するためにも、きちんと明文化することを求めます。
 ご指摘の部分の記述は、動物を用いる試験か否かにかかわらず、国際的に認められている新たな試験法について現行の試験法と同等の取扱いが可能と考えられる場合には積極的に活用する必要性について言及したものです。代替試験法についても、当該試験法が国際的に認められているものである場合には積極的な活用を検討すべき対象であると考えます。 2
98  国際的に認められている試験法について現行と同等の取扱いが可能と考えられる場合のみでなく、生体を使用しない代替法を確立、活用すべきである。
(理由)
 欧米では動物実験の削減に積極的に取り組んでいる。人間のみでなく環境中の生物への影響を考える上で動物実験に頼る結果ばかり重視し、援助・拡充することはより複雑な影響の判定には、限界があると思う。
 このような視点を、より生命に配慮した試験を取り入れる視点に変えることこそが、環境中の生物の安全性を守っていくことにつながるはずである。
 それぞれの企業や研究施設が知恵を出し合い、自主的に研究するのを促進するためにも、きちんと明文化すべきである。
 化学物質の毒性評価に用いられる試験法については、科学的知見の充実や国際的な動向を十分に踏まえ見直すことが必要であると考えており、代替試験法もその一つと考えます。代替試験法の導入に当たっては、その方法が国際的に認められているものであること及び現行の試験法と同等の結果が得られることが必要であると考えます。  
99  人の健康に係る長期毒性に関する判断を行うための手法として新たな試験法を採用する際には、汎用性を第一として、即ち他国でも有効性が承認されることを第一として欲しい。基本的にはあくまでもOECDテストガイドラインとして各国に受け入れられる試験法とすること。
(理由)汎用性を持たせることにより、試験結果が他国でも有効となる用にすべきである。
 OECDテストガイドラインを踏まえた毒性試験法が基本と考えますが、本報告に記載のとおり、OECDテストガイドライン以外のものであっても、国際的に他の分野(たとえば医薬品等)で認められており、現行の試験法と同等の取扱いが可能と考えられる場合には積極的な活用を検討することが必要であると考えます。 4
100  最近の科学技術の進展を踏まえ、国際的に他の分野で認められている新たな試験方法の積極的な活用について検討することについては、同意であるが、その際に試験期間がより短期間に、また試験費用がより安価な方法についての導入を検討していただきたい。
(理由)
 試験期間が長期にわたるものについては、当然のことながらそのために、開発に長期間を要することになり、また、試験費用が高価なものについては、それだけ費用負担が大きくなり、開発品の国際競争力においてはハンディーとなる。
 人の健康に係る長期毒性に関する判断を行うための短期間かつ安価な試験法については、国際的に認められ、現行の試験法と同等の取扱いが可能と考えられる場合には積極的な活用を検討すべきであると考えます。  
101  国が行っている既存化学物質の点検において、早急に長期毒性試験をおこなうべきであるが、はかどっていない現状をふまえると、長期毒性の疑いのある化学物質を早期に特定する方策を早急に示すことが必要である。  化学物質の製造・輸入量に関する実態調査によれば、難分解性及び高蓄積性の性状を有する既存化学物質については、近年は製造・輸入の実績が認められないものもありますが、新たな制度の下で把握される、より正確な製造・輸入実態に基づき、優先順位を検討した上で早急に国による予備的な毒性評価及びそれらの結果に基づくリスク評価が行われるべきものと考えます。  
102  リスク管理の観点から、対応の適・不適が判断できるよう、政府が行う予備的調査を速やかに行い、政府としての判断を早急に示すべきである。 3
103  難分解性、且つ高蓄積性であることが判明した既存化学物質について、長期毒性等の有無が明らかとなる間であっても、一定の管理の下におくことについては理解できる。新たな管理枠の設置にあたっては、事業者が適切なリスク管理を直ちに行えるよう、政府による予備的調査を速やかに進めて頂きたい。  
104  具体的な措置としては、報告書案の製造・輸入実績数量、用途等の届出と公表にとどまらず、表示やMSDSの交付の義務づけなど消費者の選択を可能とする措置も講じるべきである。さらに、必要な場合には、用途や生産量の制限、製造中止等を求めることができるようにすべきである。  製造・輸入事業者に対する製造・輸入実績数量、用途等の届出を義務づけ、実態を適切に把握するとともに、国が実施する予備的な毒性評価の結果リスクが懸念される場合には、事業者に対して環境放出量を抑制するための指導・助言(開放系用途の使用削減等のリスク低減措置)を行うべきであると考えます。このようなリスク低減措置によっては暴露可能性を低くすることができないと判断される場合には、その化学物質の製造・輸入事業者に対し、長期毒性等に関する調査を指示することが必要であると考えており、また、その際には、現行の化学物質審査規制法の規定に基づき製造・輸入、使用の制限に関し必要な勧告をすることができます。
 なお、以上については、本報告に既に記載されているとおりです。
 
105  暴露の可能性がない閉鎖系用途の場合は、リスク管理下におくという枠組みが考えられる。  閉鎖系用途等暴露可能性がない場合に管理の対象とすることは、本報告の別紙2のフロー図にお示ししたとおりです。  
106  リスク削減措置に至るプロセスを適切に進める為に、政府は、事業者・ユーザー等の連携のもとに得られた使用実態等の情報に基づき、科学的なリスク評価を実施すると共に「社会的便益性」等も加味し、閉鎖系での限定使用や代替品開発等を促す適正なリスク管理方法を追求すべきである。  難分解・高蓄積性物質については、科学的なリスク評価に基づきリスクが懸念される場合には、事業者に対して環境放出量を抑制するための指導・助言(開放系用途の使用の削減等のリスク低減措置)を行うべきであり、こうしたリスク低減措置によっては暴露可能性を低くすることができないと判断される場合には、その化学物質の製造・輸入事業者に対し、長期毒性等に関する調査を指示すべきであると考えます。このようなリスク評価、リスク低減措置等は科学的な知見に基づき実施されることが必要であると考えます。 3
107  難分解・高蓄積の物質の物質名などの公表にあたっては、政府は、新たな管理枠の意味づけ、評価・判断した内容に関する説明を十分に行うとともに、例えば、リスクが未評価の物質と、既にリスク管理がなされている、あるいはなされつつある物質を、公に分るように区分するなど国民に誤った理解を与えないようにするべきである。特に、管理枠の名称については、長期毒性等について一定の知見が得られている現行の規制対象化学物質と混同することがないよう、「指定」、「特定」などを用いないような名称とする等の十分な配慮をお願いしたい。  制度の実施にあたっては、ご指摘のとおり国民に誤解を生じさせないよう、政府は適切に対応すべきであると考えます。
 また、難分解・高蓄積性物質の名称についても、ご指摘のような観点からも検討されるべきであると考えます。
3
108  難分解・高蓄積の物質名の公表等については、リスクが未評価のものと、既にリスク管理がなされている、あるいはなされつつある物質を公に判るように区分するなどして国民に誤解を与えないような配慮が必要である。  制度の実施にあたっては、ご指摘のとおり国民に誤解を生じさせないよう、政府は適切に対応すべきであると考えます。  
109  予備的調査により、難分解性・高蓄積性であることが判明した化学物質の公表にあたっては、政府は、新たな管理枠の意味づけ、評価・判断した内容について、国民に誤った理解を与えないよう十分な説明を行って頂きたい。  

(3)暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直し
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
110  「中間物を事前審査制度の対象外とする。」及び「製造・輸入総量が年間10トン以下はスクリーニング毒性試験及び生態毒性試験のデータの提出を求めない。」という点は評価できる。
(理由)付加価値の高い化合物の生産と使用を促進する。
7
111  審査・規制の対象外とされる化学物質については、使用する事業者の厳格な管理が必要であることは言うまでもない。化学業界は製造販売する化学物質についての情報を、販売先に提供することをこれまで以上に進めることが必要である。それだけでなく、化学物質を安全に取り扱うためには、これまでの販売事業者から販売先に情報を提供し、使用事業者にすべての判断をゆだねる一方通行のコミュニケーションではなく、製造・販売事業者と使用事業者が協力した双方向的なコミュニケーションが必要である。  
112  今回の見直しにより、リスク管理の概念が導入されたことは非常に評価できる。メーカーとしてもこれまで以上に厳格な管理を行う必要があると捉えている。
 一方、国の効率的・効果的なリスク管理のために、製造・輸入量などの提出・届出の義務化、化審法の要求項目範囲に限った事業者が入手した有害性情報の提供等の義務化には同意できる。
 より実効の上がる具体的な制度運用を目指していただきたい。
 
113  (1)(1)中間物、(2)閉鎖系等環境放出の可能性が極めて低い用途で使用される化学物質、(3)輸出専用品についての暴露の管理による対応、及び、(2)製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査による対応として盛り込まれた内容は、いずれも、「リスク評価・管理」の観点を導入することによって、現行の審査・規制制度が内包する前述の如き「マイナス面」を見直し、効果的かつ効率的な制度を目指したものとして、大いに評価したい。  
114  ・リスクアセスメントに関する要望 暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直しでは、先進主要国の規制動向に沿って現実に即したリスクアセスメントにもとづいた事前審査が行われるよう改正すべきであると考える。
 案では、暴露可能性がない又は極めて低くなることが確実な場合、事後の監視を前提に3つの具体的ケースについてのみ事前審査の対象外とすることが提案されているが、本来のリスクアセスメントの考え方からすれば、ケースごとにその都度暴露とハザードを考慮して判断をすべきである。
 欧米同様、個々の化学物質について現実に即したリスクアセスメントにもとづく審査・規制・管理となるよう要望する。
 化学物質審査規制法における審査・規制制度においては、新規化学物質のリスク評価及びその結果に基づく個別ケース毎の管理措置の適用といった対応は行われていませんが、これは、第一種特定化学物質に該当するものを除き、スクリーニング試験等により長期毒性が疑われる化学物質については、用途を問わず製造・輸入を認めつつ、暴露状況の監視を行い、事後にその使用の状況等を踏まえたリスク評価・管理を行うとの考え方に基づいた審査・規制制度としているからです。
 なお、今回の検討では、暴露可能性が低いことについて一定の条件を満たすいくつかのケースについて、事前審査段階においてもリスク評価・管理の観点からの新たな対応を可能とする措置を導入することとしています。
 
115  現状では、リスクに応じた化学物質の事前審査の見直しには一定の合理性があると思われる。しかし、リスクというものは、あくまでも既知の知見に基づくものであって、未知のリスクは含まれ得ないことを考えれば、リスク評価には内在的限界があることを忘れてはならない。その意味で、リスクに応じた制度の見直しをするとしても、必要がある場合にはいつでも予防的対策を講じることができるようなセーフティネットを整備することが必要である。また、実効性のある事前・事後のチェックシステムを確立することが不可欠である。  暴露可能性を考慮した新規化学物質の事前審査制度の見直しに当たっては、適切な事前の確認及び事後の監視を行うことによって環境汚染を通じた暴露可能性が低いことについて一定の条件を満たすことを制度設計の前提としています。したがって、確認された条件を満たしていないことが明らかとなった場合や新たな科学的知見が得られ必要であると判断される場合には、改めて事前審査の対象となり、適切な管理の下におかれるものと考えます。  
116  「・・・事後の監視を行うことによってその遵守が確実に担保されることを前提として、・・・柔軟な対応を可能にすべきである。」としている。
 ただ単に柔軟な対応にするのではなく、事後監視等によって、もし万一信頼を裏切り、柔軟な対応の前提であるその遵守が担保されていなかったときには、当然厳しい両罰規定を設け、その罰則の適用を行なわければなりません。
 厳しい両罰規定は、
 (1)暴露の管理による対応
 (2)製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査による対応の双方に適用する。
(理由)
 単に柔軟な対応であっては、柔軟な対応の前提である遵守されなかったときの弊害は極めて大きくなります。産業界のリーダー企業や業界トップ企業ですら、遵守すべきことが遵守できないのは、東京電力や日本ハムの例を見れば明らかであります。
 事前に確認された内容が遵守されなかった場合には、罰則が適用されるべきものと考えます。  
117  事前の確認や事後の監視は、担当部局だけで行うのではなく、市民・NGO代表も参加する第三者機関を設置して、透明かつ厳正なチェックを実施すべきである。  事前の確認や事後の監視の具体的な実施方法については今後検討が必要ですが、制度の運用については本報告においても、審議会等においてリスク評価・管理の観点から適切に検証し必要な場合には見直しを行うこととすべきとされています。  
118  段階的審査の透明性を高めるために、第三者審査を導入することを考えてほしい。その際の判定委員会は多様な専門家(NPO含む)で構成されることが望ましい(守秘義務契約を締結することが前提)。  製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査における分解性及び蓄積性の判定においては、現在の審査と同様に審議会において専門家の意見を聴くことが想定されます。  
119  関係者との情報共有は進めてほしいが、自主的な取組みだけにまかせていては限界がある(正直者が損をする)。厳密な管理を行い、かつ情報共有に積極的な事業者がみとめられる施策もセットにしてほしい。  ここでいう関係者との情報共有とは、事前審査の適用除外の対象となるための条件である暴露管理を確実に担保するための前提となるものであり、情報の共有が十分でなく適切な管理がなされない場合には、適用除外の対象とならないものと考えられます。  

(1)暴露の管理による対応
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
120  今回の中間物に関する議論の内容に賛成する。  
121  中間物について今回提案されているような考えで管理されることについては、全く合理的であり、同意する。事前の確認、事後の監視について、詳細を取り決められるに当たって産業界の意見を十分に参考にされ、より合理的で実施可能な方法を導入されることを望みたい。
 閉鎖系などの取り扱いについて今回提案されているような考えで管理されることについては、全く合理的であり、同意する。これについても前記の中間物の取り扱いと同様であるが、事前の確認、事後の監視について、詳細を取り決められるに当たって産業界の意見を十分に参考にされ、より合理的な実施可能な方法を導入されることを望みたい。
(理由)
 事前の確認は、ともかく、特に事後の監視の実際の運用に当たっては、合理的で実施可能な方法を導入しておかないと混乱を起こすことが懸念される。
 今後、化学物質の取扱の実態等を把握している産業界の意見も踏まえ、今回導入する制度が実効あるものとなるよう制度の詳細について検討を進めるべきと考えます。  
122  有機過酸化物はメーカーで製造され、流通後ユーザーでの使用時に消滅するということでは中間物と位置付けられる。
 また、有機過酸化物は汎用樹脂製造時、ラジカル重合開始剤として使用され、重合後、未反応モノマーは精製し再利用されるが、精製残滓は焼却される。一部の未反応有機過酸化物も密閉系で処理されるので環境下には放出されない。有機過酸化物の用途はほとんど閉鎖系で利用されるものである。審議会で検討されているように中間物、閉鎖系の考え方を是非導入してほしい。有機過酸化物はその定義に合致する典型的な化学物質である。
 中間物としての規定、閉鎖系の規定を作成する時、有機過酸化物の事例も参考にしてほしい。
 本報告では、中間物や閉鎖系等環境放出の可能性が極めて低い用途で使用される化学物質等については、適切な事前の確認及び事後の監視を行うことを前提に、事前審査の対象外とできるようにすべきであるとされているところです。御指摘の有機過酸化物の事例についても今後の具体的な制度の検討の際に参考とすべきと考えます。  
123 1)中間物、2)閉鎖系用途、3)輸出専用品の3項目が事前審査の対象外とできる案に関して、次の用途例も閉鎖系とすることを要望する。

閉鎖系の例:電子材料の合成樹脂として用いられる化学物質は、加工業者のもとで硬化処理を施され電子部品に加工される。例えば、ICチップのような部品に加工される化学物質がこれに該当する。これらの物質は、加工された後は、部品の中に閉じ込められ環境中への放出の可能性が極めてに低くなる。つまり、この部品の中に閉鎖されていると考えられる。
 これらの用途に使用する化学物質を事前審査の対象から外すためには、厳密な用途制限のもとに管理することは当然として、更に環境中に放出されないことを証する何らかの担保を求めることが妥当と考える。
 御指摘いただいた事例も参考としつつ、今後の具体的な制度の検討を行うべきと考えます。  
124  日本国内で製造されるが国内市場には上市されず、他国に輸出される物質の日本国内での申請不要とする提案を支持する。この提案は、現在の欧州や米国における取扱いと一致している。  
125  海外へ輸出するために製造する化学物質についても規制の対象とする
 (a)輸出についての報告義務づけ
 (b)輸出相手国への事前通知同意制度の強化と相手国での使用状況フォローの実施等
が必要で、これらは、メーカーや輸出業者の責任で実施され、その内容に関する情報は開示される必要がある。
 本報告では、事前審査の対象外とする輸出専用品については、個別に事前の確認と事後の監視を行い、新規化学物質の審査制度が整備されている国のみに輸出されていることを担保すべきとされています。また、具体的な制度設計に当たっては、相手国側において環境汚染が生じることのないよう、十分配慮されるべきとされています。  
126  輸出専用品の適用除外については、輸出相手国の事前審査制度が単に外形的に整備されているだけでなく、実際上も日本と同等の審査制度が実施されている場合に限り適用除外を認めるようにすべきである。  ご指摘の点については、具体的な制度設計に当たって、相手国側において環境汚染が生じることのないよう、十分配慮されるべきと考えます。  
127  輸出相手国において新規化学物質の審査制度が整備されている場合に対象外とすることは賛成であるが、相手国の整備の内容により、また相手国でその化学物質が新規化学物質か既存化学物質かなど色々な段階がある。  輸出専用品に関しては、その化学物質によって取扱いを変えることは想定しておりませんが、具体的な制度設計に当たっては相手国側において環境汚染が生じることのないよう、十分配慮されるべきと考えます。  

(2)製造・輸入数量の少ない化学物質に対する段階的な審査による対応
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
128  「事前審査の過程において難分解性であるものの高蓄積性ではないと判定された化学物質については、製造・輸入総量が年間10トン以下であることを事前の確認と事後の監視により担保できる場合には、人の健康に係るスクリーニング毒性試験及び生態毒性試験(以下「スクリーニング毒性試験等」という。)のデータの提出を求めず、その製造・輸入ができることとする。」について評価できる。 3
129  事前審査において、難分解性ではあるものの高蓄積性ではないものについて年間10トンの枠が設けられたことについて、諸外国の実情、国内における調査結果(黒本調査)からも、合理性のあることであり、リスク管理の考えの基で今回改正される点からも全く妥当であり、異論は全くない。  
130  製造数量が1トンを超えた時点で直ちに全ての試験実施を要求していた従来のスキームの変更が検討されたことについて高く評価する。  
131  暴露の程度が1トン以上10トン以下の低暴露であり、高蓄積性ではないという低リスク範囲(特定化学物質になる可能性がない/極めて低い範囲)では、人健康と生態系のスクリーニング毒性試験を留保してもリスク回避できるというリスク評価・管理であるが、P17の(3)の事前確認と事後監視の「有害性情報」の評価・管理において、「有害性」だけで直ちにスクリーニング毒性試験のデータ提出をもとめるのは、如何にも「ハザード管理的」である。むしろ、「暴露の程度(製造・輸入量)」×「有害性」=リスクの程度を評価して、例外的にリスクが懸念される場合だけに、スクリーニング毒性データを求めるような2段階のリスク評価・管理とすべきである。  難分解性ではあるものの高蓄積性ではないと判定された新規化学物質については、製造・輸入数量が年間10トン程度までは、広範囲な地域の環境中に残留することによる環境経由の暴露の可能性が極めて低いと考えられることから、段階的な審査による対応を可能とすることとしています。ご指摘の事前の確認に当たって、どのような場合にスクリーニング毒性試験等のデータを求めるかについては、リスクを考慮した対応である本制度の趣旨を踏まえ、今後具体的に検討されるべきと考えます。  
132 ・製造数量の少ない化学物質に対する段階的審査について
 第一種特定化学物質相当を規制するために、年1tを超える場合、事前審査が必要とされる点は理解できます。今般の改正案によれば、10t以下の中量規制においては、分解性、濃縮性だけの試験で当面生産することが可能とのことですが、それでも(別添3の資料によれば)1200万円程度を要しており、中量の新規化合物の生産は、研究志向の中小企業にとって費用のリスクが大きく、苦慮する問題となっています。
 また、これらの試験には時間を要するという問題もあります。具体的には、もう少し簡易な試験で第一種特定化学物質相当を規制する方法が担保できないかご検討いただきたくお願いいたします。
 化学物質審査規制法における有害性の評価に関する現行の試験法以外の試験法についても、科学的知見の充実や国際的な動向を踏まえ、現行の試験法と同等の取扱いが可能と考えられる場合には積極的な活用を検討することが必要であり、今後、個別の試験法ごとに具体的に検討していくことが必要であると考えます。  
133  人/環境への影響を防止しつつ、新たな制度を円滑に運用する為には、段階的審査で提案されている確認・不確認に関して運用の基準を明確にし、透明性をもった運用がなされることが必要である。  判断基準については、今後可能な限り明確化し、これを公表することにより運用の透明性を確保すべきと考えます。 3
134  「…難分解性であるものの高蓄積性ではないと判定された新規化学物質については、製造・輸入総量が年間10トン以下であることを事前の確認と事後の監視により担保できる場合には、人の健康に係るスクリーニング毒性試験及び生態毒性試験のデータの提出を求めず、その製造・輸入ができることとする。」となっている。
 一方、別紙6「新たな化学物質の審査・規制制度のイメージ」のこの部分に対応する「確認手続」の内容として、「年間一定数(10トン)以下であること」と「既知見に基づく毒性(人、生物)の評価」が挙げられている。後者に関しては、(1)で触れられてなく、何をもって「確認」或いは「不確認」とするのか明確にして頂きたい。
 「既知見に基づく毒性(人、生物)の評価」とは、本報告III.3.(2)(3)にあるとおり、その時点での科学的知見等に基づき、当該化学物質による環境汚染により人の健康を損なうおそれ又は環境中の生物の生息・生育に支障を及ぼすおそれの有無を確認することを想定しています。  

(4)事業者が入手した有害性情報の取り扱いに関する対応
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
135  賛成です。
 具体的な仕組みを早急に作っていただき、判断基準も明確にしていただきたい。
 
136  「このため、化学物質審査規制法の審査項目に係る一定の有害性を示す情報を製造・輪入関係者が入手した場合には、国への報告を義務付ける制度を創設すべきである。」趣旨に賛成です。
 国民(人)や生態系への有害性のレベルによっては、罰則も考慮すべきです。
 ご指摘の点については、他の類似の制度等との法制的な整合性を図りつつ、具体的な制度設計に当たって検討されるべきであると考えます。  
137  事業者に有害性情報の届出を義務づける制度を創設することは賛成である。
 「正直者が馬鹿をする」ことのないよう、届出を懈怠した事業者に対する何らかの制裁措置(例えば氏名の公表など)や、積極的に届出を促す仕組みを設ける必要がある。
 
138  判定の見直しのルールを公開し、透明性を確保すべきである。
(理由(1))
 『環境(生物及びその生育環境を含む)の保全』を評価する手法が確立されたものとなっていないとの認識の下では、評価法の変更・確立によって新たな科学的知見が得られるケースが増加すると予想される。このため、どのような仕組みで判定見直しを実施するかを公開し、見直しプロセスを透明化すべきである。
(理由(2))
 国立研究所、例えば、国立環境研究所は独立行政法人となり、近く国立大学も同じ法人格となる。従って、国立大学の研究と同様に独立行政法人国立環境研究所のデータもピアレビューを受けるべきであり、該当の審議会・委員会・研究会などに報告されただけで、行政の施策に採用されることは研究業績の評価に関して、著しく公平性を損なうシステムであると考える。
(理由(3))
 科学的知見に基づいて、ある判定を下すなり、また、判定を見直すなりする施策、これをレギュラトリーサイエンスと呼ぶのであれば、この手法の在り方を議論すべきである。内山充 国立医薬品食品衛生研究所 名誉所長の定義によれば、「レギュラトリーサイエンスは、科学技術の所産を人間の生活に取り入れる際に、最も望ましい形に調整する科学である。」とされている。何をもって『最も望ましい形』とするのかについては、国民の多くの利害関係者間で透明性の高い議論をすべきである。
 本報告で取り上げられていない事項ですが、新たな知見に基づく判定の見直しにあたっては、可能な限り明確化し公表された判定基準に基づき行うべきと考えます。また、その際評価した内容については、これを関係者にわかりやすい形で公表していくことにより、透明性の確保が図られるべきと考えます。  
139 ・消費者異議申立て制度の導入
 事業者からの情報提供だけでなく、国民・消費者・市民団体らからの提言、申立てを受け審議する制度を導入を図り、個々の化学物質についての毒性試験、再評価、規制の実施を求める消費者の声を反映させるべきである。
 一定の有害性を示す情報を事業者以外の方が入手した場合においても、当該情報を国に報告いただければ、事業者が報告した場合と同様、その内容を評価した上で、国における判定の見直し等に活用されていくものと考えます。  
140  一定の有害性を示す情報を製造・輸入事業者が入手した場合には、国へ報告することを義務付けるのは当然として、現にその製品を使用している事業者にMSDSの改訂等の形で遅滞なく情報を公開することを義務付けて欲しい。
(理由)労働安全衛生保全の観点から必要と考える。
 国は、一定の有害性を示す情報を受けた場合には、その内容に応じて、例えば、参考資料の70ページに示されているとおり、指定化学物質に指定する等の適切な対応を取り、その結果は遅滞なく公表されるものと考えます。  
141  事業者が、化学物質の有害性に係る情報を、速やかに知ることができる枠組みあるいは制度をさらに検討すべきである。  本報告のIV.(2)にも記載されているとおり、新たな制度の下で報告される情報等の公表の在り方など、情報共有のための情報の取扱いについて検討することが必要であると考えます。 3
142  提案にあるように、事業者が有害性を裏付ける情報を新たに入手した場合、化審法の審査項目に基づき把握した情報を報告すること、判定の見直し、判断基準の明確化が必要である。一方、企業が有害性を否定する追加的な情報を得た場合、再審査を受ける事が出来るシステムの構築が必要である。以下の点に留意して、具体的方策をつめていただきたい。 3
143  入手情報を報告するためには、情報の内容が報告要件に該当するかどうかの判定基準を公開すべきである。また、その情報が公知であるかどうかの判断基準についても同様に明確化すべきである。  本報告に記載されているとおり、事業者が入手した情報が報告すべき情報に該当するかどうかについて、製造・輸入事業者が容易に判断できるよう判断基準を明確化し、公表すべきであると考えます。 5
144  情報の提供にあたっては、提供者に不必要に過大な負担(例えば、情報の邦訳等)をかけない配慮が必要である。また、他の法律の下で既に政府に提出されているデータについては政府内での調整を適切に行って欲しい。  本報告で取り上げられていない事項についても、我が国の化学物質の審査・規制制度を更に効果的かつ効率的なものとするとの観点から、制度の運用に当たり政府において引き続き検討されるべきと考えます。
 また、後段のご指摘の点については、今後、具体的な制度設計や制度の運用において検討が必要であると考えます。
4
145  他の法律の下で既に政府に提出されているデータについては政府内での調整を適切に行い、二重三重にデータを要求しないようお願いします。  ご指摘の点については、今後具体的な制度設計や制度の運用において検討が必要であると考えます。  
146  有害性情報の報告に伴い提出する情報のうち、営業上保護すべき公開できない情報の取扱いについては、国際整合性を十分考慮して、具体的な方策を検討すべきである。  本報告IV.(2)に記載されているとおり、新たな制度の下で報告される情報等、国が事業者から取得した情報については、国の情報公開制度における企業秘密の取扱いとの整合性にも留意しつつ、公表の在り方について検討していくべきであると考えています。 3
147  有害性情報の報告に伴い提出する情報のうち、営業上保護されるべき情報の取扱いについては、海外における一般的な取扱われ方、国際整合性等を十分考慮し、その定義を含めた具体的な取扱いについて、別途検討すべきである。。  
148  事業者が入手した情報の扱いについては、事業者の経営リスク管理あるいは競争戦略優位性もあり自助努力として入手している。それは体力があるところ、かつ先進企業が行っている。それを国が入手してその努力をしていない事業者に教えてしまうのは、企業努力を殺ぐものではないか。ただ有害性情報あるいはその逆(有害性を否定する情報)を普及することは社会全体のリスク削減につながるので、もしこの措置をとる場合は、情報を提供事業者が評価されるような仕組みをつくれないだろうか。  本報告IV.(2)に記載されているとおり、新たな制度の下で報告される情報等、国が事業者から取得した情報については、国の情報公開制度における企業秘密の取扱いとの整合性にも留意しつつ、公表の在り方について検討していくべきであると考えます。ご指摘の情報提供事業者が評価されるような仕組みについても、具体的な制度の運用において既存化学物質の有害性評価の取組の進め方とあわせて検討していくことが必要であると考えます。  
149  「国への報告義務」については事業者にとって報告が広い意味でメリットをもたらすような仕組みが望まれる。報告義務も単に罰則的な面からのみ捉えることは効果的ではない。また、化学物質の性状などの情報を国や各企業がワールドワイドに入手しやすくできる機関・体制(現JETOCの様な機関)の整備が必要である。  ご指摘の情報提供事業者が評価されるような仕組みについても、具体的な制度の運用において既存化学物質の有害性評価の取組の進め方とあわせて検討していくことが必要であると考えます。また、化学物質に関する情報を共有化するため、事業者から報告された情報等の取扱いについて検討することも重要であると考えており、制度の運用にあたり、具体的に検討される必要があると考えます。  
150  化学物質審査規制法の審査項目に係る一定の有害性を示す情報を入手した場合に国への報告を義務づけたことは歓迎されるが、さらに海外同様に新規化学物質の届出に際し、全ての手持ちの有害性情報の提出(生分解性良好の物質も含む)、および審査の過程で必要な場合の追加試験の要求も法規上は可能とすべきである。  化学物質審査規制法に基づく新規化学物質の審査においては、まずは既に得られている知見に基づいて判定を行うこととされ、事業者に試験データ等の提出を求める場合であっても、あくまで審査・判定上必要なものに限ってこれを求めることとされているところです。  

(5)既存化学物質
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
151  ・既存化学物質の安全性評価の推進策の提案
 既存化学物質の安全性評価には多大の費用と時間を要するため、現実的影響がありそうな物質を選定し、優先して評価する。生産量100t以下のものは現実に影響が疑われない限り既存点検の対象からはずし、生産量1000t以上の物質はHPVとしてデータが出てくることから、現実的には「環境影響」の観点から、500t以上の既存化学物質を優先して評価する方策を官民共同で実施する方法を検討をすることを提案したい。実施者も企業或いは業界団体でよい。
 問題は高額の費用負担をどうするかであり、国際的なネットワークにかける(準HPVプロジェクトの提案)、国より助成金を出す、税務上の優遇策等、何らかの国の協力なしには、今の企業は国会決議をたてに異議を申し立てて、動こうとはしないであろう。
 新規物質登録は企業責任と自覚するが、生産数量の少ない物質の面倒までは見る力が企業にはないのが実態である。「ない袖を振れる」ような環境つくりは国の仕事と考えるがいかがであろう。
 既存化学物質の有害性評価については、本報告において、事業者及び国が十分相互に連携し、計画的に実施するとの考え方の下、事業者及び国が取組を進めるに当たっての具体的な考え方が示されております。今後、この考え方に沿って、既存化学物質の有害性評価の計画的な実施に向けた具体的な検討を速やかに進めるべきと考えており、ご指摘の点については検討の際の参考とすべきと考えます。  
152  既存化学物質の有害性評価・リスク評価の推進については、国と産業界とがそれぞれの立場に立って、よく連携し、協議した上、効果的かつ効率的に最適な進め方で取り組むべきである。
 この点では、特に、国際的な取り組みとの連携、整合性等に対する配慮が重要である。
 
153  化学物質全体のリスク管理を考えれば、既存化学物質の安全性点検とその公表こそが最重要の課題といえる。
 既存化学物質の安全性点検は、これまでは専ら国によって進められてきているが、今後は、一定の猶予期間を設けた上で、原則的に事業者の責任とすべきである。
 化審法制定以来、既に約40年が経過しているにもかかわらず、約2万種の既存物質中、安全性点検が行われたものは、分解性・蓄積性については1279物質、人の健康毒性については僅か191物質のみである。このような現状に鑑みるならば、もはや既存物質に対する審査の適用除外を認めることは適当ではなく、新規物質同様、事業者がその試験結果を付して審査申請を行い、国の審査を経るものとすべきである。
 猶予期間中においては、国は、「既存化学物質安全性点検計画」(仮称)を策定することにより、全体スケジュールを明らかにするとともに、事業者と国との役割分担を明確にし、国民にも理解と協力を求めるべきである。
 既存化学物質の有害性評価については、本報告において、事業者及び国が十分相互に連携し、計画的に実施するとの考え方の下、事業者及び国が取組を進めるに当たっての具体的な考え方が示されております。今後、この考え方に沿って、既存化学物質の有害性評価の計画的な実施に向けた具体的な検討を速やかに進めるべきと考えており、ご指摘の点については検討の際の参考とすべきと考えます。  
154 ・既存化学物質について
 73年に、化審法が施行された後の化学物質の規制状況をみても明かな通り、既存化学物質については、環境汚染の事実が判明した後の「特定化学物質」の指定であり、化審法はいわば後追い規制の役割しか果たしてこなかった。
 今後、既存化学物質については、下のような手順を踏むことが望まれる。
 (a)  化学物質を製造・販売・使用する事業者に、最新の知見を反映した毒性や生態系への影響に関する試験成績を期限をもうけて提出させる。
 (b)  上記試験成績とともに、文献調査も実施させ、それらの内容をすべて公開し、評価についてパブリックコメントを求める。
 (c)  試験成績が提出されない化学物質については、提出され、評価されるまで、一時製造・使用停止にする。
 (d)  試験成績の評価に際しては、「予防原則」の観点を取り入れる。
 既存化学物質の有害性評価を推進するに当たっては、ご指摘のような手順により対応するのではなく、これまでの事業者や国の取組等を踏まえ、事業者及び国が相互に十分連携しつつ、それぞれの役割に応じて計画的に実施すべきと考えます。  
155  化学物質の安全性の評価は、世界的な官民の共同作業で進められており、評価結果も広く公開・公表されている。その他、多くの学術雑誌にも安全性情報が掲載されている。この情報の中には、信頼性に乏しく評価に使用することが出来ない質のものもあり注意が必要であるが、IT化が進展しているのでこれらの情報を収集し広く利用する条件が整ってきている。新しい情報が得られれば、化学物質の安全性の評価を更新することも必要である。そのための一助として産業界が保有する安全性データを評価機関に提供することは必要であろう。  
156  審査は国と事業者が協力して進めるべきであるが、特定の化学企業に重い負担を強いることは避けなければならない。とりわけ企業体力の脆弱な中小企業が適切な管理を推進できるよう特段の配慮を求めたい。  本報告に記載されているとおり、事業者が既存化学物質の有害性評価を進めるに当たっては、関係事業者間で適切な分担を行いつつ取組を進めることが重要であると考えます。今後、ご指摘の点も踏まえながら、既存化学物質の有害性評価の計画的な実施に向けた具体的な検討が速やかに進めるべきと考えます。  
157  この項で使われている「有害性評価」という言葉は、生態毒性の観点を加味したものなのか、従来の化審法でいう狭い意味の有害性評価を意味しているのかわからない。当然前者を指すべきと考えるが、冒頭で誤解のないよう断っておくべきではないか。  本報告の1ページに記載のとおり、本報告においては「「有害性」とは、人又は生物に対する毒性のほか、難分解性や高蓄積性を含むもの」として用いています。  
158  「さらに、事業者の取組によって得られた情報と国自らが収集した情報を関係者が広く共有・・・・」とあるが、全ての利害関係者が情報を共有することは非常に重要と考えるが、そもそも「関係者」という言葉は曖昧であり、特にここでは「国民」もしくは「市民を含む全ての関係者」などより適切な言葉に置き換えるべき。  ここでいう「関係者」とは、国内外を問わず、化学物質の製造、使用等に関わるすべての者を指しております。IV.(2)の記述とあわせてご覧いただければ、特に修正の必要はないと考えます。  
159  実際の推進に当たっては、化学物質の性状や用途に応じた適切なデータの取り方、評価の仕方があることも考慮し、産業界と政府の専門家を含めて最適な進め方を協議すべきである。  今後、ご指摘の点も踏まえ、本報告で示された考え方に沿って既存化学物質の有害性評価の計画的な実施に向けた具体的な検討を速やかに進めるべきと考えます。 3
160  II2(3)の「なお、良分解性物質の毒性に関するデータの取得については、高生産量の物質を中心に、国際的にも協調しつつ官民が共同でこれを把握し評価を行う取組が進められていることから、このような取組を一層推進していくことが必要である。」の「官民が共同で」を削除する。
(理由)
 我が国の化学工業は、既に米欧日の三極の一極を占めるまでになっている。国際化学工業協会協議会の中で、米欧は企業が国家の支援を求めず自主的に自己責任で有害性評価が進められていると聞いています。ところが、化審法制定時の付帯決議があるそうですが、もしそれを基に化審法制定後30年も経過しているのに、我が国の化学工業のみが国の支援を必要とするのでしょうか。10年一昔、時代も事情も大きく変わったのです。
 今回化審法大改正のときに自立し、今後は米欧と同様我が国の化学工業は、国家のカネ・ヒト・モノ等の支援を求めず、一人立ちして自主的且つ自己責任で有害性の評価を行わなければならないでしょう。削除又は全面的に書き直しを求めます。
 世界の化学工業の三極の一極を占める我が国の化学工業が有害性評価のために、未だに国家に依存しなければならないとは考えられませんが。
 ほかにも同様の記述があれば、訂正を求めます。
 本報告に記載されているとおり、既存化学物質の有害性評価等については、事業者及び国が十分相互に連携し、それぞれの役割に応じて取組を進めることが必要であり、事業者は、実際に化学物質を製造し取り扱っている者として、既存化学物質の有害性評価についても、速やかに取組を進めることが期待されます。また、国は、多数の関係者が多種多様な化学物質を広範多岐にわたり利用していることを踏まえ、総合的にリスク評価・管理を進めるべきと考えます。  
161  「・・・含めた更なる有害性評価等法の開発、評価に必要な人材の育成・試験機関の充実強化等の環境整備を進めるべきである。・・・」を
 「・・・含めた更なる有害性評価手法の開発及び評価に必要な人材の育成を進める。・・・」とする。
(理由)
 事業者が取り扱う化学物質の有害性情報を把握するのは事業者の当然の責務であり、お客様や周辺地域の方々のために自らの負担により自己責任で行うべきで、国に対しおんぶにだっこを求めるべきではないでしょう。
 国を含めた全体の取組を円滑かつ効率的に進める上で、試験機関の能力向上や優良試験所基準の遵守の確認も国の重要な課題と考えているため、原案のままとさせていただきます。  
162  我が国では昭和48年の化審法国会審議の付帯決議を根拠として、国が既存化学物質の試験を行うものとされているが、これは海外先進国では見られない点であり、指定化学物質および難分解性・高蓄積性物質に限らず、TSCA、EUの如く国は製造・輸入事業者に対して法律的に試験の指示をし得るようにすべきである。  欧米の制度では、事業者に既存化学物質の毒性試験の実施を指示したり、有害性情報の提出を求めたりすることができるのは、リスク評価に必要とされる場合や人や環境へのリスクが見込まれる場合とされています。我が国の現行の化学物質審査規制法においても、これらの制度と同様に、指定化学物質や今回新たに導入される難分解・高蓄積性物質に関して一定のリスクが見込まれる場合には製造・輸入事業者に長期毒性に関する調査を指示することができることとされています。  
163  簡易評価手法も含めた更なる有害政評価方法の開発、評価に必要な人材の育成・試験機関の充実強化などの環境整備を進めることが述べられてあるが、全く同感である。国として、積極的に取り組まれること切に望むものである。
(理由)
 試験期間をより短期間に、また、試験費用をより安価な方法にすることを検討することが必要であり、そのためにも試験に関する環境の整備は必須である。
 本報告に記載されているとおり、既存化学物質の有害性評価に関する全体の取組が円滑かつ効率的に進むよう、国として御指摘の環境整備に取り組むべきであると考えます。  
164  化学物質の有害性評価、リスク評価は、海外でも積極的に進められており、海外政府との連携を密にし、彼らが保有する知見も最大限に活用できるよう、効率的な取り進めをして頂きたい。
 既存化学物質の有害性情報の収集・取得は、優先順位を決める等、効率的に進めることが肝要であり、国においては、従来から実施している化審法に係わる安全性点検を引き続き積極的に推進して頂きたい。
 本報告においても、既存化学物質の評価の取組を一層実効あるものとするため、国際的な取組で得られた情報の活用や適切な優先順位づけ等を行いつつ、取組を進めることが重要とされており、こうした観点を踏まえつつ、今後速やかに具体化を図っていくことが必要であると考えています。  
165  既存化学物質の有害性情報、リスク評価に関わる情報は、今後国際的にも増大する方向であるので、関係者がこれらの情報を広く共有できるよう、国は、国内外の情報を体系的に収集・整備するとともに、一元的に提供できるデータベース等を構築し、重複した試験実施を避けるなど、効率的な仕組みを整備して頂きたい。
 化学物質の情報を管理するにあたっては、現在用いられている官報整理番号(化審法番号、あるいは安衛法番号)と化学物質名称のみに頼るのではなく、国際的にも広く用いられているCAS番号によっても管理できるよう、効率的なシステムを早急に構築して頂きたい。
 収集した情報については、その内容を評価し、質の高い情報として提供して頂けるよう、人材ならびに資源を確保して頂きたい。
 本報告に記載されているとおり、既存化学物質の評価の取組が円滑かつ効率的に進むよう、収集・取得した情報を関係者が広く共有できるデータベースの整備をはじめ、評価に必要な人材の育成等の環境整備を図っていくことが必要であると考えています。  

(6)その他
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
166 ・事前影響評価制度の導入
 現在のような、フィールド試験なしでの実用化は問題である。メーカーは、毒性試験や環境影響評価を実施し、すべての試験報告書を製品の販売前に公開し、パブリックコメントを求める必要がある。消費者との合意の後に初めて、製造販売できるようにすべきである。
・事後影響評価制度の導入
 全国一律的に使用するのでなく、まず、限られた場所で使用した時の環境影響評価を行なう。また、その物質の使用開始後に環境影響評価を行ない、その結果をもとに自然環境や生態系への影響を再評価する制度を設ける。
 現行の化学物質審査規制法においては、新規化学物質が製造・輸入される前に届出を行い、安全性の審査を受けることとされており、判定の通知を受けた後でなければ製造・輸入してはならない制度となっています。審査における判断基準については、今後可能な限り明確化し、これを公表することにより運用の透明性を確保すべきであると考えます。
 化学物質の事後の管理については、製造、輸入、使用の状況や排出量の把握、環境モニタリング調査等により汚染状況を調べ、環境リスク評価を行うことにより、対策が必要であるかどうかを判断していくことが適当であると考えます。
 
167 ・「リスク評価」方法を絶対視しない
 さまざまな不確実な要素が評価の対象からはずされ、毒性評価モデルの単純化と数値化が行なわれる。そのため、複数の化学物質を比較するには一見便利だが、得られた数値が絶対視されてしまう恐れもある。
 また、「リスク評価」の手法はリスク-ベネフィット(危険性-便益)比較に結びつき、リスク削減のための経費(コスト)に数値化されて、コスト-ベネフィット(費用-便益)比較として、行政や企業の主張に取り入れられることが多い。
 「リスク評価」の手法は、毒性試験データや環境データなど科学的な要素を含むものであるが、実際は、多くの不確実ないくつもの仮定の上に成り立った、いわば砂上の楼閣的側面があることを念頭におかねばならないし、リスクとベネフィットの双方を受け入れねばならない一般の人に対して、それぞれの内容が恣意的に解釈されないよう、きちんと説明されていなければ、科学を装ったまやかしの手法に終わってしまう。
 化学物質の管理において、透明性のある科学的根拠に基づくリスク評価・管理を用いることの重要性は国際的にも認識されているものと考えています。
 また、それらのリスク評価手法については、科学的知見の充実や国際的な動向を踏まえ、関係者の意見を聴きつつ、適時適切に見直していくことも必要であると考えます。
 
168 ・予防原則の導入
 ヒトの健康や生態系に被害を及ぼすおそれのある化学物質は、因果関係が科学的に完全に立証されていなくとも予防的措置を講ずるべきであるという、いわゆる予防原則を導入すべきである。
 「リスク評価」方法で得られた数値を利用するものの(ただし、そのリスク評価の根拠となるすべての情報がリスクを被る一般の人に公開されていることが必須条件である)、不確実なことを不確実と認識して、ことにあたるのが予防原則の手法である。
 生殖系や神経系、免疫系などへの不可逆的な影響が心配される化学物質の場合、ヒトや生態系への影響がどのようなものになるかが完全に究明されてから、規制するのでは、遅すぎるから、予防原則の手法がとられるべきであろう。
 化学物質の管理において、予防的取組方法に留意することが基本的な考え方の一つとして国際的にも認識されているものと考えています。具体的には、「環境と開発に関するリオ宣言 第15原則」である「環境を保護するために、予防的取組方法は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻なあるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化防止のための費用対効果が大きい対策を延期する理由として使われてはならない。」との考え方に留意しつつ、具体的な措置を講ずることが必要であると考えます  
169  個々の化学物質の規制だけでなく、類似の化学構造を有し、その作用機構が共通の化学物質については、一つの化合物群として規制すべきである。これは、構造活性相関の活用とも関連しよう。  化学物質審査規制法に基づく化学物質の評価・管理においては、それぞれの化学物質について当該化学物質による環境汚染が防止されるような管理措置がとられることが必要です。そのため、有害性情報と暴露可能性を踏まえ、化学物質ごとにリスク評価がなされるべきですが、その際には、科学的知見に基づき化学構造や作用機構の類似性も考慮すべきと考えます。  
170  見直し案の大きな変更点は、生態影響評価実施と、年間10t枠の新設を追加する内容を骨子にし、評価システムについては従来のハザード評価のみを採用する方針の域を出ていない。リスク評価へ積極的に移行する先進工業国の化学物質安全性審査体制と比較して、科学的後進性の域を出ていない感がある。新規化学物質の事前審査において、わが国ではこれまで暴露可能性を考慮した審査は実質的に行われておらず、規制の国際的調和という観点からはなはだしく逸脱している。先進主要国の規制同行に沿って現実に即したリスクアセスメントにもとづいた事前審査が行われるよう改正すべきである。
 暴露可能性がない又は極めて低くなることが確実な場合、事後の監視を前提に3つの具体的ケースについてのみ事前審査の対象外とすることが提案されているが、本来のリスクアセスメントの考え方からすれば、ケースごとに暴露とハザードを考慮して判断すべきである。したがって、例記されている3つのケースのみならず、欧米同様、個々の化学物質について現実に即したリスクアセスメントに基づく審査・規制・管理となるよう、要望する。
 リスクアセスメントに資する資料がない場合には、従来どおりハザード評価で対応せざるを得ないことは自明であるが、ハザード評価資料に加えて、より現実に則し、科学的信頼性が担保されたリスクアセスメント評価資料を提出しうる場合においては、リスク評価に立脚した審査・許可体制を併設することが国際的要望に答えうる姿勢であると考える。リスクアセスメント資料評価への路を閉ざした姿勢は、化学物質の審査体制が我国産業界の国際競争力に大きく影響し、問題を残すものと考える。
 化学物質審査規制法における審査・規制制度においては、新規化学物質のリスク評価及びその結果に基づく個別ケース毎の管理措置の適用といった対応は行われていませんが、これは、第一種特定化学物質に該当するものを除き、スクリーニング試験等により長期毒性が疑われる化学物質については、用途を問わず製造・輸入を認めつつ、暴露状況の監視を行い、事後にその使用の状況等を踏まえたリスク評価・管理を行うとの考え方に基づいた審査・規制制度としているからです。
 なお、今回の検討では、暴露可能性が低いことについて一定の条件を満たすいくつかのケースについて、事前審査段階においてもリスク評価・管理の観点からの新たな対応を可能とする措置を導入することとしています。
 


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