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II.環境中の生物への影響に着目した化学物質の審査・規制について

(1)基本認識
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
14  化審法の事前審査において、生態毒性試験結果を用いて生態毒性の評価を行うことは賛成である。  
15  「政府部内における他の環境保全のための化学物質対策に係る取組も考慮に入れ、生態系への影響との因果関係に関する科学的不確実性に留意しつつ、各種の制度において整合性のとれた考え方の下で、化学物質の審査・規制制度においても、化学物質の環境中の生物への影響に着目した何らかの対応が必要である。」とあるが、対応の目的が、あらゆる生態系の保全ではなく、人の健康の保護であることを明らかにする必要がある。  諸外国における化学物質の審査・規制制度や取組においては環境(生物及びその生息環境を含む。)の保全の観点が含まれているのが一般的であり、また、我が国においては、環境基本法及び環境基本計画において、生態系の保全は環境保全施策の重要な目標の一つであると位置付けられています。化学物質対策を推進していく上でも、生態系に対する化学物質の影響の適切な評価と管理を視野に入れることが必要であるとされていること等を踏まえ、化学物質の審査・規制制度においても、人の健康の保護とは別に化学物質の環境中の生物への影響に着目した何らかの対応が必要であると考えます。 3
16  早急に措置を講じられるようにするべき。影響が出てからでは遅いのだから。化学汚染にもっと慎重に取り組むべきだと思う!  本報告を踏まえ、政府において速やかに措置が講じられるものと考えます。  
17  入り口の所で規制できるこの法律の改正が、真に生物を守るために一日も早く施行されるようになることを望みます。  
18  化学物質等の審査・規制制度において、「環境中の生物への影響に着目した対応が必要である。」との考え方に、基本的に同意する。
 但し、化学物質を"総合的"に管理するとの観点からの対応を適切に進めて頂きたい。
 環境保全のための各種制度との整合性を持たせることは当然のことであり、重複した過度の規制とならぬよう、合理的でバランスのとれた制度とすべきである。
 環境保全に係る化学物質対策にはさまざまな制度がありますが、政府においてはそれらの間で連携をとって取組がなされるべきと考えます。  

(2)審査・規制の基本的考え方及び枠組みについて
 (1)生態毒性の評価方法等
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
19  生態保全は化学業界側にとっても避けて通れない問題であり、費用負担は当然のことである。「3点セット」の考え方も、いろんな意見のあることも承知しているが、世界の趨勢や評価法における現状の技術的レベルを考えると妥当な線である。  
20  基本的な考え方として、生態毒性試験(藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験)により、環境中の生物への影響について一定の評価を行なうことは、基本的に賛成である。また、国際的な取り組みとの整合性の観点からも、歓迎すべきことと考えられる。  
21  「試験実施が容易な藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験」とあるが、物質により種間のLC50の値が著しく異なる場合があり、また海外でも3種を用いているので賛成。  
22 ・生態毒性試験
 国際整合性の観点から、現在の化学物質審査規制法に環境生物への影響を考慮するという観点の導入を検討する必要があると理解している。その場合、国際的に認められた試験方法を用いることで議論されているものと理解している。
 
23  適切な試験内容の決定や実際の規制手段の要否検討に際して、リスクアセスメントを用いること、PRTRのような間接的手法が直接規制より効果的な場合もあるとしている点などについて強く支持する。  
24  環境の保全あるいは生態系の保全を評価・判断する手段として、従来技術にはない生物個体群レベルの評価法を国際的協調の下に検討・議論すべきである。次善の策として既存の評価手法を用いて評価データ蓄積を進めるとしても、判断基準の国際的整合性の確立に努めるべきである。
(理由(1))
 『人の健康の保護』の観点と『環境の保全』の観点とで、生物毒性試験の評価基準を同じに考えるべきではない。藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験による評価法は、個体レベルの評価手法であって個体群レベルの評価手法としては適当ではない。個体群レベルでの評価は、個々の個体の生死あるいは何らかの有害作用、例えば受精への影響、を問題とするのではなく、むしろ個体群全体の『個体数』の変動(変化ないし減少・絶滅)を議論するべきである。
(理由(2))
 『環境の保全』を視点とした「個体群レベル」の評価手法を欧米と協力して構築していくべきであり、科学的根拠について必ずしも国際的・学問的に合意されていない評価手法を拙速的に導入すべきではなく、ましてや、これに基づく規制実施を急ぐべきではない。
化学物質による特定の生物に対する個体群レベルでの影響を評価するとの観点から、生態毒性試験を用いて生物の致死、生長、繁殖等への影響を評価することにより生態系に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆される化学物質を特定することが可能と考えられます。このような考え方はOECDにおける議論を経て国際的に受け入れられており、諸外国でもこのような考え方を基本として生態毒性試験が活用されています。
 なお、審査における判定基準については、国際整合性にも留意しつつ、今後政府において検討されるべきと考えます。
 
25  水生生物の急性毒性試験結果は、生態毒性評価の便宜的な評価指標にすぎないので、この結果から直ちにその化学物質が生態系に影響を及ぼすと考えることは早計である。そのように試験結果が受け取られないように法律では正確に表現することが必要である。  化学物質による特定の生物に対する個体群レベルでの影響を評価するとの観点から、生態毒性試験を用いて生物の致死、生長、繁殖等への影響を評価することにより生態系に何らかの影響を及ぼす可能性が示唆される化学物質を特定することが可能と考えられます。このような考え方はOECDにおける議論を経て国際的に受け入れられており、諸外国でもこのような考え方を基本として生態毒性試験が活用されています。  
26  モデルとなる藻類、ミジンコ、魚類の急性毒性で評価するとしていますが、毒性には慢性毒性、忌避行動や発ガン性、環境ホルモン作用などもあります。急性毒性だけで評価するのでは生物は救えません。慢性毒性、忌避行動、発ガン性、環境ホルモン作用なども併せて評価してください。魚もコイのように汚濁に強いものばかりでなく、弱いものも入れてください。  生態毒性の評価の方法としては、生態系の機能において重要な食物連鎖等の関係に着目し、生産者、一次消費者、二次消費者等の生態学的な機能で区別して、それぞれに対応する生物種をモデルとして用いるとの考え方に基づき、試験実施が容易な藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験の結果を用いて評価することが適当としていますが、評価に用いる試験の項目や対象生物種に関しては、化学物質の環境中における挙動等も考慮しつつ、今後の科学的知見の充実や国際的な動向を十分踏まえ、将来において、必要に応じその内容について見直すことを可能とするような柔軟な仕組みとすることが適当であると考えます。 2
27  試験の実施可能性・容易性、国際整合性を踏まえて設定すべきという点は基本的原則であるが、その点を「藻類・ミジンコ類・魚類の急性毒性試験の結果で評価する」ということがその具体例として示されている。この方法で評価できるのか(この3点は水系の生き物である)、参考資料を拝見してもよくわからない。水系以外の生態系、あるいは日本固有の条件にもとづく問題が起きないように対応できるような措置を何か組み込むようにできないだろうか。  
28  生態毒性の評価方法は各国で共通にすべきである。
(理由)国内での評価結果のみで済むようにすること。微妙に異なる試験方法を規定して汎用性を無くすことのないようにして欲しい。
 生態毒性の評価方法や生態毒性試験方法などの制度実施のために必要な内容については、国際整合性も参考にしつつ、今後政府において検討されるべきと考えます。 4
29  生態毒性試験で使用する指標生物は、魚類、ミジンコ、藻類とされていますが、なぜ水棲生物に限定されているのでしょうか。日本のように高温多湿の国土では、ミミズなどの土壌の「分解者」も指標として重要であると考えられます。いずれにしても、このような特定の生物種のみを対象として生態系への影響を判断するには不十分であると考えます。  生態毒性の評価の方法としては、生態系の機能において重要な食物連鎖等の関係に着目し、生産者、一次消費者、二次消費者等の生態学的な機能で区別して、それぞれに対応する生物種をモデルとして用いるとの考え方に基づき、試験実施が容易な藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験の結果を用いて評価することが適当としていますが、評価に用いる試験の項目や対象生物種に関しては、化学物質の環境中における挙動等も考慮しつつ、今後の科学的知見の充実や国際的な動向を十分踏まえ、将来において、必要に応じその内容について見直すことを可能とするような柔軟な仕組みとすることが適当であると考えます。  
30  規制するにあたっては、特に危険な物質を選別できるような評価手法を導入することが必要であるとともに、過度な規制にならないよう「費用対効果」を充分に考慮したものとすべきである。  
31  生態毒性の評価方法としては、国際的にも広く用いられており、信頼性、再現性が高いとともに、簡便性を兼ね備えた試験方法を用いて評価すべきである。具体的には、提案書にもあるように、藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験の結果をもって評価・審査することが適当であると考える。多種多様な生物が棲息する生態系への影響を評価するには、より多くの生物種を用いた試験を課すべきとの考えもあるが、環境中の生物を安定に飼育することはそれだけでも容易なことではないので、化学物質の製造・輸入前の審査としては、上記の3種類の生物の急性毒性試験結果による評価を行うことが妥当と考えられ、必要以上に過度の試験を課すべきではない。  生態毒性の評価の方法としては、生態系の機能において重要な食物連鎖等の関係に着目し、生産者、一次消費者、二次消費者等の生態学的な機能で区別して、それぞれに対応する生物種をモデルとして用いるとの考え方に基づき、試験実施が容易な藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験の結果を用いて評価することが適当としていますが、評価に用いる試験の項目や対象生物種に関しては、化学物質の環境中における挙動等も考慮しつつ、今後の科学的知見の充実や国際的な動向を十分踏まえ、将来において、必要に応じその内容について見直すことを可能とするような柔軟な仕組みとすることが適当であると考えます。  
32  生態試験は、例えば魚を試験生物に指定されますと、その種類によっては春先しか試験ができないように聞いています。試験生物について、通年実施可能な変動要因のない生物、できましたら安価な試験生物をご考慮いただきたくお願いします。  生態毒性試験法などの制度実施のために必要な内容については、今後政府において検討されるものですが、ご指摘の点につきましては、その際の参考とすべきと考えます。  
33  水生生物を対象とする生態毒性評価では、試験方法に依存する固有の問題点については十分留意されるべきである。一般的には、PNECとPECの関係(比率)で潜在危険性が評価されるが、水に溶解しない物質についても、これらの正確なデータを要求することは、極めて高額の試験実施を要求することになり実際的でない。実質的にその化学物質が環境中に存在しうる状態と濃度から環境影響が評価されるべきである。  
34  生態毒性を評価するための試験については、その試験が適用できる化学物質の性状を明確にすべきであり、信頼性のあるデータを取得し難いと予想される場合には、敢えて試験を課すべきではない。具体的には、水生生物を用いた生態毒性試験を審査項目とする場合には、揮発性液体や気体については水中濃度の維持が困難であり、的確な結果が得られないことが予想される。また、難水溶性物質については、試験実施および評価上の問題点を明確にし、分散助剤の使用等、適切なる試験実施および評価方法に関するガイダンスが作成されるべきである。  生態毒性試験法などの制度実施のために必要な内容については、今後政府において検討されるものですが、ご指摘の点につきましては、その際の参考とすべきと考えます。  
35  化学物質の生態影響試験を導入することには賛成である。
 今回の案は、OECDの試験法を我が国の化審法に当てはめた形であり、この枠組みだけを見る限りにおいては、国際的にも厳しい枠組みに見える。今後の制度設計においては、環境保全と経済の両立可能な費用対効果を充分に確保できる試験方法、評価・規制基準、管理方法の確立が今後の課題である。具体的課題としては、持続可能な開発を可能とするリスク評価・管理を大幅に導入すること、QSAR等の積極的な活用、生態影響試験(急性、特に慢性)の効率的試験法の開発、等。
 また、これら制度設計の実施にあたっては、バランス良い利害関係者の参画が必須である。
 
36  今回、化審法に基づいて生物への影響を評価し、その結果に応じて必要な管理をしていくことになり、今後、詳細な制度設計が必要となる。全く新たな制度の導入であり、生態影響評価の専門家のみならず、適切なリスク管理に関する検討に資する専門家や事業者などの関係者を交えて、十分な意見交換のもとに具体的な内容についての議論を直ちに開始すべきである。産業界としても積極的に参加していく。  生態毒性試験法などの制度実施のために必要な内容については、関係者の意見も参考にしつつ、今後政府において検討されるべきと考えます。 3
37  生態毒性試験による環境中の生物への影響(特に、その評価の進め方)について、これから詳細な制度設計が行われて行くものと思われるが、この作業はいわゆる専門家に一任するのではなく、新たな制度に基づいて実際に管理を行なう産業界も積極的に参加して、関係者が衆知を集めて検討することとすべきである。  
38  今回の見直しにより、化審法に新たな制度、枠組みを導入することになるであろうが、今後、制度上、運用上の詳細を詰めるにあたっては、生態毒性の専門家のみならず、適切なリスク管理を検討し得る専門家や事業者などの関係者を交えて、十分な意見交換のもとに取り進めて頂きたい。  
39  第二種特定化学物質と同等の規制措置をとる評価基準の設定にあたって、如何なる動植物種を慢性試験対象として選択するのか、また、どのような試験方法を取るのか、その経済性も考慮に入れた実施可能な具体的な内容について産業界の専門家も含めた場で検討すべきである。  慢性毒性試験法などの制度実施のために必要な内容については、関係者の意見も参考にしつつ、今後政府において検討されるべきと考えます。 5
40  個々の生物だけでなく、いろいろな動植物が共生している生態系への影響を評価すべきで、自然環境に類似したいわば、人工環境での試験が必要である。  生態系への影響を評価する試験については、今後の科学的知見の充実や国際的な動向を十分踏まえ、必要に応じ見直していくことが必要と考えますが、現在のところご指摘のような試験法は国際標準的に用いられる手法としては確立していません。  
41  生態系保全という目的と、「特定の生物種」を人間やその他の動物の身代わりに使用することでその危険性を実験するという手段において、目的と手段の両者の判断が無批判に混同され、何の議論もなされていない事は、大きな問題だと思います。その必要性について、他の分野(たとえば人文学における自然哲学・科学哲学)の研究者も含めて、議論が必須と思います。  現在では、環境中の生物への化学物質の影響を把握するための、実施が困難でなく、かつ有効な方法として生態毒性試験が国際的にも広く活用されており、我が国においても同様な考え方から生態毒性試験を活用することが適当であると考えます。  
42  環境中の生物の影響については、生態毒性試験結果やほ乳類、鳥類の繁殖や発生などに係る慢性毒性試験の評価のみに頼るのではなく、積極的に代替法を試み、その結果を用いて環境中の生物への影響を評価することが適当である
(理由)
 その評価を、生態毒性試験結果のみ限定してしまうことは、新たな有効な評価方法の確立を妨げ、安易に生体毒性試験を繰り返すことで、一面的に環境中の生物影響を判断することにつながりかねない。
 4ページ下段に「個別の化学物質が生態系に及ぼす影響については、これを客観的・定量的に評価することは困難」とあるように、生態系への影響については、非常に複雑である。
 よって、生態毒性試験のみでなく、有効な代替法の確立を積極的に行うことが、有効な評価方法につながると思う。
 現在では、環境中の生物への化学物質の影響を把握するための、実施が困難でなく、かつ有効な方法として生態毒性試験が国際的にも広く活用されており、我が国においても同様な考え方から生態毒性試験を活用することが適当であると考えます。
 一方で、生態系への影響をより確実に評価することを考慮した有効な評価方法の開発を進めていくことが必要です。生物に対する毒性の評価方法は、このような新たな評価方法など今後の科学的知見の充実や国際的動向を十分に踏まえ、将来において、必要に応じ見直していくことが必要であると考えます。
 
43  世界的な環境影響評価の動向に合わせた結果、生態系への化学物質の影響評価手段として、水生生物の急性毒性試験結果を用いることが提案されている。国内では、海洋汚染防止法や農薬取締法など、他にも水生生物を用いた評価を行っている法律があり、海外でも環境影響評価では、同様の試験が用いられている。これらの試験方法及び評価基準は、できる限り不整合を生じないように運用されるべきであると同時に評価の基準は適宜見直すことが必要であり、その基準は公開されるべきである。  生態毒性試験方法については、今後政府において検討されるものですが、本報告では、試験の実施可能性・容易性や国際整合性を踏まえて、藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験を用いることが適当であるとしています。
 なお、審査における判定基準については、国際整合性にも留意しつつ、今後政府において検討されるべきですが、その際には各方面から収集した科学的知見に基づき合理的に決定される必要があると考えます。
 
44  生活環境に係る動植物への被害を生ずるおそれがある化学物質に対する製造・輸入制限等の規制を導入する際の判定基準・評価基準等については、国際整合性を踏まえた上で、その経済性をも考慮した実施可能な具体的内容とすべきである。  本報告で取り上げられていない事項ですが、審査における判定基準については、国際整合性にも留意しつつ、今後政府において検討されるべきですが、その際には各方面から収集した科学的知見に基づき合理的に決定される必要があると考えます。  
45  直接規制を行う場合には、生態毒性を有すると判定する基準を明確にして頂きたい。判定基準の設定にあたっては、科学的合理性はもとより、国際整合性を十分考慮し、産業界も含めた関係者間にて検討すべきである。  
46  直接規制(生態影響監視物質(仮称)への指定)に係る判定基準に関しては、国際整合性を配慮して、産業界を含めて協議していくべきである。産業界としては、生態影響評価において、特に当初の判定を行う判定基準としては、化審法が、厳しい強制法規であることを鑑みると、GHSの急性毒性影響のカテゴリー1を採用すべきと考えられる。  生態影響監視物質(仮称)には直接規制は適用されませんが、審査における判定基準については、国際整合性にも留意しつつ、今後政府において検討されるべきですが、その際には各方面から収集した科学的知見に基づき合理的に決定される必要があります。 4
47  難分解性・高蓄積性の物質について、リスクの観点から、厳しく管理することは必要であろう。しかしながら第一種特定化学物質への指定は、実質的に製造・輸入の禁止措置という非常に厳しいものであることから見て、判定の指標については、科学的合理性と透明性をもったものでなければならない。産業界も含めて議論すべきである。  本報告で取り上げられていない事項ですが、審査における判定基準については、今後政府において検討されるべきですが、その際には各方面から収集した科学的知見に基づき合理的に決定される必要があると考えます。 5
48  定量的な目標管理等に基づく直接規制措置を導入するとある。従来は審議会で「総合的に判断」して第二種特定化学物質あるいは指定化学物質等と分類され、拠って来る判断基準が明確に示されることはなかった。今後は判断基準を明確に開示すべきである。
(理由)新規化学物質の開発に役立つと考える。
 本報告で取り上げられていない事項ですが、審査における判定基準は可能な限り明確化し公表することが必要であると考えます。 4
49  生態毒性の審査では、QSARの活用も提案されているが、スクリーニング試験の前段階として広く利用されることを期待する。
しかしながら、QSARにはさまざまな手法が提案されているので、利用にあたっては国が適切なガイドラインを示すとともに、そのガイドラインも科学的研究の進展に伴って適宜見直されるべきである。
QSARを適用する化学物質の範囲の明確化などについて具体的にスケジュールを設定して検討を進めるべきである。
 (定量的)構造活性相関((Q)SAR)の活用の可能性については、その信頼性を十分検証した上で、諸外国における利用方法等も参考にしつつ、今後具体的な進め方も含め検討されるものと考えます。 9
50 ・QSARの導入
 既に米国では実用化されていることであり、QSARの一日も早い導入を期待したい。どのような問題点があるのか、実用化するための方策をどうしたらよいか、時間と費用のかかる案件であるが、その成果は数倍となるはずであるから、国の施策としてQSAR検討プロジェクトを立ち上げてはいかがか。
 QSARをはじめとする構造活性相関手法については、現在、分解性、蓄積性等に関する手法の研究開発が進められています。また、本報告でも、生態毒性の評価における構造活性相関手法の活用の可能性について検討する必要性が示されています。それらの導入については、今後、専門家の意見等を踏まえ個別具体的に検討していくことが必要であると考えます。  
51  ポリマーについては、構造・分子量に基づき影響が小さいと考えられる場合は試験不要とするなど、今後十分な審議を行い、効率的な運用を考えるべきである。  ご指摘の点については、制度の運用にあたり政府において検討されるべきものと考えます。 3
52  生物を「有用」とか「エサになる」とかの基準だけで見ないでください。様々な生き物が多様に棲息できることが大事なのです。  本報告において、生態毒性試験結果を用いて、環境中の生物への影響について一定の評価を行うことが適当としているところであり、その具体的な評価の方法として、生態系の機能において重要な食物連鎖等の関係に着目し、生産者、一次消費者、二次消費者等の生態学的な機能で区別して、それぞれに対応する生物種をモデルとして用いるとの考え方に基づき、試験実施が容易な藻類、ミジンコ類、魚類の急性毒性試験の結果を用いて評価することが適当と考えられると示しています。
 このように、「有用」や「エサになる」という生物のみを対象としているわけではありません。
 
53  新規化学物質の製造・輸入前の審査にあたっては、化学物質が環境に放出され、環境中の生物に曝露される可能性に応じて試験実施を要求すべきである。一律に全ての化学物質を対象として試験を課すのではなく、リスクに応じた対応をすべきである。  本報告III.「リスクに応じた化学物質の審査・規制制度の見直し等について」にあるとおり、リスクに応じた対応をすべきであると考えます。  

 (2)規制等
通し
番号
意見の概要 考え方・対応 同意
見数
54  難分解性に加え高蓄積性を有する化学物質について、現在の第一種特定化学物質と同様の規制を講じることは賛成である。  
55  生態系の影響がある化学物質の規制は好ましく、人間にすぐに影響がなくても、生物の恩恵を受けて、人間は生存しうるものなので、生物への影響のある化学物質は規制するべきである。  化学物質の環境中の生物への影響に着目した何らかの対応が必要であることから、本報告において、そのための審査・規制の基本的考え方及び枠組みについて示しているところです。  
56  ここで言う「直接規制」とは何か。以降に、「環境汚染の状況を推定し監視する」、「製造・輸入予定数量の制限」、「表示の義務付け」、「モニタリング」とあるが、これらをもって「直接規制」と言っているのか。
 「直接規制」として化学物質の排出規制、使用量規制等(上記の措置とは異なる)を実施するのであれば、化学物質の環境への排出と生態系の破壊との因果関係を明らかにすべきである。
 本報告の1ページ注釈にあるように、「直接規制」とは、化学物質の製造・使用等について、定量的な管理目標値等に基づいて制限(禁止を含む。)することです。
 また、本報告にあるように、直接規制には定量的な管理目標が必要ですが、生態系は複雑・多種多様なものであることから生態毒性がある化学物質による生態系全体への影響を定量的に評価するための手法は確立していません。しかし、保護の対象とする生物を一定の範囲に限定することにより、それらへの影響を定量的に評価することが可能になると考えます。
3
57  難分解性で生態毒性を有する化学物質について、事業者に生態毒性等に関する情報提供措置を導入することは、賛成である。措置の内容としては、製造・輸入数量、用途の届出はもちろん、消費者が各自の選択に従ったリスク削減措置を採ることができるように、表示およびMSDSの交付も義務づけるべきである。また、必要に応じて開放系での用途規制や製造中止等の措置を講じることができるようにすべきである。  本報告に記載のとおり、難分解性で生態毒性を有する化学物質については、生態系への影響の可能性を考慮すれば、環境放出を抑制することが望ましいことから、環境汚染の防止のための適正管理が行われるよう、これを取り扱う事業者が生態毒性等に関する情報を提供するための措置を導入することが必要であると考えます。
 また、本報告に記載のとおり、生活環境に係る動植物に対しても一定の毒性を有し、それらに被害を生ずる可能性がある場合には、現在の第二種特定化学物質と同様に、個別の化学物質ごとにその取扱いに当たってとるべき管理のための措置を指針として示し事業者に遵守させるとともに、表示を義務づけ、さらに製造・輸入予定数量を把握し、必要な場合には製造・輸入予定数量の制限等を行うことが必要であると考えます。
 
58  適正管理を促す措置として「生態毒性等に関する情報を提供するための措置を導入する」ことがMSDSの提供を化審法の下で義務化するとの趣旨であれば、現在のMSDSの状況を鑑みた場合、義務化には賛成できない。すなわち、現状でもMSDSは、化管法、安衛法、毒劇法と3つの異なる法律で規定されており、その記載要求も微妙に異なっている。このような状況下で、化審法に新たな規制を設けることは二重三重の過剰な規制を行うことになる。したがって、このような情報提供制度については、現行の枠組み、今回の場合であれば化管法を活用することで十分対応可能であると考える。なお、情報提供に関しては新たな制度を制定するというより、国連でも承認されたGHSの早期導入を図り、自主管理を含めた対応が必要であろう。  難分解性で生態毒性を有する化学物質を取り扱う事業者が生態毒性等に関する情報を提供するための措置の導入にあたっては、他の類似の制度との整合性についても十分配慮されることが必要であると考えます。 なお、ご指摘の化学製品の危険有害性の分類と表示(GHS)については、現在、国連において議論が進められているところであり、2008年が制度導入の目標とされております。我が国としても、GHSへの対応を積極的に進めているところであり、今後適切に国内対応を進めるべきと考えます。 3
59  表示の仕方によってはあまり管理の参考にならないケースもあるので、表示の仕方を一律にするなどすべき(MSDSのJIS化でどれぐらいMSDSが受けてにとって使いやすくなったのか、あるいはまだ使いにくい状況であるのかなどの現状把握が必要だが)。また、表示を義務付けるだけではなく、環境放出量を抑制していることがほんとうに進んでいるのか誰もが確認できるような、自主的な情報公開を推進するような措置も必要ではないか。  表示の具体的な内容については、これまでの第二種特定化学物質の例を踏まえ、物質ごとに検討されるものです。
 また、このような化学物質については、製造・輸入予定数量を把握し、必要な場合には製造・輸入予定数量の制限等を行うことにより被害の発生防止を図ることが可能となると考えます。
 
60  従来からの「指定化学物質」 及び 「生態影響監視物質(仮称)」について、リスク管理を徹底するために第1種と第2種に分類して頂きたい。分類の定義(案)は次の通りです。
第1種: 長期毒性の疑いの強いもの
第2種: 長期毒性の疑いのそれほど強くないもの
(理由)
 ユーザーの「グリーン調達」の意識が高まってきている昨今、一度、指定化学物質に判定されてしまうと、その物質を含む商品のイメージが大幅に低下してしまい、商品価値を損なってしまう場合も少なくありません。現実、指定化学物質は、一切使用しないとするユーザーもあります。余程の付加価値の高い商品でない限り、拡販が望めないのが現状です。
 しかしながら、指定化学物質の長期毒性にも、強弱があり、判定時に安全サイドからぎりぎりのところで指定判定を受ける、非常に残念なケースが見受けられます。
 今後、判定基準を明確化するとの意見を聞いておりますが、特に「28日間反復投与毒性」においては、用量・臓器・試験項目等、多岐に亘り、判定基準が、適切に設定されるものかどうか疑問視いたします。上手く設定できたとしても、当該物質の毒性が、その基準値からどの程度、乖離しているのか判断するのは、容易ではないと思われます。よって、判定基準の明確化による説明だけでは、ユーザーは納得しないと思われます。
 そこで、物質の持つハザードではなく、リスク管理を徹底するために、長期毒性のそれほどは強くない物質に対して、第2種区分が、設定できれば、ユーザーに対しても、説明がしやすく、当該物質の平和的な利用に繋がるものと考えています。
 指定化学物質及び生態影響監視物質(仮称)については、その化学物質が有する有害性が一定の要件を満たす場合に指定を行うこととしており、その程度に応じて管理内容に差異を設ける理由はないと考えています。リスクコミュニケーションの観点からは、分類を段階的に行うこととするよりも、本報告にも示されているとおり、審査における有害性の評価内容を関係者に分かりやすい形で公表していく方がより適切であると考えます。  
61  (別紙6)の「新たな化学物質の審査・規制制度のイメージ」における「指定化学物質」および「生態影響監視物質(仮称)」についても、段階的なリスク管理を行えないか。
 即ち、P20の(2)情報公開とリスクコミュニケーションで提案されているように、化学物質に関わる全ての関係者が「リスクの程度」の情報を共有してリスク管理を行うことによって、効率的・効果的な化学物質管理が可能となる訳であるので、今回の提案のように人の健康と生態影響を別の種類の"指定"に分けたことは、リスクコミュニケーションを正確なものとすることができるので賛成である。
 また、同様に効率的・効果的なリスクコミュニケーションのために、両方の"指定"の中において、例えば、有害性の程度で2段階に分類表示(又は、有害性/リスク評価結果を程度レベルで開示)する、等の段階的なリスク管理をすべきではないか。
 
62  難分解性で生態毒性を有する化学物質についても、定量的な管理のための直接規制を導入することは、賛成である。しかし、保護の対象を「生活環境に係る動植物」に限定することは反対である。生態系は、人と環境との関わり如何にかかわらずそれ自体を保全する必要があるのであって、直接規制も生態系を構成する全ての動植物を対象とすべきである。  動植物に対する被害の未然防止の観点から直接規制を導入するためには、定量的な評価に基づく目標値が合理的に設定されることが必要です。
 生態系は複雑・多種多様なものであることから生態毒性がある化学物質による生態系全体への影響を定量的に評価するための手法は確立していませんが、保護の対象とする生物を一定の範囲に限定することにより、それらへの影響を定量的に評価することが可能となると考えます。その際に、他の制度的な取組(水質目標や農薬)における検討や、人間の生活に関係が深くその被害を認知しやすいこと等を踏まえて、「生活環境に係る動植物」を保護対象とすることが適当と考えます。
 なお、こうした措置は生態系への影響の可能性を視野に入れた対策の推進にも資するものと考えます。
 
63  生活環境に係る動植物への被害に限定することについて、単に生活環境に係る動植物への被害のみを考慮するのではなく、生物多様性への影響を考える必要がある。  
64  適正管理を促す措置として「生態毒性等に関する情報を提供するための措置を導入する」とあるが、これはMSDSの提供を化審法の下で義務化するとの意味であれば、義務化には賛同し難い。MSDSは、現在は、化管(PRTR)法、安衛法、毒劇法と3つの異なる法律により規定されている。このような状況で、化審法に新たな規制を設けることは重複した過剰規制にもつながる。また、現在の化審法における指定化学物質については、MSDSの自主的な提供が求められており、我々化学メーカーとしては前向きに対応している。生態毒性を有する化学物質について新たな義務を課さずとも、自主管理による適正な管理が十分可能と考える。  難分解性で生態毒性を有する化学物質を取り扱う事業者が生態毒性等に関する情報を提供するための措置を導入するにあたっては、既存の同様な制度との整合性についても十分配慮されることが必要であると考えます。  
65  国としてはそう考えることは理解できるが、直接規制以外の手法でリスク管理できているのか確認する手立てがなければ国としても安心できないのではないか。定量的な目標値等の設定を前提とする必要はないが、自主的な報告を求めるような枠組み規制的な方法で取組みの実効性を担保できるとよいのではないか。自主管理している場合は積極的な情報公開をするのが事業者責任ということを徹底し、それを進める施策、事業者責任をきちんと果たしていないところを差別化するような施策をセットで考えていただきたい。  難分解性で生態毒性を有する化学物質は、生態系への影響の可能性を考慮すれば、環境放出を抑制することが望ましいことや、環境中の濃度が高まれば生活環境に係る動植物に被害を及ぼすおそれがあることから、適正管理を促す措置を講ずるとともに、製造・輸入実績数量及びその用途の把握等を通じて環境汚染の状況を推定し監視することが必要であると考えます。  
66  これでリスク管理ができるのは、いったいどれぐらいの割合なのでしょうか。もし、その割合が低い場合は、一定の範囲に限定しない方法で管理する必要があると思いますが、どうでしょうか。  難分解性で生態毒性を有する化学物質については、環境放出を抑制することが望ましいことから適正管理を促す措置を講ずるとともに、定量的なリスク評価が可能なものについては、生活環境に係る動植物を保護するとの観点から、それらの措置に加えて必要に応じ直接規制措置を講ずることとしています。現時点において対応可能なこうした措置を講ずることで、可能な限り生態系への影響の可能性を視野に入れた対策が進められるものと考えます。  

(3)既存化学物質について
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67  すでに環境に排出されている既存化学物質の点検こそ急ぐべき問題と考えるが、報告書ではこの項はわずか二行で片づけられ、具体的にどのような手順でどう進めるべきかといった肝心な点についての記述がない。  本報告III.5.に記載のとおり、既存化学物質については、動植物への影響を含め、事業者及び国が相互に十分連携しつつ、有害性評価等を計画的に実施していくべきと考えます。  
68  これまでの2万種の化学物質についても、生態毒性の観点からの再度の点検を進めてください。  
69  既存化学物質について「必要な場合には規制対象とすべきである」と2行に書いてあるだけですが、すでに出回っている約2万種の化学物質の難分解性・蓄積性、人の健康に係る毒性の点検結果が少ないです。今回の生体毒性という観点から見た場合、再度分解性・蓄積性、生体毒性の評価が必要になると思われます。ことに家庭から一番多く排出され、下水道未設置地域から河川に流入するLAS・AEなど各種合成界面活性剤の再度の点検と規制を望みます。中でも、工業用・洗車用・清掃用に使用されているノニルフェノールに変化するAPEについて早急に規制対象にして下さい。  本報告III.5.に記載のとおり、既存化学物質については、動植物への影響を含め、事業者及び国が相互に十分連携しつつ、有害性評価等を計画的に実施していくべきと考えます。その結果を踏まえて必要に応じ適切な措置を講ずべきと考えます。  
70  難分解性で生態毒性を有する化学物質の毒性実験をメーカー及び事業者の報告以外に国及び都の研究所でも実験してデータを公表してほしい。  従来より、既存化学物質の安全性点検については政府が実施し、その結果は公表されているところです。生態毒性試験についてはこれまで環境省が実施してきており、その結果は公表されています。今後、事業者と連携しつつ、国においても計画的に必要な試験を実施し、その結果を公表すべきと考えます。  
71  既存化学物質について、生態毒性有りと判定し、規制する場合には、透明性をもち、判定の根拠を明らかにして頂きたい。  本報告IV.(2)に記載のとおり、国が行った評価内容については、これを関係者にわかりやすい形で公表していくべきであると考えます。  
72 ・登録済み新規化学物質への生態毒性試験の適用に関する要望
 難分解性かつ低蓄積性で、長期毒性の恐れがないとして、既に登録された新規化学物質は、いわゆる"白物質"として製造・輸入が可能である。これらの物質への生態毒性試験の適用については、リスクを十分考慮し(量、モニタリング結果、構造、用途等)、優先順位付けをし、経済・企業経営に過大な負担がない様に実施するのが適切である。HPVプログラムの適用や国の応分の負担も考慮されることを要望する。
 規制対象ではないとして告示された、いわゆる「白物質」については、事業者による有害性情報の報告制度や、既存化学物質と同様に事業者及び国が連携して行う有害性評価により得られた情報を用いて、生態毒性を有するかどうかを評価していくことが必要であると考えます。その際には、ご指摘のような点も考慮されるべきと考えます。 2

(4)関連事項
 (1)試験実施体制の整備
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73  試験実施体制なくして制度の運用はあり得ず、GLP適合の課題も含め、その早急な整備が望まれる。  試験実施体制の整備は早急に行われなければならない重要な課題と考えます。 2
74  今回の法改正が施行された際に、試験実施体制が整備されていないことにより、化学物質の製造・輸入者が行う届出作業に滞りがあるようでは問題である。試験実施体制なくして制度の運用開始はあり得ないことから、法改正の施行時に十分な対応がとれる試験実施体制の早急な整備が必要であり、政府は、経過措置を含めた具体的な対応について計画を示すべきである。  今後、生態毒性試験の実施が円滑に進むよう、試験機関の能力向上に向けた支援、試験生物の供給体制の整備等により、生態毒性試験を実施可能な試験機関を拡充するなど、試験実施体制の整備は早急に行われなければならない重要な課題と考えます。
 ご指摘の点については、法の施行時に十分な対応がとられるよう、具体的な制度の検討に当たり可能な限り配慮されるべきと考えます。
5
75  生態毒性試験が審査制度に導入されることにより、新たに生態毒性試験のGLP制度が化審法のもとで設定されることになるであろうが、日本のGLP制度が、試験機関の更なる負担となることが懸念される。現行のGLP制度は、生態毒性試験に限らず、同じOECDテストガイドラインに即した試験を実施したとしても、異なる法律の下で実施された試験については、それぞれの法律の所轄官庁ごとに別々に管理されておりたいへん非効率である。今後の化学物質の管理においては、GLP制度の簡素化も重要な課題とすべきであろう。  各GLP制度の整合化については政府において検討が進められておりますが、生態毒性試験に係るGLP制度についてもそういった検討や国際整合性を踏まえ検討が行われるべきと考えます。  
76  現在、日本におけるGLP制度は関連する法規制毎に設定されており、現状でも既に複数のGLP制度(化審法、安衛法、薬事法、農取法等)がある。各省庁のGLPでの用語(その定義を含め)の問題、微妙な規定の異なりなどが存在しており、今回新たな制度を設定することは、特に複数のGLPに適合している試験機関にとっては、このような状況をさらに複雑なものにすることになる。従って、各省庁GLPにおける用語の統一、規定の統一などからスタートし、査察を一体化するなど、制度の適用を受ける事業者にとって、分かりやすく、かつ、余計な負担をかけない制度としていくことが必要と考える。 4

 (2)調査研究の推進
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77  環境濃度に季節変動が認められる化学物質(例えば農薬)の環境影響評価方法を確立すべきである。  本報告II.3.(2)に示しているように、今後の調査研究の課題の一つと考えます。  
78  環境中には、さまざまな化学物質が見出だされているにも拘わらず、毒性や残留性の評価は個々の物質についてしかおこなわれない。化学物質の複合汚染に関する影響評価が必要である。たとえば、水系の場合、界面活性剤が存在すると農薬の生物濃縮度が上昇する。  本報告II.3.(2)に示しているように、今後の調査研究の課題の一つと考えます。  
79  野生動物は生態系の重要な構成者であり、野生生物界における「疫学」的調査と研究が必要と考えます。  
80  生態毒性試験の拡充のみを支援するのでなく、それ以上に、新たに有効な代替法を取り組むための支援、体制の整備に力を入れ、代替法機関を拡充することが、円滑な審査・規制につながる。
(理由)
 一面的な判断材料のみを支援・拡充するだけでなく新たな代替法に取り組み、それを支援する事が、適正な審査・規制につながり、ひいては環境中の生物の保全につながる。
 本報告III.5.に示しているように、更なる有害性評価手法の開発、試験機関の充実強化を進めるべきと考えます。  
81  内分泌系撹乱物質については、現在疑われている物質を一時的に使用規制して、毒性評価を早急に実施すべきである。
 試験法の開発を促進し、すみやかに化審法の事前審査の対象とすべきである。
 内分泌かく乱作用が疑われる化学物質については、国際的な動向も踏まえながら、引き続き作用機序の解明、試験法の開発、有害性やリスクの評価など科学的知見の充実等に努めていく必要があると考えます。 2
82  化学物質の中には、単独毒性より他の物質との影響により相乗的に毒性が増大するものも考えられるので、調査研究をすること。  本報告II.3.(2)に示しているように、今後の調査研究の課題の一つと考えます。  

 (3)良分解性物質への対応
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83  良分解性の物質についても化審法の事前審査の対象に加えるべきである。もちろん、排出段階での措置も講じることにより、より効果的な規制とすべきである。  現行の化学物質審査規制法においては、新規化学物質について事前審査制度を設け、環境中に長期的に残留するおそれのある難分解性の化学物質については蓄積性、長期毒性に関する審査・判定を行うまでは製造・輸入を認めないこととし、難分解性の化学物質のうち環境汚染を生じ人の健康を損なうおそれがある化学物質を対象として、製造・輸入等の規制措置を講じています。
 良分解性の化学物質は、本質的に環境中で分解・消失しやすいものであるため、その環境汚染を防止するための取組は、難分解性物質と異なるものとなります。
 また、分解性の如何を問わず、自主的取組や法的規制により排出抑制対策が講じられ、一定の成果が上げられてきているところです。
 こうしたことを踏まえ、良分解性の物質については、必要に応じ、リスク評価を行っていくとともに、自主的な管理の改善措置や排出規制等の排出段階での措置により対処することを基本とすることが適当であると考えます。
 なお、以上については、本報告に既に記載のとおりです。
 
84  審査の段階では、良分解性物質は白とし、難分解物質のみを次の段階の審査を行うとしているが、これは海外の化学物質管理法では見られない点である。良分解性、難分解性とは何か、さらに化審法の目的は何かをもう一度検討する必要があろう。  
85  それまでの記述とまったく異なった範疇の良分解性の物質についてなぜ取り上げられるのでしょうか?難分解性の化学物質の規制に付随して書かれる項目とは異なるので此処に記載されるべき内容ではありません。
 内容を図示したと見られる別添1(別紙1−6)には、良分解性物質については一切触れられていません。この9ページから10ページの良分解性物質の対応の項は削除していただけませんか?
 良分解性で生態毒性を有する化学物質の中には、生産量や使用形態、環境への放出状況等によっては環境中に継続的に存在し、環境中の生物へ何らかの影響を及ぼす可能性を有するものがあると考えられます。このような化学物質による環境汚染の未然防止に取り組むことが必要となりますが、本報告では、このような物質への対応の考え方が難分解性物質とは異なるものとなることについて明確に示したものです。  

(4)その他
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86 ・化審法の適用除外条項を廃止すべきである
 農薬取締法の適用対象である農薬及び薬事法の適用対象である殺虫剤・殺菌消毒剤(動物用医薬品も含む)の成分として使用される化学物質のほとんどが、生物を殺すことを目的に使われ、生活環境や一般環境に直接散布する殺生物剤であるため、個々の法律で規制する必要があるものの、同じ化学物質が法規制のない他の用途に使われていることを考えれば、たとえ、二重規制になっても化審法の網をかぶせる必要がある。
 また、衣料防虫剤、木材保存剤、シロアリ防除剤、不快害虫用殺虫剤等、雑品の範ちゅうにある家庭用殺虫剤等の中には、一般環境よりも室内など身の回りで汚染がひどく、野生生物よりも人体(血液、母乳、脂肪中)の汚染が進んでいるものもある。たとえ、良生分解性の化学物質であっても常時汚染があれば、殺生物剤はヒトや生態系に悪影響を及ぼす危険性が高い。
 現在、殺生物剤のうち、薬事法や農薬取締法等による規制の対象となっていないものについては、化学物質審査規制法における規制対象となっており、同じ化学物質が2つ以上の用途に使われる場合は、それぞれの法律で審査されます。
 ご指摘の適用除外条項は、別の法律で規制されている用途にのみ用いられている化学物質について適用除外としようとするもので、二重規制を避ける意味で必要と考えます。
 
87  化学物質の生態毒性試験の実施施設を厚生労働省がもつこと。化学物質の毒性が顕著な場合は厚生労働省がリーダーシップをもって、強行に規制措置の権限をもち実行すること。  新たな制度のもとでの具体的な審査及び規制にあたっては、厚生労働省、経済産業省、環境省が十分に連携を取りつつ、効率的・効果的な運用が行われるべきであると考えます。  
88  適正管理の基本的立場がリスク管理型になっていないのではとの懸念を持っています。従来化審法はリスク管理型の法的背景がないと理解しています。一方で化学物質取り扱いの現場は多様に進化しリスクベースの議論が不可欠にもなっていますが、現実にはハザード議論が幅を利かし、貴重な使用経験のある化学物質を排斥さえしている実情にいささか諦めも感じてはおりますが、あえて生態毒性いわゆるpopulation ecotoxicology のような冷静な毒性議論(一方で絶滅危惧種の存続のようなレビュウが可能かには限界も感じてはいますが)がないと効果的な生物防除とのトレードオフも否定されかねません。種の多様性を生かす方途もまた明確にするような農水提案も期待して本議論の埒外の特定用途議論はこれまでとしますがリスク議論を半端に進めてほしくないとの認識を持っています。  化学物質審査規制法においては従来より第二種特定化学物質に係る規制制度等リスクによる管理も行われる制度でした。今回の報告では、リスク評価・管理の観点からさらに効果的かつ効率的な制度とするための見直しについても述べているところです。  


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