Patient Safety Global Ministerial Summit 2018

Date: April 13(Fri.)-14(Sat.), 2018
Venue: GRAND HYATT TOKYO

エグゼクティブサマリー

第3回閣僚級世界患者安全サミット(2018年4月13日、14日 東京)

厚生労働省は、2018年4月13日(金)、14日(土)にグランドハイアット東京にて第3回閣僚級世界患者安全サミットを開催しました。

第3回閣僚級世界患者安全サミット

閣僚級の世界患者安全サミットは、各国や国際機関のリーダーへの患者安全の重要性の浸透を目的として2016年3月にイギリスのロンドンで初めて開催され、ドイツのボンで2回目、そして3回目はアジアで初めて日本で開催されました。2日間で18カ国の閣僚を含む44カ国の政府代表団、国際機関代表団、専門家、一般参加者等約500名が参加し、盛会となりました。 本サミットは2回目のボンサミットで継続的に開催されることが提案され、2019年には4回目をサウジアラビアで開催されることが決定しています。その後も、このサミットを通じて、あらゆる地域、所得層の国々でも患者安全の取組が広がることが望まれています。

サミットの1日目は国内外の専門家会合が行われました。

オープニングでは厚生労働省の武田医政局長の挨拶に続き、OECDのグリア事務局長がOECDのまとめた患者安全の報告書を紹介しました。その後、サミットの立ち上げから関わっている英国のダルジ卿が、国際的な視野から、患者安全の取組の歴史を説明しました。ダルジ卿の発表で、日本は世界で最初に国の政策として医療安全をとりあげた国との紹介があり、また19世紀後半の明治維新の頃から産業界で製造現場の安全確保の導入が始まるなど、歴史的にも様々な分野で「安全」の確保に取り組んできた国であるとの説明がありました。

オープニングセッション:ダルジ卿による発表

基調講演では昨年に引き続き、“To Err is Human(人は誰でもまちがえる)”をとりまとめたことでも知られる米国National Academy of Medicine(全米医学研究所)の所長、ビクター・ザウ氏からの発表がありました。ザウ氏の講演では国連が策定した持続可能な開発目標(SDGsSustainable Development Goals)のターゲットの1つとしてのUHC(Universal Health Coverage)と患者安全の関係に触れ、持続可能なUHCのためにはエビデンスに基づいた患者安全のシステムの構築とその施行が必要であるとの説明がありました。また低・中所得国において、避けうる有害事象に対する経済的負担は特に大きく、マラリア、HIV、結核への負担をも超えるとし、低・中所得国においても医療の質を高めること、どの国においても患者安全を標準的に備えるべき重要な医療の取組の1つとする必要があることについての言及がありました。

基調講演1:ザウ教授による発表

パネルディスカッションでは様々な分野の専門家の知識が共有されました。『患者安全文化』、『高齢化社会における患者安全』、『低・中所得国におけるUHC達成のための患者安全の必要性』、『ICTと患者安全』、『患者安全と医療経済』という多角的なトピックがとりあげられました。各パネルディスカッションでは熱心な議論が交わされ、次の日の閣僚級会合において世界のリーダーへ提言するための『ポリティカルメッセージ』がとりまとめられました。その後のイブニングセッションでは『医療事故情報収集等事業』や『産科医療補償制度』、『医療事故調査制度』といった日本独自の取組の紹介があり、多くの参加者が興味を持って聴講していました。

サミットの2日目は、閣僚級を含む各国政府や国際機関の代表団が参加しました。 加藤厚生労働大臣の開会挨拶の後、初日にまとめられた専門家の知見と議論の結晶である政策提言『ポリティカルメッセージ』が各国閣僚、政府代表団、国際機関代表団に提示されました。

各パネル座長によるポリティカルメッセージの提示

この日の基調講演では過去2回のサミットから進められている『患者安全のグローバルアクション』や『UHC達成における患者安全の役割の重要性』について英国のハント保健大臣、ドイツ政府代表の発表、オマーンのアルサイディ保健大臣によるビデオメッセージがありました。

ラウンドテーブルセッションでは、冒頭に加藤大臣が、患者遺族が患者安全の推進に取り組んでいる実例を挙げ、患者遺族に感謝するとともに、患者安全の推進には患者や患者の家族の関与が必須であることを訴えました。

ラウンドテーブルセッション:加藤大臣による発表

各国政府代表及び国際機関代表からは後述の3つの主要なトピックに関してご発言頂きました。1つめは『患者中心』の概念を政策に取り入れることの重要性、2つ目はUHC達成に向けた取組における患者安全の重要性、3つ目は各国における患者安全のグローバルムーブメントの取組に関するものです。各国の患者安全の取組の中でのWHOをはじめとする国際機関との連携の重要性についても複数の国々が強調しました。また、世界に患者安全の運動を確実に展開するために各国の協働が必要という点についても、多くの国から言及がありました。

写真撮影

ラウンドテーブルセッションの最後には、患者安全の約20年の歴史と3回にわたる世界患者安全サミットの成果を踏まえ、加藤大臣が患者安全に関する『東京宣言』を発表しました。これは地域的・世界的なリーダーシップにより2030年までに世界中の医療制度を利用する全ての患者と人々の、避けうるすべての有害事象やリスクを逓減することを目指し、患者安全の向上に向けたグローバルな行動を呼びかけたものです。この宣言は、患者が患者安全の政策策定に関与する重要性や、医療従事者が医療を安全に提供するための、適切な労働環境が必要であることにも言及されています。今後各国において効果的に避けうる有害事象やリスクが逓減されるシステムが構築され、患者安全の文化が浸透することが望まれます。

今回、大多数の参加国から賛同を得た『東京宣言』を原動力とし、低・中所得国を含む世界各国が協働してUHC達成に向けて患者安全の取組を拡大し、『患者安全に関するグローバルアクション』を推進させることが期待されます。

「我々は、2030年までに、誰であろうと、どこに住んでいようと、医療制度を利用する間、全ての患者と人々に対する、避けうるすべての有害事象やリスクを逓減するため、患者安全の向上に向けた関与の必要性を再確認し、東京宣言を提言する。」

引用(東京宣言より)

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東京宣言(日本語)

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