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はじめに
厚生労働省では、従来よりリウマチ・アレルギー疾患に関する研究を実施していたが、平成2年度から「リウマチ調査研究事業」、平成4年度から「アレルギー総合研究事業」として総合的な研究事業に再編成され、病因及び病態の解明、治療法等の研究の推進を図ってきました。
また、平成9年度からは、厚生労働科学研究の一研究事業として組み入れることにより、研究事業の位置づけの確立および内容の拡充を図り、平成14年度からは「免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業」として、より総合的な研究事業に再編成されました。
さらに、平成20年度より移植医療にかかる研究を組み入れ「免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業」に名称変更をしました。
○ 厚生労働科学研究について
厚生労働科学研究費補助金は、「厚生労働科学研究の振興を促し、もって、国民の保健医療、福祉、生活衛生、労働安全衛生等に関し、行政施策の科学的な推進を確保し、技術水準の向上を図ること」を目的としています。独創的又は先駆的な研究や社会的要請の強い諸問題に関する研究について、競争的な研究環境の形成を行いつつ、厚生労働科学研究の振興を一層推進することとし、平成18年度には、428億円の研究費により17事業で1,400以上の研究をサポートしています。外部の専門家の意見や行政上の必要性等を踏まえ、研究事業毎に「目的志向型の研究課題設定」を行い、その上で原則として公募により研究課題及び研究班を募集し、評価委員会の評価を経て、採択を決定しています。厚生労働科学研究費補助金の審査は、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」に基づき行われています。提出された研究開発課題は、各研究事業の評価委員会で、専門家による専門的・学術的観点と行政的観点から評価されます。採択課題や採択額等については厚生労働省ホームページで示しています。(https://www.mhlw.go.jp/wp/kenkyu/index.html)
研究報告書は、国立国会図書館、厚生労働省図書館、国立保健医療科学院の厚生労働科学研究成果データベースホームページで公開されています。(http://mhlw-grants.niph.go.jp/)
○ 免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業について
リウマチ、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、花粉症、膠原病などの免疫アレルギー疾患は、長期にわたり著しく支障をきたすため、国民の健康上重大な問題となっています。そこでこれらの疾患について、発症原因と病態との関係を明らかにし、予防、診断及び治療法に関する新規技術を開発するとともに、既存の治療法の再評価を行うことにより、国民に対してより適切な医療の提供を目指します。
また、造血幹細胞や臓器移植をはじめとする移植医療は、宿主との免疫応答が問題となるほか、ドナーを必要とする観点から、その推進のためには社会的基盤を構築する必要がある。こうした社会基盤を確立し、免疫応答をコントロールすることにより、良質かつ安定的な移植医療の提供を目指します。
○ 平成20年度の研究班構成
平成20年度免疫アレルギー疾患等予防・治療研究事業 採択課題一覧
研究開始年度 | 研究代表者 | 所属機関 | 職名 | 研究課題名 |
18 | 森 晶夫 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター | 先端技術開発研究部長 | 気管支喘息難治・重症化の病因・病態の解明に関する研究 |
18 | 海老澤元宏 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部 | 部長 | アレルギー性疾患の発症・進展・重症化の予防に関する研究 |
18 | 河野 陽一 | 千葉大学大学院医学研究院小児病態学 | 教授 | アトピー性皮膚炎の発症および悪化因子の同定と発症予防・症状悪化防止のための生活環境整備に関する研究 |
18 | 村澤 章 | 新潟県立リウマチセンターリウマチ科 | 院長 | 関節リウマチの重症化防止のための臨床的早期診断法と早期重症化診断法に関する研究 |
18 | 小林 信之 | 国立国際医療センター呼吸器科 | 医長 | 成人喘息の寛解を目指した治療薬の減量・中止に関する研究 |
18 | 阪口 雅弘 | 麻布大学獣医学部 | 教授 | スギ花粉症およびダニアレルギーに対する新しい免疫療法の開発 |
18 | 中村 孝志 | 京都大学大学院医学研究科 | 教授 | 関節リウマチに対する長期耐用下肢人工関節の開発とクリティカルパスの標準化 |
18 | 山本 一彦 | 東京大学大学院医学系研究科内科学専攻アレルギーリウマチ学 | 教授 | 関節リウマチの治療法選択と治療反応性の実態把握の為の定点観測体制の構築 |
18 | 大田 健 | 帝京大学医学部内科学講座 | 教授 | アレルギー疾患の自己管理と個別化医療を目指した早期診断基準と早期治療法の確立及びその有効性と有害事象の評価に関する研究 |
19 | 赤澤 晃 | 国立成育医療センター総合診療部小児期診療科 | 医長 | 気管支喘息の有症率、ガイドラインの普及効果とQOLに関する全年齢全国調査に関する研究 |
19 | 天谷 雅行 | 慶應義塾大学医学部 | 教授 | バリア機能障害によるアトピー性疾患病態解明に関する研究 |
19 | 清野 宏 | 東京大学医科学研究所感染・免疫部門炎症免疫学分野 | 教授 | 粘膜系自然・獲得免疫によるアレルギー制御 |
19 | 江口 勝美 | 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 | 教授 | 関節リウマチの早期診断による発症及び重症化予防 |
19 | 小笠原康悦 | 国立国際医療センター研究所、難治性疾患研究部、臨床免疫研究室 | 室長 | 金属アレルギーの克服へ向けた効果的診断・予防・治療法の開発研究 |
19 | 竹内 勤 | 埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科 | 教授 | 関節リウマチの寛解導入療法体系化に関する研究 |
19 | 近藤 直実 | 岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学 | 教授 | アレルギーのテーラーメイド治療管理ガイドラインの確立と実用化 |
19 | 三浪 明男 | 北海道大学大学院医学研究科 | 教授 | 関節リウマチ上肢人工関節開発に関する研究 |
19 | 宮坂 信之 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究所膠原病・リウマチ内科学 | 教授 | 膠原病の生命予後規定因子である肺合併症の診断及び治療法の再評価と新規開発に関する研究 |
19 | 岡本 美孝 | 千葉大学大学院医学研究院 | 教授 | 代替医療の実態と有効性の科学的評価 |
19 | 神田 善伸 | 自治医科大学医学部 | 教授 | アレムツズマブを用いたHLA不一致同種造血幹細胞移植療法の医師主導治験および造血幹細胞移植領域における医師主導治験発展のための研究 |
19 | 田中 紘一 | 財団法人先端医療振興財団先端医療センター | センター長 | 再生・移植医療の現状と将来に向けての国際比較 |
20 | 田中 良哉 | 学校法人産業医科大学医学部第1内科学講座 | 教授 | 関節リウマチの関節破壊ゼロを目指す治療指針の確立、及び根治・修復療法の開発に関する研究 |
20 | 越智 隆弘 | 大阪警察病院医務部 | 病院長 | 関節リウマチ骨髄血中の疾患誘導因子解明と根治療法開発研究 |
20 | 大久保 公裕 | 日本医科大学耳鼻咽喉科 | 准教授 | リアルタイムモニター花粉数の情報のあり方の研究と舌下ペプチド・アジュバント療法の臨床研究 |
20 | 古江 増隆 | 九州大学大学院医学研究院皮膚科学分野 | 教授 | アトピー性皮膚炎のかゆみの解明と治療の標準化に関する研究 |
20 | 谷口 正実 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター | 気管支喘息研究室長(アレルギー科医長併任) | NSAIDs不耐症の病態解明と診断治療指針作成に関する研究 |
20 | 住田 孝之 | 筑波大学大学院人間総合科学研究科先端応用医学専攻臨床免疫学 | 教授 | 免疫疾患の病因・病態解析とその制御戦略へのアプローチ |
20 | 當間 重人 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター | リウマチ性疾患研究部長 | 関節リウマチ患者の現状と問題点を解析するための多施設共同疫学研究 |
20 | 横田 俊平 | 横浜市立大学医学研究科発生成育小児医療学 | 教授 | 小児期のリウマチ・膠原病の難治性病態の診断と治療に関する研究 |
20 | 西岡 久寿樹 | 聖マリアンナ医科大学難病治療研究センター | 教授・センター長 | 線維筋痛症の発症要因の解明及び治療システムの確立と評価に関する研究 |
20 | 須甲 松信 | 東京芸術大学保健管理センター | 教授 | ユビキタス・インターネットを活用したアレルギー疾患の自己管理および生活環境改善支援システム、遠隔教育システム、患者登録・長期観察システムに関する研究 |
20 | 山中 寿 | 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター | 教授 | 免疫アレルギー疾患の予防・治療法の開発及び確立に関する臨床研究:関節リウマチ患者の生命予後からみた至適医療の確立に関する臨床研究 |
20 | 一ノ瀬 正和 | 和歌山県立医科大学医学部内科学第三講座 | 教授 | 気道炎症モニタリングの一般臨床応用化:新しい喘息管理目標の確立に関する研究 |
20 | 秋山 一男 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院臨床研究センター | 副院長(センター長併任) | 免疫アレルギー疾患予防・治療研究に係る企画及び評価の今後の方向性の策定に関する研究 |
20 | 森島 泰雄 | 愛知県がんセンター中央病院血液・細胞療法部 | 副院長 血液・細胞療法部長 | 組織適合性に基づく非血縁同種造血幹細胞移植の成績向上に関する研究 |
20 | 加藤 俊一 | 東海大学医学部 | 教授 | 臍帯血を用いる造血幹細胞移植技術の高度化と安全性確保に関する研究 |
20 | 谷口 修一 | 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 血液科 | 血液科 部長 | 同種造血幹細胞移植成績の一元化登録と国際間の共有およびドナーとレシピエントのQOLを視野に入れた成績の向上に関する研究 |
20 | 宮村 耕一 | 名古屋第一赤十字病院血液内科 | 部長 | 同種末梢血幹細胞移植を非血縁者間で行う場合等の医学、医療、社会的基盤に関する研究 |
20 | 中畑 龍俊 | 京都大学大学院医学研究科発達小児科学 | 教授 | 新たな移植細胞療法に向けた造血幹細胞のex vivo増幅技術の開発と応用 |
20 | 池原 進 | 関西医科大学病理学第一講座 | 教授 | 新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究 |
20 | 小澤 敬也 | 自治医科大学医学部 | 教授 | 間葉系幹細胞を利用した新しい造血幹細胞移植技術の開発に関する研究 |
20 | 高原 史郎 | 大阪大学大学院医学系研究科先端移植基盤医療学 | 寄附講座教授 | 腎臓移植の成績向上をめざした臨床データ解析を目的とした症例登録と追跡制度の確立並びにドナー及びレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究 |
20 | 福嶌 教偉 | 大阪大学大学院医学系研究科薬理学分子医薬分野 | 准教授 | 脳死並びに心停止ドナーにおけるマージナルドナーの有効利用に関する研究 |
20 | 小中 節子 | 社団法人日本臓器移植ネットワーク医療本部 | 理事・医療本部長 | 脳死下・心臓停止下臓器斡旋のコーディネートに関する研究 |
20 | 篠崎 尚史 | 東京歯科大学市川総合病院角膜センター | センター長 | 臓器移植の社会的基盤に関する研究 |
18 | 今井 孝成 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科 | 医師 | 食物アレルギーの発症・重症化予防に関する研究 |
18 | 島田 浩太 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院リウマチ科 | 医師 | 関節リウマチにおける間質性肺病変発症に関わる遺伝子の探索 |
19 | 清水 準一 | 首都大学東京健康福祉学部 | 准教授 | 臨床移植コーディネーター看護師養成教育プログラムの開発と評価に関する研究 |
19 | 金 成元 | 国立がんセンター中央病院特殊病棟部 | 医員 | 造血幹細胞移植におけるドナーの安全性と倫理的保護を確保したコーディネートシステム構築に関する研究 |
20 | 國澤 純 | 東京大学医科学研究所 | 講師 | 食餌性脂質を中心とした生理活性脂質による粘膜免疫制御ならびにアレルギー疾患との関連解明 |
20 | 粒来 崇博 | 独立行政法人国立病院機構相模原病院アレルギー科 | 医師 | 気管支喘息の診断、治療判定のための簡便な指標としての簡易な気道炎症マーカーの検討−呼気NO測定オフライン法のかかりつけ医での応用の可能性− |
20 | 藤 秀人 | 国立大学法人長崎大学医学部・歯学部附属病院 | 准教授 | 抗リウマチ薬の時間薬物療法の確立 |
20 | 進藤 英雄 | 東京大学大学院医学系研究科 | 助教 | 新規生体膜生合成酵素と生理活性脂質(PAF)生合成酵素の機能解析 |
20 | 大島 久美 | 自治医科大学医学部 | 助教 | 薬物治療モニタリングによる造血幹細胞移植成績の向上に関する研究 |