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第136回通常国会 参議院厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会議事録(抜粋)
第136回通常国会 参議院厚生委員会薬害エイズ問題に関する小委員会議事録(抜粋)
平成8年6月17日(月)
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○政府委員(薬務局長)
血液製剤によるHIV感染問題につきまして御報告申し上げます。
エイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって引き起こされ、細胞性免疫不全状態を主な病態とする重篤な疾患であり、現在に至るまでその根本的な治療法は研究段階にあります。
我が国において報告されたHIV感染者及びエイズ患者の累計は、平成八年四月末現在、HIV感染者数で三千六百四十二名、うち血液製剤によるものが千八百六名、既にエイズを発症している患者数は全体で千二百二十七名、うち血液製剤によるものが五百八十二名で、それぞれ血液製剤によるものが全体の約五割に上っております。
血友病治療のために使用していた血液製剤によりHIVに感染し、被害をこうむったことに対する損害賠償請求訴訟が、国及び製薬企業五社を被告として、平成元年五月に大阪地方裁判所に対して、同年十月に東京地方裁判所に対して、相次いで提起されました。訴訟は長期間にわたって争われてまいりましたが、両裁判所からは、平成七年十月六日、和解勧告が行われました。
和解勧告に当たって東京地方裁判所は所見を示し、当時、血液製剤を介して伝播されるウイルスにより血友病患者がエイズに罹患する危険性やエイズの重篤性についての認識が十分でなく、国内の血友病患者のエイズ感染を防止するための十分な情報提供、薬事法の緊急命令の権限を行使しての米国由来の非加熱製剤の販売の一時停止の措置等期待された有効な対策がおくれたため、血友病患者のエイズ感染という悲惨な被害拡大につながったこと、被告らは、原告らがこうむった甚大な感染被害を早急に救済すべき重大な責任があること、エイズの重篤な病態と被害者や遺族の心情に深く思いをいたすとき、本件については一刻も早く和解によって早期かつ全面的に救済を図る必要があることが指摘されました。
当時の森井厚生大臣は、裁判所の和解勧告の趣旨を重く受けとめ、和解による早期解決を決断し、昨年十月十七日に和解の席に着くことを表明されました。
そして、本年一月には与党三党政策合意、総理の施政方針演説において、和解による早期解決に全力を挙げるとともに、責任問題も含め必要な調査を行い、医薬品による健康被害の再発防止に最大限の努力を尽くすこととされたところであり、このような方針のもとに取り組みを進めてきたところであります。
本年一月二十三日には、厚生省内に、行政の立場から当時の事実関係を調査、整理するため、血液製剤によるHIV感染に関する調査プロジェクトチームを発足させ調査を開始し、その後二月九日には、厚生大臣から当時の資料が発見されたことを発表いたしました。
また、二月十六日には、厚生大臣が患者、家族の方々とお会いし、裁判所が所見で述べている国の責任を認めた上で、心からおわびを申し上げたところであります。
三月七日には、裁判所から第二次和解案が示され、原告及び国、製薬企業がこれを受け入れて、三月二十九日に和解が成立したところであります。
和解確認書において、厚生省として、裁判所の所見を真摯かつ厳粛に受けとめ、血友病患者のHIV感染という悲惨な被害を拡大させたことについて指摘された重大な責任を深く自覚し、反省して、患者及び家族の方々に深く衷心よりおわびしたところであります。
また、サリドマイド、キノホルムの医薬品副作用被害に関する訴訟の和解による解決に当たり、薬害の再発防止を確約したにもかかわらず、再びこのような悲惨な被害をもたらしたことを深く反省し、その原因についての真相究明に一層努めるとともに、国民の生命、健康を守るべき責務を改めて深く認識し、本件のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることがないよう最善、最大の努力を重ねることを確約いたしました。
さらに、HIV感染症の治療・研究センターの設置、拠点病院の整備充実等HIV感染症の医療体制及びこれに関連する問題については、厚生省において原告らHIV感染者と協議する場を設け、その意見を聴取しつつ適切な措置をとることに努めることとされております。
厚生省としては、七年に及ぶ裁判において和解が成立したことを厳粛に受けとめております。
同時に、和解の成立後においても、エイズ治療・研究推進体制の整備等について、患者の方々の意見も伺いながら、安心して治療を受けられるようできる限りの対応を行う考えであります。
具体的には、とりわけ患者の方々から強い要望が寄せられているエイズ治療・研究推進体制の整備につきましては、国立国際医療センターの病院にエイズ治療や臨床研究を担当するエイズ治療・研究開発センター(仮称)を設置するとともに、基礎研究を担当する国立予防衛生研究所エイズ研究センターの充実を図り、治療、研究、情報及び研修を一体的に推進するセンター的機能の整備を図ることとしております。
エイズ拠点病院につきましては、現在、全国で二百八の医療機関が拠点病院として選定されており、センター等との連携を強化するほか、拠点病院の医療従事者の研修やカウンセラーの配置等により、全国の拠点病院における診療水準の向上と均質化を図ることといたしております。
地方ブロックの拠点病院につきましては、患者の方々を含む関係者と協議中であり、今後とも患者の方々の御意見をお聞きしながら具体化に努めてまいりたいと考えております。
また、エイズ治療薬ができるだけ早く患者の方々に行き届くよう迅速審査の実施によるエイズ治療薬の早期供給や、承認前のエイズ治療薬の幅広い提供を図ることとし、順次患者の方々に提供を始めているところであります。また、エイズ治療薬の研究開発については、本年度、予算額を倍増して、さらに積極的に取り組むこととしております。
また、いわゆる二次・三次感染者の医療費自己負担につきましては、公費負担及び高額療養費制度の特例措置を講ずることにより、これを解消することとしており、来月からの実施に向け鋭意準備を進めているところであります。
さらに、差額ベッドの問題につきましても、拠点病院における個室の整備促進、診療報酬における新たな対応と指導の徹底等の施策を講じ、エイズ拠点病院等を中心に、HIV感染者が個室に入院した場合に基本的に差額ベッド代を負担しなくてもよいよう万全の措置を講じていくこととしております。
このような対応のほか、鎮魂・慰霊の措置についても御遺族の意見を伺いながら、その具体化に向けて全力を挙げて取り組むこととしております。
今回の問題において、患者、家族の方々には例えようのない苦痛をもたらしたことは痛恨のきわみであります。真相解明への努力を引き続きしてまいるとともに、今回の経験を重い教訓として、本件のような医薬品による甚大な健康被害を再び発生させることがないよう、その再発防止に最大限の努力を尽くしてまいりたいと考えております。
血液製剤によるHIV感染に関する調査プロジェクトチームにおいては、本年一月二十三日に設置して以来、厚生大臣から指示された国民等から疑問とされている十一の調査項目について、文献等調査と公表を前提とした文書による質問調査の方法によって調査を行ってきたところであり、約三カ月間の調査結果を、二月二十八日及び三月十九日の中間報告に続き、四月二十六日に補完的な調査結果を含め報告書として公表したところであります。
この報告書の主な内容としては、昭和五十八年当時、厚生省等は米国政府機関等の勧告等の米国の事情を知っていたこと、及びエイズの病因は不明であるが、ある種のウイルスによる感染症の可能性が強く、その伝播様式は血液を介して感染する可能性が強いことを認識していたこと、並びに原因ウイルス固定後の五十九年十一月末には厚生省は我が国の血友病患者の抗体検査陽性の状況を知っていたものと認められること。
第二に、エイズ研究班においては、いわゆる帝京大症例について、ステロイド剤投与による細胞性免疫の低下を否定できないこと等から疑似症例としたものと考えられること、米国CDCのスピラ博士の診断が報告された後もこの診断の見直しに至ることなく、引き続き検討することとされたと推測されること、及びこの症例は六十年四月にエイズ調査検討委員会に調査票が提出され、同年五月にエイズと認定されたこと。
第三に、加熱製剤の導入について、エイズ研究班の血液製剤小委員会では臨床試験が必要との意見が多かったこと、厚生省は五十八年十一月に臨床試験を含む加熱製剤の審査方針を示し、六十年七月にメーカーの承認申請を一括して中央薬事審議会で優先審査し、承認したこと、加熱製剤承認後の非加熱製剤の扱いについては、当時の担当職員の回答によると、患者の治療に重大な支障を来すおそれがあると考えたこと等が自主回収の理由となっており、また回収状況については、メーカーの報告等を通じて把握していたことなどであります。
さらに、国会の場においても、本年四月十二日以降、両院の厚生委員会において、原告である患者や家族の方々の意見陳述や当時の厚生省担当課長、エイズ研究班班長、班員などに対する参考人質疑が行われてきているところであり、真相解明への取り組みに注目をいたしているところであります。
調査プロジェクトチームの報告書については、記憶にないという回答も多く、完全に事実関係を解明できたとは考えておりませんが、権限に基づかない任意の調査として、当初指示された調査項目についてできるだけの事実関係の調査、整理を行ったと考えられることから、四月二十六日の報告を一応の最終報告としたものであり、調査プロジェクトチームの組織は存続しているところであります。
また、血液凝固因子製剤による非血友病HIV感染に関する問題につきましても、四月二日、厚生省内にプロジェクトチームを設置し、第IX因子製剤または第VIII因子製剤が納入された全国の医療機関に対する調査を鋭意進めているところであります。このうち第IX因子製剤については六月中を目途に一定の調査結果を取りまとめることとしており、第VIII因子製剤については七月中を目途に一定の調査結果を取りまとめることとしております。
五月三十一日には、エイズ問題に関して事務次官以下の厚生省職員の処分が行われ、また厚生大臣を初めとする幹部職員の給与の一部を返納することとなりました。
また同時に、製薬企業への幹部職員の再就職について自粛措置が講じられました。
さらに、HIV感染問題の反省に立った医薬品による健康被害の防止対策を徹底するため、今般、厚生科学会議において、医薬品による健康被害が発生する制度的、構造的原因や再発防止対策の基本的方向について大所高所から御議論いただき、第三者による調査検討委員会の設置を初め、医薬品の承認審査体制や政策決定プロセスのあり方等幅広い観点から御意見をいただいたところであります。また、厚生省内にプロジェクトチームを設置し、厚生科学会議の意見等も踏まえ、医薬品等による健康被害の再発防止の具体策を取りまとめていくこととしております。
このプロジェクトチームにおきましては、まず第一に、非加熱製剤の使用を停止することがおくれた政策決定プロセスを反省し、今後のあり方を確立すること。第二に、血液製剤由来の感染症に対する危機管理のための情報収集・提供が重要であることを踏まえ、行政サイドの情報収集・提供の仕組み、医師と患者間での情報提供のあり方の改善を図ること。第三に、今回の事件の反省に立って、薬事行政及びその組織のあり方を見直すことといった項目について鋭意検討を行い、今月中を目途に検討結果を取りまとめることとしております。
また、本年三月に国会に提出した薬事法等の一部を改正する法律案では、今回のHIV感染問題の反省の上に立って、緊急に必要となる措置として、まず第一に、国民の生命、健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病の蔓延を防止するため、いわゆる緊急輸入などの特例許可制度を設けること。第二に、製薬企業に医薬品の使用によるものと疑われる感染症例等の報告を義務づけること等を盛り込んだところであります。
衆議院においては、本法案の附則に、「政府は、血液製剤の投与によるエイズ問題を踏まえ、医薬品等による健康被害を防止するための措置に関し、速やかに総合的な検討を加え、その結果に基づいて法制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。」旨の検討規定を加える修正が行われました。本法案については現在、本院において御審議いただいているところであります。
以上、これまでの取り組みについて申し上げてまいりましたが、残された大きな課題である恒久対策の確立、真相解明、薬事行政の改革、医薬品による健康被害の再発防止について、今後とも、国会における御審議も踏まえて全力を挙げて取り組むことといたしており、国民の皆様の信頼が得られるよう最大限の努力を重ねてまいる所存であります。
(報告終わり)
(後略)
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