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今後の血液事業への取組みに当たり留意すべき事項


今後の血液事業への取組みに当たり留意すべき事項
(平成2年3月31日)
(薬生第42号)
(日本赤十字社事業局血液事業部長あて厚生省薬務局生物製剤課長通知)
 血液事業の実施に当たっての貴職並びに関係者のご努力に厚く御礼申し上げます。
 さて、標記については薬務局長より通知(平成2年3月31日薬発第365号)されたところでありますが、今般の薬価改定の趣旨及び今後実施すべき事項についての留意点を下記のとおり通知しますので、所要の方針を早急に確立し、その確実な実施をお願いします。
 なお、本年4月より実施される血液関連の診療報酬点数表の一部改正等を参考までに別添(略)のとおり送付します。
第I  薬価改定の趣旨
 1  輸血用血液製剤について
 輸血用血液製剤の薬価は、次の観点に立って、今後予想される供給本数により血液事業全体の収支が相償うことを前提として総額を設定し、その上で個別製剤の薬価が設定された。
(1)  従来は、個別製剤ごとの採血、製造、供給コストを積み上げて設定してきたが、採血方式、製剤種別とも多様化する中で現実的でなくなっていること。
(2)  製剤の供給に関して医療機関の要請と血液センターの経済的事情との間に矛盾が生じていること。
(3)  新血液事業推進検討委員会第一次報告で適切な事業運営を行うための財政上の対策が求められていること。
(4)  将来の需要を見越し、安全性、有効性の高い高単位製剤を供給することにより事業に必要な経費を確保する必要があること。
従って、
(1)  需要に即応した供給と輸血の安全性確保の観点から、高単位の製剤の供給を促進すべくこれら製剤の薬価は200mL献血由来製剤の整数倍とした。
(2)  使用適正化の観点から、全血製剤と赤血球製剤は同一の薬価とするとともに血漿製剤の薬価は基本的に据え置いた。
(3)  白血球除去赤血球など医療機関の要請に応じた供給が望まれる製剤の薬価は重点的に引上げた。なお、HLA適合血小板や10単位を上回る血小板の薬価新規収載については結論が出次第改めて通知する予定である。
 2  血漿分画製剤について
 血漿分画製剤の薬価は,基本的に従来同様,市場流通価格を基準に新薬価が設定された。
第II  新薬価設定に伴い早急に対応すべきこと
 1  適正供給の推進
 安全性の高い高単位製剤や使用適正化ガイドラインに沿った製剤の供給を推進する必要があることから、全社的な適正供給対策を確立されたい。
 その際、供給業務を公益法人などに委託している場合の手数料についても、単位数比例とするなど、この観点からの見直しを行われたい。
 2  国民の期待する事業展開
 今回の改定により数年来の財政問題は基本的に解決されることになるので、新血液事業推進検討委員会第一次報告にいう献血者健康管理サービスの充実、自己血輸血の本格事業化、新規製剤の開発など国民や医療機関の期待に対し積極的に対応されたい。
 3  献血者の立場に立った献血の受入れ活動
 成分採血の普及を始め効果的かつ計画的な採血を実施するには、日曜祝祭日や夕刻の献血受入れ等、献血者の都合に合せた採血環境の整備が必要である。
 このため、職員の勤務体制について基本的な変更を行うことを含め、職員団体等関係者と協議を行い速やかに実施されたい。
 4  地方公共団体等との協力関係の構築
 献血の推進には地域ごとの実情を踏まえたきめ細かい対策が必要である。地方公共団体その他各種団体との間で相互にアイデアを出し合う等の緊密な協力関係を構築されたい。
 5  適正使用の推進
 献血による血液事業に携わる者は、採血、製造、供給の全ての段階において献血者の善意に応えるべく、有効利用に心掛けなければならない。したがって、貴社においても供給に際し、医療機関との間で製剤の適正使用に関する十分な情報提供や情報交換を行い、献血血液の適正使用の推進に努められたい。
第III  血液事業の体制整備の見直しについて
 1  採血、製造、供給の各機能に即した効率的、合理的な組織形態の構築
 現在、血液事業の実施は各血液センター毎に、事業面、財政面、人事面において独立的に運営されているが、血液事業が各血液センター単位に細分化されている現状では、効率的、合理的な事業運営は困難といえる。
 長期に安定した血液事業を実施するためには、採血、製造、供給の各機能に着目し、それぞれにふさわしい運営をしなければならない。同時に独占による非効率や停滞の生じないような組織形態を構築する必要がある。例えば、広域区域単位に血液センターを再編成して計画的採血を実施するとともに、経済活動である供給に関しては、これを専門に担当する広域の専門公益法人を整備するなど組織面での抜本的な対策が必要である。
 2  業務標準の策定と本社、基幹血液センターの指導力強化
 当面の各血液センターの事業運営に際しても上記観点に立ち、事業各般の詳細な業務標準の策定とこれに基づいての本社及び基幹血液センターによる人事、財政面を含む業務全般にわたる強力な指導が必要である。
 また、今後は各血液センターの実情についてもより詳細に把握する必要があるので、その旨御配慮願いたい。
第IV  血漿分画製剤の自給促進と基本合意事項の遵守
 1  コスト低減努力の義務
(1)  血漿分画製剤の薬価は、血液凝固因子製剤は据え置かれたがアルブミン、免疫グロブリン製剤は大幅な引下げになっており、貴社においてもこれまで以上にコスト面での努力が必要である。特に、今後民間企業の協力を得て血液事業を実施していくに当たっては、国民医療費の観点からも民間企業の製造する製剤も含め献血由来製剤のコスト低減に格段の努力をする必要がある。
 なお、血漿分画製剤については、輸血用製剤と経理を区分し、経営状況を明確にされたい。
(2)  輸血用血液製剤に関する新薬価の実施に伴い、多血小板血漿成分採血から分離される血漿や全血採血から赤血球分離後の血漿を原料とする場合には、結果として従来よりコストが格段に低減されることを各血液センターに対し周知徹底することが肝要である。さらに血漿成分採血についても、採血方式の改善等によりコストの低減の努力をするよう各血液センターに対し指導する必要がある。こうした努力により、原料血漿確保は十分可能であり、安易に輸血用部門から生じた収益を血漿分画製剤原料確保に回すことは、将来の事業運営に支障を来すこととなるので,厳に慎まれたい。
 2  民間企業の協力に関する基本合意の周知徹底
 血漿分画製剤(特にアルブミン、免疫グロブリン製剤)の製造、供給に関する民間企業との協力についての「基本合意」が先般成立した。基本合意の緊急具体的な実施が必要であることは言うまでもないが、同時に、基本合意の背景及び内容について、医療機関はもとより献血関係者及び供給関係者にも広く周知、徹底を図り、誤解のないようにするとともに、献血由来の血漿分画製剤の供給促進に努められたい。
 3  基本合意事項の遵守と原料血漿の計画的な供給の実施
 基本合意に基づく民間企業も含めた詳細な製造計画に必要な原料血漿が計画どおり確保されるよう、各血液センターに対する施設、人員等の整備を含めた個別具体的対策を進める必要がある。特に、民間企業は今後原料輸入を廃止し、全面的に献血に依存することを宣明しており、信義則上も原料供給に遅滞があってはならない。
 4  研究開発への取組みと安定供給対策の確立
 安全性、有効性ともに優れた製剤を医療に提供できるよう,製剤化技術の開発及び取得に努められたい。
 特に、血液凝固因子製剤については、今後は貴社が独占的に取り扱うことになることから,当該製剤分野の技術開発への積極的な取組みが求められている。また、同製剤がいかなる事態にも対応できるよう安定供給の確保対策を確立されたい。
 なお、技術開発については、協力民間企業とも密接な連携を保ちつつこれに当たられたい。
 5  献血由来製剤の優先使用の積極的、効果的対策の実施
 献血由来血漿分画製剤の適正価格での優先供給の推進に当たっては、医療機関の血液事業に対する認識を改める必要がある。その際、薬務局長通知にあるように日赤病院においてその範を示すことが不可欠であるので、緊急に社内で必要な体制を整え、完全に実施するとともに、速やかにその実績を当職あて報告されたい。
 なお、医療機関に対しては、繰り返しての協力要請を行うこととし、厚生省でも必要な措置を講じるが、血液事業関係者、特に各血液センター幹部は、日常の医療関係者との密接な関係を生かした積極的、効果的な対応策を講じられたい。

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