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輸血医療の安全性確保のための総合対策報告書
5 血液製剤に係る検査・製造体制等の充実
(1) | 日本赤十字社における安全対策(8項目)の確実な実施
ア | 遡及調査自主ガイドライン作成
日本赤十字社独自の遡及調査ガイドラインの素案を作成し、現在審議会において審議中ですが、本年6月1日に開催された安全技術調査会で一部修正された案が了承され、次回血液事業部会に上程される運びとなりました。
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イ | 新鮮凍結血漿(FFP)の貯留保管
平成16年1月30日から全国で2ヵ月間(60日)貯留保管した新鮮凍結血漿を供給しています。さらに8月31日からは、3ヵ月間(90日)貯留保管した新鮮凍結血漿を供給する予定です。また、漸次貯留保管を延長し、最終的に平成17年10月には6ヵ月間(180日)の貯留保管を実施しますが、献血者の方々の協力を得てより早期の実現を目指します。
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ウ | 輸血用血液の感染性因子の不活化技術の導入
血液に含まれている可能性があるウイルスや細菌などの感染性因子を不活化させて、感染の予防を目指します。
海外で最も多く使用されている血小板の不活化法の一つについては、必要な機器とキットを複数の血液センターに搬入しました。ウイルスと細菌を用いて、日赤独自に不活化の効果について評価試験を行いました。
効果、実用性そして安全性において、最良のものを目指して他の不活化方法についても評価・検討を続けてまいります。
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エ | NATの精度向上
(ア) | 早期実現化策としての検体プール数の減少
現行の3 NAT施設を最大限に利用して、検査機器や試薬の製造及び検査設備の整備期間が最短と考えられる20プールでのNATスクリーニングを当面の間の向上策として今秋を目途に実施します。 |
(イ) | 試薬及び検査方法の改善
NATの検体容量を増やし、感度を向上する方法の一つとしてウイルス濃縮法を開発し検討を進めています。
また、検体容量を現在の2倍量以上使用する開発中の次期試薬について、平成16年第1四半期より評価を開始する。入手可能になり次第、順次他メーカーの試薬についても検討を開始します。
ウエストナイルウイルスをはじめ他のウイルスについてのNAT試薬についても評価を開始します。 |
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オ | 医療機関での輸血後感染症に関する全数調査
現在の出庫基準を満たし、日常的に供給されている輸血用血液の安全性を検証するために、複数の地域で医療機関の協力を得て、輸血前と輸血後の患者さんの追跡調査を本年1月から実施しております。
5月末までに輸血を受けられた患者さん約300名の調査を実施したところ、現在までに輸血による感染症の発生は確認されておりません。
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カ | E型肝炎ウイルス(HEV)の疫学調査について
現在、他の肝炎マーカーが陰性かつALT高値で不合格になった献血者血液を全国的に収集し、HEV-RNA及びHEV抗体の検査を基礎とした疫学調査を実施した結果、本年5月末現在、不合格となった血液が2,452本収集され、ALT値の高い検体順にHEV-RNA及びHEV抗体検査を実施しました。HEV-RNA検査はほぼ100%終了し、陽性が15例ありました。
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キ | 保存前白血球除去の開始
輸血した血液細胞(白血球中のリンパ球)が原因でおこる発熱などの輸血副作用の予防を目指します。
(ア) | 成分採血由来の血小板製剤
成分採血由来の血小板については、白血球除去フィルターがなくても白血球除去可能な成分採血装置とフィルター付キットが必要な成分採血装置があり、フィルター付キットが必要な成分採血装置については、平成16年4月からフィルター付キットの供給が開始されるのに伴い、血液センターでフィルター付キットの使用を始めています。現在各採血装置についても白血球除去の確認作業を進めており、平成16年10月中を目途に成分採血由来の血小板についてはすべて白血球除去製剤に切り替える予定にしております。 |
(イ) | 全血、赤血球、血漿について
白血球除去した全血、赤血球、血漿については、白血球除去フィルターを組み込んだバッグの操作性、全血採血装置、血液自動分離装置、ろ過スタンド等の周辺機器の改良及び新規整備が必要となります。
第一段階として全血採血装置の評価を血液センターで実施し、その後順次周辺機器の検討並びに白血球除去フィルターを組み込んだ全血採血バッグの仕様変更に関する検討を行いました。
なお、導入時期につきましては、成分採血由来血漿製剤は平成17年度、全血採血由来製剤は平成18年度を予定しております。 |
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ク | 献血受付時の本人確認の実施について
検査目的の献血防止対策の一環として献血受付時の本人確認を実施いたします。これは、感染した可能性があるときには患者さんの安全のため献血はしないという「安全で責任のある献血」の思想をご理解していただきたいために行います。実施にあたっての方法や問題点を把握するために本年3月30日から東京、大阪、北海道において試行的に実施しており、本年10月を目途に全国で実施する予定です。 |
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(2) | 各種安全対策の推進のための日本赤十字社における血液事業の機能強化
日本赤十字社本社に、新たに民間企業において導入されている事業本部制に準じた仕組みを導入し、血液事業に関する権限と責任を明確にして血液事業の安全対策の充実強化に向けた本格的な取り組みを行う。
※詳細は別添のとおり
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(3) | non-エンベロープ・ウイルス等への安全対策(不活化を除く)
ヒトパルボウイルスB19(以下B19)については、添付文書の「重要な基本的注意」で感染の可能性は否定できないこと及び「妊婦、産婦、授乳婦等への輸血」で輸血の有効性が危険性を上回ると判断される場合にのみ実施することを記載している。
しかしながら、輸血医療の安全性を向上させるために、B19の感染リスクを低減化した輸血用血液製剤を供給することが可能となるような検査方法について検討する。
そのためには、B19に対するIgG型抗体検査結果が一定期間にわたり陽性と判定される血液を選択する必要があり、検査試薬の評価及び抗体検査結果陽性でB19のNATが陰性となるような検査間隔について検討する。
一方、感染リスクを低減化した血液の適応について、国の調査会等でご検討していただきたいと考えております。
また、細菌汚染への対策としては、血小板等の細菌汚染リスクについてプロジェクトを設置し、検討する。
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(4) | ヒューマンエラー予防対策
・ | 血液センター全職員に対し、過誤事例を周知させるとともに、過誤防止に対する教育訓練を充実強化する。 |
・ | 血液センター業務における各工程の確認作業の重要性を再認識させ、作業者をはじめとした実務担当者による各作業工程の総点検を行い、必要に応じて各工程の見直し又は手順を構築し、その結果を本社で評価する。 |
・ | 近々過去の過誤を総括した注意喚起文書を各血液センターに通知するとともに、6月28日に全国血液センター所長会議を開催し、ヒューマンエラー防止策についての特別講演を実施した。 |
・ | 「血液事業危機管理ガイドライン」に基づいたインシデント・アクシデントレポート制度を徹底する。このための研修会を7月12日に実施する予定である。 |
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血液事業本部制の導入等の本社の新たな実施体制について(骨子)
・ | 日本赤十字社本社に、新たに民間企業において導入されている事業本部制に準じた仕組みを導入し、血液事業に関する権限と責任を明確にして血液事業の安全対策の充実強化に向けた本格的な取り組みを行う。
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・ | 血液事業を担当する理事・常任理事に、血液事業の実施に当たっての日本赤十字社の代表権を付与する。この理事・常任理事を血液事業本部長に充てて社長の権限を大幅に委譲し、血液事業が機動的に実施できる体制を整備する。
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・ | 血液事業本部に民間の製薬企業経営経験者、厚生行政経験者及び日本赤十字社の血液センター所長経験者等の各専門分野のメンバーからなる血液事業経営会議(合議機関)を設置し、血液事業本部の所掌事項について審議し、決定する体制を整備する。
血液事業経営会議は、血液事業本部長が総理する。
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・ | 血液センターに対する薬事法上の査察や技術的な指導・監督は、各都道府県支部で対応することが困難であることから、血液事業本部に専門スタッフを配置して一元的に行う体制を整備する。
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・ | 中央血液センターの検査・研究開発部門を中央血液研究所に改組して専門スタッフを配置し、血液事業の安全対策、血液に関する研究・開発を充実強化する。
また、血液の一層の安全性を確保するため、核酸増幅検査(NAT)等の充実を図る。 |
血液事業本部制の導入等の本社の新たな実施体制について
日本赤十字社は、血液事業の安全対策の充実強化に向けて本格的な取り組みを行うとともに、血液事業に関する権限と責任を明確にした組織体制を構築するため、本社に血液事業本部制を導入し、血液事業経営会議を設置する。
また、血液事業の安全対策、血液に関する研究・開発を充実強化するため、新たに中央血液研究所を設置する。
(1) | 血液事業本部制の導入及び血液事業経営会議の設置
ア | 血液事業本部制の導入
日本赤十字社本社に、民間企業において導入されている事業本部制に準じた仕組みを導入する。
血液事業本部は、次に掲げる事務を所掌する。
・ | 血液事業に関する企画・経営戦略の策定実施に関すること。 |
・ | 血液事業の安全対策、研究・開発及び査察・指導に関すること。 |
・ | 血液事業の市場調査、医薬情報に関すること。 |
・ | 血液事業の財務管理に関すること。 |
・ | その他血液事業に関すること。 |
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(ア) | 理事(常任理事)を血液事業本部長に充てるとともに、日本赤十字社定款に基づき、血液事業の実施に当たっての日本赤十字社の代表権を付与する。
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(イ) | 薬事法及び血液法(安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律)に基づく医薬品製造販売業等の許可・変更申請等は、理事(常任理事)である血液事業本部長が行い、薬事法及び血液法上の責任者とする。 薬事法上の各血液センターに対する指導監督は、血液事業本部長が行う。
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(ウ) | 血液事業本部長の決裁権限
血液事業本部長に血液事業の実施についての決裁権限を与えるものとし、この決裁権限の範囲は、社長の決裁権限と同様とする。
<参考>決裁権限
・ | 1億円未満の資金の借入 |
・ | 5,000万円未満の不動産の処分 |
・ | 2億円未満の資本的収支予算の補正 |
・ | 組織・事業内容の変更を伴わない収益的収支予算の補正 |
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イ | 血液事業経営会議の設置
血液事業本部に血液事業経営会議を設置する。
血液事業経営会議は、日本赤十字社の血液事業関係者のほか、民間の製薬企業経営経験者、厚生行政経験者等で構成し、血液事業本部の所掌事項について審議し、決定する。
血液事業経営会議は、血液事業本部長が総理する。 |
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2. | 中央血液研究所の設置と本社の血液事業の安全対策の強化 |
(1) | 中央血液研究所の設置
中央血液センターの検査・研究開発部門を中央血液研究所として改組し、血液事業の安全対策、血液に関する研究・開発を充実強化する。
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(2) | 本社の血液事業の安全対策の強化
現在の中央血液センターの安全管理部門、品質保証部門、情報システム部門等を本社に統合し、本社の安全対策等の実施体制を強化する。 |
3. | 都道府県支部と血液センターの関係
都道府県支部は、血液事業の実施に当たり、県当局との連絡調整及び赤十字奉仕団の協力要請等多様なかかわりを持っているので、血液センターは、支部管下とする現状の取扱いは変更しない。
ただし、本社と血液センターとの関係では、実質的に次のような改革を行う。
(1) | 全国の血液センターに対し、安全保証や品質管理を確保するために行う査察や技術的指導は、本社の血液事業本部が一元的に実施する。
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(2) | 本社の財政調整制度を強化し、各血液センターの安全対策費等についての支援を本格的に実施する。 |
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血液事業本部制導入後の本社の組織図
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本社事業局血液事業部及び中央血液センターを改組し、本社に血液事業本部を設置する。
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