平成21年10月5日
大臣官房国際課国際協力室 |
第7回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要
1.テーマ
「共生社会」の構築(障害者の自立、自己実現と社会参加)
〜福祉と保健、医療システムの連携を通じて〜
“Towards an Inclusive Society”
- strengthening the collaboration between social welfare, health and medical systems for Children with Disabilities -
2.開催概要
日時・場所 2009年8月31日(月)〜9月3日(木) 於:三田共用会議所
主催者 厚生労働省
事務局 国際厚生事業団(JICWELS)
協力者 ASEAN事務局、世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)、
国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)、独立行政法人国際協力機構(JICA)
参加者 ○ASEAN10ヶ国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)より、次官級2名を含む計41名
(原則として、社会福祉政策担当行政官各国2名及び保健政策担当行政官各国2名)
○ASEAN事務局(3名)、WPRO(1名)、UNESCAP(1名)
3.プログラム
8月31日(月)
- 開会挨拶 (村木太郎 厚生労働省大臣官房総括審議官(国際担当))
- 本会合の趣旨説明(高倉信行 厚生労働省大臣官房国際課長)
- 基調講演「共在(coexistence)社会へ向けて」
(中村安秀 大阪大学大学院人間科学研究科 教授) - 基調講演「完全参加と平等に向けて ―障害児の福祉―」
(植村英晴 日本社会事業大学教授) - 前回会合の振り返り
(田中大祐 厚生労働省大臣官房国際課国際協力室長補佐) - カントリープレゼンテーション(ASEAN各国)
- 歓迎レセプション
9月1日(火)
- 施設視察(横浜市総合リハビリテーションセンター、しんよこはま地域活動ホーム、横浜市東部地域療育センター、横浜市立北網島特別支援学校)
9月2日(水)
- 講演「Overview of the ASEAN Cooperation on Children Welfare」
(Dr. Donald Tambunan ASEAN事務局社会福祉・女性・労働部長) - 講演「Injury and disability prevention among children: to thrive as they survive」
(Ms. Remedios Paulino WPRO地域社会人口健康推進技官) - 講演「Issuers on children with disabilities in ASEAN in the light of the Biwako Millennium Framework for Action and the Convention on the Rights of Persons with Disabilities (CRPD)」
(Ms. Aiko Akiyama UNESCAP社会開発部社会専門官) - 講演「JICA and Disability, Development and Inclusive Education」
(磯部陽子 JICA人間開発部社会保障課ジュニア専門員) - グループディスカッション
Group 1: 障害児をめぐる保健と福祉の連携ファシリテーター: 中村安秀 大阪大学大学院人間科学研究科 教授 日本側リソースパーソン: 中西由起子 アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表
野崎慎仁郎 長崎大学国際連携研究戦略本部副本部長 教授
高城亮 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課課長補佐ファシリテーター: 植村英晴 日本社会事業大学教授 日本側リソースパーソン: 森壮也 日本貿易振興機構アジア経済研究所 新領域研究センター貧困削減・社会開発研究グループ グループ長代理・主任研究員
上野悦子 日本障害者リハビリテーション協会 国際部長 - プレクロージングパーティー
9月11日(木)
- グループディスカッション分科会報告
- 会合のまとめ
- 各国参加者、ASEAN事務局、WPRO、中村教授、植村教授、野崎教授からのスピーチ
- 会議総括(武井貞治 厚生労働省国際課国際協力室長) - 閉会(麦谷眞里 厚生労働省大臣官房審議官(国際保健、がん対策、医政担当))
・なお、参加した各国から提出されたカントリーレポートについては、実施機関(国際厚生事業団(JICWELS))のホームページに掲載されております。
4.議論の概要
基調講演では、中村教授より母子手帳及び障害児の日本の60年間の取り組みの変遷が、植村教授より日本における障害児を取り巻く状況が紹介された。ASEAN事務局、WPRO、UNESCAP及びJICAの講演ではそれぞれの機関における、障害児及び障害者に対する取り組みが紹介された。
また、各国のカントリープレゼンテーションを通じて各国の状況、成功事例、直面している問題等が紹介され、ASEAN各国及び日本の間で情報、経験、知識の共有がなされた。これらの本会合で提供された情報に基づいて、「共生社会」の構築に向けた、障害児に関する保健及び社会福祉サービスの現状と将来のあり方に関する共通の問題点や、国レベル、地域レベルで今後実施しうる活動について、活発な議論が行われた。今回の会合における、参加者の合意事項や提案を下記に示した。
【参加者の合意事項】
- 参加者は、今回のハイレベル会合における障害児のための保健・福祉サービスに関する議論、提言及び結果について各国の担当大臣や幹部に報告する
- 日本はASEAN事務局の協力を得ながら、この会合の提言や結果をASEAN+3保健大臣会合及び福祉大臣会合、高級事務レベル会合に報告する
- ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合はASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合等の決議をフォローアップするための会合としての位置を占めている
- ASEAN Children Forumなどの障害児に関する活動に積極的に参加する
- 社会的なモデルを実施に移すことに集中する
- 障害の多様性を認識し、尊重する
- 障害児と同様に障害に関連した国際的及び地域的な取り組みに従う
- ASEAN諸国と日本の参加者が直接会合に参加し、情報、知識及び視点についての意見を交換することは、障害児を取り巻く保健及び福祉分野の問題を解決するのに有用である
- 障害児も含めて共生社会を実現するためには、「社会保障」の概念を理解することがとても重要である
また、障害児に対する保健・福祉サービスを向上させるために、以下の点が重要であると提案された。
【地域的な取り組み】
- 障害児への取り組みのベストプラクティスの共有化や、実務家、専門家への技術的、実践的及び財務的な観点からキャパシティビルディングを促進する
- ASEAN Children Forumを障害児や障害児のための組織の直接参加を促進するためのプラットフォームとして活用する
- 障害児への取り組みのグッドプラクティスや成功経験を、実施ガイドラインやチェックリストとともに取りまとめる
- 国家的な及び地域的な障害児のデータベースを作成することを目的として、障害児のデータ収集システム(方法、分析及び活用法)を強化するための、例えば母子手帳を1つの参考として活用するなどして、政府高官のためのキャパシティビルディングワークショップを開催する
- 原因や能力に関することも含めて、障害児に関する研究を促進する
【国家的な取り組み】
- 障害児への対応により経験を有する他の国からASEAN加盟国の特定の国に対して必要に応じて技術援助を促進する
- 保健省、福祉省及び関連省庁のセクタをまたいだ連携を促進し、国家メカニズムやフレームワークの開発を通じて、フォーカルポイントを特定する
- 5年以上にわたり、小児のための国家計画に障害児についても含める
- 障害の予防、早期発見早期介入を促進する。特に、母子手帳を活用する
- 医師、医療専門家、ソーシャルワーカー、福祉従事者を含めた統合的なトレーニングの包括的なアプローチを促進する
- アクセスや提供されるサービスを確保するために、ボランティアの移動、管理及びトレーニングプログラムを含めたコミュニティーに根ざしたリハビリテーションのアプローチを強化する
最後に、各国参加者等から、本会合は非常に有意義なものであり、今後とも引き続き本会合が開催されることや、会合がより発展することへの期待が表明された。
また、2010年の会合のテーマは、社会的弱者に対する保健・福祉サービス、2011年の会合のテーマは保健・福祉分野の人材開発とすることが確認された。
第7回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 サマリー(英文)(PDF:128KB) | |
第7回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 サマリー別添(英文)(PDF:126KB) | |
第7回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 写真付きサマリー(英文) (1〜5ページ)(PDF:446KB)、(6〜9ページ)(PDF:295KB)、全体版(PDF:654KB) |
【参考】
会合の経緯
厚生労働省では、1996年のリヨンサミットにて我が国が提唱した世界福祉構想を受け、東アジアを中心とする地域協力を推進すべく、1997年より2002年まで東アジア社会保障行政高級実務者会合を開催し、社会保障分野における協力関係の強化を図ってきた。その実績を踏まえ、2003年より、特にASEAN地域に焦点を当て、社会福祉及び保健医療の分野における緊密な関係をさらに発展させ、また、当該分野での人材育成を強化するため、ASEAN10ヶ国から社会福祉と保健医療政策を担当するハイレベル行政官を招聘し、ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催している。
その間、ASEAN側も福祉・医療分野での日本、中国、韓国との協力を模索し始め、2004年にASEAN+3保健大臣会合及びASEAN+3社会福祉大臣会合が設置された。これまで、ASEAN+3保健大臣会合については、2004年4月にマレーシアで第1回会合、2006年6月にミャンマーで第2回会合、2008年10月にフィリピンで第3回会合が開催されており、2010年はシンガポールで第4回会合が開催される予定である。
ASEAN+3社会福祉大臣会合については、2004年12月にタイで第1回会合、2007年12月にベトナムで開催されており、2010年はブルネイで第3回会合が開催される予定である。厚生労働省は、これまでこれらのASEAN+3の活動に積極的に貢献しているところである。
ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合のテーマは、ASEAN諸国やASEAN事務局からの提案、ASEAN+3保健大臣会合・社会福祉大臣会合の議論などを踏まえて選定してきている。第1ステージ(2003〜2006年)では、人材育成、高齢化社会への対応、母子・障害者保健福祉、社会的弱者(児童・女性)支援をテーマとし、福祉と保健サービスの連携を軸に、中央政府と地方政府との連携、官民の役割分担、コミュニティー活動などについて議論を行ってきた。ASEAN諸国からの参加者(2003〜2009年)は延べ244名にのぼる。
また、本ハイレベル会合は、ASEAN+3保健大臣会合及び社会福祉大臣会合を支える事業として関係国間で位置づけられている。特に、ハイレベル会合への参加を契機として、保健と福祉という異なるセクタ間の協調強化に向けた取り組みがASEAN諸国で活発になってきているところである。累次のハイレベル会合の結果は上記ASEAN+3大臣会合に報告され、ASEAN側より、日本のイニシアティブに謝意が表されるとともに、今後も保健と福祉サービスの連携に焦点を当てて会合を継続してほしいとの意向が示されている。なお、2010年1月にシンガポールで開催されるASEAN+3社会福祉高級事務レベル会合において今回の会合の結果を報告する予定である。
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