厚生労働省

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平成21年7月29日

職業能力開発局能力評価課

 小鹿昌也

課長補佐 干飯雅昭

 03(5253)1111(内線5969)

夜間直通 03(3502)6958

中央職業能力開発協会

能力評価部次長 松尾義弘

 03(5800)3635(直通)

「マテリアル・ハンドリング業」の職業能力評価基準が完成

(ポイント)

○ 現在、厚生労働省では「職業能力が適正に評価される社会基盤づくり」として、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる職業能力評価基準の策定に取り組んでいます。これまで、経理・人事等の「事務系職種」に関する横断的な職業能力評価基準のほか、電気機械器具製造業、自動車製造業、ホテル業等41業種の職業能力評価基準が策定されたところであり、今回、「マテリアル・ハンドリング業」の職業能力評価基準が完成しました。

○ 職業能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定しています。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述しています。このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待されます。

○ 現在、幅広い業種において職業能力評価基準の策定を進めているほか、策定済みの職業能力評価基準についての改訂を進めているところです。

○ 上記の報告書及び職業能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能です。
(中央職業能力開発協会:「職業能力評価基準のご案内」 http://www.hyouka.javada.or.jp/

○ ジョブ・カード制度(職業能力形成プログラム)においては、企業におけるOJTを含めた訓練成果を「汎用的な評価基準」に基づいて評価することが必要とされており、職業能力評価基準の活用が可能です。

ジョブ・カード制度への企業の参加を容易にするため、ジョブ・カード様式6(評価シート)のモデルとなる「モデル評価シート」等を、既に策定した職業能力評価基準を活用して策定しているところであり、既に策定されたものは、厚生労働省のホームページから入手可能です。[厚労省:「ジョブ・カード制度」のご案内https://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/job_card01/index.html


1 マテリアル・ハンドリング業について

マテリアル・ハンドリング(Material Handling;MH)とは、日本語で運搬管理と訳されており、生産拠点や物流拠点内の原材料、仕掛品、完成品の全ての移動に関わる取り扱いを指します。広義には拠点間の搬送などの物流も含みますが、実際には自動化設備内での物品の搬送機器や工程を意味することが多いです。日本MH協会では、マテリアル・ハンドリングとは「あらゆる場合と時と場所とで、運搬を合理化し、運搬手法を活用して、経済性、生産性を向上する」ことであると定義しています。マテリアル・ハンドリングの導入は、モノの移動距離の最小化、ボトルネックの改善、破損の最小化等をもたらしコスト削減につながります。

マテリアル・ハンドリング業の具体的な業務は、マテリアル・ハンドリングに活用する機器や情報システムの構築・コンサルティング、そして計画・設計・設置工事・取扱い・保守・メンテナンス等となっています。そこで、職業能力評価基準の策定に当たっては、「倉庫」「コンベヤ」の2つの領域を対象とし、営業技術、計画設計/基本設計、生産統括、実施設計/詳細設計、購買・調達、生産技術、製造、工事、サービス技術、品質管理、管理の11職種について職業能力評価基準の策定を行いました。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) マテリアル・ハンドリング業については、日本MH協会(会長・秋庭 雅夫:東京工業大学名誉教授)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・秋庭 雅夫:東京工業大学名誉教授)を設置し、検討を行いました。

(2) 同委員会は、マテリアル・ハンドリング業における専門性の高い職種として、

[1]顧客対応や提案活動、システム企画等の営業企画業務を行う「営業技術」

[2]マテリアル・ハンドリングシステムの計画設計業務を行う「計画設計/基本設計」

[3]製造品の生産工程(技術・計画・管理)を統括し、技術マネジメントを行う「生産統括」

[4]マテリアル・ハンドリングシステムの実施設計業務を行う「実施設計/詳細設計」

[5]マテリアル・ハンドリング製造品の部品や材料等の購買・調達を行う「購買・調達」

[6]マテリアル・ハンドリングの製造に使う設備の計画・保全及び金型管理を行う「生産技術」

[7]製造品の加工、検査、試運転及び出荷までの業務を行う「製造」

[8]マテリアル・ハンドリングシステムの製造品の現場設置における施工計画から据付工事までの業務を行う「工事」

[9]マテリアル・ハンドリング製品の保守・メンテナンス業務を行う「サービス技術」

[10]製造品の品質を統括的に管理する「品質管理」

[11]マテリアル・ハンドリング業の業務遂行における部門やチーム等の管理を行う「管理」

の11職種について職業能力評価基準の策定を行いました(図1参照)。

(3) マテリアル・ハンドリング業においては、企業内外の環境条件が多種多様であるために、個々の用途に最適なシステムを創り出さなければならないことから、実際の物流現場に即した、経営トップ又は顧客へのシステム提案のできる物流リーダーの養成が急務となっています。また、今後ますます多様化・高度化する消費者ニーズ、商品及び流通経路の多様化、ITによる高度化などを通して、よりシステムが複雑化していく中で、各種マテリアル・ハンドリング機器の理解を深め、幅広いシステム化を実現できる技術力、ノウハウの構築・人材育成が重要となっており、これらのことを踏まえて、職業能力評価基準が策定されました。

図1 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の全体構成

図1 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の全体構成
図1 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の全体構成
図1 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の全体構成
図1 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の全体構成

3 レベルの設定

職業能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定しています。

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、マテリアル・ハンドリング業におけるレベル区分の目安を設定しました(図2参照)。

図2 マテリアル・ハンドリング業のレベル区分の目安

図2 マテリアル・ハンドリング業のレベル区分の目安

4 マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の例

マテリアル・ハンドリング業の職業能力評価基準の例


(参考)

「職業能力評価基準」について

職業能力が適正に評価されるための社会基盤として、能力評価のいわば“ものさし”、“共通言語”となるよう 「職業能力評価基準」を順次策定。

職業能力評価基準とは、

業種別職種・職務別に、必要とされる能力を担当者から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定し整理・体系化。

・仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を記述。

・職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述。

・業界団体との連携のもと、企業調査の実施による職務分析に基づき策定。

(職業能力評価基準を活用するメリット)

求職者・労働者にとって、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、(1)自らの能力の客観的な把握、(2)企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組につなげることができる。

企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化人材育成への効果的な投資能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関するスタンダードとして活用できる。

ハローワーク等の労働力需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。

教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

【企業における活用の取組みの例】

○ 人事制度・賃金・処遇制度の見直しや整備に活用

「全社あげての新人事システムの構築に活用」(事務系職種)

「技術を適切に評価できる人事評価制度に見直し」(造園工事業)

「職業能力評価基準に基づき「能力考課」の基準を見直し」(事務系職種)

「職種を通じた「行動評価シート」を作成」(事務系職種・電気機械器具製造業)

○ 能力開発・研修体系の見直しや整備に活用

「人材を育成するための基準として活用」(ホテル業)

「社内研修制度の整備に活用」(アパレル産業・印刷業)

「技能・技術力の向上のための段階的目標を作成」(鉄筋工事業)

【業界における活用の取組みの例】

○ スーパーマーケット業

職業能力評価基準に基づき、既存の業界内資格(=スーパーマーケット検定)を実際の職階やキャリアルートに即応した実践的な検定制度として再構築し、新たなスーパーマーケット検定を実施している。併せて企業内研修や個人の学習に利用するため、同検定の学習用教材を整備した。

○ ホテル業

職業能力評価基準に基づき、必要な知識と技術について研修テキストを作成し、これを使用しつつ、面接、ロールプレイ、論文、討議、事例研究で構成される技能レベルを評価する職業能力認定試験を構築した。

【モデル評価シートへの活用例】

ジョブ・カード制度(職業能力形成プログラム)において、企業でのOJT訓練の成果をジョブ・カード様式6(評価シート)に基づき評価するための「モデル評価シート」(別紙参照)を、職業能力評価基準により策定している。

(別紙)「モデル評価シート(ロジスティクス分野)」

(別紙)「モデル評価シート(ロジスティクス分野)」

(別紙)「モデル評価シート(ロジスティクス分野)」(つづき)

(別紙)「モデル評価シート(ロジスティクス分野)」(つづき)


職業能力評価基準策定状況

職業能力評価基準策定状況

「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」
及び「職業能力評価基準」の入手先

広く活用を図るため、職業能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPにおいて公開を行っている。

○中央職業能力開発協会 能力評価部

〒112−8503 東京都文京区小石川1−4−1

住友不動産後楽園ビル

http://www.hyouka.javada.or.jp

(こちらよりダウンロードできます)

E-mail hyouka@javada.or.jp

TEL 03-5800-3689


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