厚生労働省

  • 文字サイズの変更
  • 小
  • 中
  • 大

平成21年6月19日

厚生労働省労働基準局安全衛生部

労働衛生課長                  鈴木  幸雄

主任中央労働衛生専門官        小澤  真一

調査官                        塚本  勝利

電話  03-5253-1111(内線5505,5497)

職場における熱中症の予防について

〜  熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患を踏まえた健康管理 を徹底することによって職場における熱中症予防を推進します 〜

1  職場における熱中症の発生状況等について

職場における熱中症の予防については、平成8年の通達「熱中症の予防について」(平成8年5月21日付け基発第329号)などにより取組みを推進していますが、災害はあとを絶たず、平成20年には17名の労働者が熱中症で死亡しており、また、熱中症により休業(4日以上)した者も年間約300名(平成19年)に上っています。

さらに、糖尿病、高血圧症等が一般に熱中症の発症リスクを高め、それらを踏まえた健康管理の徹底を図る必要があるなどの状況にあります。

2  熱中症の予防対策の改正について

熱中症を予防するため、上記の状況、専門家による検討をも踏まえて、今般、上記通達による対策を改正しました。

今後、都道府県労働局、労働基準監督署を通じた事業場への指導、業界団体への取組みの要請などにより、新たな「職場における熱中症予防対策」の推進を図ることとしています。

3  新たな「職場における熱中症予防対策」のポイント

○  WBGT値(湿球黒球温度℃)を求めること等により、職場の暑熱の状況を把握し、必要な作業環境管理、作業管理、健康管理等を行うこと

○  計画的な熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)の設定

○  自覚症状の有無にかかわらない水分・塩分の摂取

○  熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患(糖尿病等)を踏まえた健康管理など

新たな「職場における熱中症予防対策」の概要

1  WBGT値(暑さ指数)の活用

暑さ指数であるWBGT値(湿球黒球温度 ℃)を求め、労働者の熱への順化(熱に慣れ、その環境に適応すること)の有無及び作業内容等ごとに定められた基準値(「職場における熱中症の予防について」3ページ参照)を超える場合には、身体作業強度の低い作業への変更などの対策に努めるとともに、基準値を超える場合には下記の2以下の対策の徹底を図ること。(WBGT値が未測定の場合もWBGT値と気温、相対湿度との関係を示した表を参考にすること。)

(注)WBGT値とは暑熱環境による熱ストレスの評価を行う暑さ指数で、式(1)又は(2)により算出できます。

・  屋内の場合及び屋外で太陽照射のない場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.3×黒球温度    式(1)

・  屋外で太陽照射のある場合

WBGT値=0.7×自然湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度  式(2)

2  作業環境管理

・  作業場所の冷房等によるWBGT値の低減、休憩場所の整備等を図ること。

3  作業管理

・  休憩時間等を確保すること、身体作業強度が高い作業を避けることなどの対策に努めること。

・  熱への順化の有無が熱中症の発生リスクに大きく影響することから、計画的に、熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)を設けることが望ましいこと。

・  自覚症状の有無にかかわらず水分・塩分の作業前後及び作業中の定期的な摂取の徹底を図ること。このため、摂取を確認する表の作成、巡視などを行うこと。

・  透湿性及び通気性の良い服装等を着用させること。

4  健康管理

・  糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等は熱中症の発症に影響を与えるおそれのあることから、健康診断の実施、異常所見に対する医師等の意見の聴取、当該意見を勘案した就業場所の変更等の適切な措置の徹底を図ること。

・  上記疾患治療中等の労働者については、産業医、主治医等の意見を勘案して、必要に応じて、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずること。

・  労働者に対して、上記疾患治療中等の場合は熱中症予防のため対応が必要であることを教示するとともに、対応が必要と判断した場合などには申し出るよう指導すること。

・  睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることから、日常の健康管理の指導、必要に応じ健康相談を行うこと。

・  作業開始前、作業中の巡視による労働者の健康状態の確認等を行うこと。

5  労働衛生教育

・  作業管理者、労働者へ教育を行うこと。

6  救急処置

・  緊急連絡網の作成及び周知、熱中症を疑わせる症状が現れた場合は必要に応じて救急隊の要請等を行うこと。


(参考)

○  熱中症とは

熱中症は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウム等)のバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称であり、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れる。

○  職場における熱中症の発生状況

(1)死亡者数
[1]  熱中症による死亡者数は、平成11年から20人前後であり、平成18年17人、平成19年18人、平成20年も17人である。
熱中症による死亡災害発生件数の推移(平成11〜20年)
年(平成) 11年 12年 13年 14年 15年 16年 17年 18年 19年 20年
20 18 24 22 17 17 23 17 18 17 193
[2]  平成18〜20年の過去3年間の死亡者(合計値52人)の内訳は以下のとおりである。

・  業種別にみると、建設業33人(63%)、製造業8人(15%)、警備業2人(4%)などである。

・  作業開始からの日数別にみると、初日12人(23%)、2日目16人(31%)、3日目5人(10%)、4日目4人(8%)などであり、7日以内であった者は41人(79%)である。

・  発生月別にみると、6月5人(10%)、7月23人(44%)、8月22人(42%)、9月2人(4%)である。

[3]  平成20年の死亡災害(17人)の詳細

・  被災者の治療中の疾病の有無等が明らかな9件の死亡災害のうち、糖尿病等の熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病であったものは4人(影響の程度等は不明)である。

・  17件の死亡災害のうち、体調不良、食事未摂取又は前日の飲酒のものは3人である。その他、被災前日まで疾病にて休業していたもの1人である。

・  被災者の水分・塩分の摂取状況が明らかな12件の死亡災害のうち、水分・塩分のどちらも摂取6人、水分のみ摂取(塩分未摂取)6人である。

熱中症による死亡災害の業種別発生状況(平成18〜20年分)
業種 建設業 運送業 警備業 製造業 林業 その他 計(人)
平成18年 14     1 1 1 17
平成19年 10 1 2 2   3 18
平成20年 9     5   3 17
計(人) 33 1 2 8 1 7 52
熱中症による死亡災害の作業開始からの日数別発生状況(平成18〜20年分)
作業日数 初日 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 8日目 9日目 10日目
以降
計(人)
平成18年 6 8               3 17
平成19年 3 5 3 2 1   1     3 18
平成20年 3 3 2 2 1 1   1   4 17
計(人) 12 16 5 4 2 1 1 1 0 10 52
熱中症による死亡災害の月別発生状況(平成18〜20年分)
6月 7月 8月 9月 計(人)
平成18年 1 8 8   17
平成19年 2 3 11 2 18
平成20年 2 12 3   17
計(人) 5 23 22 2 52
(2)休業4日以上の業務上疾病者数

熱中症による休業4日以上の業務上疾病者数(労働者死傷病報告による平成19年の値であり死亡者を除く。)は299人であり、業種別にみると、建設業38%、製造業19%、運輸交通業10%、商業6%などである。また、発生場所別にみると、屋外60%、屋内34%などである。

○  水分・塩分の摂取量等

身体作業強度等に応じて必要な摂取量等は異なるが、WBGT基準値を超える場合は、少なくとも、0.1〜0.2%の食塩水、ナトリウム40〜80mg/100mℓのスポーツドリンク又は経口補水液等を、20〜30分ごとにカップ1〜2杯程度を摂取することが望ましい。

○  熱への順化の例

作業を行う者が順化していない状態から7日以上かけて熱へのばく露時間を次第に長くすること(ただし、熱へのばく露が中断すると4日後には順化の顕著な喪失が始まり3〜4週間後には完全に失われる。)などがある。

別添2の1枚目の画像(表紙)(PDF:356KB)

パンフレット
(1〜3ページ(PDF:478KB)、 4〜8ページ(PDF:363KB)、 全体版(PDF:583KB))

PDFファイルを見るためには、Adobe Readerというソフトが必要です。
Adobe Readerは無料で配布されています。(次のアイコンをクリックしてください。) Get Adobe Reader


トップへ