厚生労働省

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厚生労働省発表

平成21年3月19日

厚生労働省

照会先 老健局計画課

認知症・虐待防止対策推進室

室長井内雅明

室長補佐山本

専門官武田章敬

電話03-5253-1111 内線3868

03-3595-2168(直通)

若年性認知症の実態等に関する調査結果の概要及び
厚生労働省の若年性認知症対策について

I 「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」の調査結果の概要

今般、厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)による「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」の調査結果が報告されたので、その概要をお知らせする。

(研究主体:「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」班、主任研究者

筑波大学大学院人間総合科学研究科 朝田 隆教授)

【 調査結果概要 】
1 調査目的

今後の若年性認知症に対する施策の基礎データを構築するため、平成18年度から平成20年度の3年間において、65歳未満で発症するいわゆる若年性認知症について、全国レベルでの疫学的な実態や、当事者と家族が抱える問題を明らかにする調査を実施した。

2 有病率に関する推計結果(図表参照

(1) 18−64歳人口における人口10万人当たり若年性認知症者数は、47.6人(95%信頼区間45.5-49.7)であり、男性57.8人、女性36.7人と男性が多かった。

(2) 全国における若年性認知症者数は3.78万人(95%信頼区間3.61-3.94)と推計された。

(3) 30歳以降では、5歳刻みの人口階層において、認知症全体の有病率は1階層上がるごとにほぼ倍増する傾向があった。

(4) 基礎疾患としては、脳血管性認知症(39.8%)、アルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール性認知症(3.5%)、レビー小体型認知症(3.0%)の順であった。

(5) 推定発症年齢の平均は51.3±9.8歳(男性51.1±9.8歳、女性51.6±9.6歳)であった。

※ 調査対象及び方法

熊本県、愛媛県、富山県、群馬県、茨城県の全域における認知症の者が利用する可能性がある全ての保健・医療・福祉関係施設・機関に対し2段階で若年性認知症(発症年齢と調査時点の年齢がいずれも65歳未満の者と定義)アンケート調査を実施。また横浜市港北区と徳島市においても類似の方法で調査を実施。

3 介護家族に対する生活実態調査

(1) 最初に気づかれた症状はもの忘れ(50.0%)、行動の変化(28.0%)、性格の変化(12.0%)、言語障害(10.0%)であった。

(2) 家族介護者の約6割が抑うつ状態にあると判断された。

(3) 若年性認知症発症後7割が収入が減ったと回答した。

(4) 多くの介護者が経済的困難、若年性認知症に特化した福祉サービスや専門職の充実の必要性を記載した。

※ 調査対象及び方法

全国の若年性認知症の家族会会員等に対し、患者の症状、介護者の抑うつ及び介護負担度、経済負担、雇用等に関する質問票により、アンケート調査を実施。

(表)年齢階層別若年性認知症有病率(推計)
年齢 人口10万人当たり
有病率(人)
推定
患者数
(万人)
総数
18-19 1.6 0.0 0.8 0.002
20-24 7.8 2.2 5.1 0.037
25-29 8.3 3.1 5.8 0.045
30-34 9.2 2.5 5.9 0.055
35-39 11.3 6.5 8.9 0.084
40-44 18.5 11.2 14.8 0.122
45-49 33.6 20.6 27.1 0.209
50-54 68.1 34.9 51.7 0.416
55-59 144.5 85.2 115.1 1.201
60-64 222.1 155.2 189.3 1.604
18-64 57.8 36.7 47.6 3.775

(図)若年性認知症の基礎疾患の内訳

(図)若年性認知症の基礎疾患の内訳

※本概要については、報告書から一部抜粋し、作成した。

II 厚生労働省における若年性認知症対策について

昨年7月の「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」報告、上記の調査結果等を踏まえ、各行政部局が連携し、若年性認知症者一人ひとりの状態に応じた適切な支援ができるよう、本日付けで若年性認知症対策の推進に関する3部局長連名通知(職業安定局高齢・障害者雇用対策部長、社会・援護局障害保健福祉部長、老健局長連名通知)等を発出した。

【通知の概要】

1 若年性認知症者の支援に活用可能な以下の現行施策を担当する各行政部局、サービス事業者その他の関係団体等が相互に若年性認知症対策に関する理解を深め、有機的な連携の下で、一人ひとりの状態に応じた多様なサービスが総合的に提供されるよう積極的に努めること。

(1)認知症疾患医療センターにおける確定診断や、自立支援医療(精神通院医療費)による健康保険の自己負担軽減等の医療的な支援

(2)精神障害者保健福祉手帳の取得による支援

(3)障害基礎年金等による経済的な支援

(4)就労移行支援事業や就労継続支援事業等の日中活動、行動援護等の訪問、ケアホーム等の居住等障害福祉サービスによる支援

(5)障害者雇用率への算定、障害者雇用納付金制度に基づく助成金の支給、職業リハビリテーションサービス等障害者雇用施策による支援

(6)40歳以上の若年性認知症者に対する認知症専用のデイサービスやグループホーム等のサービスを提供する介護保険サービスによる支援

2 平成21年度から以下の国庫補助事業や介護報酬加算を創設し、若年性認知症に関する相談体制や関係者の連携体制の強化、介護保険施設等の若年性認知症者の受入れの促進を積極的に図ること。

(1)若年性認知症に関して、誰でも気軽に相談できる若年性認知症コールセンターを全国1か所に開設(平成21年10月開設予定)

(2)地域包括支援センターに配置された認知症連携担当者が、若年性認知症者一人ひとりの状態や本人・家族等の要望を踏まえ、適切な支援施策の活用を支援

(3)若年性認知症者の発症初期から高齢期までの各期において、適切な支援につなぐため、都道府県等に若年性認知症自立支援ネットワークを構築するとともに、活用可能な施策等について広報・啓発を実施

(4)若年性認知症の身体機能やニーズにあったケアの研究のための若年性認知症ケア・モデル事業を実施

(5)介護報酬改定において、若年性認知症を受け入れた介護保険施設・事業所を評価する「若年性認知症利用者受入加算」を創設


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