第3 地方労働行政の展開に当たっての基本的対応

1 総合労働行政機関としての機能(総合性)の発揮

都道府県労働局が各地域における総合労働行政機関としての機能を発揮し、真に地域や国民からの期待に応えていくためには、労働基準行政、職業安定行政及び雇用均等行政がそれぞれの専門性を一層発揮しつつ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を意識し、労働保険適用徴収業務や総合労働相談業務も含め、労働条件の確保、雇用の安定、仕事と生活の調和の実現等の課題について、行政間の連携をより一層密にしていく必要がある。

このため、複数の行政分野による対応が求められている課題について、都道府県労働局内関係部室の連携、労働基準監督署内又は公共職業安定所内の関係部門間の連携を図り、都道府県労働局並びに労働基準監督署及び公共職業安定所(以下「局署所」という。)が一体となって機動的かつ的確な対応を図るものとする。また、特に本年4月から全面施行される改正後の短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「改正パートタイム労働法」という。)の施行について、各局に「改正パートタイム労働法施行本部」を設置し、各局の実情を十分踏まえつつ労働局長がリーダーシップを発揮し必要な応援体制を整備するなどその円滑かつ着実な施行を図る。

さらにまた、労働問題に関するあらゆる分野の相談については、総合労働相談コーナーにおいてワンストップで受け付け、必要に応じ労働基準監督署及び公共職業安定所(以下「署所」という。)等へ取り次ぐ。

加えて、それぞれの重点課題への対応に当たっては、他の行政分野において実施される集団指導、説明会など事業主や労働者が一堂に会する場を積極的に活用し、合同開催とするなど効果的・効率的な方策を講ずるものとし、そのため、局署所で実施を予定している行事等についての情報を共有・活用するよう努める。

以上の取組を推進するため、部局内の会議については、創意工夫を凝らした業務展開の在り方、行政間連携方策等を検討する場として機能するように活用する。

2 計画的・効率的な行政運営

(1)計画的な行政運営

局署所における行政運営に当たって、各行政分野の課題及び分野横断的な課題について的確に対応していくため、各地域の実情を踏まえた重点施策を盛り込んだ行政運営方針を策定し、これに基づいて計画的に行政運営を行う。

また、行政運営方針等に基づき、業務運営の進捗状況を定期的に分析し、当初の目標に沿った実施状況となっているかフォローアップを行う。

(2)行政事務の簡素合理化と業務運営の重点化

国の厳しい財政事情の中、行政が取り組むべき緊要な諸課題に的確に対応していくため、経済社会情勢の変化に対応した簡素で効率的な政府を実現することが求められており、地方労働行政もこうした趣旨を踏まえ、総合労働行政機関としての機能を最大限に発揮する一方で、行政事務の簡素合理化や効率化、重点化を図る必要がある。このため、

第一に、局署所において、これまでにも増して独自の工夫をこらして実効ある行政事務の簡素合理化を進める。

第二に、経済社会の構造的な変化に伴い、労働行政における課題が増大するとともに複雑困難化する中で、限りある行政資源を集中的に投入することで業務運営の重点化をより強力に推進する。

第三に、各地域の実情にも配慮しつつ都道府県労働局への業務の集中化を着実に実施することにより、行政事務を効率化する。

(3)既存の業務執行体制の在り方の見直し

経済社会情勢の変化等を踏まえ、業務の運営方法や職員の配置等の業務執行体制及び組織体制について積極的に見直しを進め、可能なものから逐次実施する。

(4)行政事務の情報化への対応

労働局総務情報システム(雇用均等行政情報システムを含む。以下同じ。)、労働基準行政情報システム及び職業安定行政システム等を積極的に活用して行政事務の情報化を推進する。

また、官庁会計事務データ通信システム(ADAMS)及び電子入札システムを活用して、会計事務及び入・開札事務の適正化、効率化を図るとともに、労働局総務情報システムのサブシステムである総合的文書管理システムの活用により、都道府県労働局の行政事務の一層の効率化を図る。

電子政府の推進にかんがみ申請・届出等手続の電子化への対応に関しては、都道府県労働局が所掌する申請・届出等手続について、インターネットを利用してオンラインで行える手続の周知に努めるとともに、的確な受付・審査により、国民の利便性・サービスの向上を図る。

情報セキュリティに関しては、「厚生労働省情報セキュリティポリシー」及び「都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所における厚生労働省情報セキュリティポリシーの運用指針」に十分留意の上、職員研修の的確な実施並びに本省所管システム及び都道府県労働局独自システムに係る各情報セキュリティ実施手順等に従った情報セキュリティの確保の徹底を図る。

3 地域に密着した行政の展開

(1)地域の経済社会の実情の的確な把握

地方労働行政を取り巻く情勢及び課題を適切に踏まえた施策を企画、実施し、地域における行政ニーズに適切に応えていくため、都道府県労働局においては、総合労働相談コーナーに寄せられた相談をはじめ各部室で得られた情報の共有・活用に努める。

また、各局の幹部を中心に以下(2)及び(3)で述べるような関係機関及び団体との連携を密にしつつ、地域経済情勢、地域における主要産業・企業の動向等を逐次、綿密に把握し、その分析の上に立った適切な行政課題を設定し、労働局全体として共通認識を持った対応を行うように努める。

(2)地方公共団体等との連携

地域活性化のためには、労働行政においても雇用対策をはじめとする諸施策を地域において効果的に実施していくことが必要である。そのため、多岐にわたる地域のニーズを、地域の視点に立って的確に把握するとともに、地方公共団体が実施する産業施策、福祉施策、教育施策等との緊密な連携を図ることとする。

具体的には、「労働関係連絡会議」において、これまで以上に労働施策関係情報をきめ細かく提供し、知事等都道府県幹部と労働施策全般にわたり意見交換するとともに、「雇用対策連絡調整会議」においては、地域の実情に即した雇用施策の推進に係る具体的な連絡調整、情報交換等を活発に行うこととする。また、職業安定部長を連絡責任者とする「労働分野における国と地方公共団体との連絡窓口」の活用等により相互の連携基盤を一層強化する。加えて、市町村との連携にも十分配慮する。

さらに、平成19年10月から施行された改正雇用対策法施行規則に基づき、地域の実情に合った機動的かつ効果的な雇用施策を実施するため、都道府県労働局においては、雇用施策実施方針を関係都道府県知事の意見等を十分踏まえて策定・実施するとともに、都道府県知事から当該方針に定める事項に係る要請があったときは、できる限りその要請に応じることとする。

また、地方公共団体に対する具体的な支援策の一例としては、地域雇用戦略チームの一員として、「地域における雇用創造のための事業構想」を策定しようとしている地域及び「地域における雇用創造のための事業構想」に基づく取組を既に実施している地域に対して、それらの地域における雇用創造の取組の効果がが目に見える形で表れるよう支援することとする。

このほか、地方再生戦略に基づく取組等他の地方支分部局等との連携にも十分配慮する。

(3)労使団体等関係団体との連携

地域における行政ニーズに即応した地方労働行政を展開するためには、労使団体の要望を適切に把握し、これを業務運営に的確に反映するとともに、都道府県労働局から労使団体に対して必要な働きかけを適時適切に行っていくことが必要である。このため、都道府県労働局長をはじめとする局の幹部が地域を代表する労使団体の幹部から率直な意見や要望を聞くとともに、幅広い闊達な意見交換を行う場である「地域産業労働懇談会」の開催や日常的な意見交換を通じて、労使団体との連携を図る。

また、地域の実情に応じた施策の効果的な推進を図るため、「地方労働審議会」において、公労使の意見をきめ細かく把握し、行政運営に的確に反映するよう努めるとともに、関係団体、有識者及び調査研究機関等とも緊密な連携を図る。

さらに、地方版円卓会議においては、事務局である都道府県労働局が中心となって、引き続き「成長力底上げ戦略推進円卓会議」での決定内容の周知及び都道府県における効率的な推進体制の構築に向けた地域社会全体の合意形成等に努め、国と地方、官民が一体となって成長力底上げ戦略を推進していくため地方自治体や労使団体等の関係機関・団体との連携を図る。

(4)積極的な広報の実施

広報活動は、労使はもとより国民全体の労働行政に対する理解と信頼を高めるために重要であることから、適切な時期・手段により、必要に応じ関係団体等との連携を図りつつ、創意工夫を凝らした広報活動を積極的に推進する。

特に、都道府県労働局において、局幹部とマスコミ関係者との定期的な懇談の場を設けることや、各行政における重要施策、法制度の改正等の動向及び主要な統計資料等を分かりやすく適時適切に提供すること等を通じて、マスコミとの日常的な接触に努める。

また、重要施策等の周知に当たっては、都道府県・市町村や労使団体の広報誌等を活用し、幅広くかつ効果的な広報活動を推進する。

さらに、各種施策の内容にとどまらず、政策目標や成果等をホームページ等を活用してアピールし、労働行政に対する国民の理解を深めるよう努める。

4 保有個人情報の厳正な管理及び情報公開制度・個人情報保護制度への適切な対応

(1)保有個人情報の厳正な管理

各労働局において定めている都道府県労働局保有個人情報管理規程に基づき、労働局で保有する個人情報の厳正な管理を徹底する。

また、労働行政で保有している個人情報は、個々人に密着した秘匿性の高い情報であり、厳格な保持が求められることを職員に十分理解させるため、研修等による意識啓発・注意喚起を行いつつ、事務処理の見直しにも積極的に取り組む。

(2)情報公開制度の適切かつ円滑な実施

「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」に基づく行政文書開示請求に対する事務処理に当たっては、「情報公開事務処理の手引」に基づき、適切な処理に努めることにより、適正かつ円滑な運用を図る。

特に、対象文書の特定及び具体的な不開示理由の付記について、その適切な処理に留意する。

また、都道府県労働局文書管理規程に基づく適切な文書管理に努め、行政文書ファイル管理簿及び同管理簿に記載する行政文書の管理の一層の適正化を図る。

(3)個人情報保護制度に基づく開示請求等への適切な対応

行政機関の保有する個人情報に対する開示、訂正及び利用停止請求に対しては、「行政機関個人情報保護法開示請求等の事務処理の手引」に基づき、適切な処理に努めることにより、適正かつ円滑な運用を図る。

特に、請求対象となる文書の特定について、企画室と文書所管課との間で十分な調整を行い、補正処理・開示決定通知等適切な処理を徹底する。

(4)雇用管理に関する個人情報の適切な取扱いに係る周知徹底

個人情報保護法並びに「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」及び「雇用管理に関する個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項について」に基づき、個人情報取扱事業者が保有する個人情報の適切な取扱いを行うよう周知・啓発の徹底を図るとともに、雇用管理に関する個人情報の取扱に係る苦情・相談への適切な対応、個人情報取扱事業者に対する助言・指導等行政指導を的確に実施する。

5 綱紀の保持と行政サービスの向上

(1)綱紀の保持

労働行政は、労使をはじめとする国民の信頼を得てこそ初めて業務が円滑に運営されるものであるが、会計検査院の全都道府県労働局に対する実地検査の結果、全ての労働局において不正又は不適正経理の指摘を受けたところであることから、不正経理等の再発防止、綱紀保持の徹底、適正な勤務時間管理及び超過勤務手当の支給等により、国民の信頼を回復するため、特に以下の点に万全を期する。

ア 国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程等を踏まえ、一層の綱紀の保持に努める。

イ 会計経理事務、徴収事務等金銭に関わる業務については、定められた事務処理手順の徹底、責任体制の明確化、職員相互の内部牽制体制の確立等による適正な事務処理の徹底を図る。特に、会計経理実務については、「都道府県労働局不正経理等防止対策要綱」の徹底及び「会計事務取扱マニュアル」を活用するとともに、「不正経理等再発防止チェックリスト」に基づき、局署所の管理者は、それぞれの所掌に応じて、再発防止策の実施状況等を定期的に点検・検証する。当該検証結果については、本省地方課の評価及び地方支分部局法令遵守委員会の意見が付された結果等を踏まえ、都道府県労働局法令遵守委員会において検討し、必要な措置を講ずる。

(2)行政サービスの向上

国民から信頼される行政を実現するためには、利用者の立場に立った親切で分かりやすい窓口対応、事務処理の迅速化等行政サービスの向上に努める必要があり、平成14年度から平成16年度まで「行政サービス向上総点検3カ年計画」として集中的に実施してきたところであるが、引き続き、窓口を中心に、職員の応接態度や事務処理の迅速化等行政サービスの改善に努める。


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