厚生労働省発表

平成20年2月25日

職業能力開発局能力評価課

課    長 小 林 洋 司

課長補佐 焼 山 正 信

電    話 03(5253)1111(内線5969)

夜間直通 03(3502)6958

中央職業能力開発協会

能力評価部次長   内 藤 眞紀子

評価制度開発課長 辻 本   明

電    話 03(5800)3689(直通)


「クレジットカード業」、「自動販売機製造・管理運営業」、
「DIY業」の職業能力評価基準が完成

(ポイント)

○ 現在、厚生労働省では「職業能力が適正に評価される社会基盤づくり」として、能力評価のいわば”ものさし”、”共通言語”となる職業能力評価基準の策定に取り組んでいる。
 これまで、経理・人事等の「事務系職種」に関する横断的な職業能力評価基準のほか、電気機械器具製造業、自動車製造業、ホテル業等30業種の職業能力評価基準が策定されたところである。

○ 「クレジットカード業」、「自動販売機製造・管理運営業」、「DIY業」の職業能力評価基準は、それぞれ業界団体との連携のもと、企業実務家や学識者からなる職業能力評価制度整備委員会において策定作業が進められ、今般報告書が取りまとめられた。
 同報告書においては、業界の職業能力や人材育成に関する状況が分析され、その結果を踏まえて職業能力評価基準が定められた。

○ 職業能力評価基準は職務遂行に必要な職業能力や知識に関し、担当者に必要とされる能力水準から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定している。また、単に知識があるということにとどまらず、職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述している。
 このため、職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針としての活用も期待される。

○ 現在、電気通信工事業、産業廃棄物処理業等幅広い業種において職業能力評価基準の策定を進めており、また、「事務系職種」の職業能力評価基準をはじめ、既に策定したもののメンテナンスを行っているところである。

○ なお、上記の報告書及び職業能力評価基準は、中央職業能力開発協会のホームページから入手可能である。[ 中央職業能力開発協会 http://www.hyouka.javada.or.jp

I クレジットカード業

1 クレジットカード業について

今回対象とした「クレジットカード業」は、商品やサービスの決済手段の一つとして日常生活に深く浸透している「クレジットカード」の発行、管理等を行う業種であり、職業能力評価基準は、「企画・管理」「営業」「信用・債権管理」「カスタマーサービス」の4職種を対象としている。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) クレジットカード業については、(社)日本クレジット産業協会(会長・前川 哲郎:(株)セントラルファイナンス相談役、加盟776社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・永井 猛:早稲田大学アジア太平洋研究センター大学院アジア太平洋研究科 教授)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、クレジットカード業の職種の区分を4職種とし、職業能力評価基準の策定を行った(図1参照)。
 具体的には、[1]会社全体に関わる業務の企画・立案または管理・運営を行う「企画・管理」、[2]営業計画を策定し、これに基づきカード会員及び加盟店を増やしカード利用を促進するための販促・顧客提案・折衝等を推進する「営業」、[3]クレジットカード事業に関する審査、与信、債権回収、不正使用のチェック・防止対策等を行う「信用・債権管理」、[4]コールセンターにおけるカード会員等からの問合わせ対応、お客様からのカードの申込等の書類対応など、顧客対応を行う「カスタマーサービス」の4職種について職業能力評価基準の策定を行った。

(3) クレジットカード業では、広い視野を持ち、創造性を備えた人材の確保の必要性が高まっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図1 クレジットカード業の職業能力評価基準の全体構成

図1 クレジットカード業の職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージでき るよう、クレジットカード業におけるレベル区分の目安を設定した(図2参照)。

図2 クレジットカード業のレベル区分の目安

レベル レベル区分の目安
レベル4 ・ 大規模または業績影響度の大きい組織の責任者として、組織目標や計画を設定し、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行いながら組織全体を統率するために必要な能力水準
レベル3 ・ 中小(一定)規模または業績影響度が通常(一定)程度の組織の責任者または高度専門職として、上位方針を踏まえて目標設定や組織運営、問題解決等を推進し、企業利益の創出に貢献するために必要な能力水準
レベル2 ・ グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして課題への対応策を主体的に考え、改善、提案等を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準
レベル1 ・ 担当者として、上位者の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準

4 クレジットカード業の職業能力評価基準の例

レベル1   レベル2   レベル3   レベル4
     
                 
              ユニット番号 33S035L33
選択
能力ユニット
  能力ユニット名 信用・債権管理業務の企画・統括
  概  要 信用管理・債権管理に関する方針の企画や業務統括など業務全般についての企画・管理を的確に推進する能力
 
 
   
                 
能力細目 職務遂行のための基準
[1]関連情報の把握と分析・判断 ○業界の最新動向や、自社の経営方針・事業戦略を把握している。

○信用・債権管理に関する社内マニュアル作りを進め、関連部門と連携しながら社内の信用・債権管理に関する取組方針を策定している。
○信用・債権管理に関わる法令を習得し、リーガルマインドを身に付けている。

○信用情報機関が保有する情報の妥当性・有効性を判断して、信用情報機関の選定を行っている。
[2]信用・債権管理 ○自社の事業戦略を踏まえて、売上と貸倒れリスクを勘案しながら、カード発行審査、信用限度額設定、債権回収等の基準を策定・見直ししている。
○自社の営業戦略や他社動向等を踏まえて、過去データを勘案しながら、手数料率を決定・見直しし、加盟店獲得を支援している。
○典型的な不正利用パターンを類型化し、要注意カードの判定基準を策定して、マニュアル化すると共に、担当者の指導に当たっている。
○不正利用情報や不審な利用状況などを熟知し、担当者による判定が難しい状況でも、個別に不正・不審な利用や入会申込であるかどうかの判断を下している。
○会員や加盟店への不正利用に対する啓蒙方針を定め、啓蒙時に使用するマニュアルを策定している。
○社内の関係部門と連携して貸し倒れ発生の情報を集めて分析・検討し、適切にフィードバックして貸し倒れの極小化を図っている。
[3]信用・債権管理方針の評価・検証 ○自社の事業戦略や業績を意識し、信用・債権管理の方針をどのようにするべきかを見直し・検討している。
○過去のデータを分析し、入会審査・信用限度額・手数料率・債権回収方法などに見直しをかけ、適切な基準を判断している。
○信用・債権管理業務が効率的になされているかを評価・分析し、組織体制や人材教育方針についてメンバーで議論・判断している。
○関係部門のキーパーソンと十分にコミュニケーションをとりながら、方針やマニュアル等の改善余地について検討している。
                 
●必要な知識            
1. 会員へのカード発行までの一連の流れ
・申込受付、審査、カード発行 等

2. 加盟店加入までの一連の流れ
・営業・申込受付、審査、端末設置 等

3. オーソリゼーション手続き

4. 信用情報機関

5. スコアリングシステム

6. 自動審査システム

7. 債権回収までの一連の流れ
・利用限度額
・カード利用後の引き落しタイミング
・支払い遅滞の発生

8. 支払い遅滞時のクレジットカードの取扱い
・一時ストップ、利用限度額減額、カード無効化 等

9. 債務者への対応方法
・回収交渉時対応
・返済約束不履行時対応
・他の債権者との共同回収方法
10. 債務者の返済能力の判断基準

11. 自社の経営戦略・営業戦略

12. 自社の債権管理部門の実態

13. カードの不正利用・犯罪例、虚偽申込例と対応方法

14. 個人情報保護
・個人情報の定義
・自社の個人情報取扱方針 等

15. 信用・債権管理に関連する法令知識
・貸金業規正法、民法 等

16. 債権管理・債権回収の法的対応方法

17. 社内の各部門のキーパーソン、連携方法

18. ナレッジマネジメント
・事例の類型化
・典型的パターンの共有 等

II 自動販売機製造・管理運営業

1 自動販売機製造・管理運営業について

(1) 今回対象とした「自動販売機製造・管理運営業」は、飲料自動販売機のメーカー(製造業)及びオペレーター(管理運営業)の業種である。

(2) メーカーについては、飲料自動販売機の開発・設計から製造に至るまでの一連の仕事を対象としている。一方、オペレーターについては、営業やルートセールスの仕事からメンテナンス、品質管理等の技術職までを対象としている。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) 自動販売機製造・管理運営業については、日本自動販売機工業会(会長・早川 芳正:サンデン(株)副会長、加盟76社)及び日本自動販売協会(会長・森 吉平:(株)アペックス代表取締役社長、加盟159社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・菊池 宏之:目白大学経営学部 准教授)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、自動販売機製造・管理運営業における専門性の高い職種として12職種について職業能力評価基準の策定を行った(図3参照)。
 具体的には、[1]新製品または製品改良の企画を行い、その仕様を定めて具体的な設計図面を仕上げる「企画・開発」、[2]生産ライン及び製造設備を企画・開発・設計する「生産技術」、[3]要求品質が十分に満たされていることを保証する「品質保証」、[4]自動販売機の原材料や部品等の形状・性質を変えることで要求機能を与える「加工」、[5]必要な機器及び部品を準備し、工具・機械等を用いて部品を組み立て、または、調整する「組立・調整」、[6]部品や製品の特性に関して測定、試験、検定を行い、規定・規格に適合しているか否かを判定する「検査」、[7]ユーザーや顧客から寄せられたクレームに対応し、自動販売機の修理・修繕を行う「修理」、[8]新商品の企画立案、市場調査、販促計画等を行う「販売企画」、[9]本社・支社または営業所において、ロケーションの開拓、維持管理等の営業活動を推進する「営業」、[10]営業所長または複数営業所を統括する支社・支店の部門長(エリア・マネジャー)として、個別営業所のマネジメントまたは担当エリア内の営業所の統括を行う「営業所管理」、[11]各営業所において、日常的な自動販売機の点検・清掃、商品・原材料の補充、売上回収等の業務を行う「ルートセールス」、[12]自動販売機の据付・調整、メンテナンス(保守・整備・オーバーホール)、品質管理、インスペクション等の技術関係業務を行う「技術」の12職種について職業能力評価基準の策定を行った。

(3) 自動販売機製造・管理運営業では、製品全体の幅広い知識を有する人材の育成が課題となっており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図3 自動販売機製造・管理運営業の職業能力評価基準の全体構成

図3 自動販売機製造・管理運営業の職業能力評価基準の全体構成 図3 自動販売機製造・管理運営業の職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準の策定に当たっては、これが職業能力を評価する基準であると同時に、労働者にとってキャリア形成上の指針となるように、役職等とそれに必要とされる職業能力の関係の実態に照らし、担当者に必要とされる能力水準(レベル1)から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準(レベル4)まで4つのレベルを設定している。

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、自動販売機製造・管理運営業におけるレベル区分の目安を設定した(図4参照)。

図4 自動販売機製造・管理運営業のレベル区分の目安

【自動販売機メーカー】
レベル レベル区分の目安
技術系 技能系
レベル4 マネジメント系 マネジメント系
・ 大規模または業績影響度の大きい組織(部など)の責任者として、組織目標を設定し、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行いながら組織を統率するために必要な能力水準 ・ 担当組織の責任者として、生産計画や組織目標を設定し、その達成に向けて組織全体を統率するために必要な能力水準
   
スペシャリスト系 スペシャリスト系
・極めて高度な専門技術を有し、担当分野における技術開発や問題解決等を通じて、企業利益を先導・創造するために必要な能力水準 ・ 極めて高度な熟練技能を有し、精密な作業を正確かつ効率的に行い、製品の高付加価値化に貢献する能力水準
(※高度熟練技能者に認定されるような技能水準)
レベル3 マネジメント系 マネジメント系
・ 中小規模または業績影響度が通常程度の組織(課など)の責任者として、上位方針を踏まえて担当組織の業務計画作成や管理運営を行うために必要な能力水準 ・ 係長・班長・職長等として、作業現場の管理・監督を行うために必要な能力水準
(※技能検定特級程度の能力)
   
スペシャリスト系 スペシャリスト系
・高度な専門技術を有し、担当分野における技術開発や問題解決等を通じて、企業利益を創出するために必要な能力水準 ・ 高度な熟練技能を有し、精密な作業を正確かつ効率的に行い、製品の高付加価値化に貢献する能力水準
(※高度熟練技能者に認定されるような技能水準)
レベル2 ・ グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準。
(※技能系については、技能検定1級程度の能力)
レベル1 ・担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。
(※技能系については、技能検定2〜3級程度の能力)
     
【自動販売機オペレーター】
レベル レベル区分の目安
レベル4 マネジメント系 スペシャリスト系
・ 業績影響度の大きい組織の責任者として、組織目標や生産計画を設定し、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行いながら担当組織全体を統率するために必要な能力水準 ・ 極めて高度な専門能力を有し、大口案件の開拓や担当業務における問題解決等を通じて企業利益を先導・創造するために必要な能力水準
・ 本社・支社の部レベル組織の長、または、複数の営業所を統括するエリア・マネジャーに求められるような能力水準 ・ ロケーションの開拓・維持において、安定的に大口顧客を獲得・維持したり、営業活動を円滑に推進するための仕組みづくりができる高度営業スペシャリストに求められるような能力水準
レベル3 マネジメント系 スペシャリスト系
・ 業績影響度が中程度の組織の責任者として、上位方針を踏まえて問題解決を図りながら組織の管理運営を行うために必要な能力水準 ・ 高度な専門能力を有し、営業活動や技術的課題の解決等を通じて企業利益の創出に貢献するために必要な能力水準
・ 本社・支社の課レベル組織の長、営業所の長、または技術部門の長等に求められるような能力水準 ・ ロケーションの開拓・維持において高い成果を上げる営業・マーケティングのスペシャリスト、品質・衛生管理やメンテナンスにおいて高度なスキルを発揮する技術スペシャリスト等に求められるような能力水準
レベル2 ・ グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準。
レベル1 ・ 担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。
4 自動販売機製造・管理運営業の職業能力評価基準の例
レベル1
スタッフ
  レベル2
シニア・スタッフ
  レベル3   レベル4
    スペシャリスト マネジャー   シニア・スペシャリスト シニア・マネージャー
                 
              ユニット番号 31S135L22
選択
能力ユニット
  能力ユニット名 ルート業務統括
  概  要 社内外向け報告書の作成やクレーム対応など難度の高い業務を自ら推進するとともに、ルート業務全体を統括・監督する能力
 
 
   
                 
能力細目 職務遂行のための基準
[1]ルート業務の統括 ○所長等と密接に連携し、営業所の方針や現状・動向に関する情報を正確に把握している。
○個々のルート担当者の担当地域や役割分担を決め、その日常業務を的確に統括・指導している。
○売上実績を踏まえて今後の課題や反省点を抽出し、今後のルート業務の計画や人員体制の構築に活かしている。
○自動販売機の調整方法、構造の概略、法規制の要点などを的確に指導している。
○担当ルートや地域の最新情報を収集し、業務改善につなげている。
○社外向け報告書の作成など高度な判断を要する業務を的確に遂行している。
[2]お客様対応・クレーム対応 ○自動販売機の改善提案を取りまとめ、上司に提案を行っている。
○クレーム対応、突発時対応など部下から指示を求められた場合には的確な判断を下している。
○重要なロケーション先に対しては自ら出向いて商品提案等の提案活動を行っている。
○部下の処理しきれないクレームを引き受け、適切に対処している。
[3]部下の管理・監督 ○自らの経験をもとにルートセールスの成功事例・失敗事例を体系化し、部下指導を行っている。
○過労や事故の防止など、労働安全衛生の観点から部下の労務管理を的確に行っている。
○部下に対して公平・公正に接している。
○部下が不適切な行動をとった場合には曖昧にすることなくきちんと是正指導している。
                 
●必要な知識                

1. 業界及び自社知識
・自動販売機オペレーターの収益構造
・主要自動販売機メーカー及びオペレーター
・業界専門用語 等
・自社の組織図、編成図、強み・弱み

2. 飲料自動販売機に関する知識
・自動販売機の種類と基本機能(缶・ペットボトル、カップ、パック(紙容器)等)
・中身商品及び中身商品メーカー
‐商品ブランド、世間一般の売れ筋商品、メーカーの強み、弱み等
‐日本標準商品分類 
・自動販売機設置自主ガイドライン
・自動販売機をめぐる諸問題(景観問題、省エネ・環境問題等)

3. ルート業務に関する知識
・ルートスケジュールの立て方
・ルートカーの運転方法、点検方法、道路交通法
・自動販売機の清掃方法、清掃手順
・自動販売機の動作チェック方法とチェックポイント
・携帯入力機器の操作方法
・マネジメント知識
・現金・伝票管理
・労務管理(労働基準法、安全衛生法、人事考課ルール等)
・教育・OJTの進め方

5. 自動販売機のメンテナンス方法に関する知識
・缶・ペットボトル、カップ、パック(紙容器)など自分の担当する自動販売機についての基本的なメンテナンス方法

6. 品質・衛生管理
・会社が定める品質・衛生基準
・デイリー・サニテーション作業の項目・内容及び手順

7. 環境・省エネ・リサイクル
・分別方法、回収方法
・会社の定めるリサイクル方針

8. お客様と接する際の基本的マナー
・挨拶の仕方、お詫びの仕方
・ビジネス文書の書き方、電子メールの出し方

9. コミュニケーション技術
・話し方、間の取り方
・敬語の使い方

10.車両運行管理、事故の回避法

11.現金管理(回収現金・照合)

12.商品管理(車両内・倉庫内)

13.データ分析に関する基礎知識

III DIY業

1 DIY業について

(1) 今回対象とした「DIY業」は、国民が自らの手で住まいをはじめとする日常の生活を豊 かにさせることができる道具、材料の販売等を行う業種であり、職業能力評価基準は、年間 売上高100億円までの企業を念頭に置きつつ、1千億円を超える企業の調査も行い、幅広 く多くの企業などで活用されるように柔軟な構成としている。

(2) 具体的には、主に本社(本部)業務を「営業企画」「商品開発・MD」「店舗開発」として、 店舗業務を「販売」「リフォーム」「物流管理」として、6職種に集約して設定している。

2 職業能力評価基準の策定までの経緯

(1) DIY業については、(社)日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会(会長・坂本 洋司:アークランドサカモト(株)代表取締役会長、加盟601社)との連携のもと、職業能力評価制度整備委員会(座長・稲葉 義郎:(社)日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会 参与)を設置し、検討を行った。

(2) 同委員会は、DIY業の職種の区分を6職種とし、職業能力評価基準の策定を行った(図5参照)。
 具体的には、[1]経営目標達成のために店舗における販売目標を設定し、その達成方法を計画・実行し、また、その実行を管理する「販売」、[2]顧客自らの手によるDIYリフォーム、顧客が商品・材料を選び、取付け・施工をプロに依頼するBIY(Buy It Yourself)リフォーム、商品・材料の調達から取付け・施工までのすべてをホームセンターが行うトータルリフォームなどのお手伝いを通じて、顧客に住まいの改善ノウハウや生活リフォームなどの提案を行う「リフォーム」、[3]個別店舗及び複数店舗における店舗運営並びに販売の支援を行う「営業企画」、[4]商品の企画・開発、調達から顧客に販売するまでを行う「商品開発・MD」、[5]新規出店のための調査や渉外を行う「店舗開発」、[6]顧客の需要に適合した商品供給の仕組みを管理・実施する「物流管理」の6職種について職業能力評価基準の策定を行った。

(3) DIY業では、顧客の立場に立った販売や顧客対応ができる人材が求められており、こうした現状も踏まえつつ職業能力評価基準が策定され、同委員会の報告書が取りまとめられた。

図5 DIYの職業能力評価基準の全体構成

図5 DIYの職業能力評価基準の全体構成
3 レベルの設定

職業能力評価基準全体に共通するレベル区分の考え方に沿いながら、より具体的にイメージできるよう、DIY業におけるレベル区分の目安を設定した(図6参照)。

図6 DIY業のレベル区分の目安

レベル区分 レベル区分の目安
レベル4 ・全社的な基準や制度の改正など、広範かつ統合的な判断および意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を遂行するために必要な能力水準
・顧客の意見やニーズを企業の施策に反映させ、事業展開や経営方針の企画・立案・決定に参画するために必要な能力水準
・安全・安心を常に顧客に提供できるようにリスク管理を行い、必要時の対応など、統括責任者の立場として業務を遂行するために必要な能力水準
レベル3 ・担当責任者として、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決などを行うことにより、企業利益を創出する業務を遂行するために必要な能力水準
・顧客の意見やニーズなどの情報を担当店舗などから収集し、店舗運営や商品購買など担当部門の責任者の立場として業務を遂行するために必要な能力水準
・安全・安心を常に顧客に提供できるようリスク管理を行い、必要時の対応など、担当責任者の立場で業務を遂行するために必要な能力水準
・担当地域の店舗運営や担当分野の商品購買など、担当部門における運営業務を遂行するために必要な能力水準
・自店舗や担当部門の業務遂行を管理するために必要な能力水準
レベル2 ・所属部門や担当売場の中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら業務を遂行するために必要な能力水準
・所属部門や担当売場において、職務を通じて顧客の意見を吸い上げ、ニーズを発見・整理したり、職場や売場環境の改善を上申するなど、積極的な業務を遂行するために必要な能力水準
・所属部門や担当売場を中心に、安全・安心を顧客に提供できるように配慮しながら業務を遂行するために必要な能力水準
レベル1 ・担当者として、上司の指示・助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準
・所属部門や担当売場において、職務を通じて顧客の意見などからニーズを発見し、通常の業務に反映できる能力水準
・所属部門や担当売場において、職務を通じて安全・安心を顧客に提供することを通常業務で配慮できる能力水準

4 DIY業の職業能力評価基準の例

レベル1   レベル2   レベル3   レベル4
     
                   
                  ユニット番号 32S033L34
                   
選択
能力ユニット
  能力ユニット名 リフォーム業務の管理
  概 要 DIYリフォーム、BIYリフォーム、トータルリフォームを通じて、顧客に住まいの改善ノウハウや生活リフォームなどの提案をし、リフォームの見積りから受注、契約、外注先業者の管理、工事完了、入金完了までの一連の業務を運営、管理する能力
 
 
   
                   
能力細目 職務遂行のための基準
[1]リフォーム営業の管理 ○リフォームに関する役割分担、スケジュールを確認し、必要な場合は部門内および他部門へ業務応援の依頼をしている
○リフォームの内容によっては、業務の役割分担を打ち合わせ、部門内へ対応計画作成の指示を行っている
○関係部門との調整を行い、ダイニングキッチンなのか、廊下床の貼り替えなのかなど、リフォームの領域を確認したうえで、整合された業務となるような体制づくりを部下や後輩に指導している
○部下の業務を確認し、顧客打ち合わせなどに対応できるように部下のスケジュール調整を行っている
○来店、訪問を問わず「見積書」には「打合せシート」を必ず添付し、必要に応 じて顧客にとって工事内容が分りやすい図面や「仕上表」を加えるように、あらかじめ準備することを徹底している
○商品部門や販売部門の責任者と連携して最新の見積データを入手、作成しリフォーム部門内で共有化するとともに、それを他物件に適用することの適切さを確認している
[2]リフォームの計画 ○必要に応じて報告された現場調査資料に基づく施工の概略計画を検討している
○原価低減によるコストロス防止を実現するために仕様の変更や設定に関する質問事項を抽出し、業者の工事計画に反映している
[3]リフォーム業務の管理 ○必要に応じて業者に算出させた施工数量を用いて見積書を作成し、該当リフォーム案件の工事利益を設定している
○採用単価の適正などを確認するとともに、業者に作成させた原価計算書などに基づいた原価管理を行っている
○自社の規定する手順や管理基準を確認し、それらを遵守した工事着手を業者に指示している
○会社が定めるリフォーム工事の手順や管理標準に従って工事に着手しているかを確認している
○工事現場での立会いにあたっては、業者に必要な予防処置を指示している
○顧客の満足を得ながら社内ルールにのっとった施工物件の引渡し、顧客からの工事完了証明書の受領および精算業務が行われていることを確認している
○収集された工事実績および発生データを分析し、他リフォーム工事に反映できるデータを抽出している
○共有化できるリフォーム工事の実績および発生データが確実に蓄積されていることを確認している
[4]リフォーム工事のアフターフォロー ○アフターメンテナンス・フォローサービスが顧客の満足を得ているかどうかを確認している
○リフォームに関する会社の過去施工物件の調査などにより、改修などの提案がなされていることを確認し、販売部門など関係部門との連携を図っている
○リフォーム工事に関する「お客様満足度調査」を部下に実施させ、DIYにおけるリフォーム工事の顧客満足の向上を目指している
                   
●必要な知識                

1.DIYにおけるリフォームに係わる知識(BIYリフォーム、トータリフォームなど)

2.必要帳票に関する知識(お客様シート、見積書、見積明細書、「注文書」または「工事請負契約書」、工事完了証明書、工程管理表など)

3.部位別リフォームに関する知識(ダイニング・キッチン、トイレ、バスルーム、洗面所、玄関、廊下、階段、和室、リビングルーム、屋根、外壁、エクステリア、造園など)

4.目的別リフォームに関する知識(バリアフリー・介護、防犯、防災、環境・省エネなど)

5.組織運営に関するリフォーム体制に関する知識
・会社にて規定された職務基準、施工条件、難易度の理解、顧客近隣対応作業方針
・専門工事業者に関する情報
・社内品質保証制度関連
・契約締結、竣工引渡し関連
・顧客満足度調査など

6.リフォーム業務実行に関する知識(構造物概要など元施工情報の入手、現地調査、定期点検、瑕疵検査の方法・建設瑕疵担保責任の基準、アフターチェックの内容、顧客・近隣への連絡調整、部位別耐用年数、施工に関する材料などの性能、施工条件に適合した施工方法と顧客への提案、不具合箇所の修理・修繕の技法など)

7.リフォーム業務に関する法令などの知識
・建設業法、独占禁止法などの建設に関する法規
・建築基準法、建築士法など構築物に関する法規
・産業廃棄物に関する法規など

8.リフォーム相談員に必要な知識
・住まいの構造及び工法についての知識
・リフォームに使用する商品・材料の知識
・自社で取扱うリフォームプロジェクトの工程知識・見積りから受注・契約・工事完了までに必要とする書類の書き方など


「職業能力評価基準」について

職業能力が適正に評価されるための社会基盤として、能力評価のいわば"ものさし"、"共通言語"となるよう「職業能力評価基準」を順次策定。

職業能力評価基準とは、

業種別、職種・職務別に、必要とされる能力を担当者から組織・部門の責任者に必要とされる能力水準まで4つのレベルを設定し整理・体系化。

・仕事をこなすために必要な「知識」や「技術・技能」に加えて、どのように行動すべきかといった「職務遂行能力」を記述。

・職務を確実に遂行しているか否かの判断基準となるよう、典型的なビジネスシーンにおける行動例を記述。

・業界団体との連携のもと、企業調査の実施による職務分析に基づき策定。

(職業能力評価基準を活用するメリット)

求職者・労働者にとって、職業選択やキャリア形成の目標を立てる際に、[1]自らの能力の客観的な把握、[2]企業が必要とする能力の把握が可能となり、職業能力の向上に向けた取組につなげることができる。

企業にとっては、人材に関する企業戦略を立てる際に、採用すべき人材の明確化人材育成への効果的な投資能力に基づいた人事評価・処遇等の導入・定着に関するスタンダードとして活用できる。

ハローワーク等の労働需給調整機関にとっては、労働者、企業の双方が職業能力を明確に示すことにより、雇用のミスマッチ解消につなげることができる。

教育訓練実施機関にとっては、職業訓練の対象者の能力レベル表示や修了時の能力評価を適切に行うことができる。

【企業における活用の取組みの例】

○ 人事制度・賃金・処遇制度の見直しや整備に活用

「新しい人事制度構築・導入の検討資料として活用している」(プラスチック製品製造業)

「賃金・処遇制度の見直し資料として活用した」(電機メーカー)

「自社制度との比較により、既存の職務遂行基準の見直しを行った」(スーパーマーケット業)

「自社は人事評価制度は無きに等しいので参考に活用したい」(鉄筋工事業)

「新規雇い入れ時のレベル判定基準として活用している」(建設業)

○ 能力開発・研修体系の見直しや整備に活用

「若手社員に対して具体的な目標の一つとして活用している」(建設業)

「社内能力開発制度の体系的整備のフレームとして活用している」(スーパーマーケット業)

「社員の教育訓練のガイドラインとして活用している」(電機メーカー)

【業界団体における活用の取組みの例】

○ スーパーマーケット業

職業能力評価基準に基づき、既存の業界内資格(=スーパーマーケット検定)を実際の職階やキャリアルートに即応した実践的な検定制度として再構築し、新たなスーパーマーケット検定を実施している。併せて企業内研修や個人の学習に利用するため、同検定の学習用教材を整備した。

○ 自動車製造業

職業能力評価基準の内容を基に、人事評価・処遇制度への活用の参考例となる「能力診断シート」を作成した。正規従業員の他、能力評価の必要性の高い期間工・派遣社員にも適用できるものであり、今後、人事評価制度等が未整備である中小零細企業も活用できるよう、普及促進に取り組む考え。(次頁参照)

(参考例)自動車製造業

人事評価・処遇制度への活用の参考例となる
「能力診断シート」を作成
(参考例)自動車製造業

職業能力評価基準策定状況

職業能力評価基準策定状況

「職業能力評価制度整備委員会活動報告書」
及び「職業能力評価基準」の入手先

広く活用を図るため、職業能力評価基準データを自由に閲覧・ダウンロードできるよう中央職業能力開発協会のHPにおいて公開を行っている。

○中央職業能力開発協会 能力評価部

〒112−8503 東京都文京区小石川1−4−1

住友不動産後楽園ビル

http://www.hyouka.javada.or.jp

(こちらよりダウンロードできます)

E-mail hyouka@javada.or.jp

TEL 03-5800-3689


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