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精神障害者の雇用の促進等に関する研究会報告書(概要)

精神障害者の雇用を進めるために
−雇用支援策の充実と雇用率の適用−


I 背景
   近年、精神障害者の社会参加が進み就業意欲が一層高まりをみせるとともに、企業に採用されてから精神障害になった者の雇用の継続も課題となっている。
 精神障害者の雇用支援策の整備が着実に進む一方で、精神障害者を雇用義務制度の対象とすることが、残された課題として指摘されている。
 本研究会は、これらの課題について、精神障害者の特性を踏まえた雇用支援策のあり方も含め、企業へのアンケート調査やヒアリング、医療関係者、就労支援関係者、当事者団体からのヒアリング等をまじえながら、調査、検討をかさねてきたが、このたびその結果をとりまとめた。


II 今後の雇用支援策のあり方
 1  在職精神障害者に対する雇用支援
 (1) 基本的な考え方
 精神障害者の雇用に伴う企業の負担感の緩和をはかることは、在職精神障害者の雇用の安定等に役立つことはもちろん、企業の精神障害者の雇用に対する理解の浸透、ひいては全体的な精神障害者の雇用の促進をもたらす。
 (2) 具体的な支援策の方向性
 地域障害者職業センターが本人および企業に支援をおこなう精神障害者職場復帰支援事業を積極的に展開する必要がある。
 また、企業が、主治医など外部機関との連携をはかりながら復職支援の中心となるスタッフを配置することに対して支援をおこなう必要がある。
 さらに、精神科医に対して産業医療についての理解の普及をはかり、企業むけ相談窓口の設置や地域障害者職業センターの在職精神障害者に対する支援機能の充実をはかる必要がある。

 2  雇用促進のための支援策
 (1) 基本的な考え方
 精神障害者の雇用機会を増大させるため、精神障害者の雇用に際しての企業の不安を払拭し、本人の円滑な職場適応をはかる観点から、実際の職場で訓練、ないしは試行的に雇用される機会をさらに増やすこととする。また、就職後も労働時間の配慮や生活面もふくめた相談支援をおこなうことにより、職場定着をはかることとする。
 (2) 具体的な支援策の方向性
 実際の職場での訓練機会を増やすため、特例子会社や重度障害者多数雇用事業所、社会適応訓練事業の協力事業所(職親)等を委託先とする委託訓練の活用をはかる必要がある。
 また、障害者試行雇用事業のさらなる拡充に努める必要がある。
 短時間労働に対する支援として、障害者雇用助成金が週15時間以上働く精神障害者を雇用する事業主も対象としており、その活用をはかる。また、精神障害者の雇用率適用をおこなうにあたっても、短時間労働者の雇用にかかる特例を設けることが適当である。
 さらに、障害者就業・生活支援センターの整備を一層進めるとともに、ジョブコーチの積極的な活用など、障害者職業センターの企業に対するサポート機能、調査研究、技法開発から各地域における支援といった各段階の支援体制を整備する必要がある。

III 精神障害者に対する雇用率制度の適用について
 1  雇用率適用のあり方
 精神障害者についても、将来的には、これを雇用義務制度の対象とすることが考えられるが、現段階では、本格的な実施の前にまずは、何らかのかたちで雇用を奨励し、精神障害者を雇用している企業の努力に報いるようなかたちをとることが適当である。
 すなわち、現行の雇用率制度では精神障害者を雇用していても実雇用率に算定されないが、これを算定することとするとともに、納付金制度も身体障害者、知的障害者と同様の取扱いにすることにより、採用後精神障害者をふくめ、精神障害者を雇用している事業主の努力を評価するかたちとする必要がある。

 2  雇用率適用に当たっての対象者の把握・確認方法
 精神障害者を実雇用率に算定するにあたっての対象者の把握・確認方法は、精神障害の特性をふまえ、疾病横断的かつ障害の継続について慎重な確認手段がもとめられる。
 また、プライバシーへの配慮や、公正、一律性、第三者機関によっておこなわれるべきこと等を考えると、精神障害者保健福祉手帳の所持をもって把握・確認し、実雇用率に算定することが適当である。
 なお、プライバシーに配慮した把握・確認のあり方について企業にとって参考となるものを示すとともに、手帳制度と職業リハビリテーションサービスの利用についての周知をはかっていく必要がある。

 3  将来展望
 当面は1に述べたような精神障害者の実雇用率への算定をおこない、また雇用支援策の充実を進めるなかで、精神障害者の雇用に対する企業の理解と雇用管理ノウハウの普及をはかることにより、身体障害者や知的障害者と同様、雇用義務制度の対象とする必要がある。


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