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厚生労働省発表
平成15年9月19日(金)
担当 労働基準局労災補償部補償課
職業病認定対策室
 室長  小池 廣治
 室長補佐  黒谷一郎
電話  5253−1111(内線5569)
夜間直通  3502−6750


石綿による疾病の認定基準の改正について


 石綿との関連が明らかな疾病として、「石綿肺」、「肺がん」及び「中皮腫(胸膜又は腹膜)」があり、当該疾病の労災認定については、昭和53年10月23日付け「石綿ばく露作業従事労働者に発症した疾病の業務上外の認定について」(以下「認定基準」という。)に基づき行ってきたところである。

 近年、中皮腫に係る医学的知見の進歩に加えて、その労災認定件数が、平成11年度25件、平成12年度35件、平成13年度33件と増加傾向にあり、また、認定基準に具体的認定要件を定めていない、心膜及び精巣鞘膜(せいそうしょうまく)の中皮腫の労災認定事例もあった。

 中皮腫の労災請求件数は、今後さらに増加することも予想され、このような事態への的確な対応及び迅速・適正な労災認定のために「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会」(以下「検討会」という。)を開催し、認定基準の見直し検討を行ってきたが、その検討結果が平成15年8月26日に取りまとめられた。

 この検討結果を踏まえて、認定基準を改正し、本日付けで「石綿による疾病の認定基準について」(以下「改正認定基準」という。)を厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あて通達したところである。

 厚生労働省では、改正認定基準に基づく、迅速・適正な労災認定が図られるよう、関係事業者及び労働者等への周知のためのパンフレットの作成配布、労災認定業務担当職員に対する研修の実施及び医療機関、医療関係者向けハンドブックの作成等により改正認定基準の周知を図ることとしている。

 改正認定基準における主な改正点は、別添1のとおりであり、また、検討会における検討結果の概要は、別添2のとおりである。



基発第0919001号
平成15年9月19日


都道府県労働局長 殿


厚生労働省労働基準局長
(公印省略)


石綿による疾病の認定基準について


 標記については、昭和53年10月23日付け基発第584号(以下「584号通達」という。)により示してきたところであるが、今般、「石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定基準に関する検討会」の検討結果を踏まえ、石綿にばく露した労働者に発症した石綿肺等の業務上外の認定に関し、下記のとおり認定基準を定めたので、今後の取扱いに遺漏のないよう万全を期されたい。
 なお、本通達の施行に伴い、584号通達は廃止する。

第1  石綿による疾病と石綿ばく露作業
 石綿による疾病
 石綿との関連が明らかな疾病としては、次のものがある。
(1)  石綿肺
(2)  肺がん
(3)  胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫
(4)  良性石綿胸水
(5)  びまん性胸膜肥厚
 石綿ばく露作業
 石綿ばく露作業の主なものには、次の作業がある。
(1)  石綿鉱山又はその附属施設において行う石綿を含有する鉱石又は岩石の採掘、搬出又は粉砕その他石綿の精製に関連する作業
(2)  倉庫内等における石綿原料等の袋詰め又は運搬作業
(3)  次のアからオまでに掲げる石綿製品の製造工程における作業
 石綿糸、石綿布等の石綿紡織製品
 石綿セメント又はこれを原料として製造される石綿スレート、石綿高圧管、石綿円筒等のセメント製品
 ボイラーの被覆、船舶用隔壁のライニング、内燃機関のジョイントシーリング、ガスケット(パッキング)等に用いられる耐熱性石綿製品
 自動車、捲揚機等のブレーキライニング等の耐摩耗性石綿製品
 電気絶縁性、保温性、耐酸性等の性質を有する石綿紙、石綿フェルト等の石綿製品(電綿絶縁紙、保温材、耐酸建材等に用いられている。) 又は電解隔膜、タイル、プラスター等の充填剤、塗料等の石綿を含有する製品
(4)  石綿の吹付け作業
(5)  耐熱性の石綿製品を用いて行う断熱若しくは保温のための被覆又はその補修作業
(6)  石綿製品の切断等の加工作業
(7)  石綿製品が被覆材又は建材として用いられている建物、その附属施設等の補修又は解体作業
(8)  石綿製品が用いられている船舶又は車両の補修又は解体作業
(9)  石綿を不純物として含有する鉱物(タルク(滑石)、バーミキュライト(蛭石)、繊維状ブルサイト(水滑石))等の取扱い作業
(10)  上記(1)から(9)の石綿又は石綿製品を直接取扱う作業の周辺等において、間接的なばく露を受ける可能性のある作業

第2  石綿による疾病の取扱い
 石綿肺(石綿肺合併症を含む。)
 石綿ばく露作業(前記第1の2の(1)から(10)までに掲げる作業をいう。以下同じ。)に従事しているか又は従事したことのある労働者(以下「石綿ばく露労働者」という。)に発生した疾病であって、じん肺法(昭和35年法律第30号)第4条第2項に規定するじん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺又は石綿肺に合併したじん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号)第1条第1号から第5号までに掲げる疾病(じん肺管理区分が管理4の者に合併した場合を含む。)は、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第1の2(以下「別表第1の2」という。)第5号に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 肺がん
(1)  石綿ばく露労働者に発症した原発性肺がんであって、次のア又はイに該当する場合には、別表第1の2第7号7に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 次の(ア)又は(イ)に掲げる医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あること。
(ア)  胸部エックス線検査、胸部CT検査、胸腔鏡検査、開胸手術又は剖検により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。
(イ)  肺組織内に石綿小体又は石綿繊維が認められること。
(2)  上記(1)のア及びイに該当しない原発性肺がんであって、次のア又はイに該当する事案は、本省に協議すること。
 上記(1)のイの(ア)又は(イ)に掲げる医学的所見が得られている事案
 石綿ばく露作業への従事期間が10年以上である事案
 中皮腫
(1)  石綿ばく露労働者に発症した胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫であって、次のア又はイに該当する場合には、別表第1の2第7号7に該当する業務上の疾病として取り扱うこと。
 じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 次の(ア)又は(イ)に掲げる医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること。
(ア)  胸部エックス線検査、胸部CT検査、胸腔鏡検査、開胸手術又は剖検により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。
(イ)  肺組織内に、石綿小体又は石綿繊維が認められること。
(2)  上記(1)のア及びイに該当しない胸膜、腹膜、心膜若しくは精巣鞘膜の中皮腫又は胸膜、腹膜、心膜及び精巣鞘膜以外の部位の中皮腫であって、次のア又はイに該当する事案は、本省に協議すること。
 上記(1)のイの(ア)又は(イ)に掲げる医学的所見が得られている事案
 石綿ばく露作業への従事期間が1年以上である事案
 良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚
 石綿ばく露労働者に発症した良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚については、石綿ばく露作業の内容及び従事歴、医学的所見、必要な療養の内容等を調査の上、本省に協議すること。
 なお、当該疾病が業務上と認められる場合には、別表第1の2第4号8に該当する業務上の疾病として取り扱うこととなる。


労働基準法施行規則別表第1の2第7号7
「石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫」
労災補償状況

  肺がん 中皮腫
胸膜 腹膜 胸膜、腹膜
平成4年度 9 14  
平成5年度 11 10
平成6年度 9 12
平成7年度 10 13
平成8年度 15 12
平成9年度 12 10
平成10年度 23 19
平成11年度 17 25 18 6 1
平成12年度 17 35 27 8
平成13年度 21 33 25 8


人口動態統計による死因別

ICD-10コード   平成7年 平成8年 平成9年 平成10年 平成11年 平成12年 平成13年
C45  中皮腫 500 576 597 570 647 710 772
356 420 451 429 489 537 574
144 156 146 141 158 173 198
C45.0 胸膜中皮腫 275 358 355 361 404 456 530
201 283 281 283 319 367 414
74 75 74 78 85 89 116
C45.1 腹膜中皮腫 51 45 48 62 48 54 61
35 23 31 39 27 30 35
16 22 17 23 21 24 26
C45.2 心膜中皮腫 6 8 5 3 5 4 6
3 5 3 2 4 3 5
3 3 2 1 1 1 1
C45.7 その他の部位の中皮腫 11 13 12 11 25 15 16
7 12 9 7 20 11 10
4 1 3 4 5 4 6
C45.9 中皮腫,部位不明 157 152 177 133 165 181 159
110 97 127 98 119 126 110
47 55 50 35 46 55 49

(出典:厚生労働省人口動態調査 平成7年〜平成13年各下巻 死亡第1表−2死亡数,性・死因(死因基本分類)別)

「中皮腫」は、ICD-10により平成7年から統計に加えられたものである。


業務上疾病に関する法令等

○労働基準法(昭和22年法律第49号)(抄)
〔療養補償〕
75条 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
(2)  前項に規定する業務上の疾病及び療養の範囲は、厚生労働省令で定める。
〔他の法律との関係〕
84条 この法律に規定する災害補償の事由について、労働者災害補償保険法(昭和22 年法律第50号)又は厚生労働省令で指定する法令に基づいてこの法律の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は、補償の責を免れる。
 (第2項 略)

○労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)(抄)
〔業務災害に関する保険給付の種類等〕
第12条の8(第1項 略)
(2)  前項の保険給付(傷病補償年金及び介護補償給付を除く。)は、労働基準法第75条から第77条まで、第79条及び第80条に規定する災害補償の事由が生じた場合に、補償を受けるべき労働者若しくは遺族又は葬祭を行う者に対し、その請求に基づいて行う。
 (第3項 略)

○労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)(抄)
35条 法第75条第2項の規定による業務上の疾病は、別表第1の2に掲げる疾病とする。

○別表第1の2(第35条関係)
 一〜三(略)

 四  化学物質等による次に掲げる疾病
 厚生労働大臣の指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)にさらされる業務による疾病であって、厚生労働大臣が定めるもの
 弗(ふっ)素樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂の熱分解生成物にさらされる業務による眼粘膜の炎症又は気道粘膜の炎症等の呼吸器疾患
 すす、鉱物油、うるし、タール、セメント、アミン系の樹脂硬化剤等にさらされる業務による皮膚疾患
 蛋(たん)白分解酵素にさらされる業務による皮膚炎、結膜炎又は鼻炎、気管支喘(ぜん)息等の呼吸器疾患
 木材の粉じん、獣毛のじんあい等を飛散する場所における業務又は抗生物質等にさらされる業務によるアレルギー性の鼻炎、気管支喘(ぜん)息等の呼吸器疾患
 落綿等の粉じんを飛散する場所における業務による呼吸器疾患
 空気中の酸素濃度の低い場所における業務による酸素欠乏症
 1から7までに掲げるもののほか、これらの疾病に付随する疾病その他化学物質等にさらされる業務に起因することの明らかな疾病

 五  粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症又はじん肺法(昭和35年法律第30号)に規定するじん肺と合併したじん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号)第1条各号に掲げる疾病

 六  (略)

 七  がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程における業務による次に掲げる疾病
 1〜6(略)
 7  石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫(しゅ)
 8〜18(略)

 八〜九(略)

○労働安全衛生法施行令
別表第三  特定化学物質等(第6条、第15条、第17条、第21条、第22条関係)
 一 (略)

 二  第二類物質
 1〜3(略)
 4  石綿(アモサイト及びクロシドライトを除く。)
 5〜37(略)

 三 (略)


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