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(別添1)

認定基準見直しの経過等について

 認定基準見直しの経過
 障害認定に関する認定基準は、身体の部位に応じて、眼、耳、鼻、口、神経系統の機能又は精神、醜状、胸腹部臓器、せき柱の変形及びその他の体幹骨、上肢、下肢に係る認定基準が定められている。
 これらの認定基準のうち、耳鼻咽喉科及び眼科の分野の検討は既に終了し、眼、耳、鼻及び口に係る認定基準も変更されている。
 なお、現在検討中のものは、整形外科の分野(せき柱の変形及びその他の体幹骨、上肢、下肢)の認定基準である。

2 神経系統の機能又は精神の障害の分野における主な検討内容
(1)非器質性精神障害
(1) 現行の認定基準においては、非器質性精神障害に関して外傷性神経症のみが想定され、その後遺障害を14級として規定しているが、平成11年9月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」が策定され、うつ病やPTSD等についても業務上の疾病として広く認定されるようになったことから、それらの後遺障害も含めて判断できる基準とすること。
(2) 障害認定を行う時期を明確にすること
(3) 障害の程度を判断する主要な項目を明確にすること
(4) 非器質性精神障害の特質を考慮した等級の格付けを行うこと
(2)脳の損傷又はせき髄の損傷による障害
 脳の器質的損傷による高次脳機能障害や脳の器質的損傷又はせき髄損傷による麻痺が生じた場合に適用する現行認定基準では、障害等級の判断を後遺障害の労働能力に及ぼす影響に関する総合的判断に委ねる等具体性に欠ける面があることから、基準をより明確なものにすること。
(3)その他の障害
 その他今日における医学的知見等に適合しない基準・表現等について改めること。

 精神・神経の障害認定に関する専門検討会の参集者
 参考3のとおり


(別添2)

「精神・神経の障害認定に関する専門検討会」の検討結果の概要について

1 非器質性精神障害
(1) 外傷性神経症にとどまらず、業務上の非器質性精神障害の後遺障害に関して広く適用できる基準に改めることが適当
(2) 非器質性精神障害は、基本的に業務による心理的負荷を取り除き適切な治療を行えば、多くの場合完治するのが一般的である。完治しない場合でも、各種の日常生活動作がかなりの程度できるようになり、相当程度の職種の制限はあるものの、一定の就労が可能となる程度以上に症状がよくなるのが一般的であるので、原則としてその時期をもって治ゆとし、障害等級を判断するのが適当
(3) 「抑うつ状態」等の精神症状の有無及び内容、身辺日常生活等の能力低下の有無及び程度から障害の程度を評価するが、具体的には就労の可否、就労に当たり必要な配慮の程度及び日常生活の支障の程度を踏まえて総合的に評価し、障害等級(9、12、14級)を決定するのが適当

2 脳の器質的損傷による障害
(1) 脳損傷による後遺障害については、その認定基準を明確にするため、障害の状態を高次脳機能障害(注1)と身体性機能障害(麻痺)に分け、それぞれの障害の程度を確認した上で、総合的に判断するのが適当
(2) 高次脳機能障害は、意思疎通能力、問題解決能力、作業負荷に対する持続力・持久力及び社会行動能力の4つの能力のそう失の程度(必要とされる支援の要否や程度)に着目して、障害等級(3、5、7、9、12、14級)を決定するのが適当
 ただし、重篤な高次脳機能障害により食事・入浴・用便・更衣や外出等に介護を要するものについては、介護の程度を踏まえて障害等級(1、2級)を決定するのが適当
(3) 身体性機能障害については、麻痺している身体の範囲や程度を判定した上で障害等級(1、2、3、5、7、9、12級)を決定するのが適当

 せき髄損傷による障害
 せき髄損傷による障害については、その認定基準を明確にするため、障害の程度を麻痺している身体の範囲や程度を判定した上で障害等級(1、2、3、5、7、9、12級)を決定するのが適当
 ただし、せき髄の損傷が生じた場合には、麻痺に加えて尿漏等の障害が通常生じるので、これらの障害を加味した障害等級とすることが適当

4 その他
(1) 外傷性てんかん
 現行認定基準は、発作の型のいかんにかかわらず、発作の頻度のみにより障害等級を規定しているが、発作の型によって労働能力に与える影響が大きく異なることから、発作の型と発作の頻度を考慮して障害等級(5、7、9、12級)を決定することが適当
(2) RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)(注2)
 近年著しい疼痛の原因として診断されることの多いRSDについては、現行認定基準において規定されていないが、外傷後に残る特殊な型の痛みとして慢性期における一定の要件((1)関節拘縮、(2)骨の萎縮、(3)皮膚の変化(皮膚温の変化、皮膚の萎縮))を満たすものについて、症状の程度に応じて障害等級(7、9、12級)を決定することが適当


 注1 高次脳機能障害が存する場合には、耳が聞こえても言葉を理解することができず、「会話をすることができないこと」等の症状を呈することがある。また、「段取りをつけて物事を行うことができない」、「仕事に対する意欲や注意の集中を持続することできない」、「突然興奮したり、怒り出す」等の症状を呈することがあり、労働能力のそう失をもたらす。

 注2 RSDとは、外傷後に生じる慢性疼痛であり、激しい痛みを生じることがある。


参考1

障害等級表(関係部分の抜粋)

第 1級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
(給付基礎日額の313日分を年金(年額)として支給)
第 2級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
(給付基礎日額の277日分を年金(年額)として支給)
第 3級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
(給付基礎日額の245日分を年金(年額)として支給)
第 5級 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
(給付基礎日額の184日分を年金(年額)として支給)
第 7級 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
(給付基礎日額の131日分を年金(年額)として支給)
第 9級 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
(給付基礎日額の391日分を一時金で支給)
第12級 局部にがん固な神経症状を残すもの
(給付基礎日額の156日分を一時金で支給)
第14級 局部に神経症状を残すもの
(給付基礎日額の56日分を一時金で支給)

※1 障害(補償)給付は、1〜7級までは年金として、9級以下は一時金としてそれぞれの障害等級に対応する給付基礎日額が支給される。
※2 給付基礎日額とは、給付額の算定の基礎となるものであり、原則として労基法第12条に定める平均賃金に相当する額をもってその額とするとされている。
 平均賃金に相当する額とは、原則として「算定すべき事由の発生した日以前3箇月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した」額のことである。


参考2

各等級に該当する障害の例

 非器質性精神障害
9級の例 「対人業務ができないもの」
12級の例 「元の職種又は同様の職種に就けるが、かなりの配慮が必要であるもの」
14級の例 「元の職種又は同様の職種に就くことができるが、多少の配慮が必要であるもの」

 高次脳機能障害
1級の例 重篤な高次脳機能障害により食事・入浴・用便・更衣等の日常生活動作ができず常時介護を要するもの
2級の例 重篤な高次脳機能障害のため自宅内の日常生活動作は一応できるが、自宅外の行動が困難で、随時他人の介護を必要とするもの
3級の例 「職場で他の人と意思疎通を図ることができないもの」
5級の例 「実物を見せる、やってみせる、ジェスチャーで示す、などの色々な手段とともに話しかければ、短い文や単語くらいは理解できるもの」
7級の例 「職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためには時々繰り返してもらう必要があるもの」
9級の例 「職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、意味を理解するためにはたまには繰り返してもらう必要があるもの」
12級の例 「職場で他の人と意思疎通を図ることに困難を生じることがあり、ゆっくり話してもらう必要が時々あるもの」

 脳損傷による麻痺
1級の例 両上肢及び両下肢を可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの(高度の四肢麻痺)
2級の例 一側の上肢及び下肢を可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの(高度の片麻痺)
3級の例 両上肢及び両下肢の麻痺により歩行できないもの(中等度の四肢麻痺)
5級の例 一下肢を可動させることができないもの又はこれに近い状態にあるもの(高度の単麻痺)
7級の例 一下肢の麻痺により「杖や硬性装具無しには階段を上ることができないもの」(中等度の単麻痺)
9級の例 一下肢の麻痺により「日常生活は概ね独歩であるが、不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの」(軽度の単麻痺)


参考3

精神・神経の障害認定に関する専門検討会の参集者


○精神科 原田 憲一 元東京大学医学部教授  【座長】
 小西 博行 小西メンタルクリニック院長
 佐々木 時雄 労災リハビリテーションセンター長野作業所長
○脳神経外科 馬杉 則彦 横浜労災病院副院長
 早川 徹 関西労災病院院長
 松谷 雅生 埼玉医科大学教授
○末梢神経外科 三上 容司 横浜労災病院整形外科部長


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