戻る

別紙

農薬危害防止運動実施要綱

第1 趣旨
 農薬の安全かつ適正な使用及び適切な保管管理の徹底は、農業生産の安定のみならず、国民の健康の保護及び生活環境の保全の観点からも極めて重要である。
 このため、従来から、農薬取締法(昭和23年法律第82号。以下「法」という。)及び毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)に基づく取締り等必要な施策の実施に努めてきたところである。
 また、近年、食品の安全性の確保に対する社会的関心が高まり、農薬の適正使用等についてもこれまで以上に強く求められるようになったことを踏まえ、この度、法改正を行い、安全に係る規制の強化を図ったところである。
 従って、これらの法令に基づく措置を周知徹底するとともに、農薬の性質等に関する正しい知識を広く普及させることにより、農薬による事故等の発生を極力防止し、国民生活の質的向上を図ることを目的として、農薬危害防止運動を実施する。

第2 名称
農薬危害防止運動

第3 実施期間
原則として、平成15年6月1日から同年6月30日までの1か月間とする。

第4 実施主体
国、都道府県並びに保健所を設置する市及び特別区

第5 実施事項
 国にあっては1の(1)に掲げる手続きを、その他の実施主体にあっては、次に掲げるすべての事項を実施する。
 なお、都道府県、市及び特別区が本運動を実施するに当たっては、地域の特性を生かした運動方針等を掲げた実施要領を作成し、関係機関及び関係団体が一体となった協力体制の整備を図るとともに、農薬使用者や地域住民の意見を採り入れ、運動の活発化を図るよう努める。
 普及啓発及び関係機関との連携等
(1) 広報誌等による普及啓発
 広報誌、ポスター、インターネット等多様な広報手段を活用するとともに、記事掲載の依頼等を通じ、報道機関の協力も得つつ、本運動の普及徹底を図る。また、関係法令等の趣旨の周知徹底を図るとともに、特に農薬散布者の不注意 等に起因する事故を未然に防止するため、散布作業従事者を対象として、別記「農薬による事故の主な原因及びその防止のための注意事項」の周知徹底を図る。あわせて、農薬の適正な使用や保管管理、中毒時の応急措置等について解説した資料を作成及び配布し、農薬に関する正しい知識の普及に努める。
(2) 児童及び生徒に対する本運動の趣旨の普及
 教育委員会の協力を得て、学校薬剤師等が中心となって管下の小学校の児童及び中学校の生徒に対し、本運動の趣旨の普及を図る。
(3) 講習会等の開催
 農薬使用者のほか、毒物劇物取扱業者、農薬販売者、ゴルフ場関係者等を対象に、農薬の適正な使用及び保管管理の方法、その危害の防止対策、事故発生時の応急措置、事故発生事例並びに関係法令等に関する講習会等の開催により、農薬の正しい知識の普及を図る。
 なお、農薬使用者に対する講習会については、農業者を中心とするよう配慮する。
(4) 医療機関等との連携
 関係医療機関等に対して、農薬の使用に伴う事故における症状及びその応急措置等の資料を配布し、万が一事故が発生した場合の処置体制を万全にするとともに、今後の事故防止対策に反映させる等の観点から、医療機関等に対し、事故内容等を速やかに報告して頂く様依頼するなど医療機関等との連携を密にし、事故の状況を的確に把握する。
 農薬の適正使用等についての指導等
(1) 農薬使用者のほか、毒物劇物取扱業者、農薬販売者、ゴルフ場関係者等を対象に、法や毒物及び劇物取締法に基づく立入検査等を実施し、無登録農薬の販売及び使用の取締り並びに使用基準に違反した農薬の使用の指導及び取締りを徹底するとともに、農薬の保管管理、処分等に関し、その適切な取扱いについて指導する。
 なお、この立入検査の実施に際しては、法に基づく検査にあっては別途定める立入検査実施要領に基づき、また、毒物及び劇物取締法に基づく検査にあっては毒物劇物監視指導指針に基づき、最近事故及び事件が多発している地区に対して、重点的に指導を行うなど、重点実施方針を策定の上、計画的に行うこととする。特に、販売者に対する立入検査の実施に際しては、農薬取締担当部局と毒劇物取締担当部局との間で相互の情報交換等を行うこととする。
(2) 農薬使用者等(農薬使用を委託する者を含む。以下同じ。)に対し、農薬を使用する者が遵守すべき基準(平成15年農林水産省・環境省令第5号。以下「農薬使用基準」という。)を遵守し、特に農薬危害防止のために次の事項の徹底を図るよう指導する。
 最終有効年月を過ぎた農薬を使用しないこと。
 航空機(航空法(昭和27年法律第231号)第2条第1項に規定する航空機をいう。)を用いて農薬を使用しようとする者は、農薬を使用しようとする区域(以下「対象区域」という。)における、風速及び風向を観測し、対象区域外に農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じること。
 住宅地周辺等において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するため、必要な措置を講じること。
 水田において止水を要する農薬(農薬使用基準別表第1に掲げる農薬をいう。)を使用するときは、当該農薬が流出することを防止するために必要な措置を講じること。
 土壌において被覆を要する農薬(農薬使用基準別表第2に掲げる農薬をいう。)を使用するときは、農薬を使用した土壌から当該農薬が揮散することを防止するために必要な措置を講じること。
 農薬の使用状況等が把握できるよう、次の事項について帳簿に記載するとともに、農薬の保管状況、使い残しの農薬及び空容器の処理状況、使用器具の管理状況等、万が一事故が発生したときの状況等を作業日誌等に記録すること。
(ア) 農薬を使用した年月日
(イ) 農薬を使用した場所
(ウ) 農薬を使用した農作物等
(エ) 使用した農薬の種類又は名称
(オ) 使用した農薬の単位当たりの使用量又は希釈倍数
(3) 農林水産航空事業の実施主体に対して、当該事業の実施に当たり、関係法令を遵守し、危被害の未然防止の徹底を図るよう指導する。
(4) 農薬使用者等に対し、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25年法律第175号)に基づき有機農産物の生産を希望する農家の生産ほ場周辺で作業する場合には農薬の適正な使用を徹底するよう指導する。
 散布作業従事者の健康管理に関する指導
 農薬の散布作業に従事する者に対し、その健康の管理に十分留意させるとともに、特に病害虫の共同防除に従事する者に対しては、作業の前後に必要に応じて健康診断を行うよう指導する。
 環境への危害防止対策
(1) 適宜、農薬使用場所周辺の公共用水域の水質の調査等を行い、その結果を活用して農薬使用者等を指導するとともに、農薬使用基準において定められた使用方法その他の事項の遵守の徹底に努め、魚介類の被害及び河川、水道水源等の汚染の防止等環境の保全を図る。
(2) 居住区域と近接した地域における農薬の散布作業に従事する者に対し、周辺住民の健康及び生活環境の保全に留意し、農薬の適正な使用方法を厳守するよう指導するとともに、周辺住民等に対しても農薬に対する正しい理解が得られるよう、必要な情報提供等に努める。
(3) 土壌くん蒸剤の臭化メチルについては、特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(昭和63年法律第53号)第20条第1項の規定に基づく特定物質の排出抑制・使用合理化指針に基づき、その使用量及び放出量の削減並びに代替薬剤や代替技術の円滑な導入・普及を強力に推進する。


別記

農薬による事故の主な原因及びその防止のための注意事項


1 農薬による事故の主な原因
 (1) 農薬の保管管理が不良であるため、老人、子供等が誤って飲んだこと。
 (2) 散布作業前日及び散布作業後に飲酒又は夜更かししたこと。
 (3) 病後,睡眠不足時等体調の優れない状態で散布作業に従事したこと。
 (4) 農薬用マスク、保護メガネ等の防護装備が不十分な状態で散布作業に従事したこと。
 (5) 炎天下で長時間散布作業に従事したこと。
 (6) 散布者の不注意により、散布途中で喫煙したこと又は散布後農薬が付着した手で食事をしたこと。
 (7) 防除機等の点検不備により薬液を浴びたこと。
 (8) 定められた使用方法以外の方法による散布等農薬を不適正な方法で使用したこと。

2 農薬による事故防止のための注意事項
 (1) 農薬の使用に当たっては、容器の表示事項等をよく読んで、安全かつ適正に使用すること。また、使用に関し不明な点がある場合は、病害虫防除所等に相談すること。
 (2) 毒物又は劇物に該当する農薬のみならず、全ての農薬について、安全な場所に鍵をかけて保管する等農薬の保管管理には十分注意すること。
 (3) 農薬を他の容器(清涼飲料水の容器等)へ移し替えないこと。
 (4) 散布作業前日及び作業後には、飲酒又は夜更かしをしないこと。
 (5) 体調の優れない、又は著しく疲労しているときは、散布作業に従事しないこと。
 (6) 農薬の調製又は散布を行うときは、農薬用マスク、保護メガネ等防護装備を着用し、かつ、農薬の取扱いを慎重に行うこと。
 (7) 散布に当たっては、事前に防除機等の十分な点検整備を行うこと。
 (8) 風下からの散布、水稲の病害虫防除の際の動力散粉機(多孔ホース噴頭)の中持ち等はやめ、農薬を浴びることのないように十分に注意すること。
 (9) 農薬を散布するときは、散布前に関係者に連絡し、必要に応じ立札を立てることなどにより、子供その他の散布に関係のない者が作業現場に近づかないよう配慮するとともに、居住者、通行人、家畜、蚕等に被害を及ぼさないよう、風向き等に十分注意すること。
 (10) 散布作業は、風の強くない、朝夕の涼しい時間を選び、2〜3時間ごとに交替して行うこと。
 (11) 農薬の散布によってめまいや頭痛が生じ、又は気分が少しでも悪くなった場合には、医師の診断を受けること。
 (12) 作業後は、手足はもちろん、全身を石けんでよく洗うとともに、眼を水洗し、衣服を取り替えること。
 (13) 使用残りの農薬を不注意に廃棄したり、不要になった農薬を放置したりすると、思わぬ事故を引き起こすことがあるので、その処理に当たっては関係法令を遵守して適正に行うこと。また、散布に使用した器具及び容器を洗浄した水は、河川等に流さず、散布むらの調整等に使用すること。特に、種子消毒剤等農薬の廃液処理に当たっては、周辺環境に影響を与えないよう十分配慮した処理を行うこと。
 (14) 農薬の空容器、空袋等の処理は、廃棄物処理業者に処理を委託する等により適切に行うこと。
 (15) クロルピクリン剤等土壌くん蒸剤の取扱いについては、表示された使用上の注意事項を遵守すること。また、薬剤が揮散し周辺に影響を与えないよう風向きなどに十分注意し、被覆を完全に行うこと。
 (16) 水田において止水を要する農薬(農薬使用基準別表第1に掲げる農薬をいう。)を使用するときは、農薬使用基準第7条及び水質汚濁性農薬の使用規制に関する都道府県知事の規則を遵守し、水田周辺の養魚池における淡水魚又は沿岸養殖魚介類の被害及び河川、水道水源等の汚染の防止等環境の保全に万全を期すること。


トップへ
戻る