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(3) 医療の基盤整備

  ≪将来像のイメージ≫

 (医療分野における情報化の推進)
(ア)電子カルテ等院内情報システムの整備が進むことにより、患者は、利便性が向上し、画面を見ながら分かりやすい説明を受けることができる。また、院内情報システムが事故防止に活用される。
(イ)安全に情報を伝送するためのセキュリティや個人情報保護の基盤を確保した上で、電子化された患者情報を共有するネットワークによる医療機関等の連携が進み、検査、投薬の重複防止などが図られるとともに、将来は、患者本人の同意の下で、生涯を通じた健康・医療情報の利用を可能とする環境の実現を目指す。
(ウ)診療報酬の請求の電子化を進め、医療機関等、審査支払機関及び保険者が連携したシステムを構築することにより業務の効率化を図る。

 (メディカル・フロンティア戦略の着実な推進等)
(エ)国民にとって健康上の大きな不安要因である、がん、心筋梗塞及び脳卒中(我が国の三大死因)、痴呆及び骨折(要介護状態の大きな要因)について、治療成績を向上させ、国民が安心できる医療を実現する。
(オ)がん、循環器病などの高度、専門的な国立医療機関であるナショナルセンターは、我が国の医療政策上の課題に適切に対応し、その先導的役割を果たす。

 (新しい医療技術の開発促進)
(カ)患者にとって、より有効で副作用の少ない医薬品、より非・低侵襲的で効率的な医薬品・医療機器が提供される体制を整備する。

 (医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化)
(キ)質の高い、安心・安全な医薬品・医療機器ができるだけ早く、合理的な価格で国民に提供できるよう、国際的に魅力ある市場環境の実現と我が国の医薬品・医療機器産業の国際競争力を強化する。

≪当面進めるべき施策≫

 V 生命の世紀の医療を支える基盤の整備

 (1)医療分野における情報化の推進
   (1) 「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」に沿って、電子カルテ、レセプト電子請求の普及目標の達成に向けて計画的に施策を推進する。
  【参考】
(a) 電子カルテシステム:
   ・2次医療圏に少なくとも1施設(平成16年度まで)
   ・全国の診療所の6割以上、400床以上の病院の6割以上(平成18年度まで)
(b) レセプト電算処理システム:
   ・全国の病院レセプトの5割以上(平成16年度まで)
   ・全国の病院レセプトの7割以上(平成18年度まで)
   (2) 医療に関する情報連携を進めるための共通の情報基盤となる用語・コードの標準化については、現在まで、病名、手術・処置名等の5分野について完成しており、さらに、症状・診察所見、生理機能検査名・所見、画像検査名・所見等の5分野を平成15年度中に完成させる。
   (3) 標準化された用語・コードの採用を電子カルテシステムの導入に対する補助の要件にするなど、その普及を推進する。
   (4) 電子カルテシステムや遠隔医療など医療のIT化の促進に向けて必要な支援等を講じる。
   (5) 医療に関する情報を電子的に交換するための基盤整備として、セキュリティを確保するため、患者情報にアクセスする資格を認証するシステム(電子認証システム)構築を目指す。
   (6) 医療機関等におけるレセプト電算処理システムの導入について必要な支援を行うとともに、オンライン請求の実用化に向けての基盤を整備する。また、用語・コードについて電子カルテシステムとの整合化を図るとともに、審査支払機関における審査の在り方を見直す。

 (2)メディカル・フロンティア戦略の着実な推進
   (1) 地域医療との連携を重視しつつ、先端的科学の研究を重点的に振興するとともに、その成果を活用し、予防と治療成績の向上を果たすため、平成13年度から17年度までの総合的な戦略である「メディカル・フロンティア戦略」を推進する。
  【メディカル・フロンティア戦略の概要】
平成17年までに次の戦略を達成する。
がん患者の5年生存率(治ゆ率)の20%改善
心筋梗塞・脳卒中の死亡率の25%低減(年間5万人以上)
自立している高齢者の割合を5年後に90%程度(現在約87%)に高め、疾病等により支援が必要な高齢者を70万人程度減らす。
   (2) 平成15年度において、(a)ゲノム科学やたんぱく質科学を用いた治療技術・新薬等の研究の推進、(b)疾病予防、健康づくり対策の推進、(c)質の高いがん医療の全国的な均てん、心筋梗塞・脳卒中の救急医療体制の整備の推進、(d)総合的な痴呆対策の推進と骨折による寝たきり予防対策の充実などを行う。

 (3)ナショナルセンターの整備
   (1) 国立がんセンター、国立循環器病センター、国立精神・神経センター、国立国際医療センター、国立成育医療センターにおける取組を引き続き推進するとともに、さらに、第6番目のナショナルセンターとして、高齢化の進展に伴い、高齢者に特有な疾病(痴呆、骨粗しょう症など)に関する高度先駆的医療の実施・研究体制を充実するため、平成15年度に国立長寿医療センター(仮称)を設置する。

 (4)新しい医療技術の開発促進
   (1) 高血圧、糖尿病、がん、痴呆等の患者と健康な者との間のたんぱく質の種類・量を比較し、疾患に特有のたんぱく質を同定し、データベース化することによって、画期的な医薬品開発を支援する。
   (2) バイオテクノロジー、IT、ナノテクノロジー等の先端技術を効率的に選択して組み合わせ、医学・工学・薬学分野を融合することによって、医療ニーズに合致した新しい医療機器の開発を推進する。
   (3) 国内における治験の空洞化を防ぐため、がんや循環器病などの疾患群ごとに複数の医療機関による大規模治験ネットワークを構築し、医療上必要な医薬品等の開発推進を図る。
   (4) 医薬品開発のための基盤技術研究や研究資源の供給を目的として、集中的、効率的な研究を推進し、研究成果を産業界へ速やかに移転するなどの産学官連携を推進するため、平成16年度に医薬基盤技術研究施設(仮称)を設置する。

 (5)医薬品・医療機器産業の国際競争力の強化
   (1) 医薬品については、魅力ある創薬環境の実現と産業の国際競争力の強化を目的とした「医薬品産業ビジョン」のアクションプランに基づき、今後5年間をイノベーション促進のための集中期間と位置付け、研究開発の促進、治験環境の充実、後発医薬品市場の育成、大衆薬市場の育成、流通機能の効率化・高度化などの施策を着実に実施する。
   (2) 医療機器についても、医薬品と同様に「医療機器産業ビジョン」に基づき、今後、分野を特定した重点的な支援を行うとともに、研究・開発から販売、使用に至る総合的な施策を着実に実施する。


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