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平成15年1月16日
厚生労働省食品保健部
南 監視安全課長
担当 道野、美上(内2477)

平成13年度食品からのダイオキシン類一日摂取量調査等の調査結果について

 食品からのダイオキシン類(ダイオキシン及びコプラナーPCB)の一日摂取量調査及び個別食品中のダイオキシン汚染実態調査等について、平成13年度の調査結果がまとまった。
 この調査は、平成13年度厚生科学研究「ダイオキシンの汚染実態把握及び摂取低減化に関する研究」(主任研究者:豊田正武国立医薬品食品衛生研究所食品部長:当時)により行われたものであり、当研究では、これらの調査のほか、食品中のダイオキシン類の迅速測定法に関する研究及び食品中のダイオキシン類のリスク低減に関する研究についても実施された。その概要は下記のとおりである。

目的
 ダイオキシン類の人への主な暴露経路の一つと考えられる食品について
(1) 平均的な食生活における食品からのダイオキシン類の摂取量を推計すること
(2) 個別の食品のダイオキシン類の汚染実態を把握すること
(3) 食品中のダイオキシン類測定の迅速化を図ること
(4) ダイオキシン類のリスク低減を図ること
方法
(1) ダイオキシン類の食品経由摂取量に関する研究(トータルダイエットスタディ)
 全国7地域の12機関で、それぞれ約120品目の食品を購入し、厚生労働省の平成11年度国民栄養調査の食品別摂取量表に基づいて、それらの食品を計量し、そのまま、又は調理した後、13群に大別して、混合し均一化したもの及び飲料水(合計14食品群)を試料として、「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」(平成11年厚生省生活衛生局)に従ってダイオキシン類を分析し、平均的な食生活におけるダイオキシン類の一日摂取量を算出した。
(2) 個別食品中ダイオキシン類濃度に関する研究
 個別食品として、国内産及び輸入食品合計111試料、並びに市販ベビーフード製品51試料について、(1)と同様にダイオキシン類を分析した。
(3) 食品中のダイオキシン類の迅速測定法に関する研究
 市販の魚中のダイオキシン類を迅速かつ高感度で測定する方法としてCALUX(Chemically Activated Luciferase Expression)アッセイについて検討した。
(4) ダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 CALUXアッセイ及びAhイムノアッセイを用いて、ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)によるAhレセプター活性化に対する植物性食品抽出物の抑制効果を検討した。
ダイオキシン類の調査項目
 従来通り、世界保健機構(WHO)が毒性等量を定めたポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)7種、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)10種及びコプラナーPCB (Co-PCB)12種の合計29種。
結果の概要
(1) 一日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)
 食品からのダイオキシン類の一日摂取量は、1.63±0.71pgTEQ/kgbw/日(0.67〜3.40pgTEQ/kgbw/日)と推定された。この数値は、12年度の調査結果(1.45±0.38pgTEQ/kgbw/日)と比べ、平均値はやや高かったが、標準偏差が大きいため、両年度間で差はないと考えられる。また、この数値は、日本における耐容一日摂取量(TDI)4pgTEQ/kgbw/日より低かった。
 以上のことから、平均的な食生活をしている日本人のダイオキシン類摂取量の推計値はTDI(4pgTEQ/kgbw/日)を下回っており、現在のところ、食品衛生上の問題はないと考えるが、今後も、食事からのダイオキシン類摂取割合の大きい魚介類、肉・卵類、乳・乳製品に重点を置きつつ、調査を継続する必要がある。

<表1 ダイオキシン類1日摂取量の地域別年次推移>
(単位:pgTEQ/kgbw/日)
地域 北海道
地区
東北地方 関東地方 中部地方
東北A 東北B 関東A 関東B 関東C 中部A 中部B
平成9年度 1.42 2.61 2.12 2.68 3.18 2.71
平成10年度 2.77 1.26 2.06 2.14 2.00 1.87
平成11年度 1.29 1.47 1.65 4.04 1.59 1.68 1.53 1.57
平成12年度 0.84 1.10 1.92 1.30 1.72 1.48 1.44 1.41
平成13年度 0.67 2.02 1.08 1.99 1.42 1.65

地域 中部地方 関西地方 中国四国地方 九州地方
中部C 関西A 関西B 関西C 中四国A 中四国B 中四国C 九州A 九州B
平成9年度 2.64 3.14 1.37 2.27
平成10年度 2.03 2.72 1.22 1.99
平成11年度 2.42 7.01 1.79 1.89 3.59 1.48 1.84 1.19
平成12年度 1.80 2.01 1.43 2.01 0.98 1.40 1.55 0.86
平成13年度 1.53 1.33 2.00 0.88 1.60 3.40
(注)  平成13年度調査において各地方でのサンプリングを実施した自治体は以下のとおり。なお、数値は各地方毎の食品別1日摂取量を用いて換算されたものである。表の左から、北海道地方:北海道、東北地方:宮城県、関東地方:埼玉県、東京都、横浜市、中部地方:石川県、名古屋市、関西地方:大阪府、兵庫県、中四国地方:山口県、香川県、九州地方:福岡県

<表2 ダイオキシン類一日摂取量の全国平均年次推移>
(4年間の調査結果)
  平成10年度 平成11年度 平成12年度 平成13年度
一日摂取量
(pgTEQ/日)
100.3
(61.3〜138.4)
112.6
(59.5〜350.7)
72.66
(42.1〜100.5)
81.47
(33.3〜169.9)
体重1kg当たりの
一日摂取量
(pgTEQ/kgbw/日)
2.01
(1.22〜 2.77)
2.25
(1.19〜 7.01)
1.45
(0.84〜 2.01)
1.63
(0.67〜 3.40)
数値は平均値、( )内は範囲を示す。なお、体重1kg当たりの一日摂取量は日本人の平均体重を50Kgとして計算している。

(2) 個別食品中のダイオキシン類濃度調査
 個別食品の測定結果は別添のとおりであった。
 なお、ベビーフード51品目については27品目が0.001pgTEQ/g未満であり、0.010pgTEQ/gを超えたのは5試料であった。ベビーフードは種類が多いことから、今後、魚類、肉類、乳製品等ダイオキシン類濃度が比較的高い食材から製造されたベビーフードを中心にさらに調査件数を増やしてデータを集積する。
(3) 食品中のダイオキシン類の迅速測定法に関する研究
 CALUXアッセイにより、市販魚中のダイオキシン類を高感度に測定することが可能であり、従来法(HRGC/HRMS分析)との良好な相関が得られ、スクリーニング法として適した性質を有する。また、従来法よりコストが安く(数分の1程度)、迅速(5日以内)に結果が得られ、多数検体にも応用可能なことから、食品、特に魚中のダイオキシン類のスクリーニング法として期待できる。ただし、PCB類の異性体が大量に共存した場合に偽陰性の結果を与える可能性があること等から、今後、より詳細なバリデーションデータの収集をはかる必要がある。
(4) ダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 ダイオキシン類のバイオアッセイ系に対する植物性食品抽出物の影響を検討した結果、ほうれんそう、こまつな等緑葉野菜、グレープフルーツ等柑橘類、セージ、クローブ、ペパーミント等にアッセイを阻害するような物質が含まれていることが明らかになり、ダイオキシン類のリスク低減への関連が示唆された。
今後の予定等
 平成14年度も、本研究事業を通じて食品からのダイオキシン類の一日摂取量及び個別食品中の汚染実態調査等を継続して実施する予定。
以上



【用語説明】

ダイオキシン類:

ダイオキシン及びコプラナーPCB

ダイオキシン:

ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)
ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)

コプラナーPCB(Co-PCB):

PCDD及びPCDFと類似した生理作用を示す一群のPCB類

トータルダイエットスタディ:

通常の食生活において、食品を介して化学物質等の特定の物質がどの程度実際に摂取されるかを把握するための調査方法。飲料水を含めた全食品を14群に分け、国民栄養調査による食品摂取量に基づき、小売店等から食品を購入し、必要に応じて調理した後、各食品群ごとに化学物質等の分析を行い国民1人あたりの平均的な1日摂取量を推定するもの。

TEF(毒性等価係数):

ダイオキシン類は通常混合物として環境中に存在するため、様々な同族体のそれぞれの毒性強度を、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TCDDの毒性を1とした毒性等価係数(TEF:Toxic Equivalency Factor)を用いて表す。なお、今回は1997年にWHOで再評価された最新のTEFを用いている。

TEQ(毒性等量):

ダイオキシン類は通常混合物として環境中に存在するので、摂取したダイオキシン類の毒性の強さは、各同族体の量にそれぞれのTEFを乗じた値を総和した毒性等量(TEQ:Toxic Equivalent Quantity)として表す。

TDI(耐容一日摂取量):

長期にわたり体内に取り込むことにより健康影響が懸念される化学物質について、その量まではヒトが一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される一日当たりの摂取量。ダイオキシン類のTDIについては、1999年6月に厚生省及び環境庁の専門家委員会で、当面4pgTEQ/kgbw/日(1日に体重1kg当たり4pgTEQの意味。体重50kgの人であれば、4pgTEQ×50kgで計算し、TDIは200pgTEQとなる。)とされている。


(別添)

表1 平成13年度 食品中のダイオキシン類の濃度(pgTEQ/g)

食品 産地 ダイオキシン類(pgTEQ/g)
PCDDs+PCDFs Co-PCB Total
魚介類
その加工品
(*:加工品)
いか 輸入 <0.001 0.001 0.001
いか 輸入 0.010 <0.001 0.010
いかなご(生) 国産 0.190 0.466 0.656
いかなご(生) 国産 0.011 0.205 0.216
いかなご(釜揚げ)* 国産 0.916 1.692 2.608
うなぎ 国産 0.143 0.162 0.305
うなぎ 国産 0.383 0.359 0.742
うなぎ 国産 0.160 0.616 0.776
かたくちいわし 国産 0.389 0.534 0.923
かたくちいわし 国産 0.431 0.887 1.318
かたくちいわし 国産 0.393 0.413 0.806
かに 国産 1.407 0.994 2.401
かに 国産 0.014 0.047 0.061
すけとうたら 国産 0.007 0.061 0.068
すけとうたら 国産 0.009 0.059 0.068
たこ 輸入 0.041 0.037 0.078
ぶり  国産 0.206 0.510 0.716
ぶり 国産 0.307 1.038 1.344
にじます 国産 0.070 0.507 0.577
にじます 国産 0.462 0.813 1.276
まぐろ 輸入 0.005 0.021 0.026
まぐろ     輸入 0.005 0.129 0.134
まぐろ   輸入 0.170 0.751 0.921
わかさぎ 国産 0.162 0.221 0.383
わかさぎ 国産 0.047 0.092 0.139
金目鯛開き* 国産 <0.001 0.025 0.025
金目鯛開き* 国産 0.094 0.373 0.466
金目鯛開き* 国産 0.330 0.520 0.850
塩さば* 輸入 0.214 0.834 1.048
塩さば* 輸入 0.277 0.882 1.159
塩さけ* 輸入 0.047 0.112 0.159
塩さけ* 輸入 1.861 4.235 6.096
かまぼこ* 国産 <0.001 0.001 0.001
かまぼこ* 国産 <0.001 0.001 0.001
ししゃも* 国産 0.237 0.192 0.429
しらす(釜揚げ)* 国産 0.264 0.332 0.596
しらす(釜揚げ)* 国産 0.072 0.132 0.204
しらす(干し)* 国産 0.092 0.583 0.675
するめ* 国産 0.022 0.012 0.034
するめ* 国産 0.269 0.386 0.655
ほっけ開き* 国産 0.167 0.253 0.420
ほっけ開き* 国産 0.543 0.955 1.498
めざし* 国産 1.052 1.303 2.355
めざし* 国産 1.083 2.435 3.518
赤貝味付缶詰* 国産 0.026 0.022 0.048
赤貝味付缶詰* 国産 0.450 0.160 0.610
いわし味付缶詰* 国産 0.005 0.019 0.024
いわし味付缶詰* 国産 0.308 0.446 0.754
いわし甘露煮* 国産 0.282 0.411 0.694
いわし甘露煮* 国産 0.237 0.383 0.620
畜産食品 牛タン 国産 0.197 0.073 0.269
手羽先 国産 0.006 0.053 0.059
手羽先 国産 0.025 0.081 0.106
手羽先 国産 0.035 0.025 0.060
馬肉 国産 1.230 0.555 1.785
コンビーフ 輸入 0.044 0.026 0.070
サラミ 輸入 0.039 0.018 0.057
サラミ 輸入 <0.001 0.024 0.024
ボンレスハム 国産 <0.001 <0.001 <0.001
ボンレスハム 国産 0.005 <0.001 0.006
鶏卵 国産 0.072 0.090 0.162
鶏卵 国産 0.024 0.040 0.064
乳製品 マーガリン 国産 0.005 0.001 0.006
マーガリン 国産 0.003 <0.001 0.003
マーガリン 国産 0.003 <0.001 0.003
ヨーグルト 国産 0.020 0.011 0.031
ヨーグルト 国産 0.005 0.001 0.006
ヨーグルト 国産 0.021 0.011 0.032
穀類,豆類 国産 <0.001 <0.001 <0.001
国産 <0.001 <0.001 <0.001
国産 <0.001 <0.001 <0.001
小豆 国産 <0.001 <0.001 <0.001
野菜,果実 キャベツ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
キャベツ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
しめじ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
たけのこ 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
ブロッコリー 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
ブロッコリー 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
ブロッコリー 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
山芋 国産 <0.001 <0.001 <0.001
いちご 国産 <0.001 <0.001 <0.001
キウイフルーツ 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
調味料
(砂糖・味噌を含む)
砂糖 国産 <0.001 <0.001 <0.001
砂糖 国産 <0.001 <0.001 <0.001
しょうゆ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
しょうゆ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
国産 <0.001 <0.001 <0.001
国産 <0.001 <0.001 <0.001
ドレッシング 国産 0.001 <0.001 0.001
ドレッシング 国産 0.001 <0.001 0.001
味噌 国産 <0.001 <0.001 <0.001
味噌 国産 <0.001 <0.001 <0.001
味噌 国産 <0.001 <0.001 <0.001
嗜好飲料 コーラ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
コーラ 国産 <0.001 <0.001 <0.001
日本酒 国産 <0.001 <0.001 <0.001
日本酒 国産 <0.001 <0.001 <0.001
ビール 国産 <0.001 <0.001 <0.001
ビール 国産 <0.001 <0.001 <0.001
ワイン 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
ワイン 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
その他 アーモンド 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
プルーン(乾燥) 輸入 0.001 <0.001 0.001
海苔(乾燥) 国産 0.188 0.001 0.190
うどん 国産 <0.001 <0.001 <0.001
うどん 国産 <0.001 <0.001 <0.001
ビスケット 国産 0.001 <0.001 0.001
コーヒー豆 輸入 <0.001 <0.001 <0.001
漬物 国産 <0.001 <0.001 <0.001
漬物 国産 0.001 <0.001 0.001
漬物 国産 <0.001 <0.001 <0.001



表2 平成13年度 ベビーフード中のダイオキシン類の濃度(pgTEQ/g)

食品 メーカー ダイオキシン類(pgTEQ/g)
PCDDs+PCDFs Co-PCB Total
飲料 イオン飲料 A <0.001 <0.001 <0.001
イオン飲料 B <0.001 <0.001 <0.001
麦茶 B <0.001 <0.001 <0.001
イオン飲料 B <0.001 <0.001 <0.001
イオン飲料 C <0.001 <0.001 <0.001
イオン飲料 D <0.001 <0.001 <0.001
果実・野菜
加工品
コーンスープ E 0.037 0.023 0.060
コーンスープ D <0.001 0.001 0.001
野菜スープ D <0.001 <0.001 <0.001
りんご E <0.001 <0.001 <0.001
もも E <0.001 <0.001 <0.001
りんご F <0.001 <0.001 <0.001
プリン(バナナ) F <0.001 <0.001 <0.001
ヨーグルト(フルーツ) F <0.001 <0.001 <0.001
ご飯もの おじや(野菜) F <0.001 <0.001 <0.001
ごはん(野菜) G <0.001 <0.001 <0.001
おじや(かれい,わかめ) F <0.001 <0.001 <0.001
かゆ(しらす) F <0.001 0.001 0.001
ドリア(白身魚,チーズ) F <0.001 0.001 0.001
おじや(肉,野菜) F <0.001 <0.001 <0.001
チキンライス F <0.001 0.001 0.001
炊き込みごはん(五目) F <0.001 0.001 0.001
炊き込みごはん(鶏肉,ごぼう) F 0.003 0.001 0.004
チャーハン(しらす) F 0.006 0.023 0.029
炊き込みごはん(鶏肉,野菜) D <0.001 <0.001 <0.001
ドリア(鮭,野菜,チーズ) D <0.001 0.001 0.001
かゆ E <0.001 <0.001 <0.001
チャーハン(豚肉,野菜) D <0.001 0.001 0.001
ごはん(牛肉,野菜) E <0.001 <0.001 <0.001
麺類 煮込みうどん(野菜) G <0.001 <0.001 <0.001
煮込みうどん F <0.001 <0.001 <0.001
煮込みうどん(鶏肉) F <0.001 <0.001 <0.001
煮込みうどん(野菜) D <0.001 <0.001 <0.001
煮込みうどん E <0.001 0.001 0.001
煮込みうどん(牛肉) F 0.001 <0.001 0.001
カレー・シチュー 野菜入りカレー F <0.001 0.001 0.001
野菜入りカレー G <0.001 <0.001 <0.001
シチュー(肉,野菜) E <0.001 <0.001 <0.001
シチュー(牛肉) D <0.001 <0.001 <0.001
シチュー(ひらめ,野菜) D 0.001 <0.001 0.001
その他
(おかずもの)
煮物(かれい,だいこん) F <0.001 0.020 0.020
煮物(つみれ,野菜) F <0.001 0.001 0.001
シチュー(エビ,野菜) E <0.001 <0.001 <0.001
煮物(さかな,野菜) H 0.006 0.001 0.007
煮物(白身魚,野菜) B <0.001 0.005 0.005
煮物(鶏肉,里芋) F <0.001 0.001 0.001
煮物(豆腐,五目) E <0.001 <0.001 0.001
煮物(レバー,野菜) E 0.009 0.013 0.023
おやつ ボーロ F <0.001 0.001 0.001
ビスケット D 0.002 0.002 0.004
ボーロ D 0.006 0.012 0.018



厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)
総括研究報告書

ダイオキシンの汚染実態把握及び摂取低減化に関する研究

主任研究者  豊田正武 国立医薬品食品衛生研究所 食品部長

研究要旨

 ダイオキシン類による食品汚染実態および食事経由摂取量を把握するための調査研究を実施するとともに,ダイオキシン類の摂取低減化を図ることおよびダイオキシン測定の迅速化を目的として,下記の4課題の研究を実施した.

(1-1)ダイオキシン類のトータルダイエット調査
(1-2)食品におけるダイオキシン類の迅速測定法開発に関する研究
(2)個別食品のダイオキシン類汚染実態調査
(3)食品中のダイオキシン類のリスク低減に関する研究
 (1-1)では,トータルダイエット調査を実施し,食事経由ダイオキシン類1日摂取量の全国平均が1.63 pgTEQ/kgbw/dayであることを明らかにした.
 (1-2)では,CALUX(Chemically Activated Luciferase Expression)アッセイが市販魚中ダイオキシン類毒性等量を推測するスクリーニング法として適した性質を有していることを明らかにした.
 (2)では,魚介類,野菜等各種の国内産および輸入食品,および市販ベビーフード製品中のダイオキシン類を分析し,汚染実態を明らかにした.
 (3)では,ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)によるAhレセプターの活性化に対する食品の抑制効果について,CALUXアッセイおよびAhイムノアッセイを利用して検討し,ハーブのセージ,ホウレン草などの緑葉野菜および柑橘類の抽出物がAhレセプター活性化に対する抑制効果を示すことを明らかにした.

分担研究者
豊田正武国立医薬品食品衛生研究所
食品部長
佐々木久美子国立医薬品食品衛生研究所
食品部第一室長
飯田隆雄福岡県保健環境研究所
保健科学部長

A.研究目的

 本研究では,ダイオキシン類による食品汚染実態および食事経由摂取量を把握するための調査研究を行うとともに,ダイオキシン類の摂取低減化を図ることおよびダイオキシン類測定の迅速化を目的として,次の4課題の研究を実施した.

(1-1)ダイオキシン類のトータルダイエット調査
(1-2)食品におけるダイオキシン類の迅速測定法開発に関する研究
(2)個別食品のダイオキシン類汚染実態調査
(3)食品中のダイオキシン類のリスク低減に関する研究

B.研究方法

分担研究(1-1)
 全国7地域の12機関で,それぞれ約120品目の食品を購入し,厚生労働省の平成11年度国民栄養調査の食品別摂取量表に基づいて,それらの食品を計量し,そのまままたは調理した後,13群に大別して,混合し均一化したものを試料とした.さらに第14群として飲料水を試料とした.これらについて,「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」 に従ってダイオキシン類を分析し,1日摂取量を算出した.

分担研究(1-2)
 CALUX(Chemically Activated Luciferase Expression)アッセイ(ルシフェラーゼ遺伝子を導入した培養細胞を利用したレポータージーンアッセイ)の,市販魚中のダイオキシン類測定への適用性を検証し,最適化した条件で市販魚を測定し,従来法であるHRGC/HRNMSによる測定結果と比較した.

分担研究(2)
 東京,大阪および福岡で採取した国内産食品,および輸入食品合計111試料,並びに市販ベビーフード製品51試料について,「食品中のダイオキシン類測定方法ガイドライン」に従ってダイオキシン類を分析した.

分担研究(3)
 CALUXアッセイおよびAhイムノアッセイを用いて,ダイオキシン(2,3,7,8-TCDD)によるAhレセプター活性化に対する各種の植物性食品抽出物の抑制効果を測定した.


C.結果および考察

分担研究(1-1)
 日本人の平均的なダイオキシン類1日摂取量は,検出限界以下の異性体濃度をゼロとして計算した場合,1.63±0.71 pgTEQ/kgbw/day(範囲0.67〜3.40 pgTEQ/kgbw/day)であり,検出限界以下の異性体濃度を検出限界値の1/2として計算した場合,2.59 pgTEQ/kgbw/dayであることを明らかにした.これらの値は,12年度の調査結果(それぞれ1.45±0.38 pgTEQ/kgbw/day,および2.39±0.40 pgTEQ/kgbw/day)と大きな差は認められず,また,日本におけるTDI(4 pgTEQ/kgbw/day)より低かった.

分担研究(1-2)
 CALUXアッセイを利用し,市販魚中のダイオキシン類測定を試みた結果,本法により市販魚中のダイオキシン類を高感度に測定できることが分かった.CALUXアッセイによる測定結果は従来法であるHRGC/HRMSによる分析結果と良好な相関が得られ,毒性等量を推測するスクリーニング法として適した性質を有していた.CALUXアッセイは従来法に比べ,コストが安く,また迅速に結果が得られ,多数検体にも応用可能なことから,食品中のダイオキシン類のスクリーニング法として期待できる結果であった.

分担研究(2)
 生鮮魚類から平均0.600 pgTEQ/gのダイオキシン類が検出されたが,過去2年の調査結果より低い値であったが,調査対象魚種が年度によって異なることから,経年変化ととらえることはできない. 植物性食品,嗜好飲料中のダイオキシン類濃度は0.001 pgTEQ/g未満のものが多かった.検出された場合も動物性食品に比べて低い値であった.  市販ベビーフードでは,ダイオキシン類濃度が0.001 pgTEQ/g未満のものが約半数(27試料)であった.0.010 pgTEQ/g以上検出されたものは5試料であり,最高値は0.060 pgTEQ/gであった.市販ベビーフードについて今回得られた値は一般の野菜中のダイオキシン類濃度に近かった.

分担研究(3)
 ハーブのセージ,ホウレン草などの緑葉野菜および柑橘類の抽出物が,2,3,7,8,-TCDDによるAhレセプター活性化に対して抑制効果を示した.セージはコントロールと比較してCALUXアッセイで79%、Ahイムノアッセイで83%の抑制効果を示し,今回供試した試料の中で最も効果が強く,その効果は濃度依存的であった.インビトロでのデータではあるが,いくつかの植物性食品にはAhレセプターの活性化を抑制するファクターの存在が示唆された.


D.結論

 4課題について研究し,下記の成果を得た.

(1-1)トータルダイエット調査により,ダイオキシン類1日摂取量の全国平均が1.63 pgTEQ/kgbw/dayであることを明らかにした.今後も推移を調査する必要がある.

(1-2)CALUXアッセイが魚中のダイオキシン類毒性等量を推測するスクリーニング法として有用であることを明らかにした.今後その他のアッセイ法についても有用性の検証を行う.

(2)一般食品およびベビーフード製品中のダイオキシン類を分析し,汚染実態を明らかにした.個人レベルのリスク評価を行うために,今後も個別食品分析データの集積を続ける.

(3)セージ,柑橘類,ホウレン草などの抽出物が,2,3,7,8-TCDDによるAhレセプター活性化に対して抑制効果を示すことを明らかにした.今後その有効成分の本体について検討を進める.


F.研究発表

1.論文発表

1) Fujino J, Tsutsumi T, Amakura Y, Nakamura M, Kitagawa H, Yamamoto T, Sasaki K, Toyoda M. Application of the CALUXTM assay to the analysis of DXNs in fish (The First Report) Organohalogen Compounds, 51(2001)348-351.

2) Amakura, Y., Tsutsumi, T., Nakamura, M., Fujino, J., Kitagawa, H., Sasaki, K., Yoshida, T., Toyoda, M: Preliminary screening of the inhibitory effect of food extracts on activation of the aryl hydrocarbon receptor induced by 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo- p-dioxin, Biol. Pharm. Bull., 25, 272-274 (2002).


2.学会発表

1) 堤 智昭, 天倉吉章,中村昌文, 藤野潤子, 北川宏子, Brown DJ, Clark GC, 佐々木久美子, 豊田正武. CALUXバイオアッセイによる市販魚中ダイオキシン類のスクリーニング法の開発.第4回環境ホルモン学会(2001.12)

2) 天倉吉章,堤 智昭,中村昌文,藤野潤子,北川宏子,佐々木久美子,吉田隆志,豊田正武:ダイオキシンによるアリル炭化水素レセプターの活性化に対する食品の抑制効果,日本薬学会第122年会(2002. 3).


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