戻る

(別添1)

「じん肺有所見者の肺がんに係る医療実践上の
不利益に関する専門検討会」検討結果の概要

I はじめに

 じん肺有所見者に発生した肺がんについては、じん肺管理区分(別紙参照)が管理4と決定された者であって、現に療養中の者に発生した原発性肺がんを労災補償の対象として扱ってきたところである。
 平成12年12月、「じん肺症患者に発生した肺がんの補償に関する専門検討会」は、現時点においても進展したじん肺有所見者に発生した肺がんには医療実践上の不利益の存在が認められるため、さらに的確な労災補償を行うという観点から(1)画像診断面での不利益、(2)治療面における不利益について、事例の集積を行った上で検討を加え、医学的に評価する必要があるとの提言を行った。
 これを受けて、「じん肺有所見者の肺がんに係る医療実践上の不利益に関する専門検討会」において、医療実践上の不利益について検討を行ってきたところである。

II じん肺に合併した肺がんの画像診断面での不利益に係る検討

 全国8病院から(1)じん肺も肺がんもある症例、(2)じん肺はあるが、肺がんのない症例、(3)じん肺はないが、肺がんのある症例、(4)じん肺も肺がんもない症例の胸部エックス線写真350枚を収集し、呼吸器専門医、一般内科医のそれぞれ12名、6名(合計18名)がそれを読影して、肺がんの有無を判定し、その結果から肺がんの診断精度を統計的に解析した。
 その結果、じん肺肺がんの症例を含むエックス線写真の肺がんの有無の読影時における偽陰性割合及び偽陽性割合の両者から求められる精度指標は、じん肺のない場合に比べ、PR1では統計学的に有意な差を認めなかったが、PR2、PR3並びにPR4では、診断に際しての精度が悪く、じん肺のない場合と比べその差は統計学的に有意であった。

III じん肺に合併した肺がんの治療面における不利益に係る検討

 全国6病院から170例のじん肺肺がん症例を収集し、管理区分、肺がんの手術の有無、その後の生存期間等を調査・検討した。
 その結果、(1)じん肺に合併した肺がんの治療には手術が行われた場合、明らかに予後が良いことが判明した(参照図1)。(2)収集した全症例について手術割合をみると、じん肺管理区分が進むにつれ、肺がんの手術割合が下がる傾向が見られ、特に管理区分が管理4では肺がんの手術割合の低下が明らかであった(参照図2)。(3)外科手術が考慮されるStageⅡまでの非小細胞がんで75歳未満の手術割合を見ると、管理2では収集した症例の全てにおいて手術が実施されていたものの、管理区分が管理3イ、3ロ、4と進むにつれ手術割合が下がる傾向が見られた。

IV まとめ

 以上の検討結果から、じん肺有所見者に発生した原発性の肺がんについて、管理4では明らかな医療実践上の不利益が認められた。また、本検討会は、管理3イ、3ロでも明らかな医療実践上の不利益が存在すると判断する。なお、管理2では、じん肺のない場合との比較において明らかな医療実践上の不利益が存在するとは認められなかった。


(別紙)

1.じん肺管理区分(じん肺法第4条第2項)

じん肺
管理区分
じん肺健康診断の結果
管理1 じん肺の所見がないと認められるもの
管理2 エックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3 エックス線写真の像が第2型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4 (1) エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1を超えるものに限る。)と認められるもの
(2) エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型又は第4型(大陰影の大きさが一側の肺野の3分の1以下のものに限る。)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

2.胸部エックス線写真上のじん肺の異常陰影の程度区分(じん肺法第4条第1項)

型(PR) エックス線写真の像
第1型(PR1) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第2型(PR2) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第3型(PR3) 両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が極めて多数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの
第4型(PR4) 大陰影があると認められるもの


トップへ
戻る