別添3-1.「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法(Ver.2)」
別添3-2.「室内空気中化学物質測定に関する機器等目録について」(略)
近年日本の住宅は、快適性、省エネルギー性、均一性、安価・大量生産性等を追求しつつその姿を変えてきた。均一性や安価・大量生産性をすすめる中で様々な新建材を使用するようになり、また快適性や省エネルギー性をすすめる中で高気密・高断熱化してきた。同じ住宅とはいえ、過去のものとは全く別のものであると言ってもよいであろう。だが、その中に住む人達にそれほど変化についての認識があったかというと疑問であり、また、設計・施工・供給に係る生産側や行政等の関係者ががこれを認識し、伝えるようにしてきたかということも疑問である。
このような住環境の変化と住まい手のはざまで、住宅に使用された化学物質による室内空気汚染の問題が顕在化してきたといえる。かつては想像だにしなかったこの問題は、化学物質を多量に放散する性質のある建材がその初期には無造作に使用されていたことにその一因を認めることが出来るが、また、ある意味こうした住宅の進歩と、住まい方のミスマッチにより引き起こされて来たともいえる。建材の改良が進み、一時より遙かに一部の化学物質の放散自体は押さえられて来た現在では、なおさらこの住まい方の問題は重要である。しかしながら、このような住まい方の工夫には自ずと限界があり、あまりにも汚染度合いが高いと思われる住宅には、別途何らかの処置が必要であろう。
室内空気中の化学物質濃度は測定方法や条件によって変動が予想され、標準的な測定方法についての取り決めも行われていなかったことから、どのように評価すればよいのか不明であった。厚生省(当時)では平成12年6月にトルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの指針値を新たに定めたのと同時に、どのような条件で測定すべきなのかを具体的に記した標準的測定法についても「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書−第1〜3回のまとめ」の別添2「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」にて公表したところである。
当該測定法については、幸い多方面の方から関心を持っていただくことができ、発表後、実際に測定に携わると思われる方以外からも、様々な方面から貴重なご意見・ご質問をいただく機会に恵まれた。測定法がある程度専門知識を有する方に向けて作られたこともあり、用語や運用方法に分かりにくい点があったというご指摘も受けているところである。これらを受け、当該測定法を実際に運用する上でのガイド、並びに補足説明を加えるものとして本マニュアルを作成した。これまでに公表された中間報告書、並びに「相談マニュアル作成の手引き」等とともに合わせてご利用いただきたい。
本法は厚生省が作成した各化学物質の室内空気濃度指針値が満たされているかどうかを厳密に判定する為の標準的方法を定めたものである。 対象となる揮発性有機化合物は、ホルムアルデヒド、エチルベンゼン、o-,p-,m-キシレン、スチレン、パラジクロロベンゼン等である。 新築住宅、居住住宅では異なる空気の採取法を使用する。新築住宅法では室内空気中の揮発性有機化合物の最大濃度を推定する為のものである。居住住宅法は、居住、平常時における揮発性有機化合物の存在量や暴露量を推定するためのものである。 |
<解説>
測定を求める人が求める内容によっては、必ずしも標準的方法として示している厳密な測定をする必要がない場合がある。相手の望む測定レベルによって、保健所等が有しているいくつかの方法を使い分ける事はもちろん可能である。この際重要なのは、使用する測定法の性格、長所、短所について十分説明し、理解を得ることである。いわゆる簡易測定法の性格及び測定機器目録については別途中間報告書その2のなかでまとめているので参照されたい。
但し、以下の場合は標準的測定法を用いることが望ましい。
標準的測定方法では、新築住宅における採取法と居住住宅における採取法のふたつの方法を示している。
新築住宅の採取方法は、純粋に建物から発散される揮発性有機化合物(以降VOCと記す)濃度が、どの程度のレベルまで達する可能性があるのかを推定する、言い換えれば住居を評価することを、その目的として策定されている。従って、適用範囲としては、本来主に入居前の、家具等の持ち込みもなく、生活行為のない住宅を想定している。また、かつて入居されていても、現在完全に空きとなっている場合は同様である。
しかしながら、現在入居しており、家具等が存在する家屋にもこの方法を用いたいという希望はあるものと思われる。この場合、現状におけるVOC濃度の到達可能レベルの推定に、その目的が変わることに留意しなくてはならない。言い換えれば、この場合は住居の評価ではなく、現生活空間の評価がその目的となる。
一方、居住住宅の採取方法は、実際の生活環境においてどの程度VOCが存在しているのか、言い換えれば現状実態の把握を目的として策定されている。
測定に際しては、希望者にその目的と結果の意味について明確に認識してもらう必要がある。
新築住宅の測定においては、30分換気後に対象室内を5時間以上密閉し、その後概ね30分間空気を採取する。採取の時刻は午後2〜3時頃に設定することが望ましい。 換気は窓、扉、建具、備付品の扉等の全てを開いて行い、密閉中は外気に面した開口部は閉鎖する。全ての操作中常時換気システムを有している場合は稼働させてよい。 このシステムに必要な開口部は閉鎖の必要はない。 居住住宅の測定においては、日常生活を営みながら空気を24時間採取する。 |
<解説>
新築住宅を対象とした空気の採取方法では、30分換気後に5時間以上の密閉期間を置き、その後概ね30分間採取することとしている。最初の30分間換気と最後の30分間の空気採取はどちらも多少変更しても問題はない。但しどちらもその時間は明記する必要がある。最初の換気は、室内空気を外気と同様のレベルにしようとするものであり、室内から発生する揮発性有機化合物量を測定するという目的には欠かせないものである。よってこの目的が達成されると推定されるのであれば、時間の長短は気にする必要はないが、測定条件を後に振り返って判断する際の材料として記載しなくてはならない。また、採取時間は最終的に30分間平均値を出すためには欠かせないものであるが、捕集管や感度の関係で採取時刻を変えてもよい。但しこの場合も測定条件を後に判断するために実測時間を明記することは必須である。
密閉時間は、室内空気の濃度が平衡になる(放散量と換気又は漏出量が等しくなる)まで行うべきものであるが、換気回数が0.5回以上あると見込まれる家屋ではこれで充分である。換気設備を有する家屋ではこの値は充分達成されていると考えられる。換気回数がこれよりも低い場合はほぼ平衡に達するのには約12時間かかるとされ、完全に密閉された部屋では平衡を待つのは事実上不可能である。しかしながら、温度変化による換気回数の変動や放散量の変動を考慮した場合、閉鎖時間による濃度の変動幅よりも、日温変化による変動幅が大きくなると推定され、日本の現状を考えると最低限5時間の密閉と、気温の日変動が最大となる午後2時〜3時に空気を採取するやり方が、測定作業効率も良く、目的を達成する上では必要かつ充分であると考えられる。5時間閉鎖法についてはECA Report No.6中にも記載されている。もちろん、閉鎖時間を延長することは差し支えない。上記理由から、閉鎖時間、採取時刻の記録は必須である。同時に換気回数が測定できれば最良ではある。
備付品の開放を要求しているが、これらは移動不可能なものを前提としている。建築物と一体であり、住宅の一部として認められるという考えから、安全面を考慮して要求しているものである。よって後から持ち込まれた家具等は該当しない。また、閉鎖中に常時換気システムの稼働を認めているが、これは常時使用されることが前提となって設計・設置されているものについては、住宅の一部として当然認められるべきであるとの考えからである。この場合「住まいのしおり」等にその旨の記載が必要であろう。
居住住宅を対象とした空気の採取は、通常の生活状態で行うことになる。
試料採取は室内では居間、寝室、及び外気1ヶ所の計3ヶ所で行う。室内にあっては部屋の中央付近の少なくとも壁から1m以上離した高さ1.2〜1.5mの位置を設定する。室外にあっては外壁及び空調給排気口から2〜5m離した、室内の測定高さと同等の高さの所を設定する。 |
<解説>
室内採取位置に居間、寝室を設定したのは、当該箇所が最も滞在時間が長いと想定されるためである。基本的には、室内の全ての建具は開放されるので全ての室内は同様の空気環境におかれることにはなる。
採取の高さは概ね今後制定が予定されているISOを睨んで、また、大体呼気の高さを考慮して設定されている。壁から1m以上離すこととしたのは、壁からの放散の影響を排除するためである。よって、この条件を満たしていてもそばに戸棚や机があるのでは同様に望ましくない。設定はこれらの影響がいずれもないところを選んで行われるべきである。条件の記載については高さや位置はもちろん、周囲の状況を図を利用する等して記載したほうがよい。可能であれば写真として残しておくことが望ましい。
外気については、濃度の算出時に減算に用いたりはしないが、得られた値を評価する上で測定しておいた方がよい。
位置については標記の通りであるが、高層建築物や気象条件によって当該位置への採取口の設置が困難な場合は位置を変更してもよい。但し、その場合には設定位置を明確に記しておくことが必要である。
また、風向きによっては外壁に施された、防水・撥水・防カビ等の加工剤や塗料の影響が出る場合があるので、風向きを記しておくことも重要である。
試料の採取は、標準的測定法の試料採取の頁(ホルムアルデヒド、VOC固相吸着/溶媒抽出法、固相吸着/加熱脱着法、容器採取法)に従って、室内2ヶ所、外気1ヶ所について2回ずつ採取する。同時にトラベルブランクも同様に持ち運ぶ。 |
<解説>
採取装置は測定対象物質と分析の際に採用する方法によって異なる。各箇所の採取は平衡して行っても、連続して行ってもよい。
1)ホルムアルデヒド
試料採取装置の一例を示す。
基本的に捕集管、流量計、ポンプ、ガスメーターの順に接続する。各機器の間の接続はテフロンチューブ等を用いる。捕集管でホルムアルデヒドを実際にトラップし、流量計で流速をコントロール(マスフローコントローラーを使用してもよい)、ガスメーターで流量を計測することになる。オゾンの共存はホルムアルデヒドの捕集剤への吸着に悪影響を及ぼすので、装着してもよいが、通常は必要ではない。オゾンをトラップするとスクラバーの温度が下がるので、湿度によっては水分の凝集をまねく。このため、スクラバー部分は室温よりやや高い温度に保温の必要がある。
本文中では居住住宅の場合、試料採取装置の捕集管は重連になっている。
これは、24時間という長時間の採取を行うため、破過を考慮してのことである。測定部分では2本目の捕集管は希釈をしないことになっているが、この試験液でホルムアルデヒドが検出されなければ1本目の捕集管で破過はないことになる。破過がないことが予想される場合はこの2本目の捕集管は必要ない。オゾンスクラバーについては前記と同様である。
2)VOC
溶媒抽出法と加熱脱着法試料採取装置の一例を示す。溶媒抽出法と加熱脱着法では捕集管の型と採取量が異なるので接続順は同じであるが、採取装置そのものは異なる。
基本的に除湿管、捕集管、マスフローコントローラー、ポンプ、ガスメーターの順に接続する。各機器の間の接続はテフロンチューブ等を用いる。湿度は捕集管の捕集効率に影響を与える可能性があるので除湿管を連結しているが、これは必ずしも必要ではない。捕集管で物質をトラップし、マスフローコントローラーで流速をコントロール(流量の細かい調整が必要となる場合があるのでマスフローコントローラーが望ましい)、ガスメーターで流量を計測することになる。
キャニスター方式の場合は全く異なる。容器を減圧にして採取する方法と加圧して採取する方法がある。
減圧採取装置
フィルタ、マスフローコントローラ、バルブ、圧力計、試料採取容器から構成される。採取前に圧力計により試料採取容器内部圧力が真空状態であることを確認する必要がある。減圧された採取容器に圧力差によって空気が吸引採取される。吸引流速は、マスフローコントローラーで調節し、その前にはフィルターを取り付け、コントローラーに塵等が進入しないようにする。
加圧採取装置
フィルタ、ポンプ、マスフローコントローラ、バルブ、圧力計、試料採取容器から構成される。ポンプで加圧して容器に空気を送り込む。マスフローコントローラーの塵等による汚染を防ぐため、その前にはさらにフィルターをかませる。
トラベルブランク試験としては、試料の採取に際し密栓した捕集管を、試料採取操作を除い試料採取間と同様に持ち運び取り扱う。 操作ブランク試験としては、未使用の捕集管について一連の分析操作を行って値を求める。 |
<解説>
本試験法ではブランク試験として、トラベルブランク試験、操作ブランク試験のふたつを設定している。トラベルブランク試験は採取操作から分析操作までの間に外部から汚染を受けていないかを確かめるための試験であるので、本試験の捕集管と同様に持ち運び、保管する。異なるのは試料採取操作を行うか否かのみである。容器採取法の場合は減圧採取法では80kPa、加圧採取法では200kPa程度まで加湿ゼロガスを導入した容器を持ち運び、試料採取操作を除いて採取容器と同様に持ち運ぶ。通常、1家屋につき1試験行えばよいが、測定箇所を増やしたりした場合は総数の約10%の頻度で行う。トラベルブランクが操作ブランク値を大きく超える場合には、基本的に採取をやり直すことにになってしまうので運搬中の汚染には細心の注意を払うべきである。トラベルブランク試験の汚染が避けられない場合は、これを3試料以上行って標準偏差、定量下限値を計算し、これを目標定量下限値、測定値と比較して下記の条件を満たせば使用することもできる。
「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」に従い、住宅に関わる項目、試料採取時の天候や生活状況に関わる項目、分析条件等を記録する。 |
<解説>
測定値に客観性と信頼性を持たせるためには、いつ、どこで、どのような条件で、空気が採取され、分析されたのかが正確に記録されていなければならない。
これらをもれなく記録するために、測定記録シートを添付したので参考にされたい。
記入の簡便さを考え、測定記録シートは以下の4つの様式を添付した。
1.建築物情報(新築・居住共用)
2.採取状況情報(一部新築・居住別)
3.居住者情報(新築・居住共用)
4.個別分析情報(新築・居住共用)
1.には測定対象の建物に関する情報を記載する。これらの内容の多くは測定前後でも記入可能である。測定の依頼を受けた場合には、依頼者に事前に当該情報を入手するよう要求したほうがよい。
2.には空気の採取時刻、場所、気温、周囲の状況等を記録する。これらの内容は現場で記入することになる。基本的に測定現場でのみ記録が可能であるので、漏れのないよう記入することが必要である。
3.は基本的に居住住宅法の際のみ必要な記録であり、居住者に記入してもらうことを前提としている。
4.は分析を行う実験室で記入する情報であるので、現場で記入する必要はない。
それぞれについては、記入上の注意を参照しつつ記入していただきたい。
後述の様式は例として示したものであるので、適宜変更して使用してかまわない。
シートの記入に当たっては下記を参考とすること。
・(1),(2)該当のものに○。 | |
・(3) | 集合住宅の場合、位置については採取状況情報のシートに記載する。 |
・(6) | 改修時期と工事の内容を記載する。 |
・(7) | 常時機械換気システムについては該当に○。 換気回数は測定できれば記載する。出来ない場合は未測定と記入する。 換気方式についても該当のものに○。 ●第1種換気:吸気・排気とも機械力による ●第2種換気:吸気は機械力、排気は自然排気による ●第3種換気:吸気は自然吸気、排気は機械力による ●第4種換気:吸気・排気とも自然に任せる |
・(8) | 該当のものに○。 |
・(9) | 新築住宅法の場合開放した建具等を記入する。 居住住宅法の場合は記入の必要なし。 |
・(10) | 購入して搬入されている家具がある場合、種別、材質、サイズ等を記入。 |
・(11) | 気密性能について評価されている文書があれば記入。不明の場合は不明と記入。 |
・(12) | 防蟻処理について、防蟻材の散布の時期、使用薬剤、施工業者名を記入。 不明の場合は不明と記入。 |
・(13) | 建材情報が入手可能な場合記入。必ずしも記入の必要はない。 |
・(14) | その他、室内空気中の化学物質濃度に影響を与えると思われる事項があった場合 は、屋外屋内に関わらず概要を記入する。 |
シートの記入に当たっては下記を参考とすること。
・(1) | 該当のものに○。VOCやその他の場合は測定対象物質名も記入。 捕集管の欄には使用した捕集管の種類や名称を記入。ロットがわかればなおよい。 |
・(2) | 家屋の平面図を記入する。 複数階にわたる場合はそれぞれ記入のこと。 おおよそのサイズについても記入が望ましい。 集合住宅の場合は該当階の概要と、測定対象家屋の位置を記入のこと。 家屋の平面図には窓の有無、方位、建具も記入する。望ましくは現場の状況につき、写真を撮影し共に保存する。窓にカーテン等ある場合は状況を記載。 居間、寝室、外気それぞれのサンプリング位置は●で示し、壁からの距離や高さについてわかるように記すこと。 |
・(3) | 天候の変化や換気状況、閉鎖時間、採取時間等をタイムコースとして記入する。 やむを得ず入室したり、日照が急変したり、トラブルがあった場合などは下段に 記入する。 記入例 |
・(4) | 測定対象各室の具体的な時刻などを記入する。オプションで測定した部屋があ る場合は空欄を利用する。 時刻や温湿度はそれぞれの操作の開始時と終了時のものを記入する。平均室温と湿度は空気の採取時間中の平均を記入する。吸引量には最終の積算流量を記入する。 2回目の採取を1回目の採取に続けて行った場合も一つの欄に記入する。 |
・(5) | 空気環境に影響を与える可能性のある周囲の状況など、気付いた点を記入する。 また、(3)に記入した突発事項の詳細や、記入しきれなかった事項についても記入する 生活環境について何かアドバイスを行った場合は、その内容を簡単に記入してお く。 |
シートの記入に当たっては下記を参考とすること。
・(1),(2)新築用と同様に記入する。 | |
・(3) | 採取開始時と終了時を記録する。天候については居住者情報を参考にわかる範囲で記入する。
記入例
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・(4) | 自動機録可能な温湿度計を使用して記入することが望ましい。メモリー機能があるもので有れば後に記入することも可能である。吸引量は総吸引量を記す。 |
・(5) | 1)〜5)については居住者情報を基に機器の改修時等に記入する。それぞれ、総使用時間を記入する。使用した部屋がわかっていればそれも記入すること。 6),7)は測定開始前に聞き取っておくことが望ましい。 |
測定結果を評価する上で重要な情報となりますので、ご協力をお願いいたします。
測定開始から終了までの24時間についてご記入下さい。測定開始前に特段に揮発性有機化合物が発生すると思われる状況が有れば(下記参考)備考欄にご記入下さい。
シートの記入に当たっては下記を参考として下さい。
天候 : | 天候の変化が有れば記入して下さい |
在室 : | 在室期間(可能で有ればどの部屋に在室したか)を記入して下さい。特に測定を行っている部屋に在室された場合は必ずご記入下さい。 |
換気 : | 窓開放、換気扇使用等、換気を行った時間を記入して下さい。 |
空調使用 : | 暖房、冷房を使用した時間を記入して下さい。可能で有れば使用した機具の種別、使用した部屋をご記入下さい。 |
喫煙 : | 喫煙された場合チェックして本数をご記入下さい。 |
スプレー使用 : | 殺虫剤、ヘアスプレー、消臭スプレー等、エアゾール製品を使用した場合チェックして下さい。 |
調理 : | 調理を行った時間をご記入下さい。 |
食事 : | 食事をした場所をご記入下さい。 |
家具の開閉: | タンス、クローゼット等、特に防虫剤を使用している家具等を開閉した場合はチェックして下さい。 |
アイロンがけ等: | アイロンがけや洗濯の等をした場合チェックして下さい。 |
洗濯 : | 洗濯をした場合チェックして下さい |
掃除 : | 掃除をした場合チェックして下さい。掃除機を使用した場合はその旨ご記入下さい。 |
化粧品 : | 化粧品を使用した場合チェックして下さい。除光液やヘアトニックなどを使用した場合はその旨ご記入下さい。 |
その他 : | アルコール除菌剤の使用や飲酒をした場合等、揮発性有機化合物が発生すると思われる状況があった場合に適宜ご記入下さい。 |
分析操作は標準的測定法の記載に従ってそれぞれ行う。 |
<解説>
実験室における分析操作については、「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」に詳しいのでこれに従って行う。以下何点かについて解説する。
(1)ホルムアルデヒド
<測定原理>
空気中ホルムアルデヒドはDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン)捕集剤に吸着すると共に誘導体化させる。これをアセトニトリルで溶出させ、高速液体クロマトグラフで測定する。 |
反応式は次の通りである。
<試験溶液の調製>
(1) 新築住宅 試料採取の終わった捕集管に注射筒(10ml)を装着し、この注射筒にアセトニトリル5mlを入れ、毎分1ml程度の流速でアセトニトリルを滴下しヒドラゾンを溶出する溶出液を5mlの全量フラスコ又は目盛り付き試験管に受ける。アセトニトリルで標線に合わせる。これを分析用試料溶液とする。
(2) 居住住宅(日常生活)
(3) 外気
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新築・居住・外気でそれぞれ調製法が異なっているが、これは最終溶液濃度を考慮して設定されている。居住住宅の2管目は基本的に破過確認試験であり、ここで検出された場合は濃度計算で別途考慮しなければならない。
<濃度測定、検出下限値及び定量下限値>
ホルムアルデヒド濃度は下記の濃度算出式により求める。また、検出下限値と定量下限値の計算においては、同一ロットの未使用捕集管について分析操作を行い、ホルムアルデヒドのブランク(Ab)を求める。濃度算出式の(As-A)に(Ab)を代入し濃度を算出する。5本以上の捕集管を測定した時の標準偏差(s)から次式により検出下及び定量下限値を算出する。
検出下限値=3s(μg/m3) 定量下限値=10s(μg/m3)
濃度算出式
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検出下限値及び定量下限値を求めるために濃度を求める場合は、t=20℃,p=101.3を使用する。Vについては30分採取の場合は30L、24時間採取の場合は144Lとする。
なお、目標定量下限値はガイドライン値の1/10、0.01mg/m3 である。
濃度の計算式は分解すると以下のようになる。
( (As-A)×(E/v)×D / (V×(293/273+t)×p/101.3) ) × 1000
●(As-A)×(E/v)×D
HPLCに注入した液中に含まれるホルムアルデヒドの重量に注入液量で全液量を割ったものをかけることにより、全液中のホルムアルデヒド重量即ち採取した空気中に含まれるホルムアルデヒド量(μg)を求める。×Dで希釈率を補正。
●V×(293/273+t)×p/101.3
採取した空気の体積を20℃、1気圧に補正。(L)
●×1000
1000倍することで単位補正(L→m3)。
結局、重量を体積で割ることになり濃度を求めることが出来る。
<温湿度補正>
室温が20℃に満たない場合には以下の式により濃度の補正を行うことを推奨する。
C’=C×1.09(20-t)×100/(50+rh)
|
木質建材からのホルムアルデヒド放散量は、温度と湿度の影響を受けることが知られており(温度、湿度とも上昇と共に放散量が増加する)、これまでの研究から上記式がモデルとして適用できることがわかっている。
温湿度の条件により過少評価とならないよう、安全面を考慮して室温20℃、湿度50%を基準として温湿度補正を推奨している。
この温湿度の基準は JIS Z 8703 試験場所の標準状態による。
(2)VOC
<濃度測定、検出下限値及び定量下限値>
検量線作成時の最低濃度(定量下限値付近)の混合標準濃度系列について、測定値 (A :ng)を求め、濃度算出式の(As-At)にAを代入して、空気濃度を算出する。5試料以上を測定して求めた標準偏差(s)から次式により、各測定対象物質の検出下限値及び定量下限値を算出する。ただし、操作ブランク値のある物質では操作ブランク値を測定し、混合標準濃度系列と操作ブランク値のうち、大きい方の標準偏差を用いて計算する。 検出下限値 = 3s (μg/m3) 定量下限値 = 10s (μg/m3)
濃度算出式
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検出下限値及び定量下限値を求めるために濃度を求める場合は、t=20℃,p=101.3を使用する。Vについては30分採取の場合は30L、24時間採取の場合は144Lとする。
なお、目標定量下限値はガイドライン値の1/10 である。
濃度の計算式の意味はホルムアルデヒドと同様である。
<濃度測定、検出下限値及び定量下限値>
濃度算出式 (As−At)×1000 C = ――――――――――――― V × 293/(273+t) × P/101.3 |
基本的に溶媒抽出法と同様であるが、加熱脱着法の場合、採取した物質は全てGC中に注入されるため、溶液についての補正は不要である。
検出下限値及び定量下限値を求めるために濃度を求める場合は、t=20℃,p=101.3を使用する。Vについては30分採取の場合は5L、24時間採取の場合は20Lとする。
なお、目標定量下限値はガイドライン値の1/10 である。
<濃度測定、検出下限値及び定量下限値>
濃度算出式 (As−At)× n C = ――――――――――――― V × 293/(273+t) × P/101.3
|
容器採取法の場合、GC中に注入する空気の量は実験室で調整することになるので、tやPは試料分析時に測定し、それを用いる。減圧採取の場合、採取時にあらかじめ求めた希釈率による補正が必要である。
検出下限値及び定量下限値を求めるために濃度を求める場合は、検量線作成時の最低濃度(定量下限値付近)の加湿混合標準ガスを充填した試料容器を作成し、これを用いて測定値(A:ng)を求め、(As-At)にAを代入して濃度を算出する。この時t=20℃,p=101.3を使用する。VについてはGCに導入した試料と同量とする。他と同様に5試料以上を測定して標準偏差(s)を求め、検出下限値及び定量下限値を算出する。操作ブランク値の方が大きければこれを使用する。
なお、目標定量下限値はガイドライン値の1/10 である。
分析結果は測定記録シート(個別分析情報)に記録する。 |
<解説>
分析結果についても必要事項を記録しておく必要がある。必要事項は分析方法によって異なるが、添付の分析結果記録シートを参考に適宜様式を作成し、記入する。
HPLCやGCのクロマトグラム、積分値等の分析記録はこれらのシートと共に保存する。
測定結果は結果が簡便に分かるよう別途様式を作製し、記入の上、それぞれの測定記録シートを添付して返却する。 |
<解説>
各測定記録シートは結果の評価に必要な情報を記したものであるので、あわせて返却する必要がある。しかしながら記載内容が細かく、わかりにくい面があると思われるので、結果を簡潔に記したシートを作製し、これを添付して返却することが望ましい。
シートの記入にあたっては下記を参考にすること。
シートの記入にあたっては下記を参考にすること。
●室外の値の取り扱いについて
室外の値は、室外の汚染の有無を確認するものであって、室内濃度から差し引くものではない。室内で汚染が確認されたとき、それが室外由来である可能性の判断を行うために使用する。
●新築住宅の測定法について
新築住宅の測定法は原則として生活行為はない状態の住居を対象としている。希望する場合は、現在使用している、または過去に使用していた住宅についてもこの条件で採取を行うこともできるが、その場合は測定作業中は生活行為を行うことは出来ない。また、家具等が持ち込まれている場合は、住宅由来の揮発性化学物質量を直接評価する事は出来ない。これを厳密に調査するためには、対象物質を放散しないことが明らかである場合を除き、原則持ち込まれた家具等は測定作業中除去しておく必要がある。
●測定の時期について
完成後の経過時間によりホルムアルデヒドやVOCの放散量は変化すると考えられるが、測定の時期は測定依頼者が決めるのが原則である。施工業者等が確認の測定をする場合には原則として引き渡し前のどこかで行う。
●集合住宅の取り扱いについて
集合住宅の場合、サンプル検査を行うこともあると思われるが、どの部分の測定を行うかは、それぞれ依頼者が判断する必要がある。またこの結果を持って、全ての住戸に当てはめた表現はできない。サンプル検査をもって個々の住戸の性質に言及する場合は、サンプル検査をした箇所、対象との間取り、部材、施工方法等について明確な説明を加える必要がある。
●カーテン、雨戸等の取り扱いについて
室内に直射日光が差し込む場合は、これにより揮発性化合物の放散量が影響を受ける恐れがあるので、カーテンが取り付けられている場合は使用した方がよい。雨戸については換気量に影響を与える可能性があるので締め切らないことが望ましい。直射日光の差込具合については記録したほうがよい。
●換気システムの取り扱いについて
常時使用することが前提となっているいわゆる中央式機械換気システムについては、閉鎖時間、採取時間中にも稼働させてかまわない。これらにはトイレ換気扇、浴室換気扇、レンジフード等で、必要に応じて間欠的に使用され、連続換気を原則としない局所換気システムは含まない。逆にこれらの形式を取っていても、常時使用を前提とするシステムとなっている場合は稼働させてよい。常時使用を前提とする場合は、住まいのしおり等でそのことが適切に説明されていることが望ましい。また、小窓等のパッシブ型の換気システムは原則的には閉めて試料採取する。パッシブ型の常時換気システムは自然条件の影響を受けることが多いので、本件で使用を認める換気システムは、強制換気システムと同等の性能を有する場合例外的に設定できることとする。
●標準物質について
標準原液の調製で、標準物質の採取量とメスフラスコの全量は、秤取る比が同じであれば変更してかまわない。市販の標準溶液やガスを用いる場合は精度保証されているものが望ましい。
●内標準物質について
「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」では、VOCの内標準物質としてトルエン-d8を記載しているが、各分析機関で通常使用し、精度確認が出来ているものが有れば使用しても差し支えない。
●2重測定について
本試験法では、試料採取中の配管の外れ、その他のミスを考慮し、同一試料を2回ずつ採取することとし、同時に2重測定(n=2)の意味を持たせている。新築住宅法の場合、採取は並行して行うのが望ましいが、2回連続して行うことも可能である。採取については、このように各箇所2回ずつ行うが、分析について2重に行うのは全体の10%の頻度でよい。但し、指針値近傍の値が得られた場合等は、全て分析する必要がある。
●キシレンについて
キシレンにはo-,m-,p-キシレンの3種の異性体があり、通常の分析条件ではm-,p-キシレンは分離しないので、合わせて取り扱ってよい。最終的にキシレンの測定値を算出するに当たってはこれら3種の合計値をキシレンの値として取り扱う。
●単位の換算について
重量濃度で表示された市販の標準原ガスの場合における容積の換算は、
v(ml)=100×22.4(273+t)/273M(Mは分子量、tは気温,測定対象物質100mgに相当する採取容積)である。
重量濃度で表示された市販の標準原液の場合における液体容量の換算は、
v(μl)=100/ρ(ρは比重又は密度,測定対象物質100mgに相当する採取容積)である。
市販の標準ガス濃度 ppm(μl/l)の重量/体積濃度(μg/l)への換算には、
273M/{22.4(273+t)}(Mは分子量、tは気温)を乗じる。
それぞれの物質の mg/m3 から ppm への換算は
ppm ≒ mg/m3 × 24.04/分子量 (20℃)
ppm ≒ mg/m3 × 24.45/分子量 (25℃)
である。
ppm 単位では空気中に存在する当該物質の分子の数を比較できる。
●捕集管について
「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」中では各捕集管や捕集装置を検査機関で調製するやり方を示しているが、適宜測定対象物質に対して十分な捕集能力を有する市販品を使用してよい。
●容器採取法における採取流速について
新築住宅法(30分採取)の場合、容積が6Lの採取容器を用いて減圧採取を行う場合の採取流量は100〜150ml/minである。加圧採取を行う場合の採取流量は270〜400ml/minである。
居住住宅法(24時間採取)の場合、容積が6Lの採取容器を用いて減圧採取を行う場合の採取流量は約3ml/minである。加圧採取を行う場合の採取流量は約8ml/minである。