戻る

(別紙1)

官民職業情報検討委員会報告要旨

−職業情報のデータベースの構築を−

《検討委員会の趣旨と検討経過》

 厚生労働省は、平成11年7月に改正された職業安定法第15条の規定(職業安定局長が職業紹介事業等に共通して使用されるべき標準職業名を定め、普及に努めなければならないとした規定)を踏まえ、平成12年9月、官民にわたる円滑な労働力需給調整に資する、職業名を含む職業情報の収集、蓄積、分析、提供のあり方について検討を行うため、官民職業情報検討委員会(委員は報告書参照)を設置した。
 同委員会は、職業情報ニーズ及び職業情報提供の現状、海外における職業情報提供の取組状況の調査等を実施し、これらによる現状分析を踏まえて、官民が共通して使用できる職業情報に関する総合的なデータベースの構築等の提言を行った。提言の概要は以下のとおり。

1 今後の職業情報をめぐる視点

 今後の職業情報のあり方については、以下の視点があげられる

・職業生活をめぐる様々な場面での幅広いニーズに応える職業情報の体系が求められる

・職業名の整理に当たって、一定の共通性を持たせるとともに、柔軟な検索、編集の可能性を考慮する必要がある

・職種を超えた労働移動に対応するため、共通性を持つ職業を横断的に把握できる情報の整備が必要である

・現場情報のフィードバック等による情報の鮮度の保持を配慮した体系の構築、重視されながらも明示できていない情報の明確化 等についても配慮されなければならない


(1) 多様な職業情報の整備

 求職・求人活動場面はもとより、職業教育・職業指導、人事雇用管理、能力開発等、職業生活をめぐるさまざまな場面で、それぞれのニーズに応じたきめ細かな職業情報が求められている。
 このため、仕事の内容、必要なスキル・技能、経験、適性、さらには、職務の位置づけ、将来性、能力開発の方法・機関、能力評価、賃金、労働力需給状況等といった、情報の受け手の幅広い情報ニーズに対応することのできる職業情報の体系が求められる。

(2) 職業情報における職業名の意義と方向性

 職業選択等の拠り所等として職業名の重要性は大きいが、関係機関の連携確保、利用者の混乱回避、統計的活用等の観点から、職業名に一定の共通性を持たせていく必要がある。
 官民共通の職業名の整理に当たっては、利用者のニーズに合わせた職業情報の柔軟な検索、編集を可能にするなど、多様な情報を有機的にリンクさせて活用し、利用者の意思決定を支援し、需給調整をより円滑化する観点が重要である。

(3) 横断的な職業情報の整備による関連職業の把握

 今後、拡大が見込まれる職種を越えた労働移動に対応するために、転職可能性を正しく把握できる職業情報の充実を図っていくことが必要である。このため、職業に必要とされる能力や適性、経験等を明確にし、共通性を持つ職業を横断的に把握できるようにすることが必要である。

(4) 情報の鮮度の保持、明示できていない情報の明確化等

 提供される職業情報が、その時々のニーズに的確に対応していくためには、情報の鮮度の保持が配慮されなければならない。常に現場からフィードバックされる情報を反映できるような情報提供の体系の構築が求められる。
 多くの求人者が採用の際に重視する「人柄」等の明示化できていない能力について、明確化を図る必要がある。また、求職者も、特性、興味、適性等の情報を具体的に表現する能力が求められる。
 今後、多面的な職業情報を検索・活用することが普及する一方で、検索側の職業に対する理解度が情報活用に大きく影響することから、求職者、求人者とも、職業についての基本的な知識を持ちそれを使いこなす能力(「職業リテラシイ」)を身につけることが重要な課題である。

2 今後の方向性

 労働市場の情報インフラ整備として、官民で共通して使用すべき職業名の整備の観点も踏まえつつ、仕事内容、必要なスキル・能力、就業実態、労働市場情報等を含む職業に関する総合的な基礎的データベースを構築しインターネット上に公開するとともに、これを核とした種々の支援システムが官民により広く開発・構築されることが求められる。

(1) 職業情報の基礎的データベースの構築

 職業を単位に、その仕事内容、特徴、必要とされるスキル、能力、経験、就業実態、労働条件、労働力需給、従事者の特性等の関連諸情報をデータベース化し、様々な情報ニーズに応えることのできるシステムを構築する必要がある。
 具体的には、アメリカのO*NETのような、職業情報の基礎データをデータベース化し、インターネット上に広く公開するシステムが参考になるものと考えられる。

(2) 基礎的データベースを活用した支援システムの構築

 基礎的データベースを核として種々の支援システムがリンクする体制を構築することが次に求められる。
 アメリカのO*NET においては、職種、職務、求められる能力・現在の業務遂行能力という一連の情報データ・ベースを政府が整備し、それを無償で自由に使える情報源として、民間人材サービス会社、民間出版社等が活用している。
 例えば、職業適性診断システム、さまざまな職種でのスキルの身につけ方やキャリアアップの道筋などと組み合わせたシステムとすることにより、利用価値が高まるが、こうしたシステムの開発には官民の各機関が積極的に取り組むことが重要である。

(3) 官民共通職業名の整備

 職業安定法第15条に規定された共通して使用されるべき職業名については、これら職業情報の総合的情報データベース化を検討する中で、最も効率的な情報の単位が検討されていくことより、その整備が図られていく必要がある。

3 取組に当たっての手順等

 基礎的データベースの構築は、既存の職業情報データの蓄積を活かし、その拡張可能性の検討を手掛かりとすることから着手すること等が考えられる。
 また、支援システムの構築に当たっては、比較的早い段階から、関係者を含む検討の場を設け、基礎的データベースへのフィードバックにも配慮する必要がある。
 なお、職業情報の整備に当たっては、 関連分野における情報整備の取組との連携、円滑な労働移動のための専門的人材による支援等の面での配慮が求められる。


職業情報データベースのイメージ


トップへ
戻る