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ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針


ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する
倫理指針





平成13年3月29日
(平成16年12月28日全部改正)
(平成17年6月29日一部改正)
(平成20年12月1日一部改正)

文部科学省
厚生労働省
経済産業省



目次

前文
第1 基本的考え方
 基本方針
 本指針の適用範囲
 保護すべき個人情報
 海外との共同研究
第2 研究者等の責務
 すべての研究者等の基本的な責務
 研究を行う機関の長の責務
 研究責任者の責務
 個人情報管理者の責務
 倫理審査委員会の責務及び構成
第3 提供者に対する基本姿勢
10  インフォームド・コンセント
11  遺伝情報の開示
12  遺伝カウンセリング
第4 試料等の取扱い
13  研究実施前提供試料等の利用
14  試料等の保存及び廃棄の方法
第5 見直し
15  見直し
第6 用語の定義
16  用語の定義
(1) 試料等
(2) 診療情報
(3) ヒトゲノム・遺伝子解析研究
(4) 遺伝情報
(5) 匿名化
(6) 個人情報管理者
(7) インフォームド・コンセント
(8) 代諾者等
(9) 研究を行う機関
(10) 試料等の提供が行われる機関
(11) 共同研究機関
(12) 外部の機関
(13) 倫理審査委員会
(14) 研究者等
(15) 研究責任者
(16) 研究担当者
(17) 提供者
(18) 遺伝カウンセリング
(19) 研究実施前提供試料等
(20) ヒト細胞・遺伝子・組織バンク
第7 細則
17  細則
第8 施行期日
18  施行期日



前文

 科学研究の推進は、人々が健やかで心豊かに生活できる社会を実現するための重要な課題である。その中で、20世紀後半に開始されたヒトゲノム・遺伝子解析研究は、生命科学及び保健医療科学の進歩に大きく貢献し、人類の健康や福祉の発展、新しい産業の育成等に重要な役割を果たそうとしている。
 一方、ヒトゲノム・遺伝子解析研究は、個人を対象とした研究に大きく依存し、また、研究の過程で得られた遺伝情報は、提供者(ヒトゲノム・遺伝子解析研究のための試料等を提供する人)及びその血縁者の遺伝的素因を明らかにし、その取扱いによっては、様々な倫理的、法的又は社会的問題を招く可能性があるという側面がある。そこで、人間の尊厳及び人権を尊重し、社会の理解と協力を得て、適正に研究を実施することが不可欠である。そのため、世界医師会によるヘルシンキ宣言等に示された倫理規範を踏まえ、提供者個人の人権の保障が、科学的又は社会的な利益に優先されなければならないことに加えて、この側面について、社会に十分な説明を行い、その理解に基づいて研究を実施することが求められている。
 本指針は、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)の「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」等を踏まえて策定された「ヒトゲノム研究に関する基本原則」(平成12年6月14日科学技術会議生命倫理委員会取りまとめ)に示された原則に基づき、また、「遺伝子解析研究に付随する倫理問題等に対応するための指針」(平成12年4月28日厚生科学審議会先端医療技術評価部会取りまとめ)、ユネスコの「ヒト遺伝情報に関する国際宣言」、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等を踏まえ、ヒトゲノム・遺伝子解析研究一般に適用されるべき倫理指針として、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省において共同で作成し、社会に提示するものである。
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関わるすべての関係者においてこの指針を遵守することが求められる。
 なお、個人情報保護に関し、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う機関においては、民間企業、行政機関、独立行政法人等の区分に応じて適用される個人情報の保護に関する法律、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)及び個人情報の保護に関する法律第11条第1項の趣旨を踏まえて地方公共団体において制定される条例を遵守する必要があることに留意しなければならない。



第1  基本的考え方

   基本方針

 本指針は、遺伝情報が得られる等のヒトゲノム・遺伝子解析の特色を踏まえ、すべてのヒトゲノム・遺伝子解析研究に適用され、研究現場で遵守されるべき倫理指針として策定されたものである。本指針は、人間の尊厳及び人権が尊重され、社会の理解と協力を得て、研究の適正な推進が図られることを目的とし、次に掲げる事項を基本方針としている。
 (1)  人間の尊厳の尊重
 (2)  事前の十分な説明と自由意思による同意(インフォームド・コンセント)
 (3)  個人情報の保護の徹底
 (4)  人類の知的基盤、健康及び福祉に貢献する社会的に有益な研究の実施
 (5)  個人の人権の保障の科学的又は社会的利益に対する優先
 (6)  本指針に基づく研究計画の作成及び遵守並びに独立の立場に立った倫理審査委員会による事前の審査及び承認による研究の適正の確保
 (7)  研究の実施状況の第三者による実地調査及び研究結果の公表を通じた研究の透明性の確保
 (8)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する啓発活動等による国民及び社会の理解の増進並びに研究内容を踏まえて行う国民との対話

   < 注>
 本指針において、研究の過程で得られる遺伝情報が提供者及び血縁者の遺伝的素因を明らかにするおそれがあること、さらに研究内容によっては提供者個人の問題にとどまらず提供者が属する集団の性質等を特徴づける可能性があること等により、様々な問題を提起する可能性があるというヒトゲノム・遺伝子解析研究の特色を踏まえ、第6の16(3)において、本指針の対象とすべき研究の定義及び範囲を定めている。

   本指針の適用範囲

 (1)  本指針は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を対象とし、その研究に携わる研究者等に遵守を求めるものである。適正な研究の実施のためには、研究者等一人ひとりの努力が重要であるほか、研究を行う機関においても個人情報の保護や倫理面での対応を適切に行うために必要な組織体制や環境の整備を図ることが重要である。
 なお、診療において実施され、解析結果が提供者及びその血縁者の診療に直接生かされることが医学的に確立されている臨床検査及びそれに準ずるヒトゲノム・遺伝子解析は、医療に関する事項として、今後、慎重に検討されるべき課題であり、本指針の対象としない。
 ただし、これらのヒトゲノム・遺伝子解析についても、診療を行う医師の責任において、個人情報の保護に関する法律に基づく医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのための指針に従うとともに、関係学会等において作成される指針等を参考に、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。

 (2)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成13年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号。以下「旧指針」という。)の施行前に既に着手され、現在実施中のヒトゲノム・遺伝子解析研究に対しては、本指針は適用しない。

   <旧指針施行前の研究に関する細則>
 旧指針施行前に既に着手され、現在実施中のヒトゲノム・遺伝子解析研究に対して本指針は適用しないが、個人情報保護に関する法律の施行日以降は、同法に基づき、当該研究を実施することが必要となる。

   < 注>
 旧指針の施行日は平成13年4月1日である。

   保護すべき個人情報

 (1)  「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

 (2)  個人情報を連結不可能匿名化した情報は、個人情報に該当しない。個人情報を連結可能匿名化した情報は、研究を行う機関において、当該個人情報に係る個人と当該情報とを連結し得るよう新たに付された符号又は番号等の対応表を保有していない場合は、個人情報に該当しない。

   < 連結可能匿名化された情報の取扱いに関する細則>
 連結可能匿名化された情報を同一法人又は行政機関内の研究部門において取り扱う場合には、当該研究部門について、研究部門以外で匿名化が行われ、かつ、その匿名化情報の対応表が厳密に管理されていること等の事情を勘案して適切な措置を定めるなど、当該機関全体として十分な安全管理が確保されるよう、安全管理措置を定めることができる。

 (3)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究において扱う情報が、個人情報に該当しない場合であっても、遺伝情報、診療情報等個人の特徴や体質を示す情報は、本指針に基づき適切に取り扱われなければならない。

   海外との共同研究

 (1)  我が国の研究を行う機関が海外の研究機関と共同研究を実施する際は、共同研究を行う相手国においても試料等の提供及びヒトゲノム・遺伝子解析研究に際して人間の尊厳及び人権が尊重されていることに十分留意しつつ、共同研究を行わなければならない。

 (2)  我が国の研究を行う機関が海外の研究機関と共同研究を実施する際は、共同研究を行う相手国で定める法令及び指針等を遵守しつつ、原則として本指針に従って研究を行うものとする。
 ただし、次に掲げる場合には、相手国における試料等の提供及び試料等の取扱いについて、相手国の定める法令、指針等の基準に従って行うことができる。
 本指針が相手国における基準より厳格な場合であって、かつ、次に掲げる要件のすべてを満たす場合
(ア)  相手国において本指針の適用が困難であること。
(イ)  細則に定める事項が適切に措置されることについて、我が国の研究を行う機関の倫理審査委員会の承認を受け、当該機関の長が適当と判断していること。
 相手国における基準が本指針よりも厳格な場合

   < 海外研究機関との共同研究を実施する際の細則>
1.  第1の4(2)ア(イ)に規定する事項は次に掲げるものとする。
(1)  インフォームド・コンセントを得られること
(2)  提供者の個人情報の保護について適切な措置が講じられること
(3)  研究計画の科学的・倫理的妥当性について、相手国により承認されること、又は相手国が定める法令、指針等に基づいて相手国の機関内の倫理審査委員会若しくはこれに準ずる組織により承認され、相手国の研究を行う機関の長により許可されること
2.  第1の4の(2)イの場合は、相手国における基準に合わせて研究を実施しなければならない。



第2  研究者等の責務

   すべての研究者等の基本的な責務

 (1)  すべての研究者等は、生命現象の解明、疾病の予防、診断及び治療の方法の改善、健康の増進等を目的として、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

 (2)  すべての研究者等は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の社会的有益性を確認するとともに、個人の人権の保障を科学的又は社会的な利益に優先して配慮しなければならない。

 (3)  すべての研究者等は、提供者又は代諾者等のインフォームド・コンセントを受けて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施することを基本としなければならない。

 (4)  すべての研究者等は、職務上知り得た個人情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も、同様とする。

 (5)  すべての研究者等は、個人情報の保護を図るとともに、個人情報の取扱いに関する苦情等に誠実に対応しなければならない。

 (6)  すべての研究者等は、個人情報の予期せぬ漏えい等、提供者等の人権の保障の観点から重大な懸念が生じた場合には、速やかに研究を行う機関の長及び研究責任者に報告しなければならない。

 (7)  すべての研究者等は、倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長により許可された研究計画書に従って研究を実施する等、本指針を遵守し、人間の尊厳及び人権を尊重して、適正にヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。

 (8)  すべての研究者等は、研究実施に当たっての適正な手続の確保、外部の有識者による実地調査、提供者等からの研究の進捗状況の問い合わせへの的確な対応、研究結果の公表等、研究の透明性の確保を図らなければならない。

 (9)  すべての研究者等は、試料等の提供が善意に基づくものであることに留意し、既に提供されている試料等を適切に保存し、及び活用すること等により、人からの試料等の提供を必要最低限とするよう努めなければならない。

 (10)  すべての研究者等は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に当たっては、偽りその他不正の手段により個人情報及び試料等を取得してはならない。

   研究を行う機関の長の責務

 (1)  研究を行う機関の長は、その機関におけるヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に関する最終的な責任を有し、研究責任者及び研究担当者が研究計画に従って適正に研究を実施するよう監督しなければならない。その際、研究を行う機関の長は、提供者等の人権を最大限保障すべきこと及び本指針、研究計画等に反した場合に懲戒処分等の不利益処分がなされ得ることについて、その機関の研究者等に対する周知徹底を図らなければならない。

 (2)  研究を行う機関の長は、当該機関の定める規程により、本指針に定める権限又は事務を当該機関内の適当な者に委任することができる。

   < 本指針に定める権限又は事務の委任に関する細則>
1.  研究を行う機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の円滑かつ機動的な実施のために、本指針に定める権限又は事務の全部又は一部を統括的な責任を有する者を定めて委任することができる。
2.  統括的な責任を有する者とは、研究責任者等に対し監督上必要な命令を行い、当該機関の研究全般について統括するものであり、例えば以下のとおりである。
 大学等に附属する病院の場合は、病院長
 保健所の場合は、保健所長
 大学医学部の場合は、医学部長
 企業等に附属する研究所の場合は、研究所長
3.  同一法人及び行政機関内で、研究及び試料等の提供が行われる場合には、それぞれの業務毎に統括的な責任を有する者を定めて委任することができる。

 (3)  研究を行う機関の長は、その取り扱う個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他個人情報の安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講じなければならない。
 また、研究者等に個人情報を取り扱わせるに当たっては、当該個人情報の安全管理が図られるよう、当該研究者等に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

   < 安全管理措置に関する細則>
 組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置は、取り扱う情報の性質に応じて、必要かつ適切な措置を求めるものである。


1.  組織的安全管理措置
 組織的安全管理措置とは、安全管理について研究者等の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規程や手順書(以下「規程等」という。)を整備運用し、その実施状況を確認することをいう。組織的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)  個人情報の安全管理措置を講じるための組織体制の整備
(2)  個人情報の安全管理措置を定める規程等の整備と規程等に従った運用
(3)  個人情報の取扱い状況を一覧できる手段の整備
(4)  個人情報の安全管理措置の評価、見直し及び改善
(5)  事故又は違反への対処

2.  人的安全管理措置
 人的安全管理措置とは、研究者等に対する、業務上秘密と指定された個人情報の非開示契約の締結や教育・訓練等を行うことをいう。人的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)  雇用契約時及び委託契約時における非開示契約の締結
(2)  研究者等に対する教育・訓練の実施

3.  物理的安全管理措置
 物理的安全管理措置とは、入退館(室)の管理、個人情報の盗難の防止等の措置をいう。物理的安全管理措置には以下の事項が含まれる。
(1)  入退館(室)管理の実施
(2)  盗難等の防止
(3)  機器・装置等の物理的保護

4.  技術的安全管理措置
 技術的安全管理措置とは、個人情報及びそれを取り扱う情報システムのアクセス制御、不正ソフトウェア対策、情報システムの監視等、個人情報に対する技術的な安全管理措置をいう。技術的安全管理措置には、以下の事項が含まれる。
(1)  個人情報のアクセスにおける識別と認証
(2)  個人情報のアクセス制御
(3)  個人情報へのアクセス権限の管理
(4)  個人情報のアクセス記録
(5)  個人情報を取り扱う情報システムについての不正ソフトウェア対策
(6)  個人情報の移送・通信時の対策
(7)  個人情報を取り扱う情報システムの動作確認時の対策
(8)  個人情報を取り扱う情報システムの監視

 (4)  研究を行う機関の長は、死者に関する個人情報が死者の人としての尊厳や遺族の感情及び遺伝情報が血縁者と共通していることに鑑み、生存する個人に関する情報と同様に、死者に関する個人情報についても安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講じなければならない。

 (5)  研究を行う機関の長は、個人情報に該当しない匿名化された情報を取り扱う場合は、当該情報を適切に管理することの重要性の研究者等への周知徹底、当該情報の管理(事故等の対応を含む。)、責任の明確化、研究者等以外の者による当該情報の取扱いの防止等、適切な措置を講じなければならない。

   < 匿名化した情報の取扱いに関する細則>
 個人情報に該当しない匿名化された情報を取り扱う場合には、連結可能と連結不可能の区別に留意し、適切な措置を講じることとする。

 (6)  研究を行う機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務に係る情報の取扱いの全部又は一部を委託する場合は、その取扱いを委託された個人情報の安全管理及び個人情報に該当しない匿名化された情報の適切な取扱いが図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

   < 委託を受けた者に対する監督に関する細則>
 委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督とは、例えば委託契約書において、委託者が定める安全管理措置の内容を明示的に規定するとともに、当該内容が遵守されていることを確認することである。

 (7)  研究を行う機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究において個人情報を取り扱う場合、個人情報の保護を図るため、個人情報管理者を置かなければならない。また、必要に応じ、責任、権限及び指揮命令系統を明確にした上で、個人情報管理者の業務を分担して行う者(以下「分担管理者」という。)又は個人情報管理者若しくは分担管理者の監督の下に実際の業務を行う補助者を置くことができる。

   < 個人情報管理者の要件に関する細則>
 個人情報管理者及び分担管理者は、刑法(明治40年法律第45号)第134条、国家公務員法(昭和22年法律第120号)第100条その他の法律により業務上知り得た秘密の漏えいを禁じられている者(医師、薬剤師等)とする。
 なお、個人情報管理者及び分担管理者は、その提供する試料等を用いてヒトゲノム・遺伝子解析研究(試料等の提供を除く。)を実施する研究責任者又は研究担当者を兼ねることはできない。

 (8)  研究を行う機関の長は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究実施の可否等を審査するため、その諮問機関として、倫理審査委員会を設置しなければならない。
 ただし、試料等の提供が行われる機関が小規模であること等により、倫理審査委員会の設置が困難である場合には、共同研究機関、一般社団法人、一般財団法人又は学会によって設置された倫理審査委員会をもってこれに代えることができる。

   < 倫理審査委員会の設置に関する細則>
 研究を行う機関に既に設置されている類似の委員会を本指針に適合する倫理審査委員会に再編成すれば、名称の如何を問わない。

 (9)  研究を行う機関の長は、すべての研究計画又はその変更について、倫理審査委員会の意見を尊重し、許可するか否かを決定しなければならない。この場合において、倫理審査委員会が不承認の意見を提出した研究については、その実施を許可してはならない。

 (10)  研究を行う機関の長は、国内において共同研究を実施する場合は、それぞれの研究を行う機関に設置された倫理審査委員会において、他の共同研究機関における研究計画の承認の状況、インフォームド・コンセントの状況、匿名化の状況等を示した上で研究計画の承認を得なければならない。
 ただし、複数の機関が参画する共同研究において、主たる研究を行う機関が研究全体の推進及び管理を担う場合は、当該主たる研究を行う機関においては、当該機関に設置された倫理審査委員会が研究計画全体について審査を行い、他の共同研究機関においては、第2の9(5)に従い、研究計画の実施について迅速審査を行うことができる。

 (11)  研究を行う機関の長は、研究責任者から研究の実施状況について1年に1回以上定期的な報告を受けるほか、外部の有識者による定期的な実地調査を1年に1回以上実施する等、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況を把握し、必要に応じ、又は倫理審査委員会が研究の変更若しくは中止の意見を述べた場合にはその意見を踏まえ、その変更又は中止を命じなければならない。

   < 外部の有識者による実地調査に関する細則>
1.  研究を行う機関の長は、インフォームド・コンセントの手続の実施状況及び個人情報の保護の状況等について、研究計画書に従って適正に実施されているか実地調査させるものとする。
2.  研究を行う機関の長は、研究責任者及び研究担当者を、実地調査へ協力させることとする。
3.  外部の調査担当者は、実地調査の中で知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も、同様である。

 (12)  研究を行う機関の長は、許可した研究計画書の写し、研究の実施状況に関する定期的な報告書の写し及び外部の有識者による実地調査結果の写しを個人情報管理者に送付しなければならない。

 (13)  研究を行う機関の長は、倫理審査委員会に、研究の実施状況に関する定期的な報告書の写し及び外部の有識者による実地調査結果の写しを送付しなければならない。

 (14)  研究を行う機関の長は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。また、研究を行う機関の長は、利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

 (15)  研究を行う機関の長は、あらかじめ提供者の同意を得ないで、第2の6(14)により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。

 (16)  研究を行う機関の長は、合併その他の事由により他の研究を行う機関から研究を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ提供者の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。

 (17)  研究を行う機関の長は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、提供者に通知し、又は公表しなければならない。

 (18)  研究を行う機関の長は、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、提供者に通知し、又は公表しなければならない。

 (19)  研究を行う機関の長は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。

 (20)  研究を行う機関の長は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ提供者の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならない。
 法令に基づく場合
 公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、提供者の同意を得ることが困難である場合
 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、提供者の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合
 また、次に掲げる場合において、当該個人情報の提供を受ける者は第三者に該当しないものとする。
 利用目的の達成に必要な範囲内において個人情報の取扱いの全部又は一部を委託する場合
 合併その他の事由による研究の承継に伴って個人情報が提供される場合
 個人情報を特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人情報の項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、提供者に通知し、又は提供者が容易に知り得る状態に置いている場合
 なお、ウに規定する利用する者の利用目的又は個人情報の管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ提供者に通知し、又は提供者が容易に知り得る状態に置かなければならない。

 (21)  研究を行う機関の長は、保有する個人情報に関し、次に掲げる事項について、提供者の知り得る状態(提供者の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。
 当該研究を行う機関の名称
 すべての保有する個人情報の利用目的(第2の6(22)アからウまでに該当する場合を除く。)
 第2の6(22)、(23)、(24)、(25)又は(26)の求めに応じる手続(手数料の額を定めたときは、その手数料の額を含む。)
 保有する個人情報の取扱いに関する苦情の申出先

 (22)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等から、当該提供者が識別される保有する個人情報の利用目的の通知を求められたときは、提供者又は代諾者等に対し、遅滞なく、これを通知しなければならない。
 ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
 利用目的を提供者若しくは代諾者等に通知し、又は公表することにより提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 利用目的を提供者若しくは代諾者等に通知し、又は公表することにより研究を行う機関の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合
 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を提供者若しくは代諾者等に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
 なお、利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、提供者又は代諾者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

 (23)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等から、当該提供者が識別される保有する個人情報の開示(当該提供者が識別される保有する個人情報が存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、提供者又は代諾者等に対し、文書により、遅滞なく、当該保有する個人情報を開示しなければならない。
 ただし、開示することにより次のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。
 提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合
 法令に違反することとなる場合
 なお、保有する個人情報の全部又は一部について開示しない旨の決定をしたときは、提供者又は代諾者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

   < 注>
 遺伝情報の開示については、第3の11において研究責任者の責務において行わせることとする。

 (24)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等から、当該提供者が識別される保有する個人情報の内容が事実でないという理由によって当該保有する個人情報の内容の訂正、追加又は削除(以下「訂正等」という。)を求められた場合には、その内容の訂正等に関して他の法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲内において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有する個人情報の内容の訂正等を行わなければならない。
 また、保有する個人情報の内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、提供者又は代諾者等に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならない。

 (25)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等から、当該提供者が識別される保有する個人情報が第2の6(15)若しくは(16)に違反して取り扱われているという理由又は第2の5(10)に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有する個人情報の利用の停止又は消去(以下この項及び第2の6(27)において「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有する個人情報の利用停止等を行わなければならない。
 ただし、当該保有する個人情報の利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、提供者の権利利益を保護するために必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。

   < 利用停止等に関する細則>
 本指針において、利用停止等とはインフォームド・コンセントの撤回を受けて、廃棄等を行うこと等である。

 (26)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等から、当該提供者が識別される保有する個人情報が第2の6(20)に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有する個人情報の第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有する個人情報の第三者への提供を停止しなければならない。
 ただし、当該保有する個人情報の第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、提供者の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。

 (27)  研究を行う機関の長は、第2の6(25)に基づき求められた保有する個人情報の全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は第2の6(26)に基づき求められた保有する個人情報の全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、提供者又は代諾者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

 (28)  研究を行う機関の長は、第2の6(22)、(23)、(24)又は(27)により、提供者又は代諾者等から求められた措置の全部又は一部について、その措置をとらない旨を通知する場合又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合は、提供者又は代諾者等に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。

 (29)  研究を行う機関の長は、第2の6(22)、(23)、(24)、(25)又は(26)による求め(以下「開示等の求め」という。)を受け付ける方法として、次に掲げる事項を定めることができる。この場合において、提供者又は代諾者等は、当該方法に従って、開示等の求めを行わなければならない。
 開示等の求めの申出先
 開示等の求めに際して提出すべき書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。)の様式その他の開示等の求めの方式
 開示等の求めをする者が提供者又は代諾者等であることの確認の方法
 手数料の徴収方法

 (30)  研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有する個人情報を特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、研究を行う機関の長は、提供者又は代諾者等が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有する個人情報の特定に資する情報の提供その他提供者又は代諾者等の利便を考慮した適切な措置をとらなければならない。

 (31)  研究を行う機関の長は、第2の6(29)及び(30)に基づき開示等の求めに応じる手続を定めるに当たっては、提供者又は代諾者等に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。

 (32)  研究を行う機関の長は、第2の6(22)による利用目的の通知又は第2の6(23)による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる。
 その場合は、実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない。

 (33)  研究を行う機関の長は、苦情等の窓口を設置する等、提供者等からの苦情や問い合わせ等に適切かつ迅速に対応しなければならない。
 なお、研究を行う機関の長は、苦情等の窓口が、提供者等にとって利用しやすいものとなるよう、担当者の配置、利用手続等について配慮しなければならない。

 (34)  試料等の提供が行われる機関の長は、試料等を外部の機関に提供する際には、原則として試料等を匿名化しなければならない。
 また、試料等の提供が行われる機関内のヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う研究部門(以下「試料等の提供が行われる機関における研究部門」という。)に試料等を提供する際にも、原則として匿名化しなければならない。
 ただし、次に掲げる要件のすべてを満たしている場合には匿名化せずに試料等を提供することができる。
 提供者又は代諾者等が、匿名化を行わずに外部の機関又は試料等の提供が行われる機関における研究部門に提供することに同意していること。
 倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において、匿名化を行わずに、外部の機関又は試料等の提供が行われる機関における研究部門に提供することが認められていること。

 (35)  試料等の提供が行われる機関の長は、必要に応じ、適切な遺伝カウンセリング体制の整備又は遺伝カウンセリングについての説明及びその適切な施設の紹介等により、提供者及びその家族又は血縁者が遺伝カウンセリングを受けられるよう配慮しなければならない。

   < 遺伝カウンセリング実施施設の紹介に関する細則>
 試料等の提供が行われる機関において、遺伝カウンセリング体制が整備されていない場合に、提供者及びその家族又は血縁者から遺伝カウンセリングの求めがあったときには、そのための適切な施設を紹介することとする。

 (36)  試料等の提供が行われる機関の長は、提供者又は代諾者等から得たインフォームド・コンセントの同意書について、試料等の提供が行われる機関の研究責任者や個人情報管理者等、厳格な管理が可能な者に管理を行わせなければならない。

   研究責任者の責務

 (1)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施に当たって、あらかじめ研究計画書を作成し、研究を行う機関の長に許可を求めなければならない。研究計画書を変更しようとする場合も同様とする。

   < 研究計画書を変更する場合に関する細則>
 インフォームド・コンセント取得後に、研究目的を含めて研究計画書を変更した場合、変更前に当該研究に利用するために提供を受けた試料等については、第4の13(研究実施前提供試料等の利用)を適用する。

 (2)  研究責任者は、研究計画書の作成に当たり、実施しようとしているヒトゲノム・遺伝子解析研究に伴い提供者等に予想される様々な影響等を踏まえ、研究の必要性、提供者等の不利益を防止するための研究方法等を十分考慮しなければならない。

   < 提供者が精神障害、知的障害等を伴う疾患等を有する場合に関する細則>
 提供者が、治療又は予防方法が確立していない単一遺伝子疾患等であって、精神障害、知的障害又は重篤な身体障害を伴うものを有する場合には、研究の必要性、当該提供者に対する医学的・精神的影響及びそれらに配慮した研究方法の是非等について、研究責任者は特に慎重に検討し、また、倫理審査委員会は、特に慎重に審査することとする。

 (3)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の特色に十分配慮して研究計画書を作成しなければならない。特に、インフォームド・コンセントの手続及び方法、個人情報の保護の方法、研究により予測される結果及びその開示の考え方、試料等の保存及び使用の方法並びに遺伝カウンセリングの考え方については、明確に記載しなければならない。

   < 研究計画書に記載すべき事項に関する細則>
 研究計画書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

 提供者を選ぶ方針(合理的に選択していることがわかる具体的な方法、提供者が疾病や薬剤反応性異常を有する場合等にあっては、病名又はそれに相当する状態像の告知方法等。)
 研究の意義、目的、方法(対象とする疾患、分析方法等。将来の追加、変更が予想される場合はその旨。単一遺伝子疾患等の場合には研究の必要性、不利益を防止するための措置等の特記事項等。)、期間、予測される結果及び危険、個人情報の保護の方法(匿名化しない場合の取扱いを含む。)
 試料等の種類、量
 共同研究機関の名称
 研究責任者等の氏名
 インフォームド・コンセントのための手続及び方法
 インフォームド・コンセントを受けるための説明文書及び同意文書
 提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合、その研究の重要性及び提供者から試料等の提供を受けなければ研究が成り立たない理由並びに代諾者等を選定する考え方
 遺伝情報の開示に関する考え方(必要に応じ開示の求めを受け付ける方法を含む)
 研究実施前提供試料等を使用する場合の同意の有無、内容、提供時期、本指針への適合性
 他の研究機関から試料等又は遺伝情報の提供を受ける場合のインフォームド・コンセントの内容
 試料等又は遺伝情報を外部の機関に提供する場合や研究の一部を委託する場合の匿名化の方法等の事項(契約の内容を含む。)
 試料等の保存方法及びその必要性(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)
 ヒト細胞・遺伝子・組織バンクに試料等を提供する場合には、バンク名、匿名化の方法等
 試料等の廃棄方法及びその際の匿名化の方法
 遺伝カウンセリングの必要性及びその体制
 研究資金の調達方法

 (4)  研究責任者は、許可された研究計画書に盛りこまれた事項を、すべての研究担当者に遵守させる等、研究担当者が適正にヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施するよう監督しなければならない。

 (5)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について、研究を行う機関の長に1年に1回以上、定期的に文書で報告しなければならない。

   < 報告事項に関する細則>
 研究責任者が研究を行う機関の長に対して行う研究の実施状況の定期報告事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

 提供された試料等の数、試料等の保管の方法
 外部の機関への試料等又は遺伝情報の提供数、提供理由
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究が実施された試料等の数
 研究結果、研究の進捗状況
 問題の発生の有無
 試料等の提供が行われる機関にあっては、上記のほか、匿名化を行った試料等の数

 (6)  研究責任者は、地域住民等一定の特徴を有する集団を対象に、地域住民等の遺伝的特質を明らかにする可能性がある研究を実施する場合には、研究実施前に地域住民等を対象とする説明会を行うこと等により、研究の内容及び意義について説明し、研究に対する理解を得るよう努めるとともに、研究実施中においても、研究に関する情報提供を行うこと等により地域住民等との継続的な対話に努めなければならない。

 (7)  研究責任者は、原則として、匿名化された試料等又は遺伝情報を用いて、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施しなければならない。
 ただし、提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。

 (8)  研究責任者は、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を原則として外部の機関に提供してはならない。
 ただし、提供者又は代諾者等が匿名化を行わずに外部の機関へ提供することに同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において認められている場合には、匿名化されていない試料等又は遺伝情報を外部の機関へ提供することができる。

 (9)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務の一部を委託する場合は、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長の許可を受けた上で行うものとし、その旨を文書により、受託者に示すものとする。

 (10)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の業務の一部を委託する場合において、試料等又は遺伝情報を受託者に提供する際は、原則として試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。
 ただし、提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において認められている場合には、匿名化せずに試料等又は遺伝情報を提供することができる。

 (11)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進捗状況及びその結果を、定期的に及び提供者等の求めに応じて説明し、又は公表しなければならない。
 ただし、提供者等の人権の保障や知的財産権の保護に必要な部分については、この限りでない。

   個人情報管理者の責務

 (1)  個人情報管理者(分担管理者を含む。以下第2の8において同じ。)は、原則として、研究計画書に基づき、研究責任者からの依頼により、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に試料等又は遺伝情報を匿名化しなければならない。
 ただし、提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において認められている場合には、試料等又は遺伝情報の匿名化を行わないことができる。

 (2)  個人情報管理者は、匿名化の際に取り除かれた個人情報を、原則として外部の機関及び試料等の提供が行われる機関における研究部門に提供してはならない。
 ただし、提供者又は代諾者等が同意し、かつ、倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長が許可した研究計画書において認められている場合には、個人情報を外部の機関及び試料等の提供が行われる機関における研究部門に提供することができる。

 (3)  個人情報管理者は、匿名化作業の実施のほか、匿名化作業に当たって作成した対応表等の管理、廃棄を適切に行い、個人情報が含まれている情報が漏えいしないよう厳重に管理しなければならない。

   倫理審査委員会の責務及び構成

 (1)  倫理審査委員会は、本指針に基づき、研究計画の実施の適否等について、倫理的観点とともに科学的観点も含めて審査し、研究を行う機関の長に対して文書により意見を述べなければならない。

 (2)  倫理審査委員会は、研究を行う機関の長に対して、実施中の研究に関して、その研究計画の変更、中止その他必要と認める意見を述べることができる。

 (3)  倫理審査委員会の委員は、職務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を辞した後も、同様とする。

 (4)  倫理審査委員会は、独立の立場に立って、学際的かつ多元的な視点から、様々な立場からの委員によって、公正かつ中立的な審査を行えるよう、適切に構成し運営されなければならない。

   < 細則1(倫理審査委員会の構成に関する細則)>
 倫理・法律を含む人文・社会科学面の有識者、自然科学面の有識者、一般の立場の者から構成される必要がある。
 外部委員を半数以上置くことが望ましいが、その確保が困難な場合には、少なくとも複数名置かれる必要がある。
 外部委員の半数以上は、人文・社会科学面の有識者又は一般の立場の者である必要がある。
 男女両性で構成される必要がある。

   < 細則2(倫理審査委員会の運営に関する細則)>
 審議又は採決の際には、人文・社会科学面又は一般の立場の委員が1名以上出席する必要がある。
 研究を行う機関の長、審査対象となる研究の研究責任者及び研究担当者は、その審議又は採決に参加してはならない。ただし、倫理審査委員会の求めに応じて、会議に出席し、説明することができる。

   < 細則3(運営規則に関する細則)>
 以下の事項に関する運営規則が定められなければならない。

 委員長の選任方法
 会議の成立要件
 議決方法
 審査記録の保存期間
 公開に関する事項

 (5)  倫理審査委員会は、その決定により、委員長があらかじめ指名した委員又はその下部組織による迅速審査手続を設けることができる。迅速審査の結果については、その審査を行った委員以外のすべての委員又は上部組織である倫理審査委員会に報告されなければならない。

   < 迅速審査手続に関する細則>
1.  迅速審査手続による審査に委ねることができる事項は、一般的に以下のとおりとする。
 研究計画の軽微な変更の審査
 既に倫理審査委員会において承認されている研究計画に準じて類型化されている研究計画の審査
 共同研究であって、既に主たる研究を行う機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を、機関特有の問題がなく、他の共同研究機関が実施しようとする場合の研究計画の審査
2.  迅速審査の結果の報告を受けた委員は、委員長に対し、理由を付した上で、当該事項について、改めて倫理審査委員会における審査を求めることができる。この場合において、委員長は、相当の理由があると認めるときは、倫理審査委員会を速やかに開催し、当該事項について審査することとしなければならない。

 (6)  倫理審査委員会は、その組織に関する事項や運営に関する規則を公開するとともに、議事の内容についても原則として公開しなければならない。

   < 細則1(組織に関する事項の公開に関する細則)>
 組織に関する公開すべき事項は、以下のとおりとする。

 倫理審査委員会(下部組織を含む。)の構成
 委員の氏名、所属及びその立場

   < 細則2(議事内容の公開に関する細則)>
1.  議事の内容は、それが具体的に明らかとなるよう公開する必要がある。
2.  提供者等の人権、研究の独創性、知的財産権の保護、競争上の地位の保全に支障が生じるおそれのある部分は、倫理審査委員会の決定により非公開とすることができる。この場合、倫理審査委員会は、非公開とする理由を公開する必要がある。



第3  提供者に対する基本姿勢

 10  インフォームド・コンセント

 (1)  研究責任者(外部の機関又は研究を行う機関内の他部門から試料等の提供を受けて研究を実施する者を除く。以下、第3の10((9)及び(12)を除く。)において同じ。)は、試料等の提供の依頼を受ける人を、不合理、不当又は不公平な方法で選んではならない。

 (2)  試料等の提供の依頼を受ける人が、疾病や薬剤反応性異常を有する場合及びそれらの可能性のある場合には、その者が病名又はそれに相当する状態像等の告知を受けていなければならない。

 (3)  研究責任者は、提供者に対して、事前に、その研究の意義、目的、方法、予測される結果、提供者が被るおそれのある不利益、試料等の保存及び使用方法等について十分な説明を行った上で、自由意思に基づく文書による同意(インフォームド・コンセント)を受けて、試料等の提供を受けなければならない。
 ただし、人の生命又は身体の保護のために、緊急に個人情報又は試料等の提供を受ける必要がある場合は、インフォームド・コンセントを受けることを要しない。

 (4)  研究責任者は、インフォームド・コンセントを受ける際には、偽りその他不正な手段を用いてはならない。
 また、試料等の提供を受ける際には、提供者に不安を覚えさせることがないよう配慮しなければならない。

   < インフォームド・コンセントを受ける際の配慮事項に関する細則>
 インフォームド・コンセントを受ける際に配慮すべき事項は、提供者の情報に必要以上に接することの防止等である。

 (5)  研究責任者は、インフォームド・コンセントを受けるに当たっては、試料等の利用目的を提供者若しくは代諾者等に通知し、又は公表することにより提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害してはならない。

 (6)  研究責任者は、インフォームド・コンセントを受けるのに必要な業務を自ら実施することができない場合、試料等の提供が行われる機関の研究者等のうち、研究の内容及び意義等について十分に理解している者に、研究責任者の指導・監督の下、当該業務の全部又は一部を行わせることができる。

 (7)  研究責任者は、当該機関に属する研究者等以外の者(以下「履行補助者」という。)との間で、業務の範囲と責任を明らかにする契約を締結することにより、当該履行補助者にインフォームド・コンセントを受けるのに必要な説明を行わせ、その他インフォームド・コンセントを受けるのに必要な業務の一部を行わせることができる。
 この場合、研究責任者は、研究計画書にその旨を記載するとともに、必要に応じ当該履行補助者の研修の機会を確保しなければならない。

   < インフォームド・コンセントの履行補助者に関する細則>
1.  試料等の提供が行われる機関の研究責任者は、試料等の提供が行われる機関に属する者以外の者にインフォームド・コンセントを受けることを行わせる際には、履行補助者を置くこと及び必要に応じて研修方法等について研究計画書に記載し、当該研究計画書は試料等の提供が行われる機関の倫理審査委員会により承認され、試料等の提供が行われる機関の長の許可を受けるものとする。
2.  試料等の提供者又は代諾者等から同意を受けることを含めて行わせる場合は、履行補助者は、原則として、医師、薬剤師等、刑法第134条、国家公務員法第100条及びその他の法律により業務上知り得た秘密の漏えいを禁じられている者が行う場合に限る。

 (8)  研究責任者は、提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、その実施しようとしている研究の重要性が高く、かつ、その人からの試料等の提供を受けなければ研究が成り立たないと倫理審査委員会が承認し、研究を行う機関の長が許可した場合に限り、提供者の代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができる。

   < 細則1(代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合の取扱いに関する細則)>
 提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難であり、代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合及びその取扱いは、以下のとおりとし、いずれの場合も、研究責任者は、研究の重要性、提供者から試料等の提供を受けなければ研究が成り立たない理由及び代諾者等を選定する考え方を研究計画書に記載し、当該研究計画書は倫理審査委員会により承認され、研究を行う機関の長の許可を受けるものとする。

 提供者が認知症等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合
 未成年者の場合。ただし、この場合においても、研究責任者は、提供者にわかりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるよう努めることとする。また、提供者が16歳以上の場合には、代諾者とともに、提供者からのインフォームド・コンセントも受けることとする。
 提供者が死者であって、その生前における明示的な意思に反していない場合

   < 細則2(代諾者の選定の基本的考え方に関する細則)>
 研究責任者は、代諾者について、一般的には、以下に定める人の中から、提供者の家族構成や置かれている状況等を勘案し、提供者の推測される意思や利益を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に代諾者を選定する考え方を記載する必要がある。

1.  任意後見人、親権者、後見人や保佐人が定まっているときはその人
2.  提供者の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる人

   < 細則3(遺族の選定の基本的な考え方に関する細則)>
 研究責任者は、遺族について、一般的には、以下に定める人の中から、死亡した提供者の家族構成や置かれていた状況、慣習等を勘案し、提供者の生前の推測される意思を代弁できると考えられる人が選定されることを基本として、研究計画書に遺族を選定する考え方を記載する必要がある。

 死亡した提供者の配偶者、成人の子、父母、成人の兄弟姉妹若しくは孫、祖父母、同居の親族又はそれらの近親者に準ずると考えられる人

 (9)  提供者又は代諾者等は、インフォームド・コンセントを、いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができる。

 (10)  研究責任者は、提供者又は代諾者等からインフォームド・コンセントの撤回があった場合には、原則として、当該提供者に係る試料等及び研究結果を匿名化して廃棄し、その旨を提供者又は代諾者等に文書により通知しなければならない。また、提供者又は代諾者等が廃棄以外の処置を希望する場合には、特段の理由がない限り、これに応じなければならない。
 ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たす場合は、試料等及び研究結果を廃棄しないことができる。
 当該試料等が連結不可能匿名化されている場合
 廃棄しないことにより個人情報が明らかになるおそれが極めて小さく、かつ廃棄作業が極めて過大である等の事情により廃棄しないことが倫理審査委員会において承認され、研究を行う機関の長に許可された場合
 研究結果が既に公表されている場合

   < 研究結果が公表されている場合に関する細則>
 第3の10(10)のウに関しては、試料等の廃棄を前提とする場合に限る。

 (11)  試料等の提供が行われる機関の研究責任者は、提供者又は代諾者等からのインフォームド・コンセントを受ける手続においては、提供者又は代諾者等に対し、十分な理解が得られるよう、必要な事項を記載した文書を交付して説明を行わなければならない。提供者が単一遺伝子疾患等(関連遺伝子が明確な多因子疾患を含む。)である場合には、遺伝カウンセリングの利用に関する情報を含めて説明を行うとともに、必要に応じて遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。

   < 説明文書の記載に関する細則>
 提供者又は代諾者等に対する説明文書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

 試料等の提供は任意であること
 試料等の提供の依頼を受けた人は、提供に同意しないことにより不利益な対応を受けないこと
 提供者又は代諾者等は、自らが与えたインフォームド・コンセントについて、いつでも不利益を受けることなく文書により撤回することができること(必要に応じて撤回の求めを受け付ける方法を含む。)
 提供者又は代諾者等により同意が撤回された場合には、当該撤回に係る試料等及び研究結果が連結不可能匿名化されている場合等を除き、廃棄されること
 提供者として選ばれた理由
 研究の意義、目的及び方法(対象とする疾患、分析方法等。将来の追加、変更が予想される場合はその旨。単一遺伝子疾患等の場合には研究の必要性、不利益を防止するための措置等の特記事項等。)、期間
 共同研究において個人情報を他機関と共同して用いる場合は、(1)共同であること、(2)共同して利用される個人情報の項目、(3)共同して利用する者の範囲、(4)利用する者の利用目的及び(5)当該個人情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称
 長期間継続する研究の場合、研究を継続して実施するために必要な組織、体制等に対する研究機関としての考え方
 提供者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合、その研究の重要性及び提供者から試料等の提供を受けなければ研究が成り立たない理由
 研究責任者の氏名及び職名
 予測される研究結果及び提供者等に対して予測される危険や不利益(社会的な差別等社会生活上の不利益も含む。)
 提供者及び代諾者等の希望により、他の提供者等の個人情報の保護や研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で研究計画及び研究方法についての資料を入手又は閲覧することができること
 提供を受けた試料等又はそれから得られた遺伝情報についての連結可能匿名化又は連結不可能匿名化の別及び匿名化の具体的方法。匿名化できない場合にあっては、その旨及び理由
 試料等又はそれから得られた遺伝情報を他の機関へ提供する可能性及びその場合は、倫理審査委員会により、個人情報の取扱い、提供先の機関名、提供先における利用目的が妥当であることについて、審査されていること
 研究の一部を委託する場合の匿名化の方法等
 遺伝情報の開示に関する事項(非開示にする場合はその理由)
 個人情報の開示に関する事項(受付先、受け付ける方法、提供者又は代諾者等であることの確認の方法、開示に当たって手数料が発生する場合はその旨を含む。)
 将来、研究の成果が特許権等の知的財産権を生み出す可能性があること。特許権等の知的財産権を生み出した場合の想定される帰属先
 試料等から得られた遺伝情報は、匿名化された上、学会等に公表され得ること
 試料等の保存及び使用方法
 研究終了後の試料等の保存、使用又は廃棄の方法(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)
 試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供し、一般的に研究用資源として分譲することがあり得る場合には、バンクの学術的意義、当該バンクが運営されている機関の名称、提供される試料等の匿名化の方法及びバンクの責任者の氏名
 遺伝カウンセリングの利用に係る情報(単一遺伝子疾患等の場合には、遺伝カウンセリングが利用可能であること等)
 研究資金の調達方法
 試料等の提供は無償であること
 問い合わせ(個人情報の訂正、同意の撤回等)、苦情等の窓口の連絡先等に関する情報

 (12)  他の研究を行う機関から試料等又は遺伝情報の提供を受ける研究責任者は、当該試料等又は遺伝情報に関するインフォームド・コンセントの内容を当該他の研究を行う機関からの文書等によって確認しなければならない。

 (13)  研究責任者は、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究又は関連する医学研究に使用することを想定して、提供者又は代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける場合には、その時点において予想される具体的研究目的を明らかにするとともに、個人情報が、匿名化の可能性を含めて、どのように管理され、かつ、保護されるかを説明し、理解を得なければならない。

 11  遺伝情報の開示

 (1)  研究責任者は、個々の提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、原則として開示しなければならない。
 ただし、遺伝情報を提供することにより、提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがあり、開示しないことについて提供者のインフォームド・コンセントを受けている場合には、その全部又は一部を開示しないことができる。
 なお、開示しない場合には、当該提供者に遺伝情報を開示しない理由を説明しなければならない。

   < 遺伝情報の開示に関する細則>
1.  研究責任者は、開示しない理由を知らせることにより、提供者の精神的負担になり得る場合等、説明を行うことが必ずしも適当でないことがあり得ることから、事由に応じて慎重に検討の上、対応することとする。
2.  研究責任者は、提供者からインフォームド・コンセントを受ける際に、遺伝情報の開示をしないことにつき同意が得られているにもかかわらず、当該提供者が事後に開示を希望した場合は、以下の場合を除き、当該提供者の遺伝情報を開示することとする。
 多数の人又は遺伝子の遺伝情報を相互に比較することにより、ある疾患と遺伝子の関連やある遺伝子の機能を明らかにしようとするヒトゲノム・遺伝子解析研究等であって、当該情報がその人の健康状態等を評価するための情報としての精度や確実性に欠けており、開示することにより提供者又は第三者の生命、身体、財産その他権利利益を害するおそれがあることを理由に開示しないことについて、研究計画書に記載され、当該研究計画書が倫理審査委員会の承認を受け、研究を行う機関の長により許可された場合
3.  研究責任者は、未成年者の提供者が、自らの遺伝情報の開示を希望している場合には、開示した場合の精神的な影響等を十分考慮した上で当該未成年者に開示することができる。
 ただし、未成年者が16歳未満の場合には、その代諾者の意向を確認し、これを尊重しなければならない。
 また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、提供者が自らを傷つけたり、提供者に対する差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究を行う機関の長に報告しなければならない。研究を行う機関の長は、開示の前に、必要に応じ倫理審査委員会の意見や未成年者とその代諾者との話し合いを求めた上、開示の可否並びにその内容及び方法についての決定をすることとする。
4.  遺伝情報を開示しない旨の決定をした場合には、その旨を、開示を求めた提供者に書面にて通知することとする。

 (2)  研究責任者は、個々の提供者の遺伝情報が明らかとなるヒトゲノム・遺伝子解析研究に関して、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望していない場合には、開示してはならない。

   < 遺伝情報の非開示に関する細則>
 研究責任者は、提供者が自らの遺伝情報の開示を希望していない場合であっても、その遺伝情報が提供者及び血縁者の生命に重大な影響を与えることが判明し、かつ、有効な対処方法があるときは、研究を行う機関の長に報告することとする。
 研究を行う機関の長は、特に下記の事項についての考慮を含む開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見を求め、それに基づき、研究責任者、提供者の診療を担当する医師及びその医師が所属する医療機関の長と協議することとする。その結果を踏まえ、研究責任者は提供者に対し、十分な説明を行った上で、当該提供者の意向を確認し、なお開示を希望しない場合には、開示してはならないこととする。

 提供者及び血縁者の生命に及ぼす影響
 有効な治療法の有無と提供者の健康状態
 血縁者が同一の疾患等に罹患している可能性
 インフォームド・コンセントに際しての研究結果の開示に関する説明内容

 (3)  研究責任者は、提供者の同意がない場合には、提供者の遺伝情報を、提供者以外の人に対し、原則として開示してはならない。

   < 提供者以外の人に対する開示に関する細則>
1.  代諾者(2.及び3.の者を除く。)が提供者の遺伝情報の開示を希望する場合には、その代諾者が開示を求める理由又は必要性を倫理審査委員会に示した上、当該委員会の意見に基づき研究を行う機関の長が対応を決定しなければならない。この決定に当たっては、次に掲げる要件のいずれかを満たしていることを確認することとする。
1)  人の生命、身体又は財産保護のために必要である場合であって、提供者の同意を得ることが困難であること。
2)  公衆衛生の向上に特に必要である場合であって、提供者の同意を得ることが困難であること
2.  遺族(血縁者)が提供者の遺伝情報の開示を希望する場合には、その遺族(血縁者)が開示を求める理由又は必要性を倫理審査委員会に示した上、当該委員会の意見に基づき研究を行う機関の長が対応を決定することとする。
3.  研究責任者は、提供者が未成年者の場合に、その未成年者の代諾者から当該未成年者の遺伝情報の開示の求めがあった場合には、当該代諾者にこれを開示することができる。ただし、未成年者が16歳以上の場合には、その意向を確認し、これを尊重しなければならない。また、研究責任者は、未成年者の遺伝情報を開示することによって、提供者に対する差別、養育拒否、治療への悪影響が心配される場合には、研究を行う機関の長に報告しなければならない。研究を行う機関の長は、開示の前に、必要に応じ、開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見や未成年者とその代諾者との話し合いを求めることとする。
4.  研究責任者は、提供者が自らの遺伝情報の血縁者への開示を希望していない場合であっても、次に掲げる要件のすべてを満たす場合には、提供者の血縁者に、提供者の遺伝情報から導かれる遺伝的素因を持つ疾患や薬剤応答性に関する情報を伝えることができる。
1)  提供者の遺伝情報が、提供者の血縁者の生命に重大な影響を与える可能性が高いことが判明し、かつ、有効な対処方法があること
2)  研究責任者から1)の報告を受けた研究を行う機関の長が、特に下記の事項についての考慮を含む開示の可否並びにその内容及び方法についての倫理審査委員会の意見を求め、それに基づき、研究責任者と協議し、必要な情報を血縁者に提供すべきとの結論となること
 血縁者が同一の疾患等に罹患している可能性
 血縁者の生命に及ぼす影響
 有効な治療法の有無と血縁者の健康状態
 インフォームド・コンセントに際しての研究結果の開示に関する説明内容
3)  2)の結論を踏まえ、研究責任者は改めて提供者の理解を求め、血縁者に対する必要な情報の提供につき承諾を得られるよう努めること
4)  提供者の血縁者に対し、十分な説明を行った上で、情報提供を希望する意向を確認すること

 (4)  研究責任者は、単一遺伝子疾患等に関する遺伝情報を開示しようとする場合には、医学的又は精神的な影響等を十分考慮し、診療を担当する医師との緊密な連携の下に開示するほか、必要に応じ、遺伝カウンセリングの機会を提供しなければならない。

   < 注>
 開示する遺伝情報がいかなる意味を持つかは、診療に属する部分が大きく、診療を担当する医師、特に遺伝医学を専門とする医師との緊密な連携が求められる。従って、診療を担当する医師が診療の一環として、研究責任者の依頼を受けて開示すること又はその医師の指示の下に研究責任者が開示すること等が考えられる。

 12  遺伝カウンセリング

 (1)  目的
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究における遺伝カウンセリングは、対話を通じて、提供者及びその家族又は血縁者に正確な情報を提供し、疑問に適切に答え、その者の遺伝性疾患等に関する理解を深め、ヒトゲノム・遺伝子解析研究や遺伝性疾患等をめぐる不安又は悩みにこたえることによって、今後の生活に向けて自らの意思で選択し、行動できるよう支援し、又は援助することを目的とする。

 (2)  実施方法
 遺伝カウンセリングは、遺伝医学に関する十分な知識を有し、遺伝カウンセリングに習熟した医師、医療従事者等が協力して実施しなければならない。

   < 注>
 試料等の提供が行われる機関の長に対する遺伝カウンセリング体制の整備等に関する事項は第2の6(35)に、研究計画書における遺伝カウンセリングの考え方の記載に関する事項は第2の7(3)に、インフォームド・コンセントを受ける際の説明事項及び遺伝カウンセリングの機会提供に関する事項は第3の10(11)に、遺伝情報の開示の際の遺伝カウンセリングの機会提供に関する事項は第3の11(4)に、それぞれ規定されている。



第4  試料等の取扱い

 13  研究実施前提供試料等の利用

 (1)  研究を行う機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に提供され、かつ、保存されている試料等の利用の可否は、提供者又は代諾者等の同意の有無又はその内容及び試料等が提供された時期を踏まえ、以下、(2)から(5)までに定めるところにより、倫理審査委員会の承認を得た上で、研究を行う機関の長が決定する。

 (2)  旧指針の施行後に提供された研究実施前提供試料等については、本指針の理念を踏まえて、研究を行う機関の長及び研究責任者は、その利用について慎重に判断し、また、倫理審査委員会は、研究における利用の可否を慎重に審査しなければならない。

   < 注>
 旧指針の施行日は平成13年4月1日である。

 (3)  A群試料等(試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用を含む同意が与えられている試料等)については、その同意の範囲内でヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用することができる。

   < A群試料等の利用に関する細則>
 研究を行う機関の長及び研究責任者は、A群試料等が提供された時点における同意が、当該試料を利用して新たに行おうとするヒトゲノム・遺伝子解析研究の研究目的と同じ研究目的に対して与えられたものであることを確認することとする。
 また、他のヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用に関し、そのヒトゲノム・遺伝子解析研究の意義、研究目的又は匿名化等の方法等に、どの程度言及された同意であったか、また、同意が得られた時期等にも配慮して判断しなければならない。
 さらに、倫理審査委員会も、同様の事項に配慮して、その利用の取扱いを審査しなければならない。

 (4)  B群試料等(試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている試料等)は、提供者又は代諾者等からヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用についての同意を受けない限り、原則として、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用してはならない。
 ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たすとともに、倫理審査委員会の承認を受け、かつ、研究を行う機関の長により許可された場合についてはこの限りでない。
 連結不可能匿名化されていることにより、提供者等に危険や不利益が及ぶおそれがない場合
 連結可能匿名化されており、かつ、B群試料等が提供された時点における同意が、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる場合であって、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の目的を提供者に通知し、又は公表した場合

   < B群試料等の利用に関する細則>
 第4の13(4)のイに関して、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の研究目的を提供者に通知し、又は公表することにより、提供者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するそれがある場合、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の研究目的を提供者に通知し、又は公表することを要しない。

 (5)  C群試料等(試料等の提供時に、研究に利用することの同意が与えられていない試料等)は、提供者又は代諾者等からヒトゲノム・遺伝子解析研究への利用についての同意を受けない限り、原則として、ヒトゲノム・遺伝子解析研究に利用してはならない。
 ただし、次に掲げる要件のいずれかを満たすとともに、倫理審査委員会の承認を受け、かつ、研究を行う機関の長により許可された場合についてはこの限りでない。
 なお、B群試料等であって、提供された時点における同意がヒトゲノム・遺伝子解析研究の目的と相当の関連性を有すると合理的に認められないものはC群試料等とみなす。
 連結不可能匿名化されていることにより、提供者等に危険や不利益が及ぶおそれがない場合
 連結可能匿名化されており、かつ、次に掲げる要件のすべてを満たしている場合
(ア)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究により提供者等に危険や不利益が及ぶおそれが極めて少ないこと。
(イ)  その試料等を用いたヒトゲノム・遺伝子解析研究が公衆衛生の向上のために必要がある場合であること。
(ウ)  他の方法では事実上、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施が不可能であること。
(エ)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施状況について情報の公開を図り、併せて提供者又は代諾者等に問い合わせ及び試料等の研究への利用を拒否する機会を保障するための措置が講じられていること。
(オ)  提供者又は代諾者等の同意を得ることが困難であること。
 法令に基づく場合

 14  試料等の保存及び廃棄の方法

 (1)  保存の一般原則 研究責任者は、研究を行う機関内で試料等を保存する場合には、提供者又は代諾者等の同意事項を遵守し、研究計画書に定められた方法に従わなければならない。

 (2)  ヒト細胞・遺伝子・組織バンクへの提供 研究責任者は、試料等をヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合には、当該バンクが試料等を一般的な研究用試料等として分譲するに当たり、連結不可能匿名化がなされることを確認するとともに、バンクに提供することの同意を含む提供者又は代諾者等の同意事項を遵守しなければならない。

 (3)  試料等の廃棄 研究責任者は、研究計画書に従い自ら保存する場合及びヒト細胞・遺伝子・組織バンクに提供する場合を除き、試料等の保存期間が研究計画書に定めた期間を過ぎた場合には、提供者又は代諾者等の同意事項を遵守し、匿名化して廃棄しなければならない。



第5  見直し

 15  見直し

 この指針は、必要に応じ、又は施行後5年を目途としてその全般に関して検討を加えた上で、見直しを行うものとする。



第6  用語の定義

 16  用語の定義

 (1)  試料等
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究に用いようとする血液、組織、細胞、体液、排泄物及びこれらから抽出した人のDNA等の人の体の一部並びに提供者の診療情報、その他の研究に用いられる情報(死者に係るものを含む。)をいう。
 ただし、学術的な価値が定まり、研究実績として十分に認められ、研究用に広く一般に利用され、かつ、一般に入手可能な組織、細胞、体液及び排泄物並びにこれらから抽出した人のDNA等は、含まれない。

   < 注1>
 臓器の移植に関する法律(平成9年法律第104号)に基づいて脳死と判定された人からの試料等の提供については、臓器の摘出により心臓の拍動停止、呼吸停止及び瞳孔散大という「死の三徴候」の状態を迎えた後に試料等の提供を受けることで足りることを前提としている。

   < 注2>
 受精卵、胚、胎児、ES細胞等の提供を受けて研究を実施することについては、本指針の趣旨を踏まえることは必要であるが、別途、倫理上の観点等からの慎重な検討が必要であり、本指針を充足しているのみでそれらの研究を実施することを適当とする趣旨ではない。

 (2)  診療情報
 診断及び治療を通じて得られた疾病名、投薬名、検査結果等の情報をいう。

 (3)  ヒトゲノム・遺伝子解析研究
 提供者の個体を形成する細胞に共通して存在し、その子孫に受け継がれ得るヒトゲノム及び遺伝子の構造又は機能を、試料等を用いて明らかにしようとする研究をいう。本研究に用いる試料等の提供のみが行われる場合も含まれる。
 薬事法(昭和35年法律第145号)に基づき実施される医薬品の臨床試験及び市販後調査、又は医療機器の製造、輸入承認申請のために実施される臨床試験及び市販後調査については、同法に基づき、既に医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(平成9年厚生省令第28号)及び医薬品の市販後調査の基準に関する省令(平成9年厚生省令第10号)により規制されており、本指針の対象としない。

   < 本指針の対象とするヒトゲノム・遺伝子解析研究の範囲に関する細則>
1.  本指針の対象とするヒトゲノム・遺伝子解析研究は、提供者の白血球等の組織を用いて、DNA又はmRNAから作られた相補DNAの塩基配列等の構造又は機能を解析するものであり、その主たるものとして、いわゆる生殖細胞系列変異又は多型(germline mutation or polymorphism)を解析する研究がある。一方、がん等の疾病において、病変部位にのみ後天的に出現し、次世代には受け継がれないゲノム又は遺伝子の変異を対象とする研究(いわゆる体細胞変異(somatic mutation)を解析する研究をいい、変異の確認のために正常組織を解析する場合を含む。)、遺伝子発現に関する研究及びたんぱく質の構造又は機能に関す研究については、原則として本指針の対象としない。ただし、このような研究であっても、子孫に受け継がれ得るゲノム又は遺伝子に関する情報を明らかにする目的で研究が実施される場合には、本指針の対象とする。なお、本指針の対象としないこれらの体細胞変異、遺伝子発現及びたんぱく質の構造又は機能に関する研究においても、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。
2.  1.で示した本指針の対象としない研究を行う過程で、偶然の理由により遺伝情報(遺伝情報を得るに当たって使用された試料等を含む。)が得られた場合には、ヒトゲノム・遺伝子解析研究目的での使用、適切な管理(個人情報に該当する場合は安全管理措置、個人情報に該当しない匿名化情報の場合には適切な取扱い)、保存、匿名化して廃棄する等、その試料等の取扱いは、研究を行う機関の長が倫理審査委員会に諮った上で決定することとする。
3.  主たる内容がヒトゲノム・遺伝子解析研究ではないが、一部においてヒトゲノム・遺伝子解析研究が実施される研究、診療において得られた試料等又は遺伝情報を二次的に利用する研究を含む。
4.  教育目的で実施される生物実習等、構造や機能が既知の遺伝子領域について実施される遺伝子構造解析実習で、実習目的以外には試料等や解析結果の利用が行われないものについては、本指針の対象としない。ただし、これらの目的で遺伝子解析を行う場合においても、本指針の趣旨を踏まえた適切な対応が望まれる。

 (4)  遺伝情報
 試料等を用いて実施されるヒトゲノム・遺伝子解析研究の過程を通じて得られ、又は既に試料等に付随している子孫に受け継がれ得る情報で、個人の遺伝的特徴及び体質を示すものをいう。

 (5)  匿名化
 提供者の個人情報が法令、本指針又は研究計画に反して外部に漏えいしないよう、その個人情報から個人を識別する情報の全部又は一部を取り除き、代わりに当該提供者とかかわりのない符号又は番号を付すことをいう。試料等に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿等の他で入手できる情報と組み合わせることにより、当該提供者を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、当該提供者が識別できないようにすることをいう。匿名化には、次に掲げるものがある。
 連結可能匿名化
 必要な場合に提供者を識別できるよう、当該提供者と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法による匿名化
 連結不可能匿名化
 提供者を識別できないよう、上記アのような対応表を残さない方法による匿名化

 (6)  個人情報管理者
 試料等の提供が行われる機関を含め、個人情報を取り扱う研究を行う機関において、当該機関の長の指示を受け、提供者等の個人情報がその機関の外部に漏えいしないよう個人情報を管理し、かつ、匿名化する責任者をいう。

 (7)  インフォームド・コンセント
 試料等の提供を求められた人が、研究責任者から事前にヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する十分な説明を受け、その研究の意義、目的、方法、予測される結果や不利益等を理解し、自由意思に基づいて与える試料等の提供及び試料等の取扱いに関する同意をいう。本指針においては、文書によることが求められる。

 (8)  代諾者等
 提供者にインフォームド・コンセントを与える能力がない場合に、当該提供者の代わりにインフォームド・コンセントを与える人をいう。提供者が死者である場合にあっては、遺族をいう。
 なお、遺族を含めずに使用する場合は、「代諾者」という。

   < 注>
 代諾者等は、あくまでも提供者の人権を守る観点から、その人の代わりに試料等の提供等に同意するかどうかを決める人であり、代諾者等自身の遺伝的問題については、別途の対応の考慮が必要である。

 (9)  研究を行う機関
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施する機関及び個人事業者(試料等の提供が行われる機関を含む。)をいう。

   < 研究を行う機関に関する細則>
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施する機関は、法人及び行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第2条に規定する行政機関)である。

 (10)  試料等の提供が行われる機関
 研究を行う機関のうち、医療機関や保健所のように、人々から試料等の提供が行われる機関をいう。

   < 試料等の提供が行われる機関に関する細則>
 大学等のように同一法人内に研究を行う部門と試料等の提供が行われる部門がある場合には、当該法人は試料等の提供が行われる機関である。

 (11)  共同研究機関
 研究計画書に記載されたヒトゲノム・遺伝子解析研究を共同して行う研究を行う機関をいう。ある研究を行う機関がその機関以外の試料等の提供が行われる機関から試料等の提供を受ける場合には、その試料等の提供が行われる機関を含む。

   < 共同研究機関間の個人情報の取扱いに関する細則>
 個人情報を研究計画書に記載された共同研究機関間において共同で利用する場合には、その旨並びに共同で利用される個人情報の項目、利用する者の利用目的及び当該個人情報の管理について、あらかじめ、提供者に通知し、又は提供者が容易に知り得る状態に置かなければならない。

 (12)  外部の機関
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究を行う研究者等が所属する研究を行う機関以外の研究を行う機関等をいう。

 (13)  倫理審査委員会
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施の適否その他の事項について、提供者等の人権の保障等の倫理的観点とともに科学的観点を含めて調査審議するため、研究を行う機関の長の諮問機関として置かれた合議制の機関をいう。

 (14)  研究者等
 研究を行う機関において、研究責任者、研究担当者(試料等の提供を受ける業務を行う者を含む。)、遺伝カウンセリングを実施する者、個人情報保護の業務を行う者、研究を行う機関の長その他のヒトゲノム・遺伝子解析研究に携わる関係者をいう。

 (15)  研究責任者
 個々の研究を行う機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究を遂行するとともに、その研究計画に係る業務を統括する者であって、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の有用性及び限界並びに生命倫理について十分な知識を有する研究者をいう。

 (16)  研究担当者
 研究責任者の指示や委託に従ってヒトゲノム・遺伝子解析研究を実施する者であって、業務の内容に応じて必要な知識と技能を持つ研究者、医師、薬剤師、看護師及び臨床検査技師等をいう。

 (17)  提供者
 ヒトゲノム・遺伝子解析研究のための試料等を提供する人をいう。なお、提供者の家族、血縁者、代諾者等のように、提供者の遺伝情報にかかわりがあると考えられる人を含める場合には、「提供者等」という。

 (18)  遺伝カウンセリング
 遺伝医学に関する知識及びカウンセリングの技法を用いて、対話と情報提供を繰り返しながら、遺伝性疾患をめぐり生じ得る医学的又は心理的諸問題の解消又は緩和を目指し、支援し、又は援助することをいう。

 (19)  研究実施前提供試料等
 研究を行う機関において、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の実施前に提供され、かつ、保存されている試料等をいう。試料等の提供時における利用目的の特定と同意の状況に応じて、次に掲げるものに分かれる。
 A群試料等
 試料等の提供時に、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が利用目的として提供者に明示され、当該目的に利用することに対して同意が与えられている試料等をいう。
 B群試料等
 試料等の提供時に、「医学的研究に用いることに同意する」等のように、ヒトゲノム・遺伝子解析研究における利用が利用目的として提供者に明示されておらず、当該目的への利用が明示されていない研究に対する同意のみが与えられている試料等をいう。
 C群試料等
 試料等の提供時に、研究に利用することが利用目的として提供者に明示されているか否かにかかわらず、研究に利用することの同意が与えられていない試料等をいう。

 (20)  ヒト細胞・遺伝子・組織バンク
 提供されたヒトの細胞、遺伝子、組織等について、研究用資源として品質管理を実施して、不特定多数の研究者に分譲する非営利的事業をいう。



第7  細則

 17  細則

 本指針に定めるもののほか、本指針の施行に関し必要な事項は、別に定める。



第8  施行期日

 18  施行期日

 本指針は、平成17年4月1日から施行する。

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