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疫学研究に関する倫理指針

(参考資料)

疫学研究に関する倫理指針

平成14年6月17日

(平成16年12月28日全部改正)

(平成17年6月29日一部改正)

(平成1916日全部改正)

文 部 科 学 省

厚 生 労 働 省

目次

前文 ──────────────────────────────── 1
第1 基本的考え方
 1 目的 ───────────────────────────── 2
 2 適用範囲 ─────────────────────────── 2
 3 研究者等が遵守すべき基本原則 ───────────────── 3
 4 研究機関の長の責務 ────────────────────── 5
第2 倫理審査委員会等
  倫理審査委員会 ─────────────────────── 7
  疫学研究に係る報告 ──────────────────── 8
第3 インフォームド・コンセント等
  研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続等 ─── 9
  代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続 ───── 11
第4 個人情報の保護等
  個人情報の保護に関する措置 ───────────────── 11
 10 資料の保存及び利用 ──────────────────── 18
 11 他の機関等の資料の利用 ─────────────────── 19
 12 研究結果を公表するときの措置 ──────────────── 20
第5 用語の定義
 13 用語の定義 ────────────────────────── 20
  (1) 疫学研究 ────────────────────────── 20
  (2) 介入研究 ────────────────────────── 21
  (3) 観察研究 ────────────────────────── 21
  (4) 資料 ──────────────────────────── 21
  (5) 個人情報 ────────────────────────── 21
  (6) 保有する個人情報 ────────────────────── 21
  (7) 匿名化 ─────────────────────────── 21
  (8) 連結可能匿名化 ─────────────────────── 22
  (9) 連結不可能匿名化 ────────────────────── 22
  (10)研究者等 ────────────────────────── 22
  (11)研究責任者 ───────────────────────── 22
  (12)研究機関 ────────────────────────── 22
  (13)研究を行う機関 ─────────────────────── 22
  (14)研究を行う機関の長 ───────────────────── 22
  (15)共同研究機関 ──────────────────────── 22
  (16)倫理審査委員会 ─────────────────────── 22
  (17)インフォームド・コンセント ───────────────── 23
  (18)既存資料等 ───────────────────────── 23
第6 細則
 14 細則 ───────────────────────────── 23
第7 見直し
 15 見直し ──────────────────────────── 23
第8 施行期日
 16 施行期日 ─────────────────────────── 23

前文

疫学研究は、疾病のり患をはじめ始め健康に関する事象の頻度や分布を調査し、その要因を明らかにする科学研究である。疾病の成因を探り、疾病の予防法や治療法の有効性を検証し、又は環境や生活習慣と健康とのかかわりを明らかにするために、疫学研究は欠くことができず、医学の発展や国民の健康の保持増進に多大な役割を果たしている。

疫学研究では、多数の研究対象者の心身の状態や周囲の環境、生活習慣等について具体的な情報を取り扱う。また、疫学研究は医師以外にも多くの関係者が研究に携わるという特色を有する。

そこで、研究対象者の個人の尊厳と人権を守るとともに、研究者等がより円滑に研究を行うことができるよう、ここに倫理指針を定める。

この指針は、世界医師会によるヘルシンキ宣言や、我が国の個人情報の保護に関する法律等を踏まえ、疫学研究の実施に当たり、研究対象者に対して説明し、同意を得るなど個人情報の保護を原則とする。また、疫学研究に極めて多様な形態があることに配慮して、この指針においては基本的な原則を示すにとどめており、研究者等が研究計画を立案し、その適否について倫理審査委員会が判断するに当たっては、この原則を踏まえつつ、個々の研究計画の内容等に応じて適切に判断することが求められる。

また、個人情報保護に関しては、研究を行う機関においては、民間企業、行政機関、独立行政法人等の区分に応じて適用される個人情報保護に関する法律(平成15年法律第57号)、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第59号)及び地方公共団体において個人情報の保護に関する法律第11条第1項の趣旨を踏まえて地方公共団体において制定される条例を遵守する必要があることに留意しなければならない。

疫学研究が、社会の理解と信頼を得て、一層社会に貢献するために、すべての疫学研究の関係者が、この指針に従って研究に携わることが求められている。同時に、健康の保持増進のために必要な疫学研究の実施について、広く一般社会の理解が得られることを期待する。

第1 基本的考え方

1 目的

この指針は、国民の健康の保持増進を図る上での疫学研究の重要性と学問の自由を踏まえつつ、個人の尊厳及び人権の尊重、個人情報の保護その他の倫理的観点並びに科学的観点から、疫学研究に携わるすべての関係者が遵守すべき事項を定めることにより、社会の理解と協力を得て、疫学研究の適正な推進が図られることを目的とする。

2 適用範囲

この指針は、人の疾病の成因及び病態の解明並びに予防及び治療の方法の確立を目的とする疫学研究を対象とし、これに携わるすべての関係者に遵守を求めるものである。

ただし、次のいずれかに該当する疫学研究は、この指針の対象としない。

[1] 法律の規定に基づき実施される調査

[2] ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(平成16年文部科学省・厚生労働省・経済産業省告示第1号)に基づき実施される研究

[3] 資料として既に連結不可能匿名化されている情報のみを用いる研究

[4] 手術、投薬等の医療行為を伴う介入研究

<適用範囲に関する細則>

1 本則ただし書[1]には、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の規定に基づく感染症発生動向調査など、法律により具体的に調査権限が付与された調査が該当する。

2 指針の適用範囲内と範囲外の事例について整理すると、次表のとおりである。

研究事例
指針の対象 指針の対象外
(診療と研究)
・ある疾病の患者数等を検討するため、複数の医療機関に依頼し、当該疾病の患者の診療情報を収集・集計し、解析して新たな知見を得たり、治療法等を調べる行為。

※なお、既存資料等や既存資料等から抽出加工した資料の提供のみについては、指針11第4の3の規定が適用される。

(診療と研究)

・特定の患者の疾病について治療方法を検討するため、当該疾病を有する患者の診療録等診療情報を調べる行為。これを踏まえ、当該患者の治療が行われる。

・特定の患者の治療を前提とせずに、ある疾病の治療方法等を検討するため、研究者等が所属する医療機関内の当該疾病を有する患者の診療録等診療情報を収集・集計し、院内又は院外に結果を報告する行為。

(医薬品と食品)

・被験者(患者又は健常者)を2群に分け、一方の群は特定の食品(健康食品、特定保健用食品等を含む)を摂取し、他方の群は通常の食事をすることにより、当該食品の健康に与える影響を調べる行為。

(医薬品と食品)

・被験者(患者又は健常者)を2群に分け、一方の群は、特定の医薬品を投与し、他方の群には、偽薬(プラセボ)を投与することにより、当該医薬品の健康に与える影響を調べる行為。


(連結不可能匿名化されている情報)

・患者調査と国民栄養調査を組み合わせて、地域別の生活習慣病の受療率とエネルギー摂取量から、両者の関係を調べる行為。

(保健事業との関係)

・保健事業(脳卒中情報システム事業やいわゆるがん登録事業を含む。以下本表にいて同じ。)により得られた検診データ又は生体試料などを用いて、特定の疾病の予防方法、疾病の地域特性等を調査する研究。(保健事業として行われるものを除く。)

(保健事業との関係)

・法令等に基づく保健事業。

・市町村、都道府県、保健所等が地域において行う保健事業(精度管理を含む。)や、産業保健又は学校保健の分野において産業医又は学校医が法令に基づくその業務の範囲内で行う調査、脳卒中情報システム事業やいわゆるがん登録事業等。

(臨床の場における疫学研究)

・診断・治療等の医療行為について、当該方法の有効性・安全性を評価するため、診療録等診療情報を収集・集計して行う観察研究。

(臨床の場における疫学研究)

・新たな治療方法の有効性・安全性を調べる目的で、被験者に対して行う介入研究。

 

(実習)

・一定のカリキュラムの下で行われ、結果に至るまでの過程を習得することを目的とした実習。

3 海外の研究機関との共同研究については、原則としてこの指針を遵守するものとする。ただし、当該海外の研究機関の存する国における社会的な実情等にかんがみ、本指針の適用が困難であることについて、我が国の研究機関の倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときは、相手国の定める法令、指針等の基準に従って行うことができる。とともに、当該海外の研究機関の存する国における基準がこの指針よりも厳格な場合には、その厳格な基準を遵守しなければならない。

3 研究者等が遵守すべき基本原則

(1) 疫学研究の科学的合理性及び倫理的妥当性の確保

[1] 研究者等は、研究対象者の個人の尊厳及び人権を尊重して疫学研究を実施しなければならない。

[2] 研究者等は、科学的合理性及び倫理的妥当性が認められない疫学研究を実施してはならず、疫学研究の実施に当たっては、この点を踏まえた明確かつ具体的な研究計画書を作成しなければならない。

[3] 研究者等は、疫学研究を実施しようとするときは、研究計画について、研究機関の長の許可を受けなければならない。これを変更しようとするときも同様とする。

<研究機関の長に関する細則>

研究機関の長とは、例えば、以下のとおりである。

・ 病院の場合は、病院長。

・ 保健所の場合は、保健所長。

・ 大学医学部の場合は、医学部長。

・ 企業等の研究所の場合は、研究所長。

<研究計画書に記載すべき事項に関する細則>

研究計画書に記載すべき事項は、一般的に以下のとおりとするが、研究内容に応じて変更できる。

ただし、指針において記載することとされている事項及び倫理審査委員会の審査を受けることとされている事項については必ず記載しなければならない。

・ 研究対象者の選定方針

・ 研究の意義、目的、方法、期間、個人情報保護の方法

・ 研究機関の名称(共同研究機関を含む。)

・ 研究者等の氏名

・ インフォームド・コンセントのための手続(インフォームド・コンセントを受けない場合はその理由及び当該研究の実施について公開すべき事項の通知又は公表の方法)

・ インフォームド・コンセントを受けるための説明事項及び同意文書

・ 研究に参加することにより期待される利益及び起こりうる危険並びに必然的に伴う不快な状態

・ 危険又は必然的に伴う不快な状態が起こりうる場合の、当該研究に伴う補償等の対応

・ 当該研究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり

・ 研究対象者からインフォームド・コンセントを受けないで試料等を利用する場合、研究が公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難である理由。代諾者を選定する場合にはその考え方

・ 資料の保存及び使用方法並びに保存期間

・ 研究終了後の資料の保存、利用又は廃棄の方法(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)

[4] 研究者等は、法令、この指針及び研究計画に従って適切に疫学研究を実施しなければならない。

[5] 研究者等は、研究対象者を不合理又は不当な方法で選んではならない。

(2) 個人情報の保護

[1] 研究者等は、研究対象者に係る情報を適切に取り扱い、その個人情報を保護しなければならない。

[2] 研究者等は、職務上知り得た個人情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

(3) インフォームド・コンセントの受領

[1] 研究者等は、疫学研究を実施する場合には、事前に、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則とする。

[2] 研究者等は、研究対象者に対する説明の内容、同意の確認方法その他のインフォームド・コンセントの手続に関する事項を研究計画書に記載しなければならない。

<インフォームド・コンセントの受領に関する細則>

研究対象者に対する説明の内容は、一般的に以下の事項を含むものとする。

・ 研究機関名、研究者等の氏名

・ 研究対象者として選定された理由

・ 当該研究の目的、意義及び方法、期間

・ 研究への参加が任意であること

・ 当該研究の実施に同意しない場合であっても何ら不利益を受けることはないこと。

・ 研究対象者が当該研究の実施に同意した場合であっても随時これを撤回できること。

・ 当該研究に参加することにより期待される利益及び起こりうる危険並びに必然的に伴う不快な状態

・ 危険又は必然的に伴う不快な状態が起こりうる場合の、当該研究に伴う補償等の対応

・ 当該研究に係る資金源、起こりうる利害の衝突及び研究者等の関連組織との関わり

・ 個人情報の取扱い

・ 研究対象者等からの開示の求めに対し開示ができないことがあらかじめ想定される事項がある場合は、当該事項及び理由

・ 研究対象者を特定できないようにした上で、研究の成果が公表される可能性があること。

・ 代諾者から同意を受ける場合は、研究の重要性、必要不可欠性

・ 個人情報を第三者(代諾者を除く。)へ提供する可能性があり、第4の(9)[1]のアからエに掲げる事項以外当該内容(第三者へ提供される個人情報の項目など)

・ 共同研究を行う場合は、[1]共同研究であること、[2]共同して利用される個人情報の項目、[3]共同して利用する者の範囲、[4]利用する者の利用目的及び[5]当該個人情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称

・ 第4の(10)[2]、(11)[1]、(12)[1]又は(13)の[1]若しくは[2]規定による求めに応じる手続((16)の規定により手数料の額を定めたときはその手数料の額を含む。)

・ 個人情報等の取扱に関する苦情の申出先

・ 資料の保存及び使用方法並びに保存期間

・ 研究終了後の資料の保存、利用又は廃棄の方法(他の研究への利用の可能性と予測される研究内容を含む。)

(4) 研究成果の公表

研究責任者は、研究対象者の個人情報の保護のために必要な措置を講じた上で、疫学研究の成果を公表しなければならない。

(5) 指導者の責務

大学その他の教育機関において、学生等に対し疫学研究の指導を行う者は、(1)から(4)までに掲げる事項その他必要な事項を遵守の上、疫学研究を実施するよう、学生等に対し指導及び監督しなければならない。

4 研究機関の長の責務

(1) 倫理的配慮の周知

研究機関の長は、当該研究機関における疫学研究が、倫理的、法的又は社会的問題を引き起こすことがないよう、研究者等に対し、疫学研究の実施に当たり、研究対象者の個人の尊厳及び人権を尊重し、個人情報の保護のために必要な措置を講じなければならないことを周知徹底しなければならない。

(2) 倫理審査委員会の設置

研究機関の長は、研究計画がこの指針に適合しているか否かその他疫学研究に関し必要な事項の審査を行わせるため、倫理審査委員会を設置しなければならない。ただし、研究機関が小規模であること等により当該研究機関内に倫理審査委員会を設置できない場合には、研究機関が小規模であること等により当該研究機関内に倫理審査委員会を設置できない場合その他の必要がある場合には、共同研究機関、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することをもってこれに代えることができる。

<倫理審査委員会の設置に関する細則>

 本則ただし書に規定する倫理審査委員会には、複数の共同研究機関の長が共同して設置する倫理審査委員会が含まれる。

2 共同研究機関等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる場合は、次のとおりとする。

[1] 研究機関が小規模であること等により当該研究機関内に倫理審査委員会を設置できない場合

[2] 共同研究であって、専らデータの集積に従事する等の従たる研究機関である場合

[3] 共同研究であって、第2の1(1)に掲げる倫理審査委員会の責務及び構成の観点にかんがみ、共同研究機関等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することが、疫学研究の円滑な推進に特に必要であると認められる場合

(3) 倫理審査委員会への付議

研究機関の長は、研究者等から3(1)[3]の規定により許可を求められたときは、倫理審査委員会の意見を聴かなければならない。ただし、次のいずれかに該当する研究計画については、この限りでない。

[1] 倫理審査委員会に属する者その他の者のうちから倫理審査委員会があらかじめ指名する者([2]において「あらかじめ指名する者」という。)が、当該研究計画が次に掲げるすべての要件を満たしており、倫理審査委員会への付議を必要としないと判断した場合

ア 他の機関において既に連結可能匿名化された情報を収集するもの、無記名調査を行うものその他の個人情報を取り扱わないものであること。

イ 人体から採取された試料を用いないものであること。

ウ 観察研究であって、人体への負荷又は介入を伴わないものであること。

エ 研究対象者の意思に回答が委ねられている調査であって、その質問内容により研究対象者の心理的苦痛をもたらすことが想定されないものであること。

[2] あらかじめ指名する者が、研究者等が所属する医療機関内の患者の診療録等の診療情報を用いて、専ら集計、単純な統計処理等を行う研究であり、倫理審査委員会への付議を必要としないと判断した場合

[3] 次に掲げる事項についての規定を含む契約に基づき、データの集積又は統計処理のみを受託する場合

ア データの安全管理措置

イ 守秘義務

<研究機関に所属しない研究者に関する細則細則

1 研究機関に所属しない研究者については、本則第1の3(1)[3]並びに第3の1並びに27、8、並びに第4の2 10(2)並びに第4の311(1)並びに(2)[2]及び[3]の規定による研究機関の長の許可は不要である。

2 研究機関に所属しない研究者については、研究分野に応じ、共同して疫学研究を行う研究者が所属する機関、大学、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会の意見を自ら聴くことが求められる。

(4) 研究機関の長による許可

研究機関の長は、倫理審査委員会の意見を尊重し、研究計画の許可又は不許可その他疫学研究に関し必要な事項を決定しなければならない。この場合において、研究機関の長は、倫理審査委員会が不承認の意見を述べた疫学研究については、その実施を許可してはならない。

<研究機関の長による許可に関する細則>

研究機関の長は、公衆衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため緊急に研究を実施する必要があると判断する場合には、倫理審査委員会の意見を聴く前に許可を決定することができる。この場合において、研究機関の長は、許可後遅滞なく倫理審査委員会の意見を聴くものとし、倫理審査委員会が研究の変更又は中止の意見を述べた場合には、これを踏まえ、研究責任者に対し研究の変更又は中止を指示しなければならない。

(5) 有害事象発生時の対応手順の作成

研究機関の長は、当該研究機関において実施される疫学研究の内容を踏まえ、必要に応じ、あらかじめ、有害事象が発生した場合の対応手順に関する規程を定めなければならない。

第2 倫理審査委員会等

 倫理審査委員会

(1) 倫理審査委員会の責務及び構成

[1] 倫理審査委員会は、研究機関の長から研究計画がこの指針に適合しているか否かその他疫学研究に関し必要な事項について意見を求められた場合には、倫理的観点及び科学的観点から審査し、文書により意見を述べなければならない。

[2] 倫理審査委員会は、学際的かつ多元的な視点から、様々な立場からの委員によって、公正かつ中立的な審査を行えるよう、適切に構成されなければならない。

<倫理審査委員会の構成に関する細則>

倫理審査委員会は、医学・医療の専門家、法律学の専門家等人文・社会科学の有識者及び一般の立場を代表する者から構成され、外部委員を含まなければならない。

また、男女両性で構成されなければならない。

[3] 倫理審査委員会の委員は、職務上知り得た情報を正当な理由なく漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

(2) 倫理審査委員会の運営

[1] 審査対象となる研究計画に関係する委員は、当該研究計画の審査に関与してはならない。ただし、倫理審査委員会の求めに応じて、その会議に出席し、説明することを妨げない。

[2] 倫理審査委員会の運営に関する規則、委員の氏名、委員の構成及び議事要旨は公開されなければならない。ただし、議事要旨のうち研究対象者の人権、研究の独創性、知的財産権の保護又は競争上の地位の保全のため非公開とすることが必要な部分については、この限りでない。

[3] 倫理審査委員会は、研究機関の長が学会等に設置された他の倫理審査委員会に対し、研究計画がこの指針に適合しているか否かその他疫学研究に関し必要な事項について付議することができる旨を定めることができる。

<学会等に設置された他の倫理審査委員会に関する細則>

「学会等に設置された他の倫理審査委員会」には、複数の共同研究機関の長が共同して設置する倫理審査委員会が含まれる。

[4] 倫理審査委員会は、軽易軽微な事項の審査について、委員長が指名する委員による迅速審査に付すことその他必要な事項を定めることができる。迅速審査の結果については、その審査を行った委員以外のすべての委員に報告されなければならない。

<迅速審査手続に関する細則>

迅速審査手続による審査に委ねることができる事項は、一般的に以下のとおりである。

[1] 研究計画の軽微な変更の審査

[2] 共同研究であって、既に主たる研究機関において倫理審査委員会の承認を受けた研究計画を他の分担研究機関が実施しようとする場合の研究計画の審査

[3] 研究対象者に対して最小限の危険(日常生活や日常的な医学的検査で被る身体的、心理的、社会的危害の可能性の限度を超えない危険であって、社会的に許容される種類のものをいう。以下同じ。)を超える危険を含まない研究計画の審査

 疫学研究に係る報告

[1] 研究責任者は、研究期間が数年にわたる場合には、研究計画書の定めるところにより、研究機関の長を通じ研究実施状況報告書を倫理審査委員会に提出しなければならない。

<研究実施状況報告書の提出時期に関する細則>

研究実施状況報告書の提出時期については、研究計画書に記載して倫理審査委員会が承認する。この時期については、例えば3年ごとを一つの目安とすべきである。

[2] 研究責任者は、研究対象者に危険又は不利益が生じたときは、直ちに研究機関の長を通じ倫理審査委員会に報告しなければならない。

[3] 倫理審査委員会は、研究責任者から[1]又は[2]の規定により研究実施状況報告書の提出又は報告を受けたときは、研究機関の長に対し、当該研究計画の変更、中止その他疫学研究に関し必要な意見を述べることができる。

[4] 研究機関の長は、必要に応じ、当該研究機関における研究のこの指針への適合性について、自ら点検及び評価を実施するものとする。

<研究機関の長が自ら行う点検及び評価の実施手法及び時期に関する細則>

研究機関の長が自ら行う点検及び評価の実施手法及び時期については、研究の内容等に応じて、研究機関の長が定めるものとする。

[4][5] 研究機関の長は、[3]の倫理審査委員会の意見を尊重し、並びにかつ、[4]の点検及び評価の結果に基づき、必要に応じて、当該研究計画の変更、中止その他疫学研究に関し必要な事項を決め決定しなければならない。

[5][6] 研究責任者は、研究機関の長が[4][5]の規定により当該研究計画の変更、中止その他疫学研究に関し必要な事項を決定したときは、その決定これに従わなければならない。

[6][7] 研究責任者は、疫学研究の終了後遅滞なく、研究機関の長を通じ倫理審査委員会に研究結果の概要を報告しなければならない。

<研究機関に所属しない研究者の報告に関する細則>

研究機関に所属しない研究者は、研究計画に対する意見を求めた倫理審査委員会に本則第2の2[1]、[2]及び[7][6]の報告を自ら行うことが求められる。

第3 インフォームド・コンセント等

 研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続等

研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続等は、原則として次に定めるところによる。ただし、疫学研究の方法及び内容、研究対象者の事情その他の理由により、これによることができない場合には、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときに限り、必要な範囲で、研究対象者からインフォームド・コンセントを受ける手続を簡略化すること若しくは免除すること又は他の適切なインフォームド・コンセント等の方法を選択することができる。

<インフォームド・コンセントの簡略化等に関する細則>

倫理審査委員会は、インフォームド・コンセント等の方法について、簡略化若しくは免除を行い、又は原則と異なる方法によることを認めるときは、当該疫学研究が次のすべての要件を満たすよう留意すること。

[1] 当該疫学研究が、研究対象者に対して最小限の危険を超える危険を含まないこと。

[2] 当該方法によることが、研究対象者の不利益とならないこと。

[3] 当該方法によらなければ、実際上、当該疫学研究を実施できず、又は当該疫学研究の価値を著しく損ねること。

[4] 適切な場合には、常に、次のいずれかの措置が講じられること。

ア 研究対象者が含まれる集団に対し、資料の収集・利用の目的及び内容を、その方法も含めて広報すること。

イ できるだけ早い時期に、研究対象者に事後的説明(集団に対するものも可)を与えること。

ウ 長期間にわたって継続的に資料が収集又は利用される場合には、社会に、その実情を、資料の収集又は利用の目的及び方法も含めて広報し、社会へ周知される努力を払うこと。

[5] 当該疫学研究が社会的に重要性が高いと認められるものであること。

(1) 介入研究を行う場合

[1] 人体から採取された試料を用いる場合

ア  試料の採取が侵襲性を有する場合(採血の場合等をいう。以下同じ。)

文書により説明し文書により同意を受ける方法により、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。

イ  試料の採取が侵襲性を有しない場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。

[2] 人体から採取された試料を用いない場合

ア 個人単位で行う介入研究の場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。

イ 集団単位で行う介入研究の場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開し、及び研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにしなければならない。

<研究対象者となることを拒否した者に関する細則>

1 研究対象者となることを拒否した者については、個人情報は収集しないが、集計に当たっての母集団に加えることができるものである。

2 この場合の情報公開は、特に研究対象者が情報を得やすい形で行われることが必要である。

(2) 観察研究を行う場合

[1] 人体から採取された試料を用いる場合

ア 試料の採取が侵襲性を有する場合

文書により説明し文書により同意を受ける方法により、研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。

イ 試料の採取が侵襲性を有しない場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを原則として必要とする。この場合において、文書により説明し文書により同意を受ける必要はないが、研究者等は、説明の内容及び受けた同意に関する記録を作成しなければならない。

[2] 人体から採取された試料を用いない場合

ア 既存資料等以外の情報に係る資料を用いる観察研究の場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開し、及び研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにしなければならない。

イ 既存資料等のみを用いる観察研究の場合

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることを必ずしも要しない。この場合において、研究者等は、当該研究の目的を含む研究の実施についての情報を公開しなければならない。

<インフォームド・コンセントを受けない場合において、当該研究の実施について公開すべき事項に関する細則>

インフォームド・コンセントを受けない場合に、研究の実施について情報公開する場合は、以下の事項が含まれていること。なお、これらの事項については、研究計画書に記載すること。

・ 当該研究の意義、目的、方法

・ 研究機関名

・ 保有する個人情報に関して、第4の(10)[2]、(11)[1]、(12)[1]又は(13)の[1]若しくは[2]の規定による求めに応じる手続((16)の規定により手数料の額を定めたときは、その手数料の額を含む)

・ 保有する個人情報に関して、第4の1(17)の規定による、問い合わせ、苦情等の窓口の連絡先に関する情報

・ 第4の1(10)[2]の規定による利用目的の通知、(11)の規定による開示又は(14)の規定による理由の説明を行うことがあらかじめ開示できない事項がある場合は当該事項及びその理由

 代諾者等からインフォームド・コンセントを受ける手続

研究対象者からインフォームド・コンセントを受けることが困難な場合には、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、当該研究対象者について疫学研究を実施することが必要不可欠であることについて、倫理審査委員会の承認を得て、研究機関の長の許可を受けたときに限り、代諾者等(当該研究対象者の法定代理人等研究対象者の意思及び利益を代弁できると考えられる者をいう。)からインフォームド・コンセントを受けることができる。

<代諾者等からのインフォームド・コンセントに関する細則>

研究対象者本人からインフォームド・コンセントを受けることが困難であり、代諾者等からのインフォームド・コンセントによることができる場合及びその取扱いは、次のとおりとする。

[1] 研究対象者が認知症等により有効なインフォームド・コンセントを与えることができないと客観的に判断される場合

[2] 研究対象者が未成年者の場合(研究対象者が16歳以上の場合であって、有効なインフォームド・コンセントを与えることができることについて、倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けた場合を除く。)。ただし、この場合においても、研究責任者は、研究対象者本人に分かりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるよう努めなければならない。また、研究対象者が16歳未満であって、代諾者からのインフォームド・コンセントにより研究を開始した場合において、研究対象者が16歳に達した以降も研究を継続する場合には、研究対象者が16歳に達し有効なインフォームド・コンセントを与えることができると客観的に判断された時点において、原則として当該研究対象者から改めてインフォームド・コンセントを受けなければならない。ただし、この場合においても、研究責任者は、研究対象者本人にわかりやすい言葉で十分な説明を行い、理解が得られるよう努めなければならない。また、研究対象者が16歳以上の場合には、代諾者とともに、研究対象者本人からのインフォームド・コンセントも受けなければならない。

[3] 研究対象者が死者であって、その生前における明示的な意思に反していない場合

第4 個人情報の保護等

 個人情報の保護に関する措置

(1) 研究を行う機関の長の責務

[1] 研究を行う機関の長は、疫学研究の実施に当たり個人情報の保護に必要な体制を整備しなければならない。また、研究従事者に個人情報を取り扱わせるに当たっては、個人情報の安全管理が図られるよう、当該研究従事者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。

[2] 研究を行う機関の長は、当該機関により定められる規程により、この章に定める権限又は事務を当該機関内の適当な者に委任することができる。

(2) 利用目的の特定

[1] 研究を行う機関の長は、個人情報を取り扱うに当たっては、その利用の目的(以下「利用目的」という。)をできる限り特定しなければならない。

[2] 研究を行う機関の長は、個人情報の利用目的(以下「利用目的」という。)を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。

(3) 利用目的による制限

[1] 研究を行う機関の長は、あらかじめ研究対象者又は代諾者等(以下「研究対象者等」という。)の同意を得ないで、(2)の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはならない。

[2] 研究を行う機関の長は、合併その他の事由により他の研究を行う機関から研究を承継することに伴って個人情報を取得した場合に、あらかじめ研究対象者等の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。

[3] [1]及び[2]の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。

ア 法令に基づく場合

イ 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であるとき。

ウ 公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であるとき。

エ 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

(4) 適正な取得

研究を行う機関の長は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない。

(5) 取得に際しての利用目的の通知等

[1] 研究を行う機関の長は、個人情報を取得した場合は、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、研究対象者等に通知し、又は公表しなければならない。

[1] 研究を行う機関の長は、個人情報を取得した場合は、[2]から[4]までに掲げる事項を遵守しなければならない。ただし、次に掲げる場合において、倫理審査委員会が承認した場合は、この限りでない。

ア 利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより、研究対象者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

イ 利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより、当該研究を行う機関の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合

ウ 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある場合

エ 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

[1][2] あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を、研究対象者等に通知し、又は公表すること。

[2][3] 研究を行う機関の長は、[1][2]の規定にかかわらず、研究対象者等との間で契約を締結することに伴って契約書その他の書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。以下この項において同じ。)に記載された当該研究対象者の個人情報を取得する場合その他研究対象者等から直接書面に記載された当該研究対象者の個人情報を取得する場合において、あらかじめ、研究対象者等に対し、その利用目的を明示しなければならないすること。ただし、人の生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合は、この限りでない。

[3][4] 研究を行う機関の長は、[1][2]の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲において、利用目的を変更した場合は、変更された利用目的について、研究対象者又は法定代理人等(以下「研究対象者等」という。)に通知し、又は公表しなければならないすることただし、次に掲げる場合であって、倫理審査委員会が承認した場合については、この限りでない。

ア 利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより研究対象者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

イ 利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより当該研究を行う機関の権利又は正当な利益を害するおそれがある場合

ウ 国の機関又は地方公共団体が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、利用目的を研究対象者等に通知し、又は公表することにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

エ 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合

(6) 内容の正確性の確保

研究を行う機関の長は、利用目的の達成に必要な範囲内において、個人情報を正確かつ最新の内容に保つよう努めなければならない。

(7) 安全管理措置

[1] 研究を行う機関の長は、その取り扱う個人情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他個人情報の安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講じなければならない。

[2] 研究を行う機関の長は、死者に関する個人情報(第5の(5)の個人情報と同様の内容を含むものをいう。以下同じ。)が死者の人としての尊厳や遺族の感情及び遺伝情報が血縁者と共通していることに鑑みかんがみ、生存する個人に関する情報と同様に死者に関する個人情報についても安全管理のため、組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置を講じなければならない。

<安全管理措置に関する細則>

組織的、人的、物理的及び技術的安全管理措置とは、取り扱う情報の性質に応じて、必要かつ適切な措置を求めるものである。

1.組織的安全管理措置

組織的安全管理措置とは、安全管理について研究者等の責任と権限を明確に定め、安全管理に対する規程や手順書(以下「規程等」という)を整備運用し、その実施状況を確認することをいう。組織的安全管理措置には以下の事項が含まれる。

[1] 個人情報の安全管理措置を講じるための組織体制の整備

[2] 個人情報の安全管理措置を定める規程等の整備と規程等に従った運用

[3] 個人情報の取扱い状況を一覧できる手段の整備

[4] 個人情報の安全管理措置の評価、見直し及び改善

[5] 事故又は違反への対処

2.人的安全管理措置

人的安全管理措置とは、研究者等に対する、業務上秘密と指定された個人情報の非開示契約の締結や教育・訓練等を行うことをいう。人的安全管理措置には以下の事項が含まれる。

[1] 雇用契約時及び委託契約時における非開示契約の締結

[2] 研究者等に対する教育・訓練の実施

3.物理的安全管理措置

物理的安全管理措置とは、入退館(室)の管理、個人情報の盗難の防止等の措置をいう。物理的安全管理措置には以下の事項が含まれる。

[1] 入退館(室)管理の実施

[2] 盗難等の防止

[3] 機器・装置等の物理的保護

4.技術的安全管理措置

技術的安全管理措置とは、個人情報及びそれを取り扱う情報システムのアクセス制御、不正ソフトウェア対策、情報システムの監視等、個人情報に対する技術的な安全管理措置をいう。技術的安全管理措置には、以下の事項が含まれる。

[1] 個人情報へのアクセスにおける識別と認証

[2] 個人情報へのアクセス制御

[3] 個人情報へのアクセス権限の管理

[4] 個人情報のアクセス記録

[5] 個人情報を取り扱う情報システムについての不正ソフトウェア対策

[6] 個人情報の移送・通信時の対策

[7] 個人情報を取り扱う情報システムの動作確認時の対策

[8] 個人情報を取り扱う情報システムの監視

(8) 委託者の監督

研究を行う機関の長は、疫学研究の実施に関し、委託を行う場合は、委託された業務に関して取り扱われる個人情報の安全管理及び個人情報の適切な取扱いが図られるよう、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなくてはならない。

<委託を受けた者に対する監督に関する細則>

委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督とは、例えば委託契約書において、委託者が定める安全管理措置の内容を明示的に規定するとともに、当該内容が遵守されていること確認することである。

(9) 第三者提供の制限

[1] 研究を行う機関の長は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ研究対象者等の同意を得ないで、個人情報を第三者に提供してはならない。

ア 法令に基づく場合

イ 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であるとき。

ウ 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であるとき。

エ 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

[2] 研究を行う機関の長は、第三者に提供される個人情報について、研究対象者等の求めに応じて当該研究対象者が識別される個人情報の第三者への提供を停止することとしている場合であって、次に掲げる事項について、あらかじめ、研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置いているときは、[1]の規定にかかわらず、当該個人情報を第三者に提供することができる。

ア 第三者への提供を利用目的とすること。

イ 第三者に提供される個人情報の項目

ウ 第三者への提供の手段又は方法

エ 研究対象者等の求めに応じて当該研究対象者が識別される個人情報の第三者への提供を停止すること。

[3] [2]のイ又はウに掲げる事項を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置かなければならない。

[4] 次に掲げる場合において、当該個人情報の提供を受ける者は、[1]から[3]までの規定の適用については、第三者に該当しないため、あらかじめ研究対象者等の同意を得ずに個人情報を提供することができる。

ア 研究機関が利用目的の達成に必要な範囲内において個人情報の取扱いの全部又は一部を委託する場合

イ 合併その他の事由による事業の承継に伴って個人情報が提供される場合

ウ 個人情報を特定の者との間で共同して利用する場合であって、その旨並びに共同して利用される個人情報の項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的及び当該個人情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称について、あらかじめ、研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置いているとき。

[5] 研究を行う機関の長は、[4]のウに規定する利用する者の利用目的又は個人情報の管理について責任を有する者の氏名若しくは名称を変更する場合は、変更する内容について、あらかじめ、研究対象者等に通知し、又は研究対象者等が容易に知り得る状態に置かなければならない。

(10)保有する個人情報に関する事項の公表等

[1] 研究を行う機関の長は、保有する個人情報に関し、次に掲げる事項について、研究対象者等の知り得る状態(研究対象者等の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む。)に置かなければならない。

ア 当該研究を行う機関の名称

イ すべての保有する個人情報の利用目的(第二の三の1から3(5)[1]アからエまでに該当する場合を除く。)

ウ [2]、(11)[1]、(12)[1]又は(13)[1]若しくは[2]の規定による求めに応じる手続((16)の規定により手数料の額を定めたときは、その手数料の額を含む。)

エ 保有する個人情報の取扱いに関する苦情の申出先

[2] 研究を行う機関の長は、研究対象者等から、当該研究対象者が識別される保有する個人情報の利用目的の通知を求められたときは、研究対象者等に対し、遅滞なく、これを通知しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

ア [1]の規定により当該研究対象者が識別される保有する個人情報の利用目的が明らかな場合

イ (5)[4][1]アからまでに該当する場合

[3] 研究を行う機関の長は、[2]の規定に基づき求められた保有する個人情報の利用目的を通知しない旨の決定をしたときは、研究対象者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

(11) 個人情報の開示

[1] 研究を行う機関の長は、研究対象者等から、当該研究対象者が識別される保有する個人情報の開示(当該研究対象者が識別される保有する個人情報が存在しないときにその旨を知らせることを含む。以下同じ。)を求められたときは、研究対象者等に対し書面の交付による方法(研究対象者等が同意した方法があるときには、当該方法)で開示しなければならない。ただし、開示することにより次のいずれかに該当する場合は、その全部又は一部を開示しないことができる。

ア 研究対象者又は第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合

イ 研究を行う機関の業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合

ウ 他の法令に違反することとなる場合

[2] 研究を行う機関の長は、[1]の規定に基づき求められた情報の全部又は一部を開示しない旨の決定をしたときは、研究対象者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

[3] 他の法令の規定により、研究対象者等に対し[1]の本文に規定する方法に相当する方法により当該研究対象者が識別される保有する個人情報の全部又は一部を開示することとされている場合には、当該全部又は一部の保有する個人情報については、[1]の規定は、適用しない。

(12) 訂正等

[1] 研究を行う機関の長は、研究対象者等から、研究対象者が識別される保有する個人情報の内容が事実でないという理由によって、当該保有する個人情報に対して訂正、追加又は削除(以下「訂正等」という。)を求められた場合は、その内容の訂正等に関して法令の規定により特別の手続が定められている場合を除き、利用目的の達成に必要な範囲において、遅滞なく必要な調査を行い、その結果に基づき、当該保有する個人情報の内容の訂正等を行わなければならない。

[2] 研究を行う機関の長は、[1]の規定に基づき訂正等を求められた保有する個人情報の内容の全部若しくは一部について訂正等を行ったとき、又は訂正等を行わない旨の決定をしたときは、研究対象者等に対し、遅滞なく、その旨(訂正等を行ったときは、その内容を含む。)を通知しなければならない。

(13)利用停止等

[1] 研究を行う機関の長は、研究対象者等から、当該研究対象者が識別される保有する個人情報が(3)の規定に違反して取り扱われているという理由又は(4)の規定に違反して取得されたものであるという理由によって、当該保有する個人情報の利用の停止又は消去(以下「利用停止等」という。)を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、違反を是正するために必要な限度で、遅滞なく、当該保有する個人情報の利用停止等を行わなければならない。ただし、当該保有する個人情報の利用停止等に多額の費用を要する場合その他の利用停止等を行うことが困難な場合であって、研究対象者の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。

[2] 研究を行う機関の長は、研究対象者等から、当該研究対象者が識別される保有される個人情報が(7)(9)の規定に違反して第三者に提供されているという理由によって、当該保有する個人情報の第三者への提供の停止を求められた場合であって、その求めに理由があることが判明したときは、遅滞なく、当該保有する個人情報の第三者への提供を停止しなければならない。ただし、当該保有する個人情報の第三者への提供の停止に多額の費用を要する場合その他の第三者への提供を停止することが困難な場合であって、研究対象者の権利利益を保護するため必要なこれに代わるべき措置をとるときは、この限りでない。

[3] [1]の規定に基づき求められた保有する個人情報の全部若しくは一部について利用停止等を行ったとき若しくは利用停止等を行わない旨の決定をしたとき、又は[2]の規定に基づき求められた保有する個人情報の全部若しくは一部について第三者への提供を停止したとき若しくは第三者への提供を停止しない旨の決定をしたときは、研究対象者等に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。

<利用停止等に関する細則>

以下の場合については、利用停止等の措置を行う必要はない。

・ 訂正等の求めがあった場合であっても、[1]利用目的から見て訂正等が必要でない場合、[2]誤りである指摘が正しくない場合又は[3]訂正等の対象が事実でなく評価に関する情報である場合

・ 利用停止等、第三者への提供の停止の求めがあった場合であっても、手続違反等の指摘が正しくない場合

(14)理由の説明

研究を行う機関の長は、第4の9(10)[3]、(11)[2]、(12)[2]又は(13)[3]の場合において、研究対象者等から求められた措置の全部又は一部について、その措置をとらない旨を通知する場合または又はその措置と異なる措置をとる旨を通知する場合は、研究対象者等に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。なお、この場合、研究対象者等の要求内容が事実でないこと等を知らせることにより、研究対象者等の精神的負担になり得る場合等、説明を行うことが必ずしも適当でないことがあり得ることから、事由に応じて慎重に検討のうえ、対応しなくてはならない。

(15)開示等の求めに応じる手続

[1] 研究を行う機関の長は、第4の9(10)[2]、(11)[1]、(12)[1]又は(13)[1]若しくは[2]の規定による求め(以下「開示等の求め」という。)に関し、以下の次に掲げる事項につき、その求めを受け付ける方法を定めることができる。この場合において、研究対象者等は、当該方法に従って、開示等の求めを行わなければならない。

ア 開示等の求めの申し出先

イ 開示等の求めに際して提出すべき書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録を含む。)の様式その他の開示等の求めの方式

ウ 開示等の求めをする者が研究対象者等であることの確認の方法

エ 手数料の徴収方法

[2] 研究を行う機関の長は、研究対象者等に対し、開示等の求めに関し、その対象となる保有する個人情報を特定するに足りる事項の提示を求めることができる。この場合において、研究を行う機関の長は、研究対象者等が容易かつ的確に開示等の求めをすることができるよう、当該保有する個人情報の特定に資する情報の提供その他研究対象者等の利便性を考慮した適切な措置をとらなければならない。

[3] 研究を行う機関の長は、[1]及び[2]の規定に基づき開示等の求めに応じる手続きを定めるに当たっては、研究対象者等に過重な負担を課するものとならないよう配慮しなければならない。

(16) 手数料

研究を行う機関の長は、(10)[2]の規定による利用目的の通知又は(11)[1]の規定による開示を求められたときは、当該措置の実施に関し、手数料を徴収することができる。また、その場合には実費を勘案して合理的であると認められる範囲内において、その手数料の額を定めなければならない。

(17) 苦情の対応

研究を行う機関の長は、研究対象者等からの苦情等の窓口を設置する等、研究対象者等からの苦情や問い合わせ等に適切かつ迅速に対応しなければならない。なお、苦情等の窓口は、研究対象者等にとって利用しやすいように、担当者の配置、利用手続等に配慮しなくてはならない。

10 資料の保存及び利用

(1) 資料の保存

[1] 研究責任者は、疫学研究に関する資料を保存する場合には、研究計画書にその方法等を記載するとともに、個人情報の漏えい、混交、盗難、紛失等が起こらないよう適切に、かつ、研究結果の確認に資するよう整然と管理しなければならない。

[2] 研究責任者は、研究計画書に定めた資料の保存期間を過ぎた場合には、研究対象者等の同意事項を遵守し、匿名化して廃棄しなければならない。

[3] 研究責任者は、保存期間が定められていない資料を保存する場合には、疫学研究の終了後遅滞なく、研究機関の長に対して、次に掲げる事項について報告しなければならない。これらの内容に変更が生じた場合も同様とする。

ア 資料の名称

イ 資料の保管場所

ウ 資料の管理責任者

エ 研究対象者等から得た同意の内容

(2) 人体から採取された試料の利用

研究者等は、研究開始前に人体から採取された試料を利用する場合には、研究開始時までに研究対象者から試料の利用に係る同意を受け、及び当該同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当することについて、倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けたときに限り、当該試料を利用することができる。

[1] 当該試料が匿名化(連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を有していない場合をいう。)されていること。

[2] 当該試料が[1]の匿名化に該当しない場合において、試料の提供時に当該疫学研究における利用が明示されていない研究についての同意のみが与えられている場合は、以下の次に掲げる要件を満たしていること。

ア 当該疫学研究の実施について試料の利用目的を含む情報を公開していること。

イ その同意が当該疫学研究の目的と相当の関連性があると合理的に認められること。

[3] 当該試料が[1]及び[2]に該当しない場合において、以下の次に掲げる要件を満たしていること。

ア 当該疫学研究の実施について資料の利用目的を含む情報を公開していること。

イ 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。

ウ 公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、研究対象者等の同意を得ることが困難であること。

11 他の機関等の資料の利用

(1) 研究実施に当たっての措置

研究責任者は、所属機関外の者から既存資料等の提供を受けて研究を実施しようとするときは、提供を受ける資料の内容及び提供を受ける必要性を研究計画書に記載して倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けなければならない。

(2) 既存資料等の提供に当たっての措置

既存資料等の提供を行う者は、所属機関外の者に研究に用いるための資料を提供する場合には、資料提供時までに研究対象者から資料の提供及び当該研究における利用に係る同意を受け、及び並びに当該同意に関する記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、次のいずれかに該当するときに限り、資料を所属機関外の者に提供することができる。

[1] 当該資料が匿名化されていること(連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応表を提供しない有していない場合)。ただし、当該資料の全部又は一部が人体から採取された試料である場合には、所属機関の長に対し、その旨を報告しなければならない。

[2] 当該資料が[1]の匿名化に該当しない場合において、以下の次に掲げる要件を満たしていることについて倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長研究を行う機関の長の許可を受けていること。

ア 当該疫学研究の実施及び資料の提供について以下の情報をあらかじめ研究対象者等に通知し、又は公開していること。

・ 所属機関外の者への提供を利用目的とすること

・ 所属機関外の者に提供される個人情報の項目

・ 所属機関外の者への提供の手段又は方法

・ 研究対象者等の求めに応じて当該研究対象者が識別される個人情報の研究機関外の者への提供を停止すること

イ 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。

[3] 社会的に重要性の高い疫学研究に用いるために人の健康に関わる情報が提供される場合において、当該疫学研究の方法及び内容、当該情報の内容その他の理由により[1]及び[2]によることができないときには、必要な範囲で他の適切な措置を講じることについて、倫理審査委員会の承認を得て、所属機関の長研究を行う機関の長の許可を受けていること。

<既存資料等の提供に当たっての措置に関する細則>

1 既存資料等の提供を行う者の所属する機関に倫理審査委員会が設置されていない場合において、[2]又は[3]の倫理審査委員会の承認を得ようとするときは、他の機関、公益法人、学会等に設置された倫理審査委員会に審査を依頼することができる。

2 倫理審査委員会は、[3]により、他の適切な措置を講じて資料を提供することを認めるときは、当該疫学研究及び資料の提供が、インフォームド・コンセントの簡略化等に関する細則の[1]から[5]までのすべての要件を満たすよう留意すること。

12 研究結果を公表するときの措置

研究者等は、研究の結果を公表するときは、個々の研究対象者を特定できないようにしなければならない。

第5 用語の定義

13 用語の定義

この指針における用語の定義は次のとおりとする。

(1) 疫学研究

明確に特定された人間集団の中で出現する健康に関する様々な事象の頻度及び分布並びにそれらに影響を与える要因を明らかにする科学研究をいう。

<疫学研究の定義に関する細則>

1 医師等が、主に、自らの又はその属する病院若しくは診療所の今後の診療に反映させるため、所属する機関が保有する、診療記録など人の健康に関する情報を縦覧し知見を得る行為は、この指針でいう疫学研究には該当しない。

2 市町村、都道府県、保健所等が地域において行う保健事業や、産業保健又は学校保健の分野において産業医又は学校医が法令に基づくその業務の範囲内で行う調査、脳卒中情報システム事業やいわゆるがん登録事業等は、この指針でいう疫学研究には該当しない。

疫学研究指針の対象となる研究の最低限の要件を、以下のとおりとする。

・有効性や予後等の知見が未知であるか、又は既知の知見の検証

・対象者本人のみが受益を受けるよりも、広く社会に貢献することに比重を置く

(2) 介入研究

疫学研究のうち、研究者等が研究対象者の集団を原則として2群以上のグループに分け、それぞれに異なる治療方法、予防方法その他の健康に影響を与えると考えられる要因に関する作為又は作為の割付けを行って、結果を比較する手法によるものをいう。

(3) 観察研究

疫学研究のうち、介入研究以外のものをいう。

(4) 資料

疫学研究に用いようとする血液、組織、細胞、体液、排泄物及びこれらから抽出したDNA等の人の一部のから採取された試料並びに診断及び治療を通じて得られた疾病名、投薬名、検査結果等の人の健康に関する情報その他の研究に用いられる情報(死者に係るものを含む。)をいう。

(5) 個人情報

生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)をいう。

(6) 保有する個人情報

この指針において「保有する個人情報」とは、研究を行う機関の長が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことの出来る権限を有する個人情報であって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして次に掲げるもの又は6月以内に消去することとなるもの以外をいう。

[1] 当該保有する個人情報の存否が明らかになることにより、研究対象者又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの

[2] 当該保有する個人情報の存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの

[3] 当該保有する個人情報の存否が明らかになることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの

[4] 当該保有する個人情報が明らかになることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの

(7) 匿名化

個人情報から個人を識別することができる情報の全部又は一部を取り除き、代わりにその人と関わりのない符号又は番号を付すことをいう。資料に付随する情報のうち、ある情報だけでは特定の人を識別できない情報であっても、各種の名簿等の他で入手できる情報と組み合わせることにより、その人を識別できる場合には、組合せに必要な情報の全部又は一部を取り除いて、その人が識別できないようにすることをいう。

(8) 連結可能匿名化

必要な場合に個人を識別できるように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残す方法による匿名化をいう。

(9) 連結不可能匿名化

個人を識別できないように、その人と新たに付された符号又は番号の対応表を残さない方法による匿名化をいう。

(10)研究者等

研究責任者、研究機関の長その他の疫学研究に携わる関係者(研究者等に対し既存資料等の提供を行う者であって、当該提供以外に疫学研究に関与しないものを除く。)をいう。

(11)研究責任者

個々の研究機関において、疫学研究を遂行するとともに、その疫学研究に係る業務を統括する者をいう。

(12)研究機関

疫学研究を実施する機関(研究者等に対し既存資料等の提供を行う者であって、当該提供以外に疫学研究に関与しないものの所属する機関を除く。)をいう。

(13)研究を行う機関

研究機関を有する法人及び行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)第2条に規定する行政機関をいう。)などの事業者及び組織をいう。

(14)研究を行う機関の長

研究を行う機関に該当する法人の代表者及び行政機関の長などの事業者及び組織の代表者をいう。

(15)共同研究機関

研究計画書に記載された疫学研究を共同して行う研究機関をいう。

(16)倫理審査委員会

疫学研究の実施の適否その他疫学研究に関し必要な事項について、研究対象者の個人の尊厳及び人権の尊重その他の倫理的観点及び科学的観点から調査審議するため、研究機関の長の諮問機関として置かれた合議制の機関をいう。

(17)インフォームド・コンセント

研究対象者となることを求められたが、研究者等から事前に疫学研究に関する十分な説明を受け、その疫学研究の意義、目的、方法、予測される結果や不利益等を理解し、自由意思に基づいて与える、研究対象者となること及び資料の取扱いに関する同意をいう。

(18)既存資料等

次のいずれかに該当する資料をいう。

[1] 疫学研究の研究計画書の作成時までに既に存在する資料

[2] 疫学研究の研究計画書の作成時以降に収集した資料であって収集の時点においては当該疫学研究に用いることを目的としていなかったもの

第6 細則

14 細則

この指針に定めるもののほか、この指針の施行に関し必要な事項は、別に定める。

第7 見直し

15 見直し

この指針は、必要に応じ、又は平成19年6月30日を目途として施行後5年を目途としてその全般に関して検討を加えた上で、見直しを行うものとする。

第8 施行期日

16 施行期日

この指針は、平成171911月1日から施行する。

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