概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和3年(不再)第44号
キツタカ不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
X組合(「組合」) |
| 再審査被申立人 |
Y会社(「会社」) |
| 命令年月日 |
令和8年5月20日 |
| 命令区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、①会社と「下請取引基本契約」を締結して襖や畳の張り替え等の製作業務又は搬出入等の配送業務を請け負う下請である組合員や、下請から業務を請け負う孫請である組合員(「孫請ら」)に対し、会社が発注する業務量を減少させたこと、②組合の団体交渉申入れに対する会社の対応が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審東京都労働委員会は、下請の組合員は会社との関係で労働組合法(「労組法」)上の労働者に当たらないなどとして、本件救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。 |
| 命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
(1) 組合員である下請A1、A2及びA3は、労組法上の労働者といえるかについて
ア 労務の供給が業務委託等の労働契約以外の契約形式によってなされる者であっても、実質的に、①事業組織への労働力としての組入れ、②契約内容の一方的・定型的決定、③報酬の労務対価性、という判断要素に照らし、団体交渉の保護を及ぼすべき必要性と適切性が認められる場合には、労組法上の労働者に当たるとみるべきである。
上記①の判断に当たっては、補充的に、(a)業務の依頼に応ずべき関係、(b)広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的・場所的拘束、(c)専属的な労務供給、といった要素も考慮されている。他方、事業者性が顕著である場合には、労組法上の労働者性は否定されることとなる。
そして、上記①の要素については、本人の労務供給に対する相手方の指揮命令又はそれに類する関係があることがその内容に含まれているから、本人自らの対応が求められているか、他人労働力の利用が許容されている場合にはそれが本人の補助的な役割に留まるのかも、考慮の対象となる。
イ 本件において、①会社にとっての下請は、会社の事業活動にとって枢要な役割を果たしていたとはいえるが、製作業務については、襖や畳の張り替えなど物の製造や加工の業務を会社の指示を受けずに行っていた他、下請は本人が労務を供給することは求められず、実態としても、孫請などの選定等に会社は特段関与せず、複数の孫請を抱える下請も相当数存在し、組合員であるA1については20名程度の孫請を抱え、会社からの報酬額のうち自ら現場作業に従事した業務に対する部分が平均1.87%にすぎなかった。このことからすれば、下請と会社との関係は、労務供給としての性格は希薄であり、下請が会社の事業に不可欠な労働力としてその組織に組み入れられていたとは認められない。
その他、補充的要素としての(a)業務の依頼に応ずべき関係、(b)広い意味での指揮監督関係や場所的・時間的拘束、及び(c)専属性の有無という観点からみても、製作業務を行う下請が、会社の事業組織に労働力として組み入れられていたと評価することは困難である。
配送業務については、本人の労務供給が必要とされていない点では共通性もあるが、業務の内容やその遂行に係る会社の関与の在り方、及びその他の補充的要素も考慮すれば、製作業務に比して、労務供給としての性格は強くなるため、会社の事業組織に労働力として組み入れられていると評価される余地は大きくなる。
次に、②契約内容は、基本的には会社が一方的に定めていたといえるものの、その内容は、おおむね各業務の概要及び報酬や費用負担など下請取引の条件についてのものといえる。また、③報酬は、配送業務については、労務供給としての性格が強くなるのに対応して、労務対価性も相応に認められるが、製作業務については、労務の対価であるとは認め難い。
以上を総合すれば、製作業務を担当する下請は、労組法上の労働者に当たると評価することは困難である。配送業務については評価が異なり得る余地があるが、本件では、組合員である下請の中に自ら配送業務のみに従事していた者は存在しない。
ウ なお、組合員である下請のうちA1は、多くの孫請を傘下に置き、それによる会社からの相当額の報酬を得た上、自らの判断により適宜分配しており、事業者性は顕著であるといえる。
これに対し、A2及びA3は事業者性が顕著とは認めがたいが、上記イ①~③を総合して製作業務を行う下請の労働者該当性が否定される本件において、製作業務を行うA2やA3につき、このことにより労働者該当性が根拠付けられるとはいえない。
エ 以上から、組合員のうち、下請A1、A2及びA3は、労組法上の労働者には該当しないと解するのが相当である。
(2) 会社は組合員である孫請らとの関係で労組法上の使用者といえるかについて
孫請らについて、組合が主張する業務量減少や、組合の団体交渉申入れに係る要求事項である報酬の額や支払条件等に関し、会社が雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定していたという事情は認められないから、会社は、孫請らとの関係において、労組法上の使用者とは認められない。
(3) 不当労働行為該当性について
上記(1)及び(2)のとおり、下請は労組法上の労働者に該当するとはいえず、また、会社は、孫請らとの関係において、労組法上の使用者とはいえないのであるから、その余の点について判断するまでもなく、会社の上記各行為が労組法第7条に該当するとはいえない。 |
| 掲載文献 |
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