概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和5年(不再)第44号・第47号
奏パートナーズ不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
X組合(「組合」)(44号)、Y法人(「法人」)(47号) |
| 再審査被申立人 |
Y法人(「法人」)(44号)、X組合(「組合」)(47号) |
| 命令年月日 |
令和8年2月18日 |
| 命令区分 |
一部変更 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、法人が、組合員Aを呼び出して面談を実施の上、Aに対し、①Aが上司のパソコンを無断で起動し、Aにはアクセスが許可されていないチャットを複数回にわたって閲覧したこと(「チャット閲覧行為」)等を理由に懲戒解雇を予定しているなどとして退職を強要し、退職届を提出させたこと、②組合から令和3年7月28日に申入れのあった、Aに対するパワハラ等を交渉事項とする団体交渉(当該団体交渉の申入れを「3.7.28団交申入れ」)はなしにしてほしい旨組合に伝えるよう述べるなどしたことが労働組合法(「労組法」)の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労働委員会は、②に関し、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するとして、法人に対して文書手交を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、組合及び法人は、これを不服としてそれぞれ再審査を申し立てた。
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| 命令主文要旨 |
(1) 法人の再審査申立てに基づき、初審命令主文第1項(法人に対して文書手交を命じた部分)を取り消し、これに係る救済申立てを棄却する。
(2) 組合の再審査申立てを棄却する。
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| 判断の要旨 |
(1) 争点1(法人が令和3年8月2日をもってAを合意による退職としたことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するか)について
法人が、令和3年8月2日に組合への連絡等無しにAを呼び出して面談(「本件面談」)をしたことは、就業規則に違反している可能性のあるチャット閲覧行為について、法人が処分を検討するに当たり、Aに対して事実を確認し、弁明の機会を与えることを目的として行われたもので、本件面談は懲戒のための手続保障の観点からされた行為であって、事前に予告することなく行った点は配慮に欠けていたとはいい得るものの、Aが組合に入っていたか否かにかかわらず行われた手続であるといえる。
そして、本件面談において、Aはチャット閲覧行為を認め、弁護士の提案を受け合意退職を検討する姿勢を見せていたのであり、Aが面談後にC従業員に送信したメッセージによれば、Aには、退職を強要されたとの認識はなく、弁護士が法人との間に入って調整してくれたために、自己都合退職になり、懲戒解雇処分を回避できたとの認識であったといえる。
以上によれば、法人が令和3年8月2日をもってAを合意による退職としたことは、Aが組合員であること又はAが組合の正当な行為をしたことの故をもって行われた不利益な取扱いであると認めることはできない。
また、法人が、Aを退職させることにより、組合の弱体化や、組合の組織・運営に打撃を与えようと意図したとみることも困難である。
以上のことから、法人が令和3年8月2日をもってAを合意による退職としたことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には該当しない。
(2) 争点2(法人が令和3年8月2日にAを呼び出したこと及び本件面談における法人のAへの対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当するか)について
上記(1)のとおり、本件面談は、法人がAに対し、就業規則に違反している可能性のあるチャット閲覧行為について事実確認と弁明の機会を与えるために行われたものであり、懲戒のための手続保障の見地からなされる行為であって、団体交渉(「団交」)とは目的を異にするものである。そして、組合と法人との間で、法人が組合の組合員である従業員に対して懲戒処分をする場合には、事前に組合と団交を行うべきことや、従業員からの事情聴取ないし従業員への弁明の機会の付与に先立って組合に連絡すべきことを定めた労働協約は締結されていない。したがって、法人が、組合に連絡することなく、団交を行わずにAを呼び出して本件面談を行ったことをもって支配介入に該当するということはできない。
また、法人がAに対し組合に相談する機会を与えなかったことについては、本件面談が懲戒のための手続保障の見地からされた行為であること等に加えて、法人は本件面談後、組合からのAの退職に関する団交申入れに応じていること、その他、本件面談を行うに当たり、法人が組合の関与をことさら排除していたという事情は認められないことからすると、組合に対する支配介入に該当すると認めることはできない。
さらに、法人がAに対し、3.7.28団交申入れの取下げを促したことについては、法人とAが退職合意をし、Aから退職届が提出されたことにより、団交開催の必要がなくなったと考えることは不自然なものではないし、その他の事情に照らしても、組合がAの地位・身分について交渉することを妨げようとする意図でされたということはできない。
以上のことから、法人が令和3年8月2日にAを呼び出したこと及び本件面談における法人のAへの対応は、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当しない。
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| 掲載文献 |
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