概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第27号
ティーワイケイ高槻生コン不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
Y会社(「会社」) |
| 再審査被申立人 |
X組合(「組合」) |
| 命令年月日 |
令和7年12月17日 |
| 命令区分 |
一部変更 |
| 重要度 |
|
| 事件概要 |
1 本件は、会社が、①組合に対して労働協約全てを解約する旨を記載した通知書を送付したこと(以下「本件送付行為」という。)、②会社の本店所在地の土地及びプラント等を売却したこと、③希望退職者の募集を行ったこと、④組合が令和4年8月5日付けで行った団体交渉(以下「団交」という。)の申入れ(以下「本件団交申入れ」という。)に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労働委員会は、①は労組法第7条第3号に、④は同条第2号にあたる不当労働行為であるとして、本件送付行為がなかったものとしての取扱い、文書交付及び団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。 |
| 命令主文要旨 |
(1) 初審命令主文を次のとおり変更する。
ア 会社は、本件団交申入れに誠実に応じること
イ 文書交付
ウ その余の組合の救済申立てを棄却
(2) その余の会社の再審査申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
(1) 組合が、Bの代表権を争いつつ、Bの行為につき会社の不当労働行為責任を問うことの可否
会社は、組合が、登記上の会社の代表取締役であったBの代表権を争っていることから、組合がBの行為を会社の行為と評価して救済申立てをすることは許されないと主張するが、現にBが会社を代表して労働協約の解約通知等をしているのだから、組合がBの代表権を争っていても、組合は、現実的な選択としてこれらを会社の行為として救済申立てを行うことを妨げられない。
(2) 本件送付行為は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか
ア 労組法第15条第3項及び第4項は、労働協約の当事者双方に解約権を認めている。しかし、解約が組合の弱体化を企図してなされた場合は、不当労働行為に当たる。
イ 会社と組合は、創業当時からしばらくは、良好な関係で密接に協力しながら経営を行っていた。しかし、Bの友人であったAが組合の執行委員長から交代となる直前には会社と組合との関係が悪化し、組合によってなされたBらの経営からの排除の動きの発覚、それに対抗するBらの仮処分命令申立て等に至る中で対立を深め、原材料の供給停止により売上がない中で、Bらの経営支配権が組合による奪取の動きにより大きく揺らぐ事態に至っていた。その後も、両者の関係が回復したとはみられず、本件送付行為に至るまでに対立は激化し、深刻化していたといえる。
ウ 会社は、労働協約解約の主要な理由は、組合が、Bの代表取締役解任等を含む株式会社変更登記申請を行ったうえ、仮処分決定でそれが無効と判示されても経営支配権奪取の方針を改めなかったことにあり、信頼関係を組合が一方的に破壊した以上、解約はやむを得ないと主張するところ、当時の労使関係及び会社の状況からすれば、組合の一連の行為により、両者の信頼関係が破壊されたとの会社主張には、一定の合理性がある。
また、会社は、当時複数の紛争の対応も平行して行っており、その間、会社と組合の関係が改善しないのだから、本件送付行為の時期が株式会社変更登記申請から約7か月が経過した時点であることが、会社主張に照らして不自然、不合理であるとまではいえない。
エ 本件送付行為は一切の事前・事後協議なく労働協約の一括全部解約に及んだものであり、かかる会社の対応には、一般的には問題があったと言わざるを得ない面もある。
しかし、会社側の保有する労働協約は、組合所有の建物内の会社事務所で組合員が管理し、労働協約を含む会社の書類の引渡しを会社が求めても、組合は応じていない。また、会社は解約自体の予告はしていないが、組合の動きに起因する経営の混乱について訴訟手続で争った上で組合に警告書を出しており、解約通知書には予備的ではあるが解約予告である旨も記載されている。
以上によれば、会社は、組合の動きにより信頼関係が失われ、売上がない中で、会社の書類の引渡しに応じない組合らに対して、Bらの経営支配権が組合の動きにより揺らいでいることへの深刻な危機感から、本件送付行為に及んだのであって、事前の協議等のない一括解約だとしても、本件送付行為による解約が、組合を弱体化しようとするものとは認められない。
オ 上記イないしエのとおり、本件当時の労使関係及び会社の状況、労働協約の解約理由、解約手続等を総合的にみれば、本件送付行為は経営支配権奪取の防衛・対抗策の一環とみることができ、組合に対する支配介入に当たるとはいえず、労組法第7条第3号の不当労働行為には該当しない。
(3) 本件団交申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか
ア 会社は、組合はBの代表権を争っているから、本件団交申入れにおいてBを代表者としているのは方便であり、真意に基づかないものであって、本件団交申入れは有効でないと主張するが、本件団交申入れにあたり、Bを代表者とすることは組合の立場からは現実的な選択といえ、組合が真に団交を求めていなかったとはいえない。
イ 会社は、組合が、Bを会社の代表者と認めないので、実質的に有効な協議を行うことは著しく困難であるから、団交拒否の正当な理由がある旨主張するが、組合は、代表権を争う中で、あえてBを代表取締役と明記した申入書をもって、会社に団交を申し入れており、かつ、その要求事項に照らせば、会社の代表者としての権限を行使するB又はその委任を受けた者が、団交で説明等を行うことは可能であった。
また、会社は、労使の信頼関係は団交の必須の前提であるから、これを破壊した組合からの団交申入れを拒否することは正当である旨主張するところ、確かに、当時の状況をみれば、会社が組合に対して不信感を持つのも無理からぬことである。しかし、現実に労使関係が展開され、団交により解決すべき課題があるならば、信頼関係が損なわれていても、直ちに団交拒否の正当な理由があるとはいえず、当時の状況を踏まえても、団交が客観的に困難だったとはいえないから、信頼関係の破壊は団交拒否の正当な理由にならない。
以上からすれば、会社の団交拒否に正当な理由があるとはいえない。
ウ 以上のとおり、組合からの有効な団交申入れである本件団交申入れに対して、会社は、正当な理由なく応じなかったのであるから、かかる会社の行為は、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。 |
| 掲載文献 |
|