概要情報
| 事件番号・通称事件名 |
中労委令和6年(不再)第20号・第22号
日本交通(労評)不当労働行為再審査事件 |
| 再審査申立人 |
Y1会社・Y2会社(併せて「会社」)(20号)、X組合(「組合」)(22号) |
| 再審査被申立人 |
X組合(「組合」)(20号)、Y1会社・Y2会社(併せて「会社」)(22号) |
| 命令年月日 |
令和7年11月5日 |
| 命令区分 |
棄却 |
| 重要度 |
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| 事件概要 |
1 本件は、会社が、①初審申立時までに、組合の掲示板貸与要求に応じなかったこと、②男子浴室入口付近を掲示板のスペースとして提示したこと、③掲示板の貸与に当たって合意書を締結することを条件としたことが、それぞれ労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、上記①の行為が労働組合法第7条3号の不当労働行為であるとして、会社に対し、上記①の行為が不当労働行為であると認定された旨の文書の交付等を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社及び組合はそれぞれ再審査を申し立てた。 |
| 命令主文 |
本件各再審査申立てを棄却する。 |
| 判断の要旨 |
(1) 会社が、初審申立時までに、組合の掲示板貸与要求に応じなかったことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
ア 労働組合による掲示板の利用は、原則として使用者との合意に基づいて行われるべきものであり、使用者が常に労働組合又はその組合員の組合活動のために施設の利用を認めなければならないというものではないから、掲示板の貸与方法等について会社に一定の裁量が認められる。
イ 組合には一切の掲示板が貸与がされておらず、他の2つの労働組合には掲示板が貸与されており、掲示板の貸与の取扱いに顕著な差があるところ、こうした状況の下で組合の要求に応じないことは、このような取扱いに対する合理的な理由が存在しない限り、組合の活動力を低下させその弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると解するのが相当である。
ウ 本件の事実関係の下では、少なくとも会社は、掲示板貸与要求に対して会社内の掲示板から組合に貸与するスペースを捻出したり、確保したりする方法を真摯に検討するなどの具体的な対応が求められるというべきである。
エ 組合からの掲示板貸与要求に対する会社の対応をみると、漠然とした会社と他の労働組合との関係性や他の労働組合からの掲示板の拡大要求があることを繰り返し回答するものであったことが認められる。また、組合に貸与するスペースがない状態を作出するために、必要性の低い掲示物を掲示したものと認められる。
したがって、掲示板貸与要求に対する会社の対応が、会社内の掲示板から組合に貸与するスペースを捻出したり、確保したりする方法を真摯に検討するものであったということはできない。
オ 以上のことからすれば、組合からの掲示板貸与要求に対する会社の初審申立時までの対応には合理的な理由があるとは認められず、このような会社の対応は、組合の活動力を低下させその弱体化を図ろうとする意図を推認させるものである。
カ 会社が、初審申立時までに、組合からの本件貸与要求に応じなかったことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当する。
(2) 会社が、組合に対する掲示板の貸与に当たって、掲示板貸与に関する合意書を締結することを条件としたことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するか
ア 掲示板貸与に関する合意書に係る会社の対応は、組合との団体交渉等を経て検討した案を組合に提示するといったものであり、不合理であったということはできない。
イ また、上記アに加え、会社内の掲示板の貸与方法等について会社に一定の裁量が認められることも併せて考えると、掲示板貸与に関する合意書の内容は、一定の合理性や相当性も認められる。
ウ 以上のことからすれば、掲示板貸与に関する合意書に係る会社の対応に合理的な理由がないとは認められない。
エ 会社が、組合に対する掲示板の貸与に当たって、掲示板貸与に関する合意書を締結することを条件としたことは、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するとはいえない。 |
| 掲載文献 |
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