労働委員会命令データベース

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概要情報
事件番号・通称事件名  中労委令和6年(不再)第30号
日本交通産業不当労働行為再審査事件 
再審査申立人  X組合(「組合」) 
再審査被申立人  Y会社(「会社」) 
命令年月日  令和7年7月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社がタクシー乗務員である組合員Aとの雇用関係を令和3年5月末をもって終了したこと(「本件雇用終了」)が労働組合法(「労組法」)第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。

2 山口県労働委員会は、本件雇用終了は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらないとして、本件救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  (1) 本件雇用終了は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるかについて
ア 本件雇用終了に係る会社の判断の合理性
(ア) 判断要素について
 本件雇用終了当時における会社の判断基準の存在については争いがあるが、勤務成績、勤務態度及び過去の事故状況を考慮するという、平成18年の就業規則上の基準が判断要素として引き継がれ、令和3年4月当時、これを中心に判断を行うという会社の内部方針の限度では存在していたとみるのが自然であり、組合員Aの雇用契約においても前提とされていたといえるから、かかる要素に基づく判断が著しく不合理なものとはいえない。

(イ) 勤務成績について
 組合員Aは月間営業収入額30万円という会社の基準を下回った回数を理由として、平成29年から、会社が教育期間と位置づける勤務シフトへの変更が命じられ、当該期間においても基準を超えた月はない。この点、組合は、会社がシフト変更後に特定駅での待機や夜間・週末の勤務を禁止したことによる等と主張するが、他の乗務員の状況等と考え合わせると、シフト変更が基準を下回ったことの直接的な原因ということはできない。

(ウ) 勤務態度について
 会社は組合員Aに、平成26年の2度の改善指導等を経て、平成29年5月、同年4月に月間営業収入額が30万円を下回ったのは病気等の欠勤者を除くと組合員Aだけである旨の通知をしたが、組合員Aは、改善する意向を示していない。
 さらに、上記シフト変更後も、残業を行うことなく営業収入を向上するための具体的な助言を会社に求めたり、提案したりしていたとは認められず、会社が組合員Aの勤務態度について否定的な評価をしたとしても不合理とまではいえない。

(エ) 事故状況について
 令和元年8月、組合員Aの車両が自転車に衝突し、被害者に打撲、擦過傷の診断がなされたこと、保険会社には組合員Aの全面過失(100:0)と評価されたこと等が認められる。

(オ) 以上から、組合員Aの勤務成績、勤務態度及び事故状況を考慮し、会社が本件雇用終了を判断したことには相応の合理性があったと認められる。

イ 本件雇用終了に至る手続
 会社が雇用の終了に係る事前協議を組合員Aと行わなかったことは、組合員であることを理由に狙い撃ちにしたものとまではいえない。

ウ 労使関係及び会社の状況等
 組合と会社の間では、平成26年頃から、労働時間、賃金算定及び時間あたりの売上について見解の相違がみられ、度々紛争化していた。しかし、平成31年2月から令和3年5月まで、組合の団体交渉申入れに会社は回答をし、文書での回答に組合が抗議したり、内容について激しい対立があった様子は窺われない。その他、組合員らの雇用継続及び未払賃金の要求も団体交渉を通じて都度の解決に至るなど、本件雇用終了当時、労使の対立が激化していたといった事情までは認められない。

エ したがって、本件雇用終了は、組合の組合員であることの「故をもって」行われたものといえず、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当しない。

(2) 本件雇用終了は、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるかについて
 上記(1)で考慮した各事情を踏まえると、本件雇用終了は、組合の弱体化を企図してなされたものともいえず、労組法第7条第3号の支配介入にも該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
山口県労委令和3年(不)第2号 棄却 令和6年7月3日